疾患情報・コラム
本コンテンツについて
各診療部門の医師が疾患や症状ごとに記事を作成しています。疾患の基本情報や、検査、治療の内容と特色、合併症、治療後の経過と注意点などを一連の治療の流れに沿って具体的ににわかりやすく解説しています。
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泌尿器科手術支援ロボット「ダビンチ」について | 泌尿器科当院では、2015年1月からダビンチ手術を導入し、手術件数は2,600症例(2024年10月時点)を超えました。 さらに2025年1月に手術支援ロボットの最新機器「ダビンチSP」を大阪で初導入します。現在のダビンチXi2台とあわせて3台体制で稼働予定です。ダビンチSPは婦人科・泌尿器科・小児泌尿器科・呼吸器外科・消化器外科・小児外科の6つの診療領域で活用予定です。 【大阪初症例】関西テレビにて放送のダビンチSP特集の追加放送決定! 関西テレビ「newsランナー」にて、当院の手術支援ロボット最新機種「ダビンチSPサージカルシステム(以下、ダビンチSP)」が特集されました。関西テレビ系列の地方局から追加放送の依頼があり、愛媛、鳥取、島根、愛知、三重、岐阜での放送が決定しました! 反響が大きく、外来診察で患者さんから最新機種での手術を希望する声もいただきます。 ※症例によってはダビンチ手術の適応外となる場合もあります。まずは医師にご相談ください。 ダビンチ・ロボット手術とは ダビンチXI・SP ロボット手術のメリット 実績、適応・対象疾患 担当医からのメッセージ ロボット手術を受けるには ダビンチ・ロボット手術とは ダビンチは、アメリカで開発された最新鋭の内視鏡手術支援ロボットです。 このロボットは外科医が行う腹腔鏡手術を支援するシステムです。患者さんの身体に開けた小さな創から手術器具を取り付けたロボットアームと内視鏡を挿入し、医師がサージョンコンソールと呼ばれる操作ボックスの中で内視鏡画像を見ながらロボットを操作します。 ダビンチXi ダビンチは米国インテュイティブサージカル社が開発した手術用ロボットで、ダビンチXiは第4世代にあたる最新鋭機です。拡大視野で精密な切除が可能であるため、正確な患部の切除が可能と言われています。 ダビンチSP 当院では、2025年1月に手術支援ロボットの最新機種「ダビンチSP」を大阪で初めて導入しました。 従来の手術支援ロボットとの違いは、従来型のダビンチXiはアームが4本であるのに対し、ダビンチSPはシングルポート(アームが1本)システムであると言えます。従来のマルチポートシステムでは複数個所必要となる切開創(手術のきず)を1つに減らすことで、より侵襲(身体への負担や痛みの軽減)が少なく整容性を向上させたロボット手術が期待できます。さらに、将来はきず無し手術になる可能性があるロボットです。 ロボット手術のメリット 1.身体への負担が少ない(低侵襲性) ・従来の開腹手術(お腹や胸を切る手術)では、大きなきずあとが残ってしまいましたが、ロボット手術はきずあとが小さく、痛みが軽いという特徴があります。またきずあとなどの美容面に優れます。 ・身体の中のきずも小さくできるため、手術時間の短縮や合併症の低減が期待できます。 2.機能性 ・人間の手で生じる手ぶれなどの問題を回避できます。人間の手ではできない作業も可能になるため、より患者へのダメージの少ない治療や、これまで不可能だった治療が可能になります。 ロボット手術の実績、適応・対象疾患 当院は2015年から内視鏡手術支援ロボット・ダビンチによる低侵襲手術を行っています。 安全性や有効性などを確認しながら確実に症例を積み重ねてまいりました。ロボット手術件数の増加により、対象となる疾患も増え、現時点では以下の疾患に適応・対象となっています。 対象疾患(2020年以降、年間400症例以上をキープしています。) 婦人科→準備中 泌尿器科→前立腺癌、腎癌、腎孟癌、尿管癌、膀胱癌、副腎腫瘍 小児泌尿器科→先天性水腎症 呼吸器外科→準備中 消化器外科→食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌 病院長からのメッセージ これからますます高齢者人口は増加していきます。2040年には団塊ジュニアの世代が65歳以上になり、高齢者の人口が最大になるとされています。高齢者は多くの病気を抱えており手術を必要とされる方々もますます増えてきます。高齢者の手術では、がんなどの腫瘍に対するものが多いのですが、高血圧、糖尿病、肺気腫などの病気を併存されている場合が多いため、できるだけ低侵襲で身体に負担の少ない手術をしなければ家に帰れず、回復期の病院などに転院してしばらく療養しなければならなくなってしまいます。 当院では1月8日にロボット手術の最新機種である、ダビンチSPを用いて、大阪で初めて婦人科疾患に行いました。従来の手術ロボットに比べて一つの小さな傷口から複数の道具を挿入して手術操作ができるため、より身体に負担の少ない手術ができます。併存疾患を多く抱えておられる高齢者や、一つの小さな傷でできることから婦人科の患者さん、小児の患者さんに喜ばれるものと考えています。 これからは、ロボット手術も患者さんに合わせて機種を使い分けていく時代になったと思っています。手術を必要とする患者さんにとって、より良い医療の提供ができる時代になったと思います。 担当医からのメッセージ 準備中 ロボット手術を受けるには 手術をご希望の方は、かかりつけ医に相談のうえ下記ページからご予約ください。各科に受診、相談いただく流れになります。 紹介患者さんの診察予約 ※症例によってはダビンチ手術の適応外となる場合もありますがご了承ください。 /* メディアクエリで640px以下の場合に非表示にする */ @media (max-width: 640px) { .sp_none { display: none; } }詳しく見る
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脳神経外科頭蓋咽頭腫頭蓋咽頭腫とは 頭蓋咽頭腫は、脳の正中付近に発生する稀な腫瘍です。視床下部や脳下垂体、視神経などに接して発生します。全脳腫瘍の1〜3%の頻度であり、小児脳腫瘍では5〜10%です。発生年齢に特徴があり、小児期に発生する場合と、成人期に発生する場合があります。 組織学的には良性ですが、しばしば患者さんの寿命を縮める場合があり、良性というよりは低悪性度の腫瘍と見なすべき、と考えられています。ほとんどの場合、嚢胞(袋状の部分)と実質(塊の部分)を含んでおり、嚢胞内はコレステロール結晶を含む濁った液体で満たされています。 頭蓋咽頭腫の臨床症状 通常はゆっくりと発育するので、症状が出てから診断が確定するまでに1年以上かかることも稀ではありません。 頭蓋咽頭腫が視神経を圧迫すると視力低下や視野障害の原因となります。多くの頭蓋咽頭腫の患者さんは、眼科で視野の検査をすると異常が認められます。 また脳下垂体や視床下部などの内分泌器官に影響を及ぼすことにより、さまざまな内分泌障害を来すことがあります。成長ホルモンや、性ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなどの分泌が障害され、小児の患者さんでは成長不全、成人の患者さんでは性機能障害などが認められることがあります。 腫瘍による神経組織の圧迫により中等度から重度の頭痛を認めたり、うつ症状を認めることがあります。 頭蓋咽頭腫の診断 頭蓋咽頭腫は、脳MRIおよび脳CT検査により診断を行います。 これらの画像診断に加えて、糖尿病・内分泌内科で詳細なホルモンの検査を行います。 また、眼科で視力や視野の評価を行います。 状況により、言語聴覚士が高次脳機能障害の有無を検査することがあります。 頭蓋咽頭腫の治療 頭蓋咽頭腫に対して有効な治療方法は、外科的な手術による摘出術と、放射線治療の2種類です。頭蓋咽頭腫は腫瘍であるので、これらの治療の後に腫瘍組織が残存していれば、将来再発する可能性があります。そのため、まず手術による完全な摘出を目標とした治療計画を検討します。状況により手術を2回もしくは3回に分けて行う事もありますが、手術の安全性と治療効果を総合的に判断し、個々の患者さんに最適と思われる治療方法を検討します。一般的に、頭蓋咽頭腫の手術治療はリスクが高いので、全摘出を目指さずに部分的に摘出を行って放射線治療を行う治療計画が用いられる場合があります。当院の治療方針は、安全な範囲で最大限の摘出術を行って、全摘出が得られれば以後は経過観察、もし腫瘍の残存があればガンマナイフ等の放射線治療を追加で検討するという考え方をとっています。 ①手術治療 当院では、開頭による腫瘍摘出術と、内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術の両方を施行しています。頭蓋咽頭腫は、腫瘍の大きさや発生部位、周囲の神経および血管等の重要構造物との関係性などに大きな個人差があるため、開頭による摘出術が有効なのか、内視鏡下経鼻的手術が有効なのかをさまざまな画像診断の所見を元に検討し、手術の方法を判断します。最近は内視鏡下経鼻的手術の割合が増加している傾向にあります。 開頭頭蓋内腫瘍摘出術は、腫瘍にアプローチする部分の頭皮を切開し、開頭を行い、脳の隙間の部分を通って腫瘍に到達し、少しずつ腫瘍を摘出してゆく方法です。 頭蓋咽頭腫は、頭部のほぼまん中に発生するので、前方からアプローチする場合もありますし、後方、側方からアプローチを行う事もあります。 これに対して、内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術は、開頭するのではなく、鼻腔側から内視鏡を用いて頭部のまん中に直接的に到達し、下側から腫瘍を摘出する方法です。 脳や神経を経由しないで、最も直接的に腫瘍を摘出できる利点があり、近年は使用されることが多くなっています。 当院では、開頭手術と経鼻内視鏡手術の両方を施行可能な体制をとっています、個々の患者さんに対して最適な方法を計画します。 ②放射線治療 頭蓋咽頭腫に対する放射線治療として、定位放射線治療(SRS, SRT)や、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)などがあります。これらは、全て当院で施行可能です。外科切除後に病変が残存している場合や、当初は全摘出と考えられた腫瘍が再発した場合などの治療に用いられます。現在の技術では、腫瘍周辺の重要組織への放射線被曝を適正に制限し、起こりえる合併症のリスクを最小限にするように厳密に計算・管理された治療放射線を病変に照射することが可能となっています。 実際の治療 図1 図2 この方は、数ヶ月前からのひどい頭痛と両眼の視力障害で、仕事に支障を来すようになり病院を受診され、MRIにて頭蓋咽頭腫と診断されました。 黄色で示した所に4-5センチ径の頭蓋咽頭腫を認めます(図1、図2)。脳の正中で、視神経や視床下部、内頚動脈などの重要構造物に囲まれたところに腫瘍が発生しています。眼科での検査では軽度の視野障害が認められ、言語聴覚士による高次脳機能評価では高次脳機能障害は認めないとの所見でした。糖尿病・内分泌内科でのホルモン検査では、成長ホルモン、性ホルモンなどの内分泌障害を認めました。 この方に対する治療として、手術による積極的な腫瘍摘出を行いました。 従来であれば、開頭による頭蓋底アプローチを行い可能な範囲の腫瘍を切除するやり方をとっていましたが、開頭ではどうしても摘出が困難な部分(視神経の裏側など)に腫瘍が残存してしまうという問題があるので、近年では4K内視鏡による拡大経蝶形骨洞手術(経鼻的に内視鏡を使用して直接腫瘍に到達する手術法:図3~9)で摘出を行いました。 この方法は、開頭では摘出できなかった神経や血管の裏側の腫瘍に直接到達することが可能なため、全摘出のチャンスが大きくなり手術の安全性も格段に向上しています。 図3(視神経の裏側の腫瘍を下側から露出) 図4(重要な脳組織から腫瘍を慎重に剥離) 図5(剥離された腫瘍が摘出された) 図6(摘出された頭蓋咽頭腫) 図7(摘出後の脳組織、全ての腫瘍が完全に摘出されている) 図8(摘出後の閉創、鼻腔と脳組織を腹部の脂肪などで遮断する) 図9(最後に鼻中隔の粘膜で患部を被覆する) この方は、術後のMRIで腫瘍が全て摘出されたことが確認されました。(図10、図11) 図10 図11 頭痛と視野障害は改善し、通常の社会生活を過ごされています。 ホルモンの低下症に対して、内服でホルモンの補充療法を行いながら経過観察しています。 このように、頭蓋咽頭腫の治療には、外科、内科、小児科、眼科、放射線治療、リハビリテーション、などさまざまな専門領域のスタッフが緊密に連携することが不可欠です、当院では経験豊富なスタッフが、しっかりと患者さんとご家族をサポートします。詳しく見る
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脳神経外科下垂体腺腫 | 脳神経外科特徴 脳下垂体とは、脳の底にぶら下がっている小さな器官です。身体にホルモンを分泌する働きを持っています。ホルモンは全部で8種類あり、身体を正常に保つ上で非常に重要です。 脳下垂体に発生する代表的な腫瘍が下垂体腫瘍と呼ばれる良性の腫瘍です。これは腫瘍自体がホルモンを分泌しないタイプと不適切にホルモンを分泌するタイプにわかれます。 ホルモンを分泌しない腫瘍 ホルモンを分泌する腫瘍 非機能性下垂体腺腫 プロラクチン産生腺腫 成長ホルモン産生腺腫 (先端巨大症・アクロメガリー) 副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫 (クッシング病) 上記すべての腫瘍に共通の症状として、腫瘍によって視神経が圧迫された時に視野の外側が見えにくくなるという症状が生じます(両耳側半盲)。 また下垂体に腫瘍が発生した場合、正常の脳下垂体ホルモンの機能低下が生じることがあります。 この場合は適切に薬による補充療法を行う必要があります。 当院における治療方針 下垂体腫瘍は、脳神経外科による手術だけではなく、様々な科が協力して診断と治療を行う事が重要です。当院では、内分泌内科が術前の下垂体機能の評価や薬物治療の効果判定を行い、耳鼻咽喉科が手術時および術後の鼻内処置を行っています。脳神経外科は外科的な治療方法の検討(内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術・開頭頭蓋内腫瘍摘出術・ガンマナイフ治療)を行い、下垂体機能をできるだけ温存しながら最大限の腫瘍摘出を行います。また術後に内分泌内科による下垂体機能の評価と、必要時に薬物治療の追加を行います。このように円滑な他科連携治療を行う事で、術後のQOL(生活の質)を高く保つ事が出来、早期の社会復帰が可能になります。 下垂体腫瘍に対する様々な手術方法 ①開頭による顕微鏡下腫瘍摘出術 ②顕微鏡による経蝶形骨洞腫瘍摘出術 ③内視鏡下経鼻的下垂体手術 ④手術用顕微鏡 ⑤ハイビジョン内視鏡 ①と②は手術用顕微鏡を用いた手術法で、従来下垂体手術で用いられていた方法です。 現在はハイビジョン内視鏡を用いた③の術式を用いるようになり手術の有効性および安全性がさらに向上しています。 内視鏡下経鼻的下垂体手術について 非機能性下垂体腺腫 この腫瘍は、視神経が腫瘍によって圧迫されて眼が見えにくくなり発症する事が多いので、視神経に対する圧迫を解除する目的で手術治療を行います。安全に摘出できる部分を手術で取り除き、血管に巻き付いた所など摘出にリスクの伴う部分は放射線治療(ガンマナイフ治療)を必要に応じて追加するという方法をとっています。手術直後から眼の見え方は良くなります。一般的に術後の下垂体機能は温存されますが、術前より下垂体機能の低下がある場合などは、必要によりホルモン補充療法をします。全く無症状で偶然に発見される事もありますが、この場合には詳しく検査を行った上で経過観察を選択する場合もあります。 視力障害で発症した非機能性下垂体腺腫、腫瘍が正常下垂体と視神経を強く圧迫している 内視鏡下経蝶形骨洞手術により腫瘍が全摘出され、脳下垂体と視神経が見えるようになっている 術直後より視力障害は正常化し下垂体機能は温存された。術後約1ヶ月で社会復帰となった プロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ) プロラクチンというホルモンが腫瘍により過剰産生されることにより無月経となり、女性側の不妊の原因となることが多い疾患です。この疾患は、ドパミン作動薬という薬の効果が極めて高いため、手術ではなく、内科的治療が第一選択となります。この薬はプロラクチン値を低下させ腫瘍を小さくさせます。腫瘍を完全に消滅させるわけではないので、一定期間内服を継続させる必要があります。薬の効果があまりない、もしくは薬の副作用が強くて内服継続が困難である場合、手術による効果が高いと判断される場合などには手術治療を検討します。 成長ホルモン産生下垂体腺腫(先端巨大症、アクロメガリー) 腫瘍が成長ホルモンを過剰産生し、身体の様々な症状を呈してくる疾患です。緩徐に発症するために長い間気付かれずに放置されている場合があります。手足が大きく、分厚くなり顎や額が突出します、唇や舌が肥大して声が低くなります。高血圧や糖尿病、脂質異常症、心臓病、脳卒中などを発症しやすくなり、平均寿命が短くなります。このため積極的な治療が必要です。 手術による腫瘍摘出術が治療の第一選択です。完全な腫瘍組織の摘出により根治が期待できます。全摘出できるかどうかは腫瘍の大きさ、進行度によって異なります。全摘出ができない場合であっても可及的に腫瘍組織を摘出しておく事がその後の治療効果に影響します。手術治療の後で、必要があれば薬物治療(ソマトスタチンアナログなど)や放射線治療(ガンマナイフ)などを検討します。 他の下垂体腫瘍と同様に、難病指定疾患で治療が難しいと考えられていますが、当科では外科治療および内科治療ともに、最先端の治療を受けて頂く事が可能です。 ACTH産生下垂体腺腫(クッシング病) ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンが腫瘍により過剰産生される疾患です。ホルモン異常により顔が丸くなる(満月様顔貌)や、体幹部が太く手足が細くなる(中心性肥満)などの特徴的な症状を示し、体毛が濃くなり、にきびが増えて、皮膚の色素が濃くなってまだら模様になってきます。病気が進行すると、筋力低下、易感染性を発症します。高血圧、糖尿病、脂質異常症や骨粗鬆症などの生活習慣病と類似した合併症を来します。 この腫瘍はMRIなどの画像診断で写らない事も多いため、腫瘍がどこにあるのかを詳細に調べる事が非常に重要です。わずかでも取り残しがあると将来的に再発する可能性が高いため、できるだけ確実に腫瘍組織を全摘する方法をとります。 手術による全摘が困難な場合には過剰なホルモン産生を抑制する薬物療法や、ガンマナイフ治療を考慮します。 (左)急激な視力障害で発症した下垂体腺腫、腫瘍による視神経の圧迫を認める。 (中)内視鏡下経蝶形骨洞手術により全摘出の状態となった。視力は発症前の状態まで回復した。 (右)ハイビジョン内視鏡による摘出中の光景、腫瘍組織と周辺組織との境界が明瞭に区別されている。詳しく見る
