ページ内を移動するためのリンクです。
文字サイズ変更
標準
大きく
最大
  • よくあるご質問
  • 交通アクセス
代表番号 06-6150-8000 土・日・祝休診
初診受付午前8時45分〜11時00分
再診受付午前8時30分〜11時00分
現在表示しているページの位置です。

現在地

消化器内科非アルコール性脂肪肝炎ってなに?

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ってなに?

この方の診断名はなんでしょうか?

山田花子さん (仮名) 62歳 女性 女専業主

【経過】
8年前より高血圧の治療を受けている。またこの間, 肝機能障害も指摘されていたが「脂肪肝のせい」と言われた。2年程前より次第に体重が増加し、肝機能障害が悪化したために当院を紹介受診した。

【初診時検査】
身長153cm、体重72kg (BMI 30.8)、血圧 152/88 mmHg。アルコール:全く飲めない。

採決結果
AST(GOT) 125 IU/L 白血球数 4500/mm3
ALT(GPT) 176 IU/L 赤血球数 412×104/mm3
ALP 562 IU/L ヘモグロビン 12.5 g/dL
γ-GTP 74 IU/L ヘマトクリット 41.5 %
総ビリルビン 1.1 mg/dL 血小板数 15.3×104/mm3
総コレステロール 253 mg/dL HBs抗原 (-)  
中性脂肪 227 mg/dL HCV抗体 (-)  
血糖値 117 mg/dl &nbs;  
HbA1C 6.0 % &nbs;  

ポイント

  1. この方は肥満及び高血圧を合併しています。
  2. 採血データでは 肝機能異常、高脂血症を認めます。また糖尿病の一歩手前のようです。
  3. 腹部超音波検査上, 肝臓が白くなっており、 脂肪肝と診断されました。

患者さんと相談し、 入院の上肝生検を受けて頂きました。

豆知識 酸化ストレス

生体内で消去されなかった活性酸素が、体内のDNA、タンパク質、脂質を酸化させることによって起こる生体への影響を酸化ストレスといいます。生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ, 酸化反応が優位となった状態で、NASHの進行にも深く関与していると考えられています。

豆知識 肥満とBMI

肥満の判定指標にBMI(body mass index)があります。日本人では、BMIが22のときに一番病気にかかる率が低いことから「BMI22」を 理想体重とし、25以上を太りすぎ(肥満)としています。BMIを計算することで、手軽に肥満かどうかを判定することができます。
BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)
(例)体重75kg、身長1m68cmの人 ⇒75÷1.68÷1.68=26.6

肝生検の結果

診断: 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

NASH (ナッシュ) とは?

脂肪肝とは、肝臓の中に中性脂肪が蓄積して肝障害をおこす疾患です。脂肪肝の原因はアルコール性脂肪肝と、ほとんどアルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分かれます。NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定されます1)

NASH の診断はどうやってするの?

肥満、糖尿病、 脂質代謝異常、 高血圧などを合併した患者さんは脂肪肝、 NASHの可能性が高いと考えられます。 脂肪肝の診断は腹部超音波検査や腹部CT検査で可能です。 NASHの診断のポイントは以下の3点になります。

  1. 非飲酒者であること (アルコール摂取量1日20g*以下)
  2. 肝生検による組織像で脂肪性肝炎を認めること
  3. 他の原因による肝障害を認めないこと

現在、NASHの診断を確定する方法は肝生検のみです。

アルコール量20gとは?

(例) 缶ビール(500ml) 1本、日本酒 1合、ウイスキーダブル 1杯

どうしてNASH は問題なの?

  1. 肥満は肝臓癌の危険因子
    図1に示すように、肥満の方はそうでない方と比較して癌になりやすいと言われています。
  2. 我が国の糖尿病患者の死因は肝疾患が多い
    日本糖尿病学会による糖尿病患者の死因の調査の結果、肝疾患が13.3% (肝臓癌 (8.7%)、肝硬変 (4.7%))と全体の約8分の1にのぼりました2)
  3. 肝炎ウイルス以外の肝臓癌患者が増加している
    これまで、肝臓癌の多くはB型およびC型肝炎ウイルスに感染した患者さんから発生すると言われてきました。しかし近年、肝炎ウイルスに感染していない肝臓癌患者数が増加傾向にあります。この原因の一つとして、NASH由来の肝臓癌が疑われています。

NAFLD/NASHとメタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に高血糖、 脂質代謝異常、高血圧のうち2つ以上を合併した状態です。メタボリックシンドロームの定義を満たす場合、心筋梗塞 や脳梗塞などの危険性が相乗的に高くなることから、予防・ 治療の対象とされています。NAFLD/NASHはメタボリック シンドロームの肝臓での表現型と考えられています. 実際、 メタボリックシンドロームの診断における各因子 (高血糖、 脂質代謝異常、高血圧)の保有数が多いほどNASHの可能性 が高くなると言われています。

メタボリックシンドロームの診断基準
腹腔内脂肪蓄積 ( ≥100 cm2)
ウエスト周囲径 男性 ≧ 85 cm
女性 ≧ 90 cm
上記に加え、以下のうち2項目以上
  1. 空腹時血糖値 > 110 mg/dL
  2. 脂質代謝異常
    高トリグリセライド血症 ≧ 150 mg/dL
    かつ/ または
    低HDL-C血症 < 40 mg/dL
  3. 高血圧
    収縮期血圧 ≧ 130 mmHg
    かつ/ または
    拡張期血圧 ≧ 85 mmHg

NASH発症のメカニズムは?

