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泌尿器科WAVE(経尿道的水蒸気治療)

前立腺肥大症とは?
前立腺肥大症とは、膀胱の下にある男性特有の臓器である前立腺が加齢とともに腫大し、尿道を圧迫することで尿勢の低下や排尿困難、頻尿などの症状を引き起こす疾患です。症状が悪化すれば、尿閉や尿路感染症、血尿などを起こすこともあります。年齢とともに罹患率は上昇し、2023年に日本排尿機能学会により行われた調査では、治療を受けられている患者様の割合は50~60歳代では5~6%であったものが、70歳代では16%、80~90歳代では25%になると報告されています。今後もこの傾向は続くと予想されており、より多くの高齢男性が生涯かかる疾患となっています。
WAVE : Water Vapor Energy Therapy(経尿道的水蒸気治療)とは?
経尿道的水蒸気治療はRezumシステムを用いた前立腺肥大症に対する新しい手術になります。
本邦では2022年9月より保険収載され、手術が受けられるようになりました。
手術の方法としては、経尿道的に内視鏡を挿入し、高温の水蒸気を前立腺に注入します。水蒸気の熱エネルギーにより前立腺の細胞が壊死し、体に吸収されていくことで前立腺が縮小します。
体にメスを入れることはなく、尿道を通じて前立腺に水蒸気を注入するだけの治療のため、手術時間は10分前後と
非常に短く、体に負担の少ない低侵襲治療として注目されています。
WAVE(経尿道的水蒸気治療)の3つの特徴

を利用した治療
前立腺の縮小
低侵襲治療
治療の流れ

デリバリーデバイスを尿道から挿入し、前立腺に103℃の高温水蒸気を注入します。(1回9秒 2~6箇所程度注入)
注入された水蒸気は前立腺内部のみに行き渡り、前立腺の細胞を熱エネルギーによって壊します。
壊死した細胞は1-3ヶ月かけて体内で自然吸収され、前立腺が縮小していくことで尿道が開大します。
治療後5~7日間は前立腺が浮腫むため、排尿困難が悪化することからカテーテルの留置が必要になります。
入院期間はカテーテルを留置のまま後日外来では抜去する場合は3~5日間、カテーテル抜去まで入院を希望される際は7~10日間となり、患者様の希望に合わせて対応致します。
従来の手術治療との違い
①経尿道的前立腺切除術
これまで前立腺肥大症に対するgold standardの手術は経尿道的前立腺切除術という内視鏡治療でした。
この治療は内視鏡の先端に付いた電気メスで前立腺組織を直接切除する(削り取っていく)方法であり、狭くなった尿道の内側から肥大した前立腺組織を除去することで尿道を拡げます。
組織が除去されるため、治療効果は高く、現在でも有効な治療の選択肢ではありますが、前立腺は血流の多い臓器であるため、一定量の出血を認めることや、前立腺が大きい方では手術時間が1~2時間ほどかかることもある治療となっていました。そのため入院期間も7~10日間ほど必要となります。
②前立腺レーザー治療(Holep・PVP・CVPなど)
その後、電気メスの代わりにレーザーを用いて前立腺組織を切除や蒸散する治療が発展しました。
使用するレーザーによって複数の術式がありますが、従来の電気メスに比べ出血量が少なくなる点から、抗凝固剤を服用中の患者様でも治療が可能となります。
当院の関連施設である大阪市立総合医療センターでは接触型レーザー前立腺蒸散術(CVP)を行っておりますので、希望される際は紹介し受けて頂くことが可能となっております。
③WAVE(経尿道的水蒸気治療)
従来の治療は、電気メスであってもレーザーであっても前立腺組織を除去する治療のため、前立腺の大きさによって、1~2時間ほどの手術時間を必要としました。
WAVEの最大のメリットは、手術時間が10分前後で済むという短時間手術である点と、組織を切除しないため出血しにくい点にあります。
そのため、これまで侵襲的な治療が困難とされた、超高齢者の方や抗凝固剤服用中の患者様であっても安心して受けて頂くことが可能となっております。
また、従来の手術では手術後は射精障害が起こりますが、WAVE治療では手術後の射精障害は3%前後と報告されており、100%ではありませんが射精機能の温存も可能となります。
代表的な合併症・副作用
排尿障害(手術直後は一時的に悪化することがあります)、肉眼的血尿、頻尿、尿意切迫感、尿路感染症などが報告されています。
・排尿障害16.9%
・肉眼的血尿11%
・血精液症7.4%
・頻尿5.9%
・その他数%未満
と報告されていますが、従来の手術と比べ多いものはありません。
当院での治療成績(初期30例と従来手術TUR-Pの比較)
| 項目 | TUR-P (n=18) | WAVE (n=30) | p |
|---|---|---|---|
| 年齢(歳) | 75.9 ± 5.7 | 76.5 ± 7.6 | 0.6 |
| 前立腺体積(g) | 59.5 (14.0-258) | 53.0 (25.0-110) | 0.33 |
| 初診時尿閉(%) | 61.1 (n=11) | 36.6 (n=11) | 0.138 |
| 術前残尿(mL) | 100 (10-300) | 47.5 (10-360) | 0.67 |
| 術後残尿(mL) | 10 (10-40) | 10 (10-150) | 0.208 |
| 手術時間(分) | 70.5 (36.0-243) | 8 (4.0-17.0) | <0.0001 |
| 入院日数(日) | 10 (7-15) | 6 (3-9) | <0.0001 |
従来の手術(TUR-P)と比較して、手術時間・入院日数が有意に短縮されています。
いずれの手術でも残尿は改善しており、どちらの手術も排尿障害に対して有効な治療であると言えます。
どのような患者さんに推奨されますか?
低侵襲治療であることから、これまで手術適応が困難であった高齢者の方や合併症の多い患者様でも受けて頂くことができる可能性があります。
また、射精機能の温存という面からは比較的若年でも排尿障害で困っておられる方にも選択肢の一つとなります。
そのため、年齢に問わず幅広い患者様に対する治療として推奨することができます。
反対に、治療効果に即効性を求められる方や高度の前立腺肥大症の方へは、従来の経尿道的前立腺切除術やレーザー治療を奨めさせて頂く場合もあります。
最後に
当院では2025年8月よりWAVE治療を開始しました。
2026年8月時点で手術開始後1年となりますが、大阪市立総合医療センターとも連携しており、より多くの患者様へWAVE治療を提供することができております。
患者様の状態によって適切な治療は異なりますので、排尿困難でお困りの方は外来担当医にご相談下さい。