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糖尿病・内分泌内科内分泌(学)とサイエンスが大好きな、あるいは苦手だけど興味があるみなさんへ内分泌内科・内分泌学とサイエンスが大好きな、あるいは苦手だけど興味があるみなさんを歓迎します! 大阪市立総合医療センター内分泌内科は,2014年(平成26年)4月に糖尿病センターを糖尿病・内分泌センターへと拡大発展させることに伴い,専門性を高めるために新たに開設されました。以後,内分泌領域においてより高度な専門性を有する医療を提供するとともに,糖尿病・内分泌センターとして診療科間で連携をとりながら幅広い疾患に対応しています。 生体がさまざまな環境の変化に対応して,一定の状態を保って生存を維持する現象を恒常性といいます。ホメオスタシス(ギリシャ語)ともいい,血液の性状や体温調節などがその例で,多少の変動があっても一定の範囲に収まるように調節されています。内分泌(系)はこの恒常性の維持に神経(系),免疫(系)とともに非常に重要な役割を果たしています。 恒常性を保つため,ホルモンは過不足がないように常に全身状態に応じて必要量が分泌されるように巧妙に調節されています。その代表がネガティブフィードバック機構で,ほかにはコルチゾールや成長ホルモンのように,リズムをもって分泌されるホルモンもあります。この巧妙な調節機構が何かしらの理由で狂う,破綻するとホルモン分泌異常という形で内分泌疾患を発症します。内分泌疾患は,その原因が自己免疫,腫瘍,炎症,血流障害,遺伝子異常(先天性)など,多彩であることが特徴です。 内分泌疾患は稀少疾患と言われていますが,必ずしもそうではありません。糖尿病,高血圧症,脂質異常症,骨粗鬆症など生活習慣病の原因となっていたり,最近では,これまで肥満が原因として治療されてきた高血圧症患者の中に原発性アルドステロン症患者が多く存在することが示唆されたりしています。悪性腫瘍など種々の疾患に対する治療法が進歩していますが,それらの治療に用いられる薬物や放射線治療がホルモンの分泌に影響を与え,治療が必要になることもあります。また,内分泌疾患は非特異的な症状,徴候を呈することが多く,これまではっきりと診断がつかなかったり他疾患として治療されていたりしたものが実は内分泌疾患であったということもあります。このように,実は内分泌疾患はごく身近なところに存在している可能性があり,さまざまな病歴,症状,徴候,身体所見を手がかりに的確に診断,治療することにより患者さんのQOLを改善し,生命予後を維持・改善できるところが内分泌診療の醍醐味です。内分泌内科(学)は症候学,診断学にもつながり,まさに「全身を診る」内科と言っても過言ではありません。 大阪市立総合医療センター内分泌内科は,以下に挙げるような強みを有しており,みなさんの興味,要望に応えることができます。 屈指の症例数を誇り,多種多様な内分泌疾患の診療を経験できる 経験豊富なスタッフによる指導,教育ができる 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医,甲状腺専門医,臨床遺伝専門医を取得できる(糖尿病・内分泌センターとして,それぞれが極めてレベルの高い診療を行っており,糖尿病症例も十分に経験できる) さまざまな専門性(サブスペシャリティ)を有する学会,研究会に参加,発表し勉強できる その気になれば臨床研究もできる 進路について色々な方向性で相談・対応できる 内分泌内科開設以降,年を追う毎に患者数は増加し,最近は年間五百数十名の外来初診患者(他の医療機関からの紹介,もしくは院内他科からの紹介)と百数十名の入院患者を受け入れています(具体的内訳,推移は「主な疾患・検査成績」を参照下さい)。内分泌疾患の症例数としては大阪ではトップクラスで,大学病院にも匹敵する症例数を誇る,関西圏でも有数の病院です。疾患のバリエーションも非常に幅広く,ほぼ全ての内分泌領域の患者さんの診療にあたっており,いわゆる稀少疾患とされている範疇に入る疾患や患者数が少ない領域,疾患についても多くの診療を行っています。 下垂体疾患に関しては,当院脳神経外科には内視鏡下経鼻的下垂体手術,放射線治療(ガンマナイフ)をそれぞれ専門とする経験豊富な脳神経外科医がいずれも診療に従事しており,検査,手術,放射線治療(ガンマナイフ),内科的治療を全て当院で一貫して行うことができます。先端巨大症,クッシング病などの下垂体機能亢進症ならびに下垂体機能低下症の診断に必要不可欠な内分泌学的負荷検査を積極的に行っており,CRH・TRH・LHRH負荷試験やGHRP-2負荷試験などの種々の負荷検査に加え,視床下部-下垂体-副腎系の予備能評価や成長ホルモン分泌不全症の診断に重要であるインスリン低血糖検査も安全性を担保しつつ積極的に行っています。 甲状腺疾患に関しては,バセドウ病など甲状腺機能亢進症や橋本病,甲状腺機能低下症などの診療,結節性病変に対する検査[超音波検査,穿刺吸引細胞診(これらの検査については当科分のみならず病院全体分を当科で担当しています)],診療ならびに,甲状腺眼症のステロイドパルス治療(+放射線治療)を行うとともに,バセドウ病治療ならびに甲状腺分化癌全摘術後の外来アブレーションを目的としたアイソトープ治療を行っています。アイソトープ治療については,2021年度に設備増強により131I投与可能量が増量し,治療可能患者数が増加しました。 副腎疾患に関しては,原発性アルドステロン症に対するカプトプリル負荷試験や生理食塩水負荷試験などの内分泌学的負荷検査を行うことに加え,放射線診断科とともに副腎静脈サンプリング検査を行い,治療方針を決定しています。クッシング症候群や褐色細胞腫に対しては,内分泌学的検査,核医学検査を行うとともに,手術を安全に行うために術前,周術期管理を行っています。また,術後にも迅速ACTH負荷試験などの内分泌学的検査を行い,内分泌学的に寛解・治癒が得られたかの評価,残存副腎予備能評価を行うことにより,術後の診療方針を決定しています。核医学検査については,2021年度に機器更新によりSPECT/CT装置が導入され,より精度の高い診断が可能になっています。 副甲状腺・骨系統疾患も症例数が増加しています。原発性副甲状腺機能亢進症に関しては,内分泌学的検査,画像診断(超音波検査,核医学検査等)による診断,合併症評価を行い,治療適応を決定しています。治療薬の増加により治療方法の選択肢が増えた骨粗鬆症については,DXA法による骨密度測定,内分泌疾患による二次性骨粗鬆症の除外等を行った上で,それぞれの患者さんに適した治療を行っています。もちろん,内分泌疾患が基礎疾患にある場合は,その検査,治療を行うことはいうまでもありません。 そのほか,原発性腺機能低下症などの性腺疾患やインスリノーマなどの内分泌腫瘍,遺伝性疾患などの,いわゆる稀少疾患とされている範疇に入る疾患や患者数が少ない領域,疾患についても多くの検査,治療を行い,全ての内分泌領域において幅広い診療を行っています。 本院は全国で15施設しかない「小児がん拠点病院」の一つに指定されています。加えて,「地域がん診療連携拠点病院」に指定されており,「がん診療連携拠点病院」と「小児がん拠点病院」両方の指定を受けた,大学病院を除くと全国で唯一の病院です。近年の治療の進歩により小児がんは治る疾患になってきました。その一方で,成⻑や時間の経過に伴い治療の影響による合併症(晩期合併症)の問題が指摘されており,最も多い合併症が内分泌異常と言われています。大阪市立総合医療センター内分泌内科では,当院の小児系診療科や他の医療機関と連携して,小児期医療から成人期医療へのトランジション後のホルモン補充療法や全身管理などシームレスな診療を行っています。 甲状腺機能異常合併妊娠管理を産科との併診により行うなど,他科患者の内分泌管理も併診により行っています。また,甲状腺クリーゼ,粘液水腫性昏睡などの内分泌救急疾患も救命救急部と併診し診療にあたっています。 大阪市立総合医療センター内分泌内科での研修は,当院の専門研修プログラムに則って他の内科分野の研修を行いつつ,内分泌,代謝,糖尿病領域の研修を行って内分泌代謝学の土台を固めた上で,上述のようなさまざまな内分泌領域の患者さんの診療を経験することにより内分泌領域の専門性を高めてスキルアップを図り,内科専門医,内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医取得を目指します。学会発表についても積極的に行っており,内科学会,内分泌学会の総会・地方会,内分泌代謝Update,甲状腺学会,臨床内分泌病理学会,間脳下垂体腫瘍学会などで発表することができます。また,臨床研究センターによるサポート体制もあり,チャレンジ精神があれば臨床研究を行うこともできます。 大阪市立総合医療センターは全54診療科という全国屈指の診療科数を有し,大学病院のように各分野のスペシャリストが診療にあたる一方で,大学病院とは異なり各診療科間の敷居は低く,非常に恵まれた環境で診療,研修することができることも,大きな利点です。 さあ,私たちと一緒にホルモンが織りなす美しく不思議な世界に一歩足を踏み入れてみませんか! お問い合わせ先 教育研修センターもしくは内分泌内科 金本 巨哲まで https://www.osakacity-hp.or.jp/byouin/resident/詳しく見る
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整形外科スポーツ整形外科・関節鏡手術 | 整形外科スポーツ整形外科・関節鏡手術の紹介 脊椎外科 関節外科 股関節疾患 手外科 スポーツ整形外科・関節鏡手術 当科で治療を行っている主な疾患 1)膝前十字靭帯損傷 膝前十字靭帯はスポーツ活動中や転倒・事故などで受傷します。スポーツ選手とっては、選手生命を脅かす最も重大な外傷です。放置すれば、スポーツ復帰が叶わないだけでなく、二次的な半月板、軟骨損傷(変形性膝関節症)を来します。受傷前のスポーツレベルに復帰するには手術が必要です。スポーツをされない方でも、日常生活で膝崩れを自覚する場合も手術をお勧めします。手術は関節鏡を用いて行い、ハムストリング腱を用いた解剖学的二重束再建や、最近米国で注目されている、大腿四頭筋腱を用いた再建術をいち早く導入しております。術後は、4-6週で松葉杖が取れ、3-4ヶ月でジョギング、6ヶ月でジャンプ動作を行い、スポーツ完全復帰は8-10ヶ月以降で許可しております。 2) 膝半月板損傷 スポーツでの外傷や、加齢的変化による後角損傷、小児の外側円板状半月損傷が主な治療対象です。当科では可能な限り縫合を行い、半月板機能の温存に努めます。中高年の水平断裂は頻度が多いですが、変形性膝関節症や後角損傷に合併する病態では手術の対象となります。変性が強いものは骨髄血血餅を併用した縫合を行い治癒促進を図ります。半月板縫合後のリハビリは1ヶ月半の松葉杖歩行、3ヶ月以降でジョギングを開始し、6ヶ月以降にスポーツ復帰を許可しています。 3) 反復性膝蓋骨脱臼 「お皿が抜ける」といった症状は膝蓋骨と大腿骨をつなぐ靱帯が緩むことで生じます。初回脱臼後半数以上が反復性に移行するとの報告もあり、注意が必要です。当科では自家半腱様筋腱を用いた内側膝蓋大腿靱帯再建術を行っており、Q-angleが強いものには脛骨粗面移行術も併用しています。術後は、1ヶ月間の松葉杖歩行、3ヶ月以降でジョギングを始め、6ヶ月以降でスポーツ復帰を許可しています。 4) 軟骨損傷(離断性骨軟骨炎、変形性膝関節症) 離断性骨軟骨炎は膝や肘、足関節の骨軟骨の剥離骨折です。安定期や骨端線開存例では、ドリリング(骨穿孔)法で自然治癒を促進したり、骨軟骨片を再固定します。不安定病巣の場合は膝の健常な部位から骨軟骨柱を移植し、広範囲な病変には、再生医療の自家培養軟骨移植を行います。膝や足関節では3ヶ月以降にジョギング、6ヶ月以降でスポーツ復帰を許可しています。野球肘に対する骨軟骨移植の場合は、術後4ヶ月月からキャッチボールを始め、8ヶ月でマウンドからの投球を行います。また、O脚変形を来した変形性膝関節症には高位脛骨骨切り術にてX脚に矯正し内側への荷重ストレスを減らします。 5) 反復性肩関節脱臼 スポーツや転落などのけがにより発生します。多くは反復性に移行し、「肩が抜ける」感覚のためにスポーツ活動だけでなく日常生活でも制限を強いられます。当科では関節鏡での関節唇修復術(バンカート修復術)を行い、骨欠損の程度や競技種目・レベルによっては烏口突起移行術などの補強術を併用します。術後は3週間の装具固定を行い、3ヶ月以降に筋力トレーニング開始、6ヶ月でのスポーツ復帰を目標にしています。 6) 肩腱板断裂 中高年の方に多く、けがもしくは長年の酷使による摩耗により生じます。リハビリや投薬で痛みや腕が上がりにくいといった症状が取れない場合は関節鏡手術で断裂部を縫合します。術後は4-6週間の装具固定を行い、その後リハビリテーションにて可動域や筋力を改善させ、術後6ヶ月で運動制限なしを目標としています。 7) 股関節唇損傷(大腿骨寛骨臼インピンジメント) スポーツ、仕事で繰り返すしゃがみ込み動作が多いと、股関節の安定性に寄与する関節唇が損傷します。投薬やリハビリなどの保存療法を行っても痛みが取れない場合は,関節鏡を用いて関節唇の縫合と大腿骨頚部の骨隆起部切除を行います。大阪市内でこの手術を行える施設は限られています。術後は4週間装具固定を行い、3ヶ月以降ジョギング、6ヶ月以降スポーツ復帰を許可しています。 1. 手術療法 自分の組織で治す、より解剖学的、生体力学的な関節温存再建手術を目指します。 靱帯断裂に対しては、自家腱での再建術を行います。 半月板も可能な限り縫合し温存します。 軟骨損傷も軟骨移植や矯正骨切術を行い、人工関節でない、より生理的な膝を目指し、 アクティブライフを取り戻すように努めます。 術後疼痛に関しても、オピオイドカクテル療法を導入し、疼痛を最小限に抑え、早期のリハビリを可能にします。 また、最新の関節鏡カメラシステムを導入し、より低侵襲な手術が可能となり、 早期退院を目指します。 主な手術の平均入院期間 半月板手術 数日~7日 膝前十字靱帯再建 7~10日 肩関節脱臼 数日~7日 肩腱板断裂修復 14日前後 股関節唇修復 14日前後 2019年度手術件数 124例 ➤膝関節鏡 105件 関節鏡下靱帯再建術(主に前十字靭帯再建) 44件 関節鏡下靱帯半月板縫合、部分切除、円板状半月板 27件 軟骨手術(自家培養軟骨移植含む) 8件 ➤肩関節鏡 8件 関節鏡下バンカート修復術(反復性肩関節脱臼) 6例 関節鏡下腱板縫合 2例 ➤足関節鏡 5件 ➤肘関節鏡 2件 ➤股関節鏡 1件 2. 保存療法 加齢や廃用、フォーム不良をきっかけに関節拘縮(タイトネス)や筋力低下に伴う痛みの 場合には、積極的な理学療法、運動療法を指導しています。 具体的には、理学療法による圧痛点ストレッチ 下肢、体幹の筋力訓練(ジャックナイフストレッチ) 肩関節には積極的な肩甲骨ストレッチ詳しく見る
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脳神経外科神経膠腫(グリオーマ) | 脳神経外科特徴 この疾患には以下が含まれます。 毛様性星細胞腫 びまん性星細胞腫 乏突起神経膠腫 退形成性星細胞腫 神経膠芽腫 神経膠肉腫 大脳神経膠腫症 脳実質に存在する神経膠細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍です。この中には上に示すように悪性度が高いものからあまり高くないものまで色々な種類の腫瘍が含まれています。腫瘍の発生した部位、腫瘍組織の悪性度などにより様々な神経症状を呈します。神経膠腫に対する治療は、第一に開頭による腫瘍摘出術を行って、可能な限り腫瘍組織を摘出し病理診断を確定させます。この際に脳機能を温存しながら徹底的な腫瘍の摘出を行うために様々な工夫をします(術中病理診断、覚醒下手術、術中蛍光診断、術中神経生理モニタリング、ナビゲーションシステムなど)。摘出した腫瘍組織から病理診断を行うと同時に腫瘍組織の遺伝子変異の解析を行い、腫瘍の悪性度評価と化学療法などの治療効果予測などを行います。これらの情報を元に長期的な治療計画をたてて腫瘍の制御を行います。 当院における治療方法 ①開頭腫瘍摘出術、②局所放射線治療、③抗がん剤による化学療法、④経過観察、のいずれかもしくはこれらの組み合わせにより治療を行います。神経膠腫では、まず手術による腫瘍組織の摘出を最大限に行うことが最初の目標です。脳に発生した腫瘍を徹底的に摘出する事と、脳機能を確実に温存する事は、互いに相反することですが、当院ではこれらをともに達成するため、覚醒下手術、術中ナビゲーションシステム、術中神経生理モニタリングシステム、術中病理診断、術中蛍光診断、等を使用して手術治療を行っております。摘出された腫瘍組織で病理組織診断を確定させ、また腫瘍組織の遺伝子変異解析を合わせて行い、これらの情報から最良の放射線化学療法の検討を行います。 神経膠腫は、四肢の麻痺や失調症状、失語症、記銘力障害、てんかんなどの神経症状をきたす事がありますが、当院ではこれらの症状に対して、早期から理学療法、作業療法、言語聴覚療法による機能回復訓練を実施します、医療ソーシャルワーカーや地域医療施設との連携の元に早期の社会復帰へ向けた完全なチーム医療を提供します。また、痛み、精神的な不安感、抑うつ症状などに対して緩和医療科、リエゾンチームとの緊密な連携をとって、これらの辛い症状を軽減させるように努めています。 左前頭葉発生の神経膠芽腫を認める、腫瘍は言語野に存在しているため、手術による失語症を来す可能性がある 覚醒下開頭腫瘍摘出術を行い、腫瘍を全摘出した。術後に失語症は認めなかった。 左の側頭葉から内側の島回にかけて腫瘍(びまん性星細胞腫)を認める 開頭腫瘍摘出術を行い、腫瘍を95%以上摘出した。手術により術前認めていた痙攣発作は消失し、新たな神経脱落症状は認めなかった 覚醒下開頭頭蓋内腫瘍摘出術 覚醒下開頭頭蓋内腫瘍摘出術について 膠芽腫に対する腫瘍治療電場療法 膠芽腫に対する腫瘍治療電場療法について詳しく見る
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消化器内科食道がん、胃がん、直腸がんの最新手術食道がん、胃がん、直腸がんの最新手術手術支援ロボット『ダヴィンチ』 手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは 近年、消化器外科領域において、低侵襲治療が急速に広がり、創が小さな腹腔鏡手術は、一般的な手術方法となっています。そして当院に導入となった、最先端医療機器である手術支援ロボット「da Vinci Surgical System」による腹腔鏡手術、いわゆるダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。 執刀する医師が患者さんに触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います(図1 配置図)。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートをロールインし(図2)、患者さんに接続した後に、執刀医は、サージョンコンソールに座ってカメラからの体内画像を見ながら、手足を使って遠隔操作して手術を行います(図3)。 ロボット支援手術の特徴 「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3D画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子やハサミは、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さい鉗子を用いて非常に細かな作業を正確に操作ができる特徴を有します(図4)。 胃がんのロボット支援手術 胃癌は、本邦で罹患(りかん)数は1位、死亡数は肺癌、大腸癌に次いで3位の癌です。遠隔転移を認めない場合や内視鏡で切除できる早期癌以外の標準治療は外科手術です。従来は開腹手術が行われていましたが、現在は、腹部に約1cm程度の穴を数か所あけて行う腹腔鏡手術が普及しています。腹腔鏡手術の利点は、手術創が小さいことによる術後の痛みの軽減、美容上の美しさ、より早い術後回復、より短い入院期間、などが挙げられます。しかし、腹腔鏡手術は、内視鏡手術用の細長い「かんし」と呼ばれる器具をポートと呼ばれる穴から挿入し、テレビモニターを見ながら手術操作を行います。ときに高度な技術が必要になることがあり、進行癌の場合などは、癌の根治性の低下や術後合併症の増加などが報告されています。そこで、近年、登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した胃癌手術です。ロボットの手は人間の手以上に関節の可動域が大きく、より繊細な動きが可能となり、腹腔鏡手術より安全で確実で合併症の少ない手術が行えるようになりました。特に従来の腹腔鏡下胃癌手術ではその操作性の悪さから膵臓へのダメージが危惧されていましたが、ロボット支援手術では多関節鉗子により膵臓への圧迫を大幅に減らした手術することが可能になります(図5)。