NASH発症のメカニズムは現在も不明の点が多いのですが、ここでは現在最も広く受け入れられている仮説を紹介します (図2)。

“二つのヒット理論”

第一のヒット
脂肪の過剰摂取などによって肝臓に脂肪が蓄積し, 脂肪肝になります。
第二のヒット
脂肪肝に脂質過酸化やサイトカイン、鉄などの酸化ストレスが加わりNASHに至ると考えられています。

NAFLD/NASH の治療はどうするの?

NASHの治療として現時点で確立されたものはありません。

  1. 生活習慣の改善
    NASHの治療の原則は食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、背景にある肥満、 糖尿病、脂質代謝異常、高血圧等を是正することです。
  2. 薬物療法
    生活習慣の改善のみでは効果が不十分の場合は、肝硬変への進展や肝発癌を予防するために積極的に薬物治療を行います。
    1. 抗酸化剤:ビタミンC、ビタミンE
    2. 糖尿病治療薬:チアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン
    3. 脂質代謝異常治療薬:フィブレート系薬剤、エゼチミブ、エパデール
    4. 肝庇護剤:ウルソ、グリチルリチン
  3. 除鉄療法
    一部のNASHでは過剰な鉄が肝臓に負担をかけるため、体から鉄分を減らすことが重要です。
    1. 瀉血療法(保険収載外)::1回300~400mlの血液を2週間毎に抜きます。
    2. 低鉄食:食事1日あたりの鉄分を6~7mg以下にします。

当院の取り組み

当院におけるNAFLD/NASHの診断、治療に対する取り組みをご紹介します。

  1. 診断
    A) 内臓脂肪面積測定:腹部CTで内臓脂肪面積を測定しています (図3)
    B) InBody:体成分分析計です。体内の筋肉量、脂肪量を体の部位別に測定
    することが可能です。
  2. 治療
    A) 瀉血療法:当院では、倫理委員会の承認をえて、鉄過剰のNASHの方に瀉血療法を施行しています。 1回300~400ml、2週間毎の瀉血を5~8回程度行います。
    B) カルニチン療法:NAFLD/NASHの方は二次的にカルニチンというアミノ酸が不足すると考えられます。当院では倫理委員会の承認をえて、肝生検でNASHと診断されたNASH患者さんにカルニチン補充療法を行っています。

Q&A

Q1 NASHの患者さんは、みんな肝硬変になってしまうのでしょうか?
A欧米の報告では、5-10年でNASH患者さんの5-20%が肝硬変に進展すると言われて います。アジアでは香港から同様の報告があります4)
Q2 NASHが悪化しやすいのはどういう人ですか?
ANASHの原因である肥満や生活習慣病が改善されない場合は、病態が徐々に悪化すると予測されます。また、ALTが正常でも既に進行したNASHの場合があるために注意が必要です1)
Q3 肝生検ってどういう検査ですか? 外来でもできますか?
A肝生検は、肝臓に針を刺して肝組織の一部を取る検査です。 肝臓は血流が豊富な臓器ですので、止血を確認するために短期入院(3-4日程度)をして頂いています。入院の費用は健康保険(3割負担)で約70,000円です(2012年2月現在)。

豆知識 インスリン抵抗性

インスリンは血糖値を維持するために特に重要なホルモンです。 具体的には血糖値の上昇に伴い膵臓から分泌され、血糖値を下げる作用を持っています。近年、インスリン抵抗性(インスリン感受性)ということが注目されています。 インスリン抵抗性とは、「インスリンの効き具合」を意味します。すなわち、同じだけ血糖を下げるのに必要なインスリン量が多い時にインスリン抵抗性が高い(インスリン感受性が悪い)と表現します。インスリン抵抗性はインスリン分泌低下と共に、糖尿病の発症や病状に大きく関わっていると言われています。

参考文献

  1. 日本肝臓学会編 NASH・NAFLDの診療ガイド2010文光堂 2010.
  2. 糖尿病 2007;50:47-61.
  3. 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とは 吉川敏一、角田圭雄.
  4. J Gastroenterol Hepatol. 2007;22:801-8.

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)ってなに?

2014年4月 第一版
十三市民病院 消化器内科

ご不明な点などありましたらお気軽に外来担当医にご質問、ご相談ください。

ページトップへ