そのおかげで術後の膵液漏(膵臓周囲のリンパ節郭清の影響で膵臓周囲から膵液が漏れること)などの合併症の頻度が少なくなります。また手術の創部も小さいことから、術後の痛みも軽減し整容性も良好です(図6)。そのメリットを生かして、胃癌に対するロボット支援手術が、海外、特に韓国では非常に普及しています。当院では、ロボット手術を多数行っている韓国の延世(よんせい)大学病院でトレーニングを受けた医師が、ロボット支援手術を行っています(図7)。2021年12月までに204人の患者さんにロボット手術を施行し、平均手術時出血量30mlと、少ない出血量で手術が可能となり、術後、平均11日間で退院されました。またロボット手術の比率も上昇し、2020年には、胃癌の87%にロボット手術を行いました(図8)。我々の施設の成績が、米国の論文に掲載されました(図9)。 当科では、今後も積極的にロボット手術を行い、多くの患者さんにその恩恵を受けて頂きたいと考えています。 食道がんのロボット支援手術 食道がんは、遠隔転移を認めない進行がんの場合や内視鏡で切除できる早期がん以外の標準治療は外科手術です。手術を行う場合、従来は開胸手術が行われていましたが、胸壁の破壊を最小限に抑えるために、胸部に約1cmの穴を4か所あけて行う胸腔鏡手術が普及しています。胸腔鏡手術の利点は、手術創が小さいことによる術後の痛みの軽減、美容上の美しさ、より早い術後回復、より短い入院期間、などが挙げられます。しかし、食道がんに対する胸腔鏡手術は、内視鏡手術用の細長い「かんし」と呼ばれる器具を肋骨と肋骨の間に留置したポートと呼ばれる穴から挿入し、テレビモニターを見ながら手術操作を行います。高度な技術が必要になることがあり、進行癌の場合などは、癌の根治性の低下や術後合併症の増加などが報告されています。そこで、近年、登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した食道がん手術です。ロボットの手は人間の手以上に関節の可動域が大きく、より繊細な動きが可能となり、胸腔鏡手術と同じ創(図10)で、胸腔鏡手術より安全確実で合併症の少ない手術が行えるようになりました。食道がんは、声を出す際の声帯を動かす反回神経の周囲にリンパ節転移を起こしやすいことがわかっています。従来の胸腔鏡下食道がん手術では、反回神経へのダメージが危惧されていましたが、ロボット支援手術では多関節鉗子により反回神経への影響を大幅に減らした手術することが可能になります。そのため術後の反回神経麻痺(声がれ)などの合併症の頻度が少なくなる可能性があります。そのメリットを生かして、食道がんに対するロボット支援手術が、海外、特に韓国では非常に普及しています。当院では、ロボット手術を多数行っている韓国の延世(よんせい)大学病院でトレーニングを受けた医師が、2018年4月から、ロボット支援下食道がん手術を開始し、2022年8月までに54名の患者さんに手術を行い、術後経過も良好でした(図11)。 直腸がんのロボット支援手術 ロボット支援手術は、小さくあけた穴から小型カメラや治療器具を入れて手術を行うことは腹腔鏡手術と同じです。しかし、腹腔鏡手術で使用する器具と異なり、ロボットの手術器具の先端は指のように自由に曲げることができるため、術野での繊細な操作が可能となります。また、3Dカメラで立体的な体内の画像を得られ、術者は患部を拡大してみることができます。腹腔鏡手術でも3Dカメラは使用可能ですが、ロボットの場合、手ぶれがなく、カメラが非常に安定しているため、狭い骨盤内であっても術野に近接しても安定した画像が得られるという利点があります。つまり、従来の開腹や腹腔鏡手術と比べてより繊細で精密な手術が施行できるということです。繊細な手術を行うことにより根治性、肛門・排尿・性機能などの機能温存の向上が期待できます。特に直腸に密接する骨盤神経叢(排尿や性機能を担っている神経)を繊細な操作で丁寧に温存することにより、術後の排尿・性機能の保持や早期の回復が期待され、後遺症の少ない、体に優しい手術が可能となります。また、従来の腹腔鏡よりも骨盤深部での手術操作が可能になることにより、従来よりも肛門に近い腫瘍であっても肛門を温存できる可能性が高くなります。直腸がんに対するロボット支援手術件数は著明に増加し、2021年12月までに133名の患者さんにロボット手術を行い、良好な成績をおさめています(図12)。詳しく見る
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婦人科婦人科ロボット手術外来| 婦人科手術支援ロボット『ダヴィンチ』 大阪市立総合医療センター婦人科 および婦人科 徳山 治が関西初、全国8番目のロボット手術症例見学施設および手術指導医として認定されました。 ロボット手術(ダヴィンチ手術)を実施するには、定められたトレーニングを受ける事が必須となっています。その一つにダヴィンチ製造販売元であるIntutive Surgical社による認定を受けた施設で、認定を受けた手術指導医によるロボット手術の指導を受け認定書を授与される事が必須となっています。 この手術症例見学施設および手術指導医は『手術経験が豊富で、高度な技術を有し、安全性に優れた施設および医師』が認定されます。 大阪市立総合医療センター婦人科 および 婦人科 徳山 治が関西初、全国8番目のロボット手術症例見学施設および手術指導医として認定されました。 徳山医師から川西医師への認定書授与および認定書 『婦人科ロボット手術外来について』 2018年4月1日より婦人科ロボット手術外来(担当:徳山 治)を開始しています。 担当医は、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医・技術審査委員、日本婦人科腫瘍学会専門医、ロボット手術認定医、日本ロボット外科学会専門医で、良性腫瘍から悪性腫瘍に対する低侵襲医療に、豊富な経験と知識を備えており、患者さんに安心して手術に臨んでいただけると思っております。 世界では婦人科が最もロボット支援下手術を実施しております。 日本も数年後には、婦人科が最もロボット支援下手術を実施していると思われます。今後も『痛みの少ない、小さな傷で、早期の術後回復』をモットーに、多くの患者さんにロボット支援下手術を提供できるように、取り組んでいきます。 適応疾患 ・良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症などの子宮全摘出術) ・早期子宮体癌 ・子宮頸癌 ・今後性器脱に対する手術を実施予定です。 子宮筋腫について ①性成熟期女性に多くみられ、30歳以上の約30%にみられます ②症状:過多月経、月経困難症、圧迫症状、疼痛 ③診断:超音波検査やMRI検査 ④治療:薬物療法、手術療法として筋腫核出術、子宮全摘出術など 手術希望またはロボット手術に関する相談希望の方へ 木曜日または金曜日の腹腔鏡外科または婦人科ロボット手術外来(共に担当:徳山 治)を受診してください。 外来担当医(木曜日と金曜日) 徳山 治 『手術件数』および『手術実施医』 『当院でのロボット支援下手術件数』 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 良性子宮腫瘍 14 63 116 135 子宮体癌 1 3 5 21 9 子宮頸癌 1 2 0 0 0 計 2 19 68 137 144 『婦人科でのロボット手術実施医』 氏名 役職 取得年月日 資格 徳山 治 婦人科副部長 2017年2月20日 日本ロボット外科学会専門医(国内B級) ロボット手術指導医(メンター) 村上 誠 婦人科医師 2019年4月19日 川西 勝 婦人科医師 2020年1月17日 『ダヴィンチXi とその特徴』 3Dの高画質および拡大視野を持ち、鉗子は7つの関節機能をもっているため、腹腔鏡下手術の欠点を克服しています。詳しく見る
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消化器内科内視鏡による消化器がんの手術;内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) | 消化器内科内視鏡を用いてお腹を切らずに行う治療は経験豊富なスタッフのもと、最新の治療機材も導入しながら安全で質の高い内視鏡治療を提供します。また、ほとんどの内視鏡治療は静脈麻酔や鎮痛剤を用いて行います。 ここでは当科で行なっている内視鏡検査・治療の一部をご紹介いたします。 ・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 対象疾患:早期食道癌、早期胃癌、早期十二指腸癌、早期大腸癌 適応となるのは癌が消化管壁の表面にとどまり、リンパ節転移の可能性が非常に低い病変です。そのような早期癌に対しては、治療前に内視鏡検査やその他画像検査などで癌のサイズ、進行度を精密に評価した上でESDを行います。当院では年間約250件のESDを行っております。 治療方法 治療は静脈麻酔下(食道ESD、十二指腸ESDは全身麻酔下)で行います。治療時間は病変の大きさや場所によって異なりますが、15分〜2時間程度です。当院では術後症例や治療後再発症例などの治療困難例も数多く行なっています。術後は問題なければ2日後より食事を再開します。入院期間は1週間程度です。治療後は定期的に内視鏡検査での再発チェックを行います。 色素散布や拡大内視鏡観察等で病変の範囲を確認する(写真1,2) 青い色素を混ぜた生理食塩水やヒアルロン酸を粘膜下層に注入し、病変周囲を切開する(写真3) 注入液で青く、分厚くなった粘膜下層を1.5-2mmの電気メスで剥離していく(写真4) 剥離終了後、残存した血管を焼灼し、病変を回収する(写真5) 回収した検体は広げて固定し、病理検査に提出し分化度や深さを診断する(写真6) 早期胃がん ESD前 写真1 写真2 ESD中 [caption id="attachment_30912" align="alignleft" width="252"] 写真3[/caption] [caption id="attachment_30911" align="alignnone" width="291"] 写真4[/caption] ESD後 [caption id="attachment_30910" align="alignnone" width="294"] 写真5[/caption] [caption id="attachment_30914" align="alignnone" width="244"] 切除標本(写真6)[/caption]詳しく見る
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泌尿器科手術支援ロボット「ダヴィンチ」について | 泌尿器科前立腺がん・腎がん・膀胱がんの最新手術 手術支援ロボット『ダヴィンチ Xi』 前立腺がん、腎がん、膀胱がん、腎盂尿管移行部狭窄に 対するロボット支援手術に、健康保険が適応されます 2015年、当院泌尿器科で、前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除手術を開始しました。以後、2016年に、腎がんに対するロボット支援腎部分切除術を開始し、2018年に、膀胱がんに対するロボット支援膀胱全摘術を開始しました。また、2020年から、腎盂尿管移行部狭窄に対するロボット支援腎盂形成術を開始しました。いずれも、健康保険が適応されます。 前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘術(RARP)について 前立腺がんの治療には、多くの種類があります。手術治療だけでなく、放射線治療として、小線源療法や外照射療法などがあります。当院泌尿器科では、放射線科と定期的にカンファレンスを実施し、患者さんそれぞれの背景や希望をふまえて、最も適切な治療を提供しています。2020年末までに、225人の前立腺がん患者さんに対し、ロボット支援手術(RARP)を実施してきました。従来の手術に比較し、出血や尿失禁が少なく、入院日数も短縮し、体により優しい治療が提供できています。 腎がんに対するロボット支援腎部分切除術(RAPN)について 腎がんに対するロボット支援手術(RAPN)は、7cm未満の腫瘍であれば、適応となります。血流の豊富な腎臓に対する部分切除術は、比較的リスクの高い手術で、さらに腫瘍の部位や深さにより、手術の難易度(ネフロメトリースコア)が変化します。当科では2020年末までに、125人の腎がん患者さんにロボット支援手術を実施してきました。これまでの手術では、腎全摘を選択せざるをえなかった難易度の高い腎がんに対しても、腎部分切除、すなわち腎温存療法を提供しており、特に腎機能低下のある患者さんに、恩恵を実感していただいています。 また、当科では術前に、腎がんの部位や深さ、血管や尿路との位置関係を把握するために、3DCT解析(Synapse Vincent®)を実施しています。これにより、術前に詳細なシミュレーションが可能となり、手術の安全性を高めることが可能となりました。 3DCT解析像 (左:腫瘍は赤色で表示、右:腫瘍摘除後をシミュレーション) さらに、術中は、体腔内エコープローベにより、腫瘍の位置を把握し、部分切除を実施していきます。 術中体腔内超音波検査 (左:体腔内プローベ、右:超音波検査での腫瘍影(矢印)) 膀胱がんに対するロボット支援膀胱全摘術(RARC)について 膀胱がんに対するロボット支援手術(RARC)を、2018年4月より、新たに開始しています。2020年末までに、37人の患者さんに実施してきました。膀胱がんに対する全摘術は、尿路変向術(尿の通路を再建する手術)を伴います。尿路変向術には、尿管皮膚ろう、回腸導管、新膀胱造設術といった種類があります。 尿路変向術それぞれに、手術の所要時間や、腸管を利用するか否か、ストーマを作成するか否かといった違いがあるので、患者さんごとの背景、希望に応じて、決定していきます。また、尿路変向術については、最先端の術式である、ロボット支援体腔内尿路変向術(ICUD: intracorporeal urinary diversion)を実施しています。これは、手術の行程全てを、お腹の中(腹腔内)だけで実施する術式です。これにより、従来の、開腹による尿路変向術に比較し、輸血やイレウス(腸が麻痺する)といった合併症が減少しています。 診療実績 2020年のロボット支援手術の診療実績は、前立腺がん(RARP)35例、腎がん(RAPN)31例、膀胱がん(RARC)15例でした。また、2020年から、腎盂尿管移行部狭窄に対するロボット支援腎盂形成術も開始しています。 腎盂尿管移行部狭窄(水腎症)に対するロボット支援腎盂形成術について 詳しくはこちら詳しく見る
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小児泌尿器科小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術最新で高度な医療の提供を 小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術を、通常手術として実施しています (図1) (図2) (図3) ①手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは ②ロボット支援手術の特徴 ③ロボット支援手術の利点 ④小児水腎症に対するロボット支援手術 ⑤ロボット支援手術の今後 ①手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは 各診療科において低侵襲治療が近年急速に広がり、手術方法としても、創が小さな腹腔鏡手術は当院ではごく一般的な手術方法となっています。当院に導入となった、最先端医療機器である手術支援ロボットによる腹腔鏡手術、いわゆるダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。 執刀する医師が患児に直接触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートは患者さんに接続され実際に手術操作が行われる”腕”の部分です(図1、1歳患児の術中、ドッキング後)。人の眼の役割をするカメラと手の役割をする3本のロボットアームを持っています。患児の身体に小さな穴をいくつか開け、各アームに接続されたカメラや手術器具が体内に挿入、サージョンコンソールの術者からの指令で各器具が外科医の手の動きを忠実に再現し手術が進行します。サージョンコンソールは、執刀医が座ってカメラを通して体内の画像を見ながら、手足を使って鉗子類を操作するところです(図2)。ビジョンカートは、カメラからの画像の収集、処理をおこなうところです。当院で手術受けられた4歳男児の手術後3か月 (図3)での創部写真を示します。臍より足側のみに創部を設置するなど、腹腔鏡手術よりもさらに低侵襲性で、創部が将来目立たない術式に改良中です。 ②ロボット支援手術の特徴 「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3D画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏は、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さく、先が細い鉗子を用いて従来よりはるかに細かな作業でも正確に操作ができる特徴を有します(図5)。 (図5) ③ロボット支援手術の利点 患児の皮膚を切開する傷口は、鉗子を挿入する3~8mmほどの幅であり、明らかに傷が小さいことが挙げられ、疼痛が小さく、通園、通学などへの復帰がより早くなります。また手術中の炭酸ガスによる気腹の効果もあり、開放手術と比較すると非常に少ない出血量です。加えて鉗子の操作性が格段によくなり、細密な動きで操作するために、手術操作部位を丁寧で確実な縫合運針ができ、難症例でも完治できる可能性が高まったことが非常に重要な点です。 ④小児水腎症に対するロボット支援手術 当院では2020年1月から最新機種である、「ダヴィンチXi」を2台導入しております。従来の機種にくらべ、さらに微細な操作が可能となっています。2020年4月の保険収載以降私たちは小児患者に対するロボット支援下腎盂形成手術を開始し、手術成績良好、創も小さくすみ、かつ小児にも安全にロボット支援手術ができることを確認しています。 いままで当科では、水腎症に対しては腹腔鏡下手術を主に行ってきましたが、それでも2次元のテレビモニター下の手術であり、また手の代わりとなる鉗子の可動範囲が制限されるなど欠点がありました。これらの欠点を大きく解消したのが「ダヴィンチ」手術です。今後はますます増加していく手術と考えています。 (図6)手術の流れ(Campbell-Walsh Urologyより引用) ⑤ロボット支援手術の今後 「ダヴィンチ」手術はあくまで人が器械を操作して施行するのですが、3Dの視野下でまるで人の目で直に見ているようであり、さらに拡大して詳細に視認しながら手術ができます。使用する鉗子は人の手の数倍の細かさで動かすことができる為、例えば骨盤の奥のような、狭くて多くの臓器が入り組んだ場所での手術に特に適しており、明らかな術後手術成績の向上が多数報告されています。世界的にも器機の動作不良による致命的な有害事象の報告は一例もなく、安心して手術を受けてもらえると考えます。当センターには「ダヴィンチ」手術専用手術室が二室完備されています。今後は、年齢に関わらず、ますます「ダヴィンチ」手術が広まっていく期待は大きく、我々も支援ロボット手術センターを手術室スタッフとともに結成し日々前進しています。 文責:石井 啓一詳しく見る
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脳神経外科髄膜腫 | 脳神経外科特徴 髄膜腫とは、脳を包んでいる膜(くも膜、硬膜)から発生する腫瘍です。多くは良性の腫瘍であり、中高年の女性に多く発生することが知られています。これらの膜は脳の全周を包んでいるため、脳表の何処からでも発生します。腫瘍が発生した部位により名称が異なります(円蓋部髄膜腫、大脳鎌髄膜腫、鞍結節部髄膜腫など)。 腫瘍の発生原因は完全には明らかになっていませんが、過去の頭部への放射線治療歴や一部の遺伝子異常が原因となり得ると言われています。 良性であることから、ゆっくりと大きくなる性質を持っており、症状が出にくいという特徴があります。 髄膜腫は、何らかの症状がある場合や、症状がなくても増大傾向にある場合、脳幹や視神経などの重要構造物に対して将来的に悪影響が生じると思われる場合などに治療適応となります。 当院における治療方法 小さな腫瘍で、無症候性である場合には治療介入をせずに定期的に経過観察をします。治療を行う場合は、基本的に良性腫瘍であるため外科的切除(手術による摘出術)が最も効果的な治療法です。しかし同じ髄膜腫でも発生部位、周囲の神経や血管との関係、腫瘍の硬さなどにより手術のリスクが異なるため、それぞれの患者様個別の治療法が検討されます。 当院では、手術リスクを減じるために、カテーテルによる腫瘍栄養血管塞栓術を行う場合があります。またどの部分が手術による摘出が適するか、ガンマナイフによる治療が適するかを術前に詳細に検討し、複数の治療法を最も効率的に組み合わせて最大限の治療効果を得られるようにしています。 定位的放射線照射(ガンマナイフ)は、腫瘍に対して集中的に放射線を照射し、周囲の組織には放射線の影響を出さないようにする治療です。大きくない頭蓋底発生の髄膜腫に対しては極めて有効な治療法で、ガンマナイフ単独もしくは手術治療と組み合わせて腫瘍を治療します。 これらの治療方法(手術による摘出術、ガンマナイフ治療、経過観察)の選択は、①手術による摘出がどれぐらい可能か、②患者さんの全身状態(全身麻酔手術で問題となるような合併疾患の有無)、③腫瘍の増大有無および増大速度、などを考慮し個別に判断します。 代表的な治療例 (左) 右の視神経外側に発生した腫瘍(前床突起部髄膜腫)が視神経を内側に圧迫している (右) 頭蓋底アプローチを用いた手術により腫瘍が全摘出され、視神経の圧迫が解除されている 術前に認めていた視野欠損は術後に消失した (左) 左の大脳半球上方に発生した腫瘍(傍矢状洞部髄膜腫)が左大脳半球を圧迫している (右) 栄養血管塞栓術および腫瘍摘出術により腫瘍が全て摘出され、大脳の圧迫が解除されている 術前に認めていた認知症、歩行障害は術後に消失した (上)錐体斜台部髄膜腫(脳深部に発生した髄膜腫、白い腫瘤として見える)により、顔面の感覚異常を来している。 (下)術中神経生理モニタリングとナビゲーションシステムを使用した頭蓋底アプローチにより、腫瘍を全摘出した。顔面の感覚異常は消失した。 聴神経および顔面神経に近接した錐体骨部髄膜腫に対する、術中脳神経モニタリング併用下の腫瘍摘出術 この方は、ふらつきの進行で脳腫瘍を指摘され当科紹介となりました。86才と高齢の方ですが、もともとは全く認知症のない、非常にお元気な方でした。MRIでは、4㎝の錐体骨部髄膜腫が、小脳と脳幹を圧迫していることがわかりました。髄膜腫は脳を包んでいる硬膜という膜から発生する良性の脳腫瘍であり、適切な摘出術により治癒が得られる疾患です。 以前であれば、86歳の方に対する脳腫瘍の摘出術は一般的に勧められることはありませんでしたが、近年ではこの方のように元気な高齢者の患者さんが増加しており、当科では病状を詳細に検討したうえで手術治療をお勧めする場合があります。麻酔管理、周術期管理等を含めて高齢者の方が無理なく治療を受けていただける体制をとっております。 この方の場合、手術をしないと失調症状の進行による歩行障害がさらに進行することが予想され、全身状態を評価したうえで手術した方が良いだろうと判断いたしました。 今回の腫瘍の発生部位は、顔面神経(顔を動かす神経)と、聴神経(音を聴く神経)に接しており、摘出に伴ってこれらの神経が障害されるリスクが懸念されました。つまり手術によって音が聞こえなくなったり、顔の筋肉を動かすことが出来なくなったりする可能性があるということです。このような状況下において、当院では手術による神経機能障害リスクを回避するために、詳細な術中神経機能モニタリングを用いています。全身麻酔下の開頭頭蓋内摘出術では、腫瘍を摘出している際に神経機能が温存されているのか、あるいは障害されたのか、実際に麻酔を覚ましてみないとわかりませんが、特殊な神経刺激に対する筋電図や脳波などの神経反応を手術中リアルタイムに観察することにより術中の神経機能をモニタリングし、手術による損傷リスクを低下させる事ができます。専任の臨床検査技師が手術に立ち会い、腫瘍の摘出中に、神経機能の変化がないかどうかを監視しています(図1,2)、当院では脳腫瘍、下垂体腫瘍、脳動脈瘤や脊椎脊髄疾患に対してこのような術中神経機能モニタリングを施行しており、手術合併症のリスクが極めて低い良好な成績を達成しております。 無事に腫瘍が摘出されました(図3)、術後のリハビリテーションも順調に進み、新たな神経脱落症状なく、ふらつきも改善し自宅退院されました。 高齢者の方の手術は今後増加すると思われますが、当院ではこのように万全の体制で高齢者の方の開頭手術を行い、安心して治療を受けていただけるように努めて参ります。 図1 この患者さまの術前MRI画像 右錐体骨髄膜腫が小脳と脳幹を圧迫し、ふらつきの原因となっています(黄色点線)。 また腫瘍の前方では顔面神経と聴神経を腫瘍が圧迫しています(青矢印)。 図2 術中神経生理モニタリング 全身麻酔導入後、患者さまの聴力および顔面神経機能を電気生理学的にモニタリングするため、さまざまな電極を留置します(左)、手術中は専任の臨床検査技師が神経機能を監視し、手術による神経機能悪化のリスクを回避します(右)。 図3 錐体骨髄膜腫の摘出 腫瘍の摘出は手術用の顕微鏡を使用し、図のように腫瘍(青矢印)と脳組織(緑矢印)を少しずつ剥離して進めてゆきます、この患者さまの場合には腫瘍の奥に聴神経と顔面神経が存在しているので、摘出操作による神経の損傷に注意して手術を進めます。 図4 腫瘍摘出後の状態 腫瘍の摘出がほぼ終了し、顔面神経(黄矢印)と聴神経(青矢印)が腫瘍の奥で露出された状態です。電気刺激で顔面神経機能を確認しています。脳幹の圧迫が解除され、神経機能が温存されました。手術時間は約5時間でした。 図5 術後MRI 術後のMRIでは、腫瘍が摘出されていることがわかります。手術後3日目より歩行リハビリテーションを開始しました。数日でトイレ歩行ができるようになり、試験外泊を経て術後23日目に自宅退院となりました。現在も元気に外来に通院されており、非常に良好な経過をとられました。詳しく見る
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糖尿病・内分泌内科甲状腺疾患に対するアイソトープ治療(131I内用療法) | 内分泌内科<完全予約制>甲状腺疾患に対するアイソトープ治療 (131I内用療法) アイソトープ治療(131I内用療法)とは、甲状腺組織(がんを含む)がヨウ素を取り込む性質を有していることを利用し、131Iと呼ばれる放射線を放出するヨウ素(131Iカプセル)を内服して甲状腺内部から放射線を照射する治療です。甲状腺はヨウ素を原料としてホルモンを合成、分泌している臓器で、体内に取り込まれたヨウ素はそのほとんどが甲状腺に取り込まれて他の臓器への取り込みが極めて少ないこと、また体内に取り込まれた放射性ヨウ素から放出される放射線の到達距離は非常に短く他の臓器への影響や副作用が非常に少ないため、極めて安全に効果的に治療を行うことが可能です。このように、アイソトープ治療は有用な治療法ですが、特殊な装置や設備が必要であるため、実施可能な施設が非常に限られています。 当院は2014(平成26)年に日本甲状腺学会認定専門医施設に認定され甲状腺疾患に対する専門施設として診療を行っていますが、2016(平成28)年からバセドウ病に対するアイソトープ治療ならびに甲状腺がん手術後に残った甲状腺組織破壊(アブレーション)目的に対するアイソトープ治療を開始しました。 2021年(令和3年)11月より,設備増強に伴い131I投与可能量が増加し,年間あたりの治療を行うことができる患者さんの数が増えました。 バセドウ病アイソトープ治療 バセドウ病に対する治療方法には薬物療法、手術とアイソトープ治療がありますが、それぞれの治療法には下の表のように長所と短所があります。 治療法 長所 短所 薬物療法 外来で治療を開始できる ほとんどすべての患者さんに施行できる 不可逆的な甲状腺機能低下症に陥ることがほとんどない 副作用が少し多い 薬の効き方に個人差がある 治療期間が長い 再発があり得る 手術 早くて確実性が高い 再発が少ない 入院、麻酔、手術痕は避けられない 基本的には甲状腺機能低下症になる 熟練した専門医によってなされなければならず、手術可能な施設が限られる アイソトープ治療 外来で治療できる 甲状腺の腫れを確実に小さくできる 副作用、合併症が少ない 再発が少ない 繰り返し治療できる 基本的には甲状腺機能低下症になる 治療後に甲状腺眼症が発症または憎悪する例がある 若年者、妊娠、授乳婦には行えない 実施できる施設が少ない そのような中で、アイソトープ治療は希望する場合に加えて、次のような場合にはよい治療法と考えられます。 薬物療法で副作用が出現したとき 薬物療法で十分に甲状腺ホルモンをコントロールできないとき 手術後に再発したとき 薬物療法や手術を望まないとき 心肺の病気や周期性四肢麻痺などにより確実なコントロールが必要なとき など 治療自体は131Iカプセルを内服するだけで、大変簡単なものです。治療は原則として外来で行いますが、状況により入院で行うこともあります。まず外来で治療について説明し、甲状腺眼症や心機能などのリスク評価、治療前検査などを行ったうえで治療を行います。 アブレーション治療 甲状腺がんに対するアイソトープ治療は60年以上の歴史を有し、その有用性が国際的に定着している安全な治療法です。特に、甲状腺を全摘した後に放射性ヨウ素でわずかに残存した甲状腺を破壊(アブレーション)しておくと、将来的に甲状腺がんの再発を減らせることが示されており、欧米では一般化しています。これまでわが国では、甲状腺がんに対するアイソトープ治療は治療のための病室に入室し治療する必要がありましたが、関連法規により患者さんの病状によってはアブレーションが外来でも行えるようになり、当院でも外来でのアブレーション治療を開始することになりました。 ※アブレーションとは 甲状腺がんと診断され甲状腺を全摘することにより病巣が全て取り除くことができたと判断された場合でも、わずかに甲状腺が残っていることがあります。そのわずかに残った甲状腺組織をそのままにしておくと甲状腺がんが再発したり他の部位へ転移したりすることがあります。これを予防するために、放射性ヨウ素でわずかに残った甲状腺の処置を行うことをアブレーションといい、再発予防になるだけではなく、万一再発した場合でも発見しやすくなることが知られています。 外来アブレーションの対象となるのは、以下の条件を満たす方です。 患者さん本人に関して 遠隔転移のない組織型が分化型の甲状腺癌で、甲状腺を全摘している 自立した生活ができる 1年以内の妊娠、授乳を望まない 患者さんの背景および環境への配慮に関して 公共交通機関を使わずに帰宅することができる(公共交通機関を利用する場合は継続乗車を1時間以内にすることができる 小児または妊婦が同居しない 水洗トイレが設けられている 投与後3日間は家族と別の部屋で一人での就寝が可能である 同居している家族の理解と協力が得られる 治療自体は131Iカプセルを内服するだけで、大変簡単なものです。外来アブレーションには2つの方法(「甲状腺ホルモン休薬法」、「タイロゲン法」)がありますが、いずれの治療法も選ぶことができ、患者さんと相談して決定します。まず外来で治療について説明し、治療前検査などを行ったうえで治療を行います。詳しく見る
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泌尿器科がんゲノム医療について| 泌尿器科がんゲノム医療とは 「がんゲノム医療」とは、「がん」の遺伝子を詳しく調べ、一人一人の遺伝子の変化に応じた治療などを行う医療です。最近の「分子標的薬」と呼ばれる抗がん剤はある特別な遺伝子変化をもつがんに良く効くことが知られています。 がんの種類にもよりますが、治療選択に役立つ可能性がある遺伝子変異は約半数の患者さんに見つかります。 しかし、遺伝子変異があっても、使用できる薬がない場合もあり、がん遺伝子パネル検査を受けて、自分に合う薬の使用(臨床試験を含む)に結び付く人は、全体の10~20%程度と言われています。 当科が行う前立腺がんに対するがんゲノム医療について 当院では以前より標準治療の終了した患者さんに対し、主に腫瘍内科でがん遺伝子パネル検査を行ってきました。 泌尿器科としては、転移性去勢抵抗性前立腺がんに対してオラパリブ(商品名:リムパーザ®)が適用拡大されたことから泌尿器がんゲノム外来を令和3年3月より開始しました。 去勢抵抗性前立腺がんについては、様々な薬剤が保険適用となっていますがオラパリブについてはBRCA1/2遺伝子異常がある場合にのみ使用できます。診断に際して当院では適切な遺伝子カウンセリングの後にBRACAnalysis®を用いたコンパニオン診断を行っています。 原則的に診断がついた後は紹介元の施設での治療を行っていただくため、転院ではないことをあらかじめご承知ください。 受診を希望される場合は現在治療を受けている医療機関からの紹介が必要となりますので担当医に相談してください。 また、その際に下記を参考にしてください。 泌尿器がんゲノム外来について:https://www.osakacity-hp.or.jp/ocgh/kaisetsu/26289.html また、上記以外の泌尿器科悪性腫瘍については腫瘍内科によるがんゲノム外来でのパネル診断を行っております。詳細は以下を確認ください。 がんゲノム医療外来について:https://www.osakacity-hp.or.jp/ocgh/about/cancer/genome/shujii.html詳しく見る
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泌尿器ゲノム外来主治医・紹介元医療機関の方へ 2021年4月時点では去勢抵抗性前立腺癌に対するオラパリブ適応確認のためのコンパニオン診断を対象として行っております。 それ以外の泌尿器悪性腫瘍や去勢抵抗性前立腺がんに対するパネル診断については腫瘍内科によるがんゲノム医療外来への紹介受診を行ってください。 がんゲノム医療外来について:https://www.osakacity-hp.or.jp/ocgh/about/cancer/genome/shujii.html 当院での去勢抵抗性前立腺癌に対するコンパニオン診断について 日本泌尿器科学会から前立腺がんにおけるPARP阻害剤のコンパニオン診断についての見解書(https://www.urol.or.jp/cms/files/info/140/見解書提出20210104.pdf)が出されています。 その中でコンパニオン診断については、「FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイ ル」及び「BRACAnalysis診断システム」が選択肢として挙げられていますが当院では「BRACAnalysis 診断システム」を基本としています。 germlineのみの診断となる点について十分ご理解の上ご紹介ください。 また、当院では診断を行うのみであり、BRCA遺伝子変異の有無に関わらず治療は紹介元施設で引き続き行っていただきます。検査期間中も含めて当院では処方などの治療を行いません。紹介後も患者さんの不利益にならないよう治療継続お願いします。 また、上記以外の泌尿器科悪性腫瘍については腫瘍内科によるがんゲノム外来でのパネル診断を行っております。詳細は以下をご確認ください。 がんゲノム医療外来について:https://www.osakacity-hp.or.jp/ocgh/about/cancer/genome/shujii.html 遺伝子変異検査の対象症例及びタイミング 下記のいずれにも該当する症例が、BRCA遺伝子変異検査を考慮する対象およびタイミングです。 ・遠隔転移を有する(M1) ・1剤目のARATで病勢進行が疑われる前立腺癌患者 ・3ヶ月以上の予後が見込める 受診までの流れ 1.次のものをご用意ください。 ① 泌尿器ゲノム外来予約申込書 ② 診療情報提供書(任意様式) ③ 泌尿器ゲノム外来予約に関するチェックリスト表(患者用) ④ 泌尿器ゲノム外来予約に関するチェックリスト表(医師用) 資料がそろいましたら当院の地域医療連携室あてにFAXでお申し込みください。 FAX番号:06-6929-0886 2.後日、担当医師と調整の上、予約日時を記載した診察予約票をFAXでお送りします。 診察予約票と②~④の原本を患者さんにお渡しください。 3.診療の流れ 泌尿器ゲノム外来での診療は3回に分けて行います。 まず、1回目の診察で、がんゲノム医療(保険診療)の検査条件に該当するか判定をいたします。 対象の場合は、2回目の診察で、ご家族とご来院いただき、がん遺伝子検査についての説明をお聞きいただいたうえで、同意の場合は検査を受けていただきます。(その際当院で全血採血を行います。) 検査には2-4週間ほど日数がかかるため、約1ヶ月後頃に3回目の診察を行い、結果を説明します。 BRCA遺伝子変異の有無に関わらず次治療は紹介元医療機関で行っていただきます。詳しく見る
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泌尿器科密封小線源療法(ブラキセラピー)について | 泌尿器科密封小線源療法(ブラキセラピー) 小線源治療とは手術・外照射と並ぶ前立腺癌の根治的治療方法の一つです。長さ4.5mm・直径0.8mmのチタン製カプセル内に格納されたヨウ素125という放射線源を、前立腺に腰椎麻酔下で挿入します。 事前にコンピュータを用いて、周囲臓器への影響が少なく治療効果が高い位置や個数を決定し線源を作成します。挿入する線源の数はおよそ50個~100個、治療時間は2~3時間です。線源から放出される放射線は徐々に減少し、1年で消失します。カプセルは前立腺に残りますが、問題はありません。 リスク分類によって治療線量は異なり、高リスクの場合には小線源、外照射、薬物療法を組み合わせて(トリモダリティー)治療します。 治療後は多くの方で約半年間頻尿が生じます、また前立腺の大きさや臨床病期によっては治療対象とならないものもありますが、比較的低侵襲性であるため手術が困難な患者さんにおいても選択可能な場合があります。治療成績も手術と比べ大きな遜色はありません。当院では放射線腫瘍科と連携し、2010年4月から2020年12月末までに265例の治療を実施しています。 2021年3月 文責;北本 興市郎 引用元;日本メジフィジックス詳しく見る
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泌尿器科腎移植・腎不全治療について| 泌尿器科腎移植、腎不全治療について 腎臓の機能について 腎臓は腰の上あたりに背骨をはさんで左右に1つずつあります。形はそら豆に似ていて、大きさはにぎりこぶしぐらいです。腎臓は人体を正常な状態に保つための大切な臓器であり、①尿を作り老廃物や余分な水分を体から排出する、②体内環境を一定のバランスに保つ、③血圧を調整する、④造血ホルモンを分泌して血液を増やす、⑤ビタミンDを活性化して骨を丈夫にする、といった役割があります。 腎不全について 腎臓の機能が低下することを「腎不全」といいます。腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2種類があります。これは古い名称であり、現在はそれぞれ「急性腎障害」、「慢性腎臓病」と言うようになりました。急性腎障害は腎機能が急速(数時間から数週以内)に低下するものをいいます。脱水やショック状態、薬剤、腫瘍や尿路結石などが原因となります。こちらは早期診断、早期治療により腎機能が回復する可能性があります。一方、慢性腎臓病は糖尿病、高血圧、慢性腎炎など様々な原因によって数か月~数年かけて徐々に腎機能が低下していく病気です。慢性腎臓病が進行すると、さまざまな治療を行っても元どおりの正常な腎機能までの回復は難しく、腎機能が高度に低下すると末期腎不全へと至り、最終的には腎臓の代わりをする治療、すなわち腎代替療法が必要となります。 末期腎不全の治療法と特徴 末期腎不全患者さんが選択できる腎代替療法として腎移植、血液透析、腹膜透析があります。腎移植は最も成績が良く、生活の質の改善ならびに余命の延長が期待できる治療法です。 腎移植には血縁者・非血縁者から2つのうち1つの腎臓の提供を受ける生体腎移植と、亡くなられた方(心停止や脳死)から腎臓の提供を受ける献腎移植があります。 血液透析は週3回、1回4時間程度といった時間的制約に加え、食事や水分摂取の制限が必要です。 腹膜透析は自宅で行うことができるため、時間的制約が少なく、状態が安定していれば通院も月に1回程度で済みます。食事・水分制限も血液透析よりは緩やかですが、完全に尿が出なくなると血液透析に移行する必要があること、操作を本人や家族が行う必要があるため、機械管理や感染のケアに注意が必要です。 腎移植について 腎機能が低下した慢性腎不全患者さんの体内で、提供者の腎臓を機能させることにより腎機能を回復させる治療法です。血液透析や腹膜透析とくらべ、腎移植をうけることで生命予後や生活の質を高めることができます。唯一の根治的な腎代替療法であり、妊娠や地震のような災害時にも強い医療ということができます。 腎移植レシピエントの適応 腎移植レシピエントとなれない方は①活動性の感染症がある方、②悪性疾患(がん)がある方です。また、移植後には免疫抑制剤の内服が必須ですが、内服できない方や管理不能な精神疾患を持った方は適応から外れる場合があります。 腎不全の原因となった疾患によって腎移植ができない方はほとんどおられません。 腎移植ドナーの適応 生体腎移植での腎提供後は腎臓が1つになり、腎機能は平均して3割ほど低下するといわれています。そのため、日本移植学会と日本臨床腎移植学会の生体腎移植ドナーガイドラインを尊守し、腎臓を提供されても問題が無いか、リスクの評価をしっかりと行います。 入院、手術の特色 腎移植の手術・入院経過 ドナーから採取した腎臓に付随する腎動脈、腎静脈、尿管のそれぞれをレシピエントの内腸骨動脈(もしくは外腸骨動脈)、外腸骨静脈、膀胱に吻合します。腎臓はレシピエントの骨盤の中(腸骨窩)に移植します。 生体腎移植ではほぼすべての場合、血管吻合後から手術終了までに移植腎からの尿の生成がみられ、術後より透析療法が不要となります。献腎移植で阻血時間が長い場合には腎機能の回復は遅れ、術後1~2週間の透析療法が必要となることがあります。 入院期間は経過が良好であれば術後約3週間で退院となります。合併症を発症した場合、その治療のため入院期間が延長となることがあります。 腎移植の成績 日本における生体腎移植における生存率・生着率ですが、2010年以降では1年生存率、5年生存率が99.2%、96.8%、1年生着率、5年生着率が98.6%、93.3%となっています。 腎移植の入院・費用 腎移植にはおおよそ400万円程度の医療費がかかります。しかしながら保険適応ですので所得に応じて1~3割負担になるほか、特定疾病療養受領書、重度心身障害者医療費助成制度や自立支援医療を使うことで自己負担は0~2万円/月程度となります。 退院後の外来通院 腎移植をしてから拒絶の発生などを予防するため、退院後の外来通院は必ず指定された期日に来ていただくことになります。 外来では血液検査、超音波検査などを行います。血液検査では腎機能、感染症、免疫抑制剤の血中濃度などを評価します。超音波検査では移植腎の血流や腎臓の形態を評価します。その他、高血圧、糖尿病、脂質異常症、悪性疾患などの合併症が生じないか外来で定期的に検査します。 当院外来での検査のみならず、がん検診もきちんと受けるようにして下さい。 信念 大阪市立総合医療センターでは腎移植医療において泌尿器科だけでなく腎臓内科、糖尿病内科、移植コーディネーター、薬剤師、栄養士など様々な科、職種と連携し、安全で質の高い腎移植医療を心がけております。 担当医: 浅井利大 腎移植・透析部 部長、泌尿器科 副部長 西出峻治 泌尿器科 医長 濱田真宏 腎臓内科 医長 山﨑大輔 腎臓内科 医長 奥田友子 移植コーディネーター詳しく見る
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泌尿器科前立腺肥大症に対する外科的治療-CVP-について| 泌尿器科前立腺肥大症に対する外科的治療 ―CVP(接触式レーザー前立腺蒸散術)― 外科的治療 前立腺肥大症は男性の尿道をとりまく前立腺が肥大することにより、排尿症状(尿がちょろちょろとしか出ない、排尿後も尿が膀胱内に残るなど)や蓄尿症状(頻繁に尿意を催す、強い尿意があってトイレが間に合わないなど)を起こす病気です。加齢とともに徐々に前立腺が肥大するため、50歳以上で多く、高齢になるほど頻度が増加します。 治療には①行動療法(生活指導・メタボ改善など)、②薬物療法(内服)、③外科的治療(後述)があります。当院では主に高リスク症例や難治症例の前立腺肥大症に対する外科的治療を行っています。 日本で主に行われている治療は以下の通りです。 いずれの治療についても内視鏡を尿道に挿入して行います。 ①TUR-P(経尿道的前立腺切除術:Trans-Uretheral Resection of the Prostate) 最も古くからある一般的な手術で多くの病院で用いられる術式です。 泌尿器科手術を行っている施設ではほぼ備えられている機材を用いるため、導入のハードルが低いです。出血リスクがあり、抗血小板薬・抗凝固薬(血をさらさらにする薬)を内服している状態では手術できないなどのデメリットがあります。 ②HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術:Holmium Laser Enucleation of the Prostate) 海外では1998年頃より行われ始めた術式で、前立腺肥大症の原因となる前立腺の内側部分をレーザーでくり抜くような手術です。出血も少なく、前立腺を大きくくり抜いて尿路を開くことができます。前立腺をくり抜いた後に膀胱内で切り刻んでから体外へと取り出す必要があるため、手術時間が長くなるなどのデメリットがあります。 ③CVP(接触式レーザー前立腺蒸散術:Contact Vaporization of the Prostate) 当院で主に行っている治療です。最も新しい術式で、前立腺を内側から蒸散していきます。切除と止血を同時に行っていくため、出血リスクが低く、抗血小板薬や抗凝固薬を複数内服している方に対しても行うことができます。(※1)前述のTUR-PやHoLEPよりも細い内視鏡を使用するため、術後の尿道狭窄リスクを抑えられるといったメリットもあります。 当院では2018年5月に導入し、現在までに200例以上の手術を行っています。 2018年5月~2020年4月までに行った症例184例では75%で術後2日で尿道カテーテル抜去、術後平均入院日数4.1日と一般的なTUR-Pと比較して良好な成績でした。 ※1:内服を中断できる場合は中断して行ったほうが出血リスクが低く、より安全です。詳しく見る
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循環器内科経カテーテル的大動脈弁置換術TAVITAVIとは 近年、超高齢化時代に突入し、心臓弁膜症の潜在患者数増加の一途をたどっていますが、弁膜症の中で、最も急増しているのが、大動脈弁狭窄症です。重症の大動脈弁狭窄症は、胸痛、息切れ、失神などの症状がでると数年で死に到る進行性の病気で、従来、外科的人工弁置換術(手術)が唯一の延命効果のある治療とされていました。しかし、心臓外科手術が必要となった患者さんにおいて、手術リスクが高い場合(高齢の方、心臓の開心手術を過去に行った事がある方、全身状態が良くない方、体力の低下を認める方)、手術による治療を断念するケースが少なくありませんでした。 「TAVI」とは、「経カテーテル大動脈弁治療(Transcatheter Aortic Valve Implantation)」、略して「TAVI」と呼ばれます。胸を開かずまた、心臓を止めることなく、「人工弁」を患者さんの心臓に装着することができる治療法です。2002年にフランスで初めて治療応用に成功し、世界では欧米を中心に25万例近い治療が行われています。日本においても、2013年10月より 公的保険の適用が認められたことでTAVIによる治療が可能となり、当院も2016年4月に開始し、2021年3月までに259例に達し、大きな合併症なく良好な成績を収めています。日本における現時点のTAVI治療の適応を図に示します。これまで、概ね80歳以上の高リスクな症例がTAVIの適応でしたが、最近は、二尖弁や僧帽弁置換術後の症例にもTAVIを行っています。海外ではすでに、中等度リスクや低リスク症例のTAVIについて多くの臨床治験が施行され、今後ますます適応の拡大が予想されます。 TAVIチームは、循環器内科・心臓血管外科だけではなく、麻酔科・中央臨床工学部・看護部・中央放射線部などの関連部門で構成され、毎週火曜日には「ASカンファレンス」を開催して、知識の向上、患者情報の共有に努めています。 今後、当院でTAVI治療が行えることにより、これまでの治療(経過観察または内科的治療、外科的治療(大動脈弁置換術)に、TAVI治療という選択肢が増えることになり、患者さんにとって より適切な治療を選択することができ、大きな福音になると考えています。 TAVI 200例の成績 TAVIチーム 大動脈弁狭窄症(AS)とは 大動脈弁狭窄症(AS)の罹患率 日本国内で65歳以上の大動脈弁狭窄症の罹患率は2~3%と推定され、最も頻度の多い弁膜疾患です。 米国では65歳以上の大動脈弁狭窄症の罹患率は最大7%と推定されています。 当院における過去5年間のAVR(AS)患者の年齢分布詳しく見る
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心臓血管外科低侵襲心臓手術|心臓血管外科ロボット支援下心臓手術 「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏は、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さく、先が細い鉗子を用いて従来よりはるかに細かな作業でも正確に操作ができる特徴を有します(図3)。 低侵襲心臓手術( MICS:Minimally Invasive Cardiac Surgery) 心臓の手術は従来、胸骨を縦に切る、胸骨正中切開から行われてきました。心臓全体が一望でき、安定した成績が得られる方法です。一方で近年、ミックス(MICS: Minimally Invasive Cardiac Surgery)という言葉が浸透してきました。私たちは、肋骨の隙間から、内視鏡下に行う心臓手術を行っています。症例によっては、胸骨の一部のみを切開する方法も検討します。 内視鏡下心臓手術の適応疾患 ◆僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症 ◆心房細動に対するMaze手術や左心耳閉鎖術 ◆大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症 ◆心臓腫瘍(左房粘液腫、乳頭状繊維弾性腫、ランブル疣贅など) ◆一部の胸部大動脈瘤 ■ 従来から行われている胸骨正中切開 ■ 内視鏡下僧帽弁形成術 肋骨の間から内視鏡を挿入して 手術を行います 僧帽弁形成術 (Loop technique) 手術創 低侵襲冠動脈バイパス術(MICS-CABG) 冠動脈バイパス術においても、小切開左開胸による手術に取り組んでいます。低侵襲CABGでは出血が少なく、創部の感染のリスクを低下させる可能性が示唆されており、術後早期の社会復帰が期待できます。さらに、2020年より、ロボットを用いて内胸動脈を剥離しています。詳しく見る
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心臓血管外科下肢静脈瘤|心臓血管外科下肢静脈瘤治療 下肢静脈瘤は、美容上の問題のみならず、脚のだるさ、皮膚掻痒感、さらには静脈鬱滞性皮膚炎・皮膚潰瘍を合併することもあります。病型によって、保存的治療から硬化療法、血管内治療、ストリッピング手術、内視鏡下不全穿通枝切離術など様々な治療を組み合わせます。 下肢静脈瘤の症状 ◆ 静脈が浮き出る ◆ 細い血管が浮き出る(蜘蛛の巣状・網状静脈瘤) ◆ 下肢のむくみ ◆ 脚がつって、目がさめる ◆ 静脈瘤の硬結・痛み(血栓性静脈炎) ◆ 皮膚の痒み ◆ 下腿の皮膚硬結・色素沈着 ◆ 静脈鬱滞による皮膚炎・皮膚潰瘍糖尿病性皮膚潰瘍・壊疽 伏在静脈の高度の逆流が原因の下肢静脈瘤は、レーザー治療、 カテーテル硬化療法、結紮術、ストリッピング手術などを行い、 逆流の元を断つ必要があります。 静脈うっ滞性皮膚潰瘍:皮膚の硬結、色素沈着、皮膚潰瘍が見られます。 下肢静脈瘤に対する治療、弾性ストッキングの着用、下肢挙上など、総合的な治療が必要な病態です。 静脈うっ滞性皮膚炎に対して、内視鏡下不全穿通枝切離術を行った。 レーザー焼灼術 伏在静脈をレーザーで焼いて閉塞させる体への負担が小さい治療です。現在は保険適応されました詳しく見る
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形成外科乳児の頭の変形外来 | 形成外科乳児の頭の変形外来 乳児の頭の変形の診断と治療を行なっています。 頭の変形でみつかるものには、頭蓋縫合早期癒合症・水頭症・頭蓋骨腫瘍・向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)などがあります。 頭蓋縫合早期癒合症・水頭症・頭蓋骨腫瘍などは、詳細な検査の上、手術治療が必要になることがあります。 向きぐせによる頭の変形(斜頭、短頭)に対しては、その程度や時期に応じてヘルメットによる頭蓋形状誘導療法を提案いたします。この治療方法はアメリカで積極的に行われており、国内では国立成育医療研究センターで開始されています。 受診ご希望の方は紹介状(診療情報提供書)をご用意の上、地域医療連携室でご予約ください。 外来:毎週火曜日 午後2時~午後5時(午後4時まで受付) ※すべての方が治療の適応になるわけではありません。 地域医療連携室はこちら ヘルメットによる頭蓋形状誘導療法 アメリカで開発された治療法で、既に多くの報告があり、効果が有効であることが論文などで報告されています。国内では、国立成育医療研究センターで初めておこなわれ、これまで学会などでその有用性が多数報告されました。 今回、西日本の公立病院で初めて、この治療法を行うことできるようになりました。方法は、放射線を使うものでなく、侵襲は殆どありません。 LED光のスキャナーを用いて赤ちゃんの頭の形を計測し、オーダーメイドのヘルメットを作ります。開始時期は生後3ヶ月(首がすわってから)~6ヶ月くらいまでです。3~4週に1回の診察・調整を行なって、平均5ヶ月間装着していただきます。 費用(自費診療) 42万円(一連として)【消費税込(ヘルメット代含む)】 ※すべての方に効果が出るわけではありません。また、その効果は個人によって差はあります。詳しく見る
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精神神経科「ECT外来」(無けいれん通電療法)の開設について目的 電気けいれん療法は、1938年から精神科領域で施行されており、現在わが国では健康保険で認められた治療法です。当院では患者に入院していただき、従来の電気けいれん療法をより安全に改良した無けいれん通電療法(m-ECT)を麻酔科の協力のもとに施行いたしております。この無けいれん通電療法(m-ECT)は多くの患者に対して行なわれた実績から、安全性の高い治療法であることが確かめられています。 今回、医療機関から適応のある患者さんをご紹介をいただく「ECT外来」を開設いたします。 対象 大阪府下の精神科病院に入院中で電気けいれん療法を希望される患者さん その他、精神科医療機関から電気けいれん療法目的で来られる患者さん ※ご本人が来院できない時は、ご家族等に来院していただきます。 開設場所および開設回数 金曜日の午後に初診2枠で完全予約制とします。 時間帯 初診予約枠 14:00~15:00 1枠 15:00~16:00 1枠 事前の準備 当科宛の「診療情報提供書」と当院の「m-ECT患者紹介フォーマット」を担当医に記載していただき、受診当日持参してきてください。 可能ならば、胸部レントゲン、心電図(心電図異常や心疾患がある場合は心エコー検査)、血算・血液生化学検査、認知機能検査、頭部MRI&MRAを事前に行い、これらの結果も当日までに持参してきてください。 診察内容の概要 電気けいれん療法の説明 問診 神経学的所見 追加の検査予約:事前の準備に記載した項目でできなかった検査と合併症に関連した必要な検査 診察結果の報告 ECT外来受診後、当院ECT小委員会で適応性、安全性等の検討が行われ、その結果について貴院のご担当者に連絡いたします。小委員会でECTの施行実施の承認が得られた場合は、その際に入院の日程を調整いたします。なお、電気けいれん療法終了後は貴院へ逆紹介いたします。詳しく見る
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腎臓・高血圧内科IgA腎症IgA腎症:一番よくある腎炎 医師からのメッセージ 次のような場合、IgA腎症の可能性がありますので、ご来院ください。 ①尿検査で、タンパク尿、血尿が続く ②のど風邪の後、赤茶色のおしっこが続く Q&A IgA腎症って、どんな病気ですか? IgA腎症は、腎臓の中に100万個近くある糸球体という、ろか装置にIgA(免疫グロブリンA)というタンパク質がへばりついて、炎症などの悪さをする病気です。この悪さのせいで、血尿やタンパク尿などがみられるようになると、だんだんと腎臓が力を落としていきます。腎生検を受けた患者さんの30-40%くらいがこの病気で、一番よくみられる腎炎です。 IgA腎症は、いつ頃からわかってきたのですか? 1968年にフランス人のBerger先生らによって、世界で初めて報告されました。この頃は、腎不全になることの少ない、それほど悪くない病気とされていました。しかし、1990年代になって、何の治療もしないと、20年後には40%近くの患者さんが、透析を必要とする末期腎不全になることが示されました。だんだんと、油断できない病気であることがわかってきたのです。1990年以降は、早期診断や数々の治療(レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ステロイド(パルス)療法、扁桃摘出術など)の進歩によって、悪くなる前に治せることも多くなってきました。 IgA腎症は、どんな『きっかけ』で、みつかるのですか? IgA腎症がみつかる『きっかけ』は、 ①学校や職場の健診、病院の尿検査(タンパク尿、血尿): 80% ②肉眼的血尿(赤茶色のコーラみたいな、おしっこ): 12% ③むくみや尿の減少: 8% です。 日本では、健診・検尿が広まっているので、タンパク尿や血尿だけで、自覚症状が無く腎臓がそれほど弱っていない時にみつかることが多いです。このため、腎臓が弱る前の早期にIgA腎症をみつけて治療を行うことで、透析にならないようにすることが可能になってきています。 肉眼的血尿は、風邪や、のどの炎症の後、12~72 時間後くらいに出てくるコーラみたいな、おしっこです。これがあった場合、むくんだり、おしっこが急に減ったりして、時には、腎臓がけっこう早く悪くなることがあるので、要注意です。他には、ご家族がIgA腎症で、ご本人もIgA腎症ということが、10%くらいあるので、一応、気にかけておく必要があります。 IgA腎症は、どんな仕組みで起こるのですか? はっきりとはわかっていませんが、考えられている仕組みはあります。 ① のどの扁桃腺や鼻の奥への感染などの刺激によって、形の変なIgAが血の中に増える。 ② このIgAに対して別のIgAやIgGなどのタンパク質が作られる ③ 形の変なIgAと、これに反応するIgGやIgAが大きなタンパク質の塊をつくる ④ この塊が腎臓の糸球体に、へばりついて炎症などの悪さをする、 というものです。 病気の起こり初めは、炎症が少しだけですので、血尿がみられる程度です。しかし、炎症がひどくなって糸球体の全体に広がると、タンパク尿も出てきます。さらに進むと、糸球体自体が働かなくなり、働ける糸球体の数が減っていき、腎臓の力がだんだんと落ちてしまいます。 わかりやすく例えますと、悪さをするタンパク質の塊は、『火だね』のようなもので、尿を作る工場を燃やして火事を起こします。火事が少しのボヤ程度であれば血尿のみで済みますが、どんどん広がるとタンパク尿が出てきます。さらに、火事が続くと工場全体が燃えてしまうように、糸球体が壊れてしまいます。 IgA腎症は、どのように診断されるのですか? IgA腎症は、腎生検でのみ診断できます。腎臓の糸球体にIgAがへばりついていることを確認する必要があるからです。また、腎生検の様子が、腎臓の弱り具合や、治療が効きやすいかどうかの参考になりますので、治療法の決定の参考になります。当院では、これまでに650人以上のIgA腎症の患者さんを、診断・治療しております。 IgA腎症は、どのように治療されるのですか? gA腎症と一口に言っても、患者さんによって病状はさまざまで、これによって、治療法は大きく変わってきます。日本腎臓学会のIgA腎症診療ガイドライン2017によりますと、腎臓の力(GFR:糸球体ろか量)とタンパク尿の量(1日当たりの)によって、図1のような治療が薦められています。それらの代表的なものについて解説します。 ★保存療法 食事療法: 減塩(一日6g以下)、タンパク制限(状態によります)、エネルギー調整(食べ過ぎない) 日常生活: 適度な運動、禁煙、適度な飲酒 (ビール350ml、日本酒1合、ワイングラス1杯程度) 。ただし、週2日は休肝日を作りましょう。毎日飲むと肝臓が弱ります。 ★薬物療法・手術 ① レニン・アンジオテンシン系阻害薬(血圧を下げる薬) この薬は、糸球体の中の圧力を下げて、仕事量を減らすことで、タンパク尿を減らしたり、腎臓の力が落ちるのを抑えたりします。薬を始めた頃に、一時的に血の検査でクレアチニンが上がったり、eGFRが下がったりすることがありますが、その後、検査が悪くならなければ、効果を発揮していると考えられます。タンパク尿が多い場合は、特に薦められます。 ② ステロイド薬 ステロイド薬は、IgAが原因で起こす炎症を抑える (火事を消す)ことで、血尿やタンパク尿を減らしたり、腎臓の力が落ちるのをおさえたりします。血尿やタンパク尿があって、腎臓の力がそれほど落ちていない患者さんほど、ステロイド治療のメリットが大きいと考えられています。逆に、腎臓の力がすでにかなり落ちてしまって、炎症がある程度終わっている場合は、あまり効かないこともあり、薬を使うかどうかを、慎重に考えなければなりません。 ③ 扁桃摘出術(+ステロイドパルス療法) 扁桃腺が病気のもとの一つ(火事の例え話の火種をつくる原因)、と考えられているので、これを取ってしまう扁桃摘出術をしばしば行います。これにステロドパルス療法を加えた治療が,1988年に仙台の堀田修先生(現:堀田修クリニック院長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表)らよって考案され,その後、日本の多くの施設で行われています。最近の日本の研究でも、その効果が科学的に確認され、IgA腎症に対して最も必要な治療といってよいでしょう。 一方、IgA腎症になって間もない患者さんで、扁桃摘出術だけでも、血尿や蛋白尿が良くなったり、長期間の観察で腎臓が悪くなりにくかったりすることが、当院や他の施設からも報告されています。 私達は、これまでに、多くのIgA腎症の患者さんを治療している中で、扁桃摘出術やステロイドパルス療法が、有効な治療であることを実感しているので、できるだけ早く診断をつけて、治療を始めたいと考えています。 ステロイドパルス療法(仙台方式):点滴(メチルプレドニゾロン500mg)を 3日間して、飲み薬(プレドニゾロン30mg:5mg錠を6個)を 4日間します(合計で1週間)。これを3回、つまり3週間続けて行います。その後、飲み薬(プレドニゾロン30mg:5mg錠を6個)を一日おきに、2ヶ月間飲み、5mg錠を1個ずつ、2ヶ月毎に減らしていきます。だいたい1年間で治療が終了します。この治療経過中に血尿やタンパク尿が良くなれば、早めに減らしたり、やめたりすることもできます。 ④ B-SPOT療法・EAT(鼻咽頭擦過療法) 扁桃摘出術を施行した後にも、腎炎がくすぶる場合には、鼻咽頭の炎症が原因の可能性もあり、専門的に行っている耳鼻咽喉科の先生へ紹介させて頂きます。 ⑤ 免疫抑制薬 ステロイド薬に加えて免疫抑制剤を一緒に服用して頂くことがあります。 ⑥ 抗血小板薬 ジピリダモール(ペルサンチン®)、塩酸ジラゼプ(コメリアン®)などで、活性化した血小板が腎臓を弱らせるのを抑えようとするものです。1980 年代に日本でタンパク尿を減らす可能性のあることが報告され、慢性糸球体腎炎やIgA腎症に保険適応があります。 ⑦ n—3 系脂肪酸(魚油) 動脈硬化や血栓の防止に有効とされます。 図1)成人IgA腎症の腎機能障害の進行抑制を目的とした治療介入の適応:IgA腎症診療ガイドライン2017 p.83を一部改変 腎臓の力(GFR)と蛋白尿の量(1日あたり何gか)によって治療法をみたものです。実際の診療では、これらに加えて腎生検の様子や年齢も併せて、治療法を慎重に決めます。 注1:その他の治療:扁桃摘出術(+ステロイドパルス併用療法)、免疫抑制薬、抗血小板薬、n-3 系脂肪酸(魚油) 注2:その他の治療:保存療法を行います。必要に応じて、高血圧、食塩摂取、脂質異常症、耐糖能異常、肥満、喫煙、貧血、骨やミネラル、代謝性アシドーシスなどの管理を参照にします。 イラスト: 『かわいいフリー素材集 いらすとや』 さん 参考文献: ① IgA腎症診療ガイドライン2017 ② Hospitalist 腎疾患2 vol.6 No.1 2018 p.160-p.168 『IgA腎症と感染後糸球体腎炎:最もコモンな腎炎と古くて新しい腎炎』 森川貴詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓病教室目的:透析や腎移植などの腎代替療法を予防すること ● 腎臓や腎臓病について理解を深める。 ● 食事療法、薬物療法、日常生活の注意点について学ぶ。 ● 患者さんや御家族が学んだことを、退院後にも、できる範囲で続ける。 ● 以上から、透析や腎移植などの腎代替療法にならないように予防し、なりそうであっても、少しでも先延ばしにする。 スケジュール (水) (木) (金) (土)(日) (月) 午前 医師:講義 『腎臓病について』 薬剤師:講義 『薬物療法』 3泊4日コース: 退院 5泊6日コース: 外泊・食事表記入 管理栄養士:食事表の確認、指導。 5泊6日コース退院 午後 入院 検査 看護師:講義、DVD 『腎臓の働き、日常生活の過ごし方』 管理栄養士:集団栄養指導 食育SATシステム 『慢性腎臓病の食餌療法』 ● 5泊6日コース:週末に外泊中の食事内容を記載して、個人栄養指導の時に栄養士と改善点を相談した後、退院します。 ● 3泊4日コース:週末の外泊、食事内容の記載、個人栄養指導を入院中に行わず、外来で行います。 ● 入院中の講義がない時に、必要な検査を可能な範囲で行います。 医師、看護師、薬剤師、栄養士からの指導内容 ★医師 ● 腎臓の構造、働き、腎臓病で起こってくること、その予防法などについて、疑問点をうかがいながら、約50-70分お話をします。 ● 毎回1-4人くらいの人数で、講義というような堅苦しい雰囲気も無く、みなさん、和気あいあいと学んでおられます。 ● 御家族もいっしょに参加されています。 ★看護師 ● パンフレット、DVDなどによる学習を通じて、日常生活の改善点について相談します。 ★薬剤師 ● 腎臓病の方は、たくさんの薬をのんでおられることが多く、それぞれの効果について確認をします。 ● 状況に応じて薬剤の減量や調整も行います。 ★栄養士 ● 食育SATシステムを用いて、食事の改善点について相談します。 ● この内容を元に、ふだんの食事をどのように改善すればよいかを一緒に考えます。 食育SATシステムとは □たくさんの食品サンプルの中から、普段食べていそうな食品を選んで、トレイの上におくだけで、エネルギー、たんぱく、塩分などが、瞬時にわかります。 この中から、ためしに、若い頃に時々食べていたようなメニューを選んで、 トレイの上に置いてみると、、、 画面に摂取量が出るのですが、一食で エネルギー 1365 kcal タンパク質 45.5 g 食塩相当量 11.6 g これはダメでした。 各職種で患者さんの情報をまとめて、外来主治医と相談 □それぞれの患者さんについて、医師、栄養士、看護師、薬剤師がすべての指導の後にミーティングを行って、情報を共有します。この内容を各患者さんの主治医にフィードバックして、少しでも腎臓病の進行を抑えられるように、今後の外来における治療や指導へと活かします。大切なことは、患者さんができる範囲のことを、続けて頂くことです。すべてできなくてもかまいません。 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎生検の解説腎生検 腎臓病の診断と治療に 大切な検査 腎臓の一部を細い針を使って採取して、顕微鏡で観察することで、腎臓病の診断や治療を決めるために行います。 腎生検の適応 次のような場合、腎生検を受けて頂く必要があるかもしれませんので、ご来院ください。 ❶ タンパク尿や血尿が続く ❷ たくさんのタンパク尿がある (ネフローゼ症候群) ❸ 原因不明または急に、腎臓が悪くなった ❹ 全身性の病気(膠原病など)をお持ちの患者さんで、腎臓が悪くなった 注)腎臓組織の観察から得られるメリットと、合併症(出血など)のデメリットを天秤にかけて、患者さんと十分に相談しながら、 行うかどうかを決めています。①~④があるからといって、必ず行うわけではありません。 Q&A 腎生検は、何のためにするのですか?(目的) ●腎臓の一部(長さ15mm×幅1mmくらいを約3本)を採取して、顕微鏡で観察します。 ●腎臓病の種類や程度を診断して、今後の病気の進み具合を予想したり、治療方針を決定します。 何人くらい、されていますか? どんな腎臓病が多いですか? 腎生検で診断された疾患の頻度(%) 当院約20年間 その他:アミロイドーシス、骨髄腫腎、フィブリラリー腎症、強皮症腎、血栓性血小板減少性紫斑病、血栓性微小血管障害コレステロール塞栓症、肥満関連腎症、基底膜菲薄症、アルポート症候群、ファブリー病、ミトコンドリア脳筋症、C3腎症、腎サルコイドーシス、IgG4関連腎炎、IgM陽性形質細胞を伴う尿細管間質性腎炎、急性尿細管壊死、妊娠高血圧腎症など どんな感じで行われますか?(方法) 日程: 毎週(火)(木)の午前中(一日最大4人くらい) 場所: 病棟の検査室(14階すみれ病棟) 体勢: ベッド上、うつぶせ 装置: 超音波 麻酔: 局所麻酔 検査時間: 約30分(準備とかたづけ:約20分、採取:約10分) 検査後の安静: あおむけで約6時間(徐々に楽にしていきます)。 18時頃の夕食で座位、21時頃の消灯以降でトイレに歩いて行けます。 合併症はありますか? ●あおむけの安静により、腰痛が起こることがあります。 ●腎臓のはしっこに出血をします。当院では、20年間で約2500人の患者さんに腎生検を行い、輸血5人(元々貧血の人、血小板の少ない人、かなりむくみの強い人などを含む)、血管内カテーテルによる止血は0人です。 ●これまでの報告よりも、かなり安全に行えている実績はありますが、常に安全第一、出血が最小限になるように努めています。 検査結果は、いつ頃わかりますか? ●院内で標本作成をしておりますので、たいていの場合、検査翌日に結果説明を行っています。 ●この時に、今後の治療方針をお話し、治療が必要な場合、継続して行うこともできます。 (電子顕微鏡の結果は、だいたい6週間後になります。) 検査後に気を付けることは? ●3週間くらいは、激しい運動をしたり、重いものを持ったりすることを避けてください。 ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓よもやま話4 紅茶で腎不全になる?アイスティー腎症って何?健康に良いとされる紅茶ですが、場合によっては腎不全の原因に、、、 □ □皆さんは紅茶を良く飲まれますか?アールグレイ、ダージリンティー、セイロンティー・・・ 色んな種類があって香りも様々で、選ぶのが楽しくなりますよね。 さらに、紅茶は健康に良いと言われています。カテキンやポリフェノールといった抗酸化物質は特に有名で、生活習慣病の予防や老化の抑制に繋がるとされています。 美味しくて、健康に良いと向かうところ敵なし・・・に見える紅茶ですが、実は飲みすぎると、腎臓がどんどん悪くなって、腎不全や透析になってしまうことがあるのです。 これは、どうしてなのでしょうか? 原因は、シュウ酸 □ □それは紅茶に含まれるシュウ酸という物質が原因です。シュウ酸の多くは、腎臓を通って、おしっこの中へ捨てられます。このため、紅茶を飲みすぎてシュウ酸をたくさん摂ってしまうと、人によっては、腎臓にどんどんシュウ酸の結晶が貯まってしまう腎臓病、シュウ酸腎症(別名:アイスティー腎症)になることがあるのです。さらに、もともと腎臓が悪いと、よりいっそう腎臓から十分にシュウ酸を捨てることが出来ません。このような状態でたくさん紅茶を飲み続けると、どんどん腎臓が悪くなって、腎不全や透析になってしまう危険があるのです。 他にもシュウ酸を多く含む食品は、、、 □このシュウ酸ですが、紅茶以外にも、ホウレン草、サツマイモ、タケノコ、チョコレート、ナッツ類、スターフルーツ等にもたくさん含まれているため、食べる時に注意が必要です。こうなってくると、『あぁ、紅茶もホウレン草もタケノコも良くないんだ・・・もう食べたら駄目なんだ・・・。』と悲観的に思われるかもしれません。 しかし、決してそうではありません。紅茶には、初めに述べたような良いところだって沢山あります。他の食べ物にも良いところも、悪いところもあるんです。 □つまり、紅茶を飲み過ぎて、チョコレートを食べ過ぎて・・・、これではシュウ酸がどんどん体の中にたくさん貯まって、病気が起こりやすくなってしまうわけです。お酒も飲み過ぎると体に悪いですが、ほどほどに摂れば、むしろ健康に良いとされています。どんなものでも“適度な量”で、味わい、楽しむことが大切になってくるのです。 胃腸に持病がある方や、胃腸の手術を受けられた方は要注意 □ □補足ですが、もともと胃腸の持病がある人や、胃腸の手術を受けられた方は要注意です。 摂取したシュウ酸の一部は腸の中でカルシウムとくっついて、便中に捨てられます。だから、シュウ酸を含む食品をたくさん食べても、腸の中にカルシウムがしっかりあれば、シュウ酸が腸からたくさん吸収されることにはなりません。しかし、胃腸の持病がある方や、手術で胃腸の切除をした方は、脂肪の吸収が悪くなっていて、この脂肪がカルシウムとくっついてしまいます。このため、シュウ酸がカルシウムとくっつけなくなって、便中に捨てられなくなり、腸から吸収されるシュウ酸の量が増えてしまうのです。このような理由で、胃腸に持病がある人や、胃腸の手術を受けられた人は、特に、シュウ酸を多く含む食品を摂りすぎないようにする必要があります。 すべての食品をバランスよく □以上、紅茶を飲みすぎると、腎不全になってしまうかもしれない訳をざっと解説しました。最後に繰り返しになりますが、「あぁ怖いな、もう紅茶なんて飲みたくない。」なんてことは思わないでください。食べ物は良い点、悪い点があります。全てほどほどに、バランス良くが、大切なのです。 では皆さん、今日も紅茶を、ほどほどに楽しんでくださいね! 山崎 大輔 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓よもやま話3 スイカ腎臓に悪いんですか?夏によくある 患者さんとの会話 □ 患者さん: 『ええ!?スイカ、腎臓に悪いんですか!?スイカは腎臓に良いって、昔から云うから、たくさん食べてました!』 医師: 『実は、悪いんです。正確に言うと、スイカは腎臓の力が落ちている人には、良くないんですよ。スイカには、カリウムというミネラルがたくさん入っています。腎臓の力が落ちていると、それがおしっこに出せなくなって、体に貯まり、心臓なんかに悪さをするんですよ。』 患者さん: 『知りませんでした。。。』 スイカが腎臓に良い? という迷信 □ 夏になると毎年、腎臓病教室で繰り返される患者さんとの、この会話。原因は、いまだに『スイカは腎臓に良い』という迷信が、多くの方々に信じられているからです。このため、スイカの季節になると、腎臓病の患者さんが『腎臓を良くしよう』と、スイカをたくさん食べられて、高カリウム血症(血の中にカリウムがたくさん貯まった状態)になって、しばしば来院されます。高カリウム血症になると、いろいろと悪いことが体に起こります。特に心臓。動悸や脈が飛ぶ事を感じる不整脈だけでなく、心停止を起こして死に至るような恐ろしいケースもあり、とても注意が必要です。 基本的には 食べない方が無難 □では、そもそもなぜ『スイカは腎臓に良い』というような話が昔から受け継がれているのでしょうか。想像の域を出ませんが、《腎臓が悪いとむくむ→むくみをとるのに尿をたくさん出す必要がある→尿を出しやすくする(利尿作用を持つ)スイカがよい》、とされたのかもしれません。確かに、スイカの90%近くは水分ですので、これだけでも尿量は増えるでしょう。さらに、スイカにはカリウムが豊富に含まれています。カリウムは、ナトリウム(塩分)と一緒に水分を尿へ捨てやすくするので、さらに尿量を増やすことができるのです。確かに、このようなスイカの利尿作用は、むくみをとって血圧を下げるので腎臓に良いかもしれません。 □しかし、これは腎臓が正常に働く元気な状態であればの話です。 腎臓の力が弱い方、腎不全の方には、スイカの水分とカリウムが逆にアダになります。腎臓の力が落ちているために、水分やカリウムが尿へきちんと排泄できず、むくみや高カリウム血症を引き起こしてしまいます。つまり、スイカが毒になってしまうのです。くれぐれも、迷信にとらわれてスイカが腎臓に良いと思わないように、基本的にはなるべくスイカを食べないように、ご注意ください! 注) 腎臓が悪くても、尿細管障害が病気の中心であるために、血中のカリウムが低くなってしまう患者さんが時々おられます。このような場合は、ご自分の検査結果を参考にしながら、主治医の先生にスイカを食べても良いか、ご相談なさってください。 スイカ以外にも、カリウムの多い食べ物があります。 □ちなみに、果物、生野菜、乾物などにもカリウムは多く含まれています。 「正月にみかん、毎日5,6個食べてました」 「目にいいからと思って、干しブドウばっかり食べてた。」 「田舎から、ひじきがたくさん送られてきて、もったいないから毎日食べてました。」 すべて、患者さんから実際に伺った話で、大事には至りませんでしたが、カリウムが上昇しておりました。ご注意ください! 森川 貴 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓よもやま話2 腎不全と金魚の水槽2金魚を生かすには? □前回は、腎不全と金魚の水槽ということで、ヒトの体でも金魚の水槽でも、窒素化合物を処理することがとても大切であり、人体においてその働きを担う腎臓の重要性をあらためて気づかされたのでした。 □さて、今回は、死んでしまった金魚たちをどのように飼育し始めていれば死なさずにすんだのか、そのコツについて考えてみました。 すると、驚くべきことに『腎不全』の患者さんに対して、すでに行われている治療法と、全くもって似ていることが判明しました。それらについてお話していきたいと思います。 コツ① 1週間はエサをあげない □金魚にとって毒になる窒素化合物 (アンモニア)は、エサの中のタンパク質から作られます。だから、たくさんエサを与えると、たくさんアンモニア(毒)が発生します。そして、この毒を分解するバクテリアが当初は少ないために、毒がどんどんたまってしまい金魚を死に追いやるのです。このため、飼育し始めの1週間はエサを与えないようにする必要があるのです。 □このことは、ヒトの『腎不全』に対する食事療法:タンパク制限と類似しています。腎臓が弱っているときにタンパク質をたくさん取ると、窒素化合物が排泄しきれずにどんどん貯まってしまいます。これによって尿毒症が進行し、末期腎不全に陥り易くなるのです。だから、食事療法:タンパク制限は『腎不全』の治療としてとても大切なことです。 □さて、金魚の話に戻りますが、エサのやりすぎは、金魚にとって他の意味でも危険なことです。というのも、金魚には、目の前に来たエサは満腹であろうがどんどん食べてしまうという習性があります。さらに、金魚には胃が無くて、食べた物が直接腸に入るため、エサをやりすぎると腸にエサがどんどんたまり、腸閉塞になって死んでしまうのです。エサのやりすぎには注意しましょう。 コツ② 活性炭やバクテリア、水草などを水槽に入れる □とにかく発生して貯まった窒素化合物を吸着したり、吸収したりしてやろうというものです。特に活性炭は強力に窒素化合物を吸着するらしく、よい方法のようです。私の購入した濾過フィルターの中にも、少量の活性炭は入っていました。しかし、効果があまりなかったのは、その量が少なかったからでしょう。 □この活性炭は、『腎不全』の治療薬としても使われています、インダキシル硫酸などの窒素化合物を腸管で吸着して、便と一緒に排泄するというものです。便秘になりやすく、また、服用時に口の中がジャリジャリしてしまうために飲みにくい薬剤ですが、できれば内服したいです。 □バクテリアのもとは、水槽により早くバクテリアが繁殖してくれることを助けてくれるので、手に入れば必ず入れたいところです。水草は成長に窒素化合物を必要としますので、幾分かは吸収してくれるとは思いますが、即効性はないでしょう。実際、近所で大量に採ってきたアナカリスを入れていましたが、初めの数週間に関して効果はありませんでした。 コツ③ 適度に水替えをする □貯まった窒素化合物を水ごと除去してやろうというものです。これが最も効果的な方法です。ただし、水槽内の水を一気に変えてしまうと、金魚にとって環境の変化が激しすぎて、体調不良や死亡の原因になります。また、アンモニアなどの窒素化合物を分解してくれるバクテリアも一緒に捨てることになります。このため、水槽の1/3程度の量の水を、3日に1回程度の頻度で変えてやる必要があります。 □これは、『腎不全』にとっての、透析(血液透析・腹膜透析)療法にあたります。末期腎不全に陥ってしまい、自前の腎臓で窒素化合物を体外に排泄できなくなった場合は、透析によって水と一緒に体内から抜き取ってしまうか、腎臓移植しかありません。これらの方法が無かった1960年以前は、末期腎不全に陥った人は皆、尿毒症で亡くなっておられたのです。このため、血液透析の場合は、標準で週に3回、1回3~4時間の透析を、腹膜透析の場合は1日4回ほど透析液の交換をする必要があります。これらには、日常生活多くの時間をかけることになり、腎不全の患者さんにとってかなりの負担になるのですが、生命維持のために不可欠です。 さいごに □ □以上、金魚の水槽とヒトの体において、窒素化合物を処理する方法についてみてきました。結構共通する点が多く、興味深いなあと思うと同時に、結局、物理的に窒素化合物を除去してやる水替えと透析療法が最も効果的な方法であることに変わりはないと思われるのでした。 □なお、このたびは、金魚すくいでゲットした金魚を突然飼育することになった場合の方法を記載しました。一般家庭で金魚を飼い始めるのは、このようなケースが多いかと思われ、これまでのお話をご参考の上、飼育にチャレンジして下さい。ただし、金魚を飼い始める際に最もよいのは、あらかじめ水槽を用意して、活性炭やバクテリアの元等も前もっていれておいて、水槽の環境を十分に整えた上で、飼育し始めることのようですので、できればそちらをお薦めします。 森川 貴 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓よもやま話1 腎不全と金魚の水槽はじめに □腎臓の大切な働きの一つとして、生き物にとって毒になる窒素(N)化合物を、尿として体の外に捨てるというものがあります。この窒素化合物は、食べ物の中に含まれるタンパク質から作られます。私たちヒトでは、主に尿素という窒素化合物(他には尿酸、クレアチニン、インドキシル硫酸など)となり、体外に排泄されます。 □このため、腎臓の力がほとんど無くなってしまった状態「末期腎不全」になると、尿素を中心とした窒素化合物が体内にたくさん貯まってしまう尿毒症となって、最終的には命を落としてしまうことになるのです。 □さて、この「末期腎不全」の状況と結構似ているなぁと感じたことが、最近身近な出来事の中にありました。それは、夏祭りの露店でゲットしてきた金魚を飼育し始めた時の事で、これについて少しお話ししたいと思います。 数日間で金魚の元気がなくなって... □昨年の夏祭り、露店の金魚すくいで数匹の金魚をもらってきました。娘が動物を飼育する責任感と生命の大切さを学べたらいいなと思い、早速、金魚飼育セット(水槽、エアポンプ、簡単な濾過フィルター、カルキ抜き、金魚のエサ等入り)を近所のホームセンターで購入して、飼育を始めました。 □ところが、初めの数日間こそ金魚たちは水槽の中を元気に泳ぎ回っていたのですが、徐々に元気を無くしていき、日を追う毎に、一匹また一匹と死んでいくではありませんか。これでは、生命の大切さを教えるどころでは無く、金魚すらろくに飼育できないだめな父親の烙印を押されてしまいます(まあ押されているのですが)。娘もせっかくもらってきた金魚が次々に死んでいく姿を見て、悲壮な様子です 原因は窒素化合物 □そこで、その原因が何なのか、いろいろと調べてみました。すると、驚くべき事実にぶち当たりました。新しく水槽で金魚を飼い始めた時に、金魚の生死をわけるものとして、窒素化合物(アンモニアや亜硝酸)がとても重要であるというのです。 □どういうことか言いますと、金魚を含めた魚類は、エサの中のたんぱく質をアンモニア(毒)という窒素化合物で体外に捨てます。これが金魚の水槽内にどんどん溜まっていきますが、しばらくすると、アンモニアを分解するバクテリアが水槽内に繁殖してきて、亜硝酸(毒)に変えていきます。しかし、今度は亜硝酸が溜まってきます。そこで、次に亜硝酸を硝酸塩(無毒)に分解するバクテリアも繁殖してくるのですが、飼い始めの3~4週間ではこれらのバクテリアが十分に繁殖しておらず、窒素化合物を分解する速さよりも、蓄積する速さの方が勝ってしまうのです。 □このため、金魚を飼い始めて日が浅い水槽では、窒素化合物が大量に溜まってしまう、ヒトの体に例えるなら「末期腎不全」の状態となって、金魚の生命を奪ってしまうのです。我が家の金魚たちも、これが原因で死んでいったのでしょう。 腎臓の重要さを再認識 □このように、ヒトの体でも金魚の水槽でも、窒素化合物をきちんと処理することが生命にとって、とても大切であることがわかります。腎臓が生命を維持するということに関して、いかに重要な役割を担っているかを、金魚を飼育することで再確認させられました。 □ちなみに、飼い始めた頃の高濃度窒素化合物状態を一匹だけが何とか乗りきり、生き残りました。その金魚は、それから約半年が過ぎた現在、後に金魚屋さんで買ってきた他の金魚達と一緒に水槽内を元気に泳いでおります。 森川 貴 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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脳神経外科ガンマナイフ治療 | 脳神経外科<完全予約制>ガンマナイフ治療について ガンマナイフは、スウェーデンのカロリンスカ大学の脳神経外科医であるレクセル教授により開発され、1968年より臨床応用が始められた頭蓋内疾患専用の定位的放射線治療装置です。定位というのは位置を定めるという意味であり、治療標的に対してピンポイントの照射を行うことをいいます。これにより様々な頭蓋内疾患の高い制御効果が得られます。開頭手術のような切開を加える必要はありませんので、体には極めて負担が少なく、短期間での入院による治療が可能です。 ガンマナイフ治療の原理 ガンマナイフユニットの中には192個のコバルト(Co60)線源が半球状に配置されており、各々からガンマ線が中心の1点に向けて集中照射するように配置されています(図1)。そのため標的病変に対して短時間で高線量の照射が可能となる一方、周囲組織に対する影響は最小限となっています。非常にシャープな線量分布であり、他の定位放射線治療装置に比較すると、周辺組織への被曝は極めて少ない特徴があります(図2)。 図1.照射のイメージ 図2. ガンマナイフの線量計画(聴神経腫瘍) 最新型レクセルガンマナイフlcon(アイコン)の特徴 図3.レクセルガンマナイフ アイコン 2020年7月、従来のガンマナイフパーフェクションから最新型であるIcon(アイコン)による治療がスタートしました。この装置にはコーンビームCTと照射中の患者さんの動きをリアルタイムにモニタリングするシステム(HDMM)が備わっています。これらを用いることにより従来からの頭部をフレームで固定する治療(単回照射)に加えて、マスクで固定する分割照射(複数回照射)も可能となりました。分割照射の利点として、大きな病変やリスクの高い部位にある病変の治療をより安全かつ効果的に行うことができます。治療の適応範囲が広がることにより、より多くの患者様のニーズに応えることができるようになりました。 ガンマナイフ治療の適応 ガンマナイフ治療の対象となるのは、基本的には大きさが3cmまでの脳疾患です。主な適応疾患は、転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体腺腫、脳動静脈奇形などです。脳腫瘍の治療後は約90%の症例で腫瘍を大きくしない効果(消失、縮小、不変を含む)があります。また最近では三叉神経痛にも良好な効果が得られており、2015年に保険適応として認められるとともに治療症例数が増加しています。 ガンマナイフアイコンではマスク固定を用いた分割照射(複数回照射)による治療が容易に可能です。疾患にもよりますが、3cmを超えるような大きな病変にも効果的で安全な治療を行うことができます。 各疾患について 転移性脳腫瘍 最も多い治療疾患が転移性脳腫瘍です。適応は直径3cmまでの大きさの腫瘍で、治療後の腫瘍制御効果(少なくとも腫瘍を大きくさせない)は約90%です。神経症状のある場合もその改善が期待できます。病変の数が多発性にあっても1日で治療が可能であり、以前に全脳照射等の放射線治療を受けられた方にも治療は可能です。治療が1日で終わるので、必要であれば速やかに全身化学療法など次の治療へ移っていただくこともできます。大きな病変に対しては、分割照射(複数回照射)による治療をお勧めする場合があります。 右前頭葉の転移性脳腫瘍症例 治療時 6ヶ月後 6ヶ月後に腫瘍は消失しました。 転移性脳腫瘍(15カ所の腫瘍)の線量計画 多発性の病変にも治療が可能です。 聴神経腫瘍 片側の難聴で発症することの多い疾患です。大きな腫瘍で水頭症を合併しているような場合は開頭手術が適応となります。ガンマナイフ治療の適応として、大きさは2.5cm以下であり、かつ小脳失調症状や顔面のしびれ等の脳圧迫症状がないことが条件となります。治療から5~10年後の腫瘍局所制御率は約90%です。特徴としては約6割の症例で治療後3カ月~2年半の間に一時的に腫瘍が膨化してやや増大します。その後徐々に縮小していきます。合併症として顔面神経麻痺の発生する確率は非常に低く、当院では約700例の治療後一過性に軽度の症状が出現した患者さんが2人おられるのみでした。治療時に有効聴力のある患者さんの6割は5年後にも有効聴力が保たれています。また、手術加療が必要な大きな聴神経腫瘍に対しましても、機能温存を考えて腫瘍摘出を行い、その後ガンマナイフ治療を行うことで、神経機能を温存した治療が可能です。 左側聴神経腫瘍症例 治療時 2年後 9年後 9年後腫瘍は著明に縮小しています。 髄膜腫 最も頻度の高い良性脳腫瘍で脳を包む膜から発生します。頭蓋内のあらゆる部位に発生しますが、脳の表面に近いものや大きなものは基本的に開頭手術による治療となります。ガンマナイフ治療の適応としては、脳の深部に存在し手術の危険性が高いものや径3cmまでの大きさで脳圧迫症状のないことが条件となります。手術による摘出術後に残存した病変も治療の対象です。治療後5-10年の腫瘍制御率は約90%です。 頭蓋底に存在し視路に近接する髄膜腫の場合、分割照射(複数回照射)による治療により、安全かつ効果的な治療を行うことができます。 髄膜腫の症例 治療時 10年後 摘出術が困難な右海綿静脈洞部の髄膜腫です。治療10年後縮小した状態が続いています。 下垂体腺腫(非機能性)の症例 摘出術前 ガンマナイフ時線量計画 治療8年後 44歳女性。視力視野障害で発症した非機能性下垂体腺腫を経鼻的手術で摘出しました。術後左海綿静脈同部に残存した腫瘍を含めてガンマナイフ治療を施行。治療8年後腫瘍は消失しています。 脳動静脈奇形 典型的には、若年者に頭蓋内出血あるいは症候性てんかんなどで発症する疾患です。未治療の状態では年間に約3%の確率で出血すると言われており、出血した場合神経症状を後遺したり最悪の場合生命に危険が及ぶこともあります。治療の目的は異常な血管網を閉塞させて、結果として出血を予防することです。閉塞までは少し時間がかかり、治療から3年後の閉塞率は奇形の大きさにもよりますが、60-90%程度です。完全な閉塞が確認されればほぼ出血の危険性はなくなりますが、少しでも残った場合は出血の危険性は残ります。もし病変が残存した場合は再度治療を行い閉塞に導くことも可能です。 脳動静脈奇形症例 ガンマナイフ治療時 2年後 治療2年後に脳動静脈奇形は閉塞しました。 三叉神経痛(特発性) 顔面片側の強い痛み(電撃痛と呼ばれます)が特徴的で、原因は頭蓋内の血管が三叉神経のある部分で接触していることにより起こります。開頭術により接触している血管を神経から離す手術(微小血管減圧術)により高い確率で治癒が期待できます。ただ患者さんの中にはご高齢の方あるいは全身状態が良くなく全身麻酔による手術が困難な方もおられ、このような方が治療の良い適応となります。手術のように治療後すぐに痛みがなくなるわけではありませんが、治療2カ月後の痛みの緩和率は約80%です。2015年に保険収載されてから患者さんの数は増加してきています。 三叉神経痛に対する線量計画 右側脳槽部三叉神経に対してガンマナイフ治療を施行しています。 ガンマナイフ治療の合併症について 病変の種類、大きさや部位によって異なりますが、治療数週~数か月後に病変周囲の脳浮腫が生じて神経症状の悪化をきたすことがあります。極めてまれですが、放射線壊死という病態に進行し外科的な治療が必要になる場合もあります。 病変が脳の表面にありかつ大きい場合には、近傍の皮膚にも放射線が当たるため、その部分に脱毛が生じることがあります。 治療実績(1994年1月~2019年12月、計7325症例) 治療の流れ 頭部をマスクで固定する方法とフレームによる固定方法があります。 1.マスク固定(主に分割照射) 照射回数に応じた入院(または通院)治療 ①MRI、CTスキャンなどを撮影し、病変部位の決定後、最も有効で周囲神経組織に障害 を与えない線量計画を行います(外来あるいは入院日)。 ②マスクを作成し装着します。 ③ガンマナイフユニットに一体化されたコーンビームCTを照射前に撮影し、線量計画の画像と合成することにより、正確な治療の位置を設定します。 ④線量計画に従って自動的に病変に照射します。 マーカーや赤外線カメラにより高い治療精度を維持しながら照射します。 2.フレーム固定(単回照射) 基本的に3日間の入院治療 ①局所麻酔下に頭部にフレームを固定します ②線量計画のためにMRI、CT、脳血管撮影(脳動静脈奇形のみ)などの検査を行います ③専用のコンピューターを用いて病変に対して最も有効で周囲神経組織に障害を与えない線量計画を行います ④線量計画に従って自動的に病変に照射します。実際の治療時間は病変の大きさや性状、個数により異なりますが、約15分から3時間程度です。 治療後は紹介元の病院で3~6カ月毎のMRI撮影を行い、経過観察していただきます。詳しく見る
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整形外科PRP(多血小板血漿)治療について治療の概要 PRP(多血小板血漿)療法は患者様の血液を加工し、組織の再生に関連する成分を抽出し、疾患のある部位に投与することで、“患者様自身の体がもつ修復力”を サポートし、改善に導く治療です。自分の血液を用いるため重篤な副作用なく利用できることが特徴です。 治療対象の疾患 スポーツ関連疾患(上腕骨外側上顆炎、尺側側副靭帯損傷、膝蓋腱炎、アキレス腱炎) 組織自体が持つ再生能力を超えて、組織への繰り返しの力学的な負荷が積み重なると組織が“変性”してしまい、なかなか治りにくい環境になってしまうことがあります。PRPはこれらの痛んだ組織の細胞を刺激することにより、より正常に近い環境の組織に近づけ、機能を改善することを目的としています。 また、スポーツを行っており、捻挫や肉離れ等の症状があり、少しでも早期復帰を望む方も適応となる場合があります。 変形性膝関節症 変形性膝関節症は関節軟骨の老化、肥満や素因(遺伝子)、また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、化膿性関節炎などを主因として発症します。例えば、加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形していきますが、同時に分子レベルでも組織修復のバランスの破綻が生じ、疼痛やさらなる関節の変形が促進されます。PRPは主にこの分子レベルでの組織修復のバランスを整える働きを示し、疼痛低減や現状以上の変形の進行を食い止めることを目的としています。 近年の研究 PRPの血漿や血小板には組織の修復を刺激促進する成分が含まれていることが分かっており、これらを濃縮投与することによる局所的な部位の早期治癒や疼痛の低減への関連性が統計的に示されています。しかしながら、作用メカニズムについて詳細な科学的証明はなされておらず、今なお研究の対象とされています。 当院で用いるPRPの特徴 PRPといっても調整方法によって得られる成分が異なり、特性が異なるといわれています。 当院で用いるPRPはArthrex社製のACPダブルシリンジシステムにより精製される“白血球をほとんど含まないPRP“です。この白血球をほとんど含まないタイプのPRPは変形性膝関節症の治療に一般的に用いられる種類のものであり、信頼性の高い研究で変形性膝関節症に対して治療の安全性と有効性が統計的に示されています(Smith et al. 2016)、(Cerza et al. 2012)。 また、現状スポーツ外傷・障害(四肢の慢性腱、靱帯損傷)に対しても信頼性の高い研究で有効性・安全性が確認されております(Boesen et al. 2017)、(Vetrano et al. 2013)。 受診の流れ 本治療の適応であるかを診断するために、まず1度通常の受診をしていただきます。 初診の方は紹介状が必要です。 受診結果に基づき改めてPRP療法の予約を行っていただきます。 PRP療法当日は説明~採血~治療まで30~60分程度で終了します。 具体的な治療方法 患者様の血液(15ml)を採取し、遠心分離処理をします。遠心分離をすると血液が成分に応じて分離するので、血小板を多く含む血漿部分層をPRPとして採取し、これを患部に注射します。 治療後の一般的な流れと注意点 注射後2~3日間は激しい運動をしないでください。 注射時には患部の痛みが強い場合があり、また注射後1週間程度腫れや痛み、熱感が持続することがあります。 日常生活動作は注射当日から可能です。 注射当日、お待ちいただく時間が発生する場合があります。 治療効果、効果の持続時間には個人差があります。 詳細は診察時に担当医にお問合せください。 PRP治療が受けることができない方(除外基準) 出血傾向のある疾患のある方 抗凝固薬を使用されている方 貧血のある方 重篤な感染症のある方や、感染を起こしやすい基礎疾患(がん、糖尿病、免疫不全症、膠原病、肝硬変など)をお持ちの方 その他主治医が不適当と判断した方 費用 PRPは保険外診療(自由診療)となり、当院では以下の通りに価格を設定しております。疾患・症状により複数回の治療が望ましい場合もありますので、詳細は診察時に担当医にお問い合わせください。 スポーツ関連疾患 : 注射1回あたり 31,900円(税込) 変形性膝関節症 : 注射1回あたり 49,500円(税込) 参考文献 Adam W. Anz et al. (2019). Exercise-Mobilized Platelet-Rich Plasma: Short-Term Exercise Increases Stem Cell and Platelet Concentrations in Platelet-Rich Plasma. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 35, No 1 (January), 2019: pp 192-200 Wen-Li Dai et al. (2017). Efficacy of Platelet-Rich Plasma in the Treatment of Knee Osteoarthritis: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 33, No 3 (March), 2017: pp 659-670 Patrick A. Smith et al.(2016). Intra-articular Autologous Conditioned Plasma Injections Provide Safe and Efficacious Treatment for Knee Osteoarthritis An FDA-Sanctioned, Randomized, Double-blind, Placebo-controlled Clinical Trial. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 44, No. 4 Fabio Cerza et al. (2012). Comparison between hyaluronic acid and platelet-rich plasma, intra-articular infiltration in the treatment of gonarthrosis. Am J Sports Med. 2012 Dec;40(12):2822-7 Anders Ploug Boesen et al.(2017). Effect of High-Volume Injection, Platelet-Rich Plasma, and Sham Treatment in Chronic Midportion Achilles Tendinopathy A Randomized Double-Blinded Prospective Study. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 45, No. 9 Mario Vetrano et al. (2013). Platelet-Rich Plasma Versus Focused Shock Waves in the Treatment of Jumper’s Knee in Athletes. The American Journal of Sports Medicine, Vol. 41, No. 4詳しく見る
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脳神経外科三叉神経痛に対する集学的治療三叉神経痛の症状 三叉神経痛とは、顔の片側で、電気ショックのような短い激しい痛みを生ずる病気です。 男性よりも女性にやや多く、人口10万人あたり4〜13人に認められます。痛みを生じるのは頬や下あご、口の中であることが多く、額のあたりに生じることもあります。 痛みの特徴は、突然刺すような短い痛み(数秒〜2分以内)が起こり、すぐにおさまることが繰り返されます。 この発作には引き金となる部位があり、かるく触れると痛みの発作が誘発されます。食事での咀嚼、話をする、歯を磨く、冷たい空気を吸う、微笑む、ひげを剃る、顔を洗う、などの動作で痛みが起こります。 病気が長期にわたる場合には発作の間に持続的な鈍痛を感じる場合もあります。 痛みが口腔内に生じる場合には、虫歯が原因であるように診断されることがあり、頬に生じた場合には蓄膿が原因であるように診断される場合があります。 三叉神経痛の原因 三叉神経は顔面の感覚と咀嚼筋の感覚・運動を司っています。三叉神経痛のほとんどは三叉神経の根元付近に対して動脈または静脈のループが圧迫をすることで起こります。動脈の圧迫された三叉神経は脱髄(神経の鞘の変性)を来し、異常な神経活動を発生することで激しい痛みを生じると考えられています。このため、軽い刺激で激しい発作が引き起こされると説明されます。 三叉神経痛の診断 三叉神経痛の診断は、痛みの特徴や、痛い部位、痛みの生じかたを詳細に調べることが最も重要です。カルバマゼピンなどの薬物治療に対して痛みが改善する、ということも診断上有用です。 三叉神経痛が疑われる場合、MRIを用いた画像診断を行います。MRIでは、三叉神経に対する脳血管の圧迫の有無を調べます。また同時に三叉神経の周囲に脳腫瘍や血管奇形等の異常がないかと、脳の中に多発性硬化症や脳梗塞などの異常がないかどうかを調べます。 当院では3テスラの高解像度MRIを用いて詳細な画像診断を行っています。 三叉神経痛の治療 ①薬物治療 カルバマゼピン(テグレトール)による薬物療法は三叉神経痛のほとんどの患者で第一選択となる初期治療です。過去の報告では、58〜100%の患者さんで完全もしくはほぼ完全な疼痛コントロールが確認されています。吐き気、めまい、電解質異常、全身の湿疹などの強い副作用が出ることがあるので、注意する必要があります。 カルバマゼピンの副作用のため服用できない場合や、効果が不十分な場合は、ガバペンチン(ガバペン)やプレガバリン(リリカ)等の薬剤を考慮します。 ②手術治療 手術治療は薬物療法の効果が十分でない三叉神経痛に対して考慮されます。開頭による微小神経血管減圧術で治療を行います。 痛みの性状が上記のような三叉神経痛の特徴を有し、MRIで三叉神経に対して責任血管の圧迫があることが確認され、全身状態が開頭手術に対して大きな問題のない場合には、有効性が高く安全な治療であると考えられます。 手術時間は4〜5時間で、約2週間の入院期間です。 手術を受けた場合、直後の疼痛緩和は、概ね90%の患者さんで認められます。その後、1年後では80%、3年後では70%ほどの効果といわれています。 微小神経血管減圧術の合併症としては、手術側の難聴、脳脊髄液漏出(再手術が必要)、脳梗塞、術後出血等が4%以下の割合で認められます。 手術後の顔面の感覚障害は約7%の割合で認められます。 当院で行っている微小神経血管減圧術です。 症例により神経内視鏡を併用することで、責任病変の広い観察を行い確実な圧迫解除を行います。 A:右耳の後ろに切開を行い、開頭を行ったところです。 右の三叉神経(黄色矢印)に対して、責任血管(青色矢印)が圧迫をしており、痛みの原因になっていることが分かります。 B:神経内視鏡を用いた病巣の観察をしています。Aで見えていた三叉神経(黄色矢印)と、圧迫している責任血管(青色矢印)が、内視鏡による広い視野角で観察されています。血管が神経を圧迫していることが原因になっていると思われます。 C:三叉神経から責任血管を移動させて、テフロン繊維で固定し、再び圧迫がかからないようにしています。 D:圧迫解除後、再度神経内視鏡を用いて確認をしています。Bで認められた圧迫が解除され、三叉神経(黄色矢印)が、テフロンで固定された責任血管(青色矢印)からはなれているのが分かります。 当院では、微小神経血管減圧術の有効性と安全性を高めるため、神経内視鏡や術中神経生理モニタリングを用いて治療を行っています。 ③ガンマナイフ治療 ガンマナイフは、病変部に対して高線量の放射線を1回で照射する方法で、三叉神経痛に対しては、組織破壊よりニューロモデュレーションを来すことで疼痛の緩和が得られると考えられています(図1)。 図1 三叉神経痛に対するガンマナイフ治療風景 三叉神経痛に対するガンマナイフ治療は、原則的にroot exit zone(REZ:三叉神経の脳幹部から2〜8 mm 遠位部、オリゴデンドロサイトからシュワン細胞主体のミエリンに移行する部位)近傍の三叉神経に対して、中心線量(最大線量)で80Gyでの治療を行っています(図2)。 図2 三叉神経痛のガンマナイフの線量計画 治療時間は2〜3時間(頭部へのフレーム装着から治療終了まで)で、治療終了後、フレームを取り外した後には特別の処置は必要なく、その後の日常生活に制限はありません。 我々の経験では、ガンマナイフ治療後に十分な痛みの寛解が得られるまでの期間は、治療当日〜4年後(平均2ヶ月)と、多くの症例で三叉神経痛の寛解までに2ヶ月程度を要します。ガンマナイフ治療後6ヶ月後に症状の改善がなければ、再治療を含め考えるとの意見もありますが、私どもの経験からは、ガンマナイフ治療後の効果判定はより長期の経過を見てからで良いと考えています。 治療効果 当院で治療した83例の平均42ヶ月の経過観察での治療成績では、十分な痛みの寛解(薬物投与無しもしくは薬物併用にて十分な痛みのコントロールが出来た症例)は、3年78%,5年62%,7年42%でした (図3)。やはりガンマナイフ治療においても、長期の経過観察にて他の治療法と同様に痛みの再燃の可能性は高くなります。 図3 自験例83例の最終観察時、薬物投与なしもしくは薬物併用にて十分痛みがコントロールできた累積寛解率 合併症 ガンマナイフ治療後の三叉神経障害に関しては、私ども症例では顔面の知覚障害の出現頻度は14%でしたが、日常生活に支障を来すようなbothersome numbnessを来した方は4%でした。 ガンマナイフの再治療 ガンマナイフ治療が無効であるとの判断の時期は、前述したように治療後痛みの寛解までに時間を要する症例もあるため、治療後2年間は経過を見てから判断するようにしています。ガンマナイフ治療後に痛みが再燃した場合、まずは薬物治療を試みますが、カルバマゼピン以外にも、ガバペンチン、トピラマート、プレガバリン等が有効な場合があり、またペインクリニックとも密接にコミュニケーションを計った上で、次の外科的治療、ガンマナイフ再治療を検討すべきと考えています。治療選択として、治療の確実性を考えると、微小血管減圧術の既往のない患者では微小血管減圧術を勧めますが、手術の危険性が高いと思われる高齢者や微小血管減圧術の既往のある患者には、ガンマナイフの再治療を考慮いたします。ガンマナイフ再治療の成績としましては、5年で50〜75%の症例で十分な痛みの寛解が得られるが、一方で顔面の知覚障害の出現率は初回治療に比して高くなると報告されています。 ガンマナイフ治療は、三叉神経痛に苦しんでいる患者に対する安全で有効な治療であります。また、微小血管減圧術の三叉神経痛に対する有効性はガンマナイフよりも良好ですが、高齢者で全身麻酔の危険性が高い症例に対しては適応となり難いと思われます。そのような患者に対する治療目標として、三叉神経痛が寛解でき、薬物療法に伴う副作用を軽減できれば、完全に痛みが消失しなくても現実的には治療目標になりうると思われます。三叉神経痛は生命に関わる病態ではありませんが、個々の患者にとっては生活の質を著しく制限されている病態であり、最終的には患者が満足できる治療目標に向けて、種々の治療選択の有効性、副作用等を十分理解して治療にあたる必要があると考えております。詳しく見る
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小児青年てんかん診療センターてんかん治療の実際てんかん内科治療の実際 1) 治療までの流れ:①問診・診察→②検査→③治療 2) 日常生活 3) てんかんに関するよくある誤解 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 1) 治療までの流れ ①問診・診察 ・てんかんとは熱を伴わない「発作」を繰り返す状態であり、神経細胞の過剰な興奮が原因とされ、子どもの時期には比較的多く認められます。詳細は「てんかんとは」をご参照ください。「てんかん発作」には、体全体に力が入り転倒するような強い発作から、数秒間ボーっとする軽い発作まで様々です。「てんかん発作」の種類によって、治療方針が決まるといっても過言ではありません。そのため、てんかん発作の症状やその時の様子が重要で、特に発作の出始めの状況(例えば、右のほうを向く、怖がる、などなど)や「前兆」は極めて重要な情報となります。 ・日常診療では、てんかん発作の様子を観察者から詳しく聴取して、脳波検査を組み合わせて、どのようなてんかんかを診断(推測)してお薬を選択します。最近ではスマートフォンの普及により、発作の様子が録画されている場合があり、患者-医療者間で視覚的に共有されるようになってきました。 ・また、身体診察により、てんかんの原因となる体質や病気がわかる場合があります。 ②検査 ・てんかんの原因を調べる検査には、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(核磁気共鳴画像法)などの「脳の構造」を調べる検査、脳波検査や脳核医学検査などの「脳の機能」を調べる検査、その他としては遺伝子検査があります。詳細は「検査案内」をご参照ください。 ・まずは、「脳の構造」を調べる検査について説明します。およそ40年前にCTが登場し、脳の内部が観察できるようになりました。20年前からは、MRIが登場したことで、CTよりも詳細に脳の構造を評価できるようになりました。MRIも進化しており、最近では磁場の違いや撮影法を工夫すれば驚くほど鮮明な画像が得られ、数ミリ程度の微細な変化や異常を発見できるようになり、脳の血のめぐりや神経の成分を調べることもできます。 ・次は、「脳の機能」を調べる検査です。脳波は、脳の神経活動を測定することができ、てんかん診療において中心になる検査です。今までは脳波を紙で記録していたため、データを解析・保存するのに大変苦労してきました(2時間の記録で「広辞苑」程度の厚さになります)。最近では、脳波計に入ってきたアナログ信号をデジタル信号に変換できるデジタル脳波計が出現し、多くのデータを自由自在に解析・保存できるようになりました。脳波記録と同時にビデオ撮影ができる装置もあり、発作の様子と脳波を繰り返し解析できることから、質の高い診療が可能となります。脳核医学検査は、人体に影響しない微量な放射性物質を使用し、脳のエネルギー代謝、脳の血のめぐり、神経伝達物質を目に見える形にする検査です。スペクト(single photon emission computed tomography:SPECT)やペット(positron emission tomography:PET)が代表的な検査で、MRIで異常が認められなくても、これらの検査で微細な異常が明らかになる場合があり、とても役に立ちます。 ・最後に遺伝子検査について説明します。遺伝子とは人体の「設計図」のようなもので、てんかんに関連した「設計図」の一部が解読できるようになってきました。てんかんの原因が遺伝子レベルではっきりさせることで、治療方針(薬剤の選択)が明瞭になることがあります。現在の医療では遺伝子を修復させる治療はできず、遺伝子検査の結果によっては、「難治性てんかん」として経過することが確定することも少なくありません。しかし見通しを踏まえて、お子さんや家族の生活設計や人生を考えることができます。 ・このように、小児てんかんの領域においても検査は日進月歩で進化しています。てんかん患者さん全員が様々な検査を定期的にする必要はありません。脳波検査だけの患者さんがいれば、入院にて各種検査を繰り返し行う必要がある患者さんまで様々ですので、主治医の先生に相談してください。 ③治療 ・てんかんの治療は、てんかん発作の様子と脳波検査などを組み合わせ、どのようなてんかんであるかを診断(推測)して、薬を選択します。てんかん発作には、命に関わるような長時間持続する発作、前兆なく突然転倒する危険な発作、発達に悪影響を与える発作などがあり、患者さんとそのご家族は常に不安で緊張した日々を過ごしておられるのではないかと思います。「副作用のない治療によるてんかん発作の完全抑制」は、患者さんとそのご家族そして治療を担当する医師にとって切実な願いです。「新規抗てんかん薬」、「食事治療(ケトン食治療)」、「外科治療」については、主に難治性てんかん(適切と考えられる抗てんかん薬2剤を十分量試みても発作が抑制されないてんかん)について記載いたします。 ・2006年から毎年のように新しい抗てんかん薬(新規抗てんかん薬)が発売されました。それまでは、1つの薬が認可されるまで5-10年程度の時間を要しました。新規抗てんかん薬は従来薬に比べると、副作用が少ない、脳の作用部位がユニーク、などの特徴があり、従来薬に追加して使用する場合が多いです。今後もしばらく新薬の発売が続くようですので、薬の選択肢や組み合わせが増えていくことは、患者さんにとっては朗報だと思います。 ・ケトン食療法とは、高脂肪、低炭水化物の食事療法により、てんかん発作を減少させようというものです。人間の体は、炭水化物が不足すると、脂肪を燃やしてエネルギーを得ようとし、その過程でケトンができます。飢餓状態でケトンが増加しますが、人為的にその状態を起こすわけです。「FIRST DO NO HARM(邦題:誤診)」という映画で有名になった治療です。これがてんかん発作に効くメカニズムは、よく分かっていませんが、点頭てんかんを含め幅広いてんかんが治療対象になります。絶食や水分制限をしない緩和された食事治療も行われています。 ・外科手術によりてんかん発作が緩和、あるいは消失する場合があります。てんかん発作が頻発した患者さんが、外科手術により発作が消失し、日常生活の質が驚くほど改善することがあります。外科手術には、てんかんの原因となる病変を取り去る治療、てんかんの異常なネットワークを遮断する治療、発作を抑制する装置を埋め込む治療(迷走神経刺激療法)などがあります。迷走神経刺激療法は、体内にペースメーカーのような機器を埋め込んで、迷走神経という神経に定期的に刺激を与えることにより、てんかん発作の減少を狙うものです。薬では長期間内服していると効果が減弱することがよくありますが、迷走神経刺激療法はその逆で、治療期間が長いほど発作抑制率が上昇します。詳細は「てんかん外科治療の実際」をご参照ください。 ・新規抗てんかん薬により強い副作用がでる、ケトン食治療や外科治療により重篤な合併症が予想される、などの理由で十分に治療が行えない場合には、「てんかんによる悪影響」と「薬の作用・副作用」の微妙なバランスを常に意識しながらの治療となります。つまり効果の期待できる薬を追加していくのも治療ですが、一方で少しでも薬を減らしていくのも治療です。こどもの「てんかん」に対して薬を使うのではなく、てんかんをもつ「こども」の治療を行うように心がけています。 2) 日常生活の注意事項 ・てんかん発作を誘発する要因は様々ですが、睡眠不足(生活リズムの変調)、疲労、怠薬が三大要因と言われています。規則正しい生活と薬を忘れずに飲むことが大切なのは言うまでもありませんが、これらを管理するために最近ではスマートフォンのアプリなどを利用している患者さんもいます。 ・てんかん発作を起こした時に危険なのは、高い場所や道路・駅のホーム、また近くに火がある場合などですが、お風呂やプールは特に注意が必要です。入浴時にてんかん発作を経験した患者さんは約10%にものぼるといわれ、浴槽での溺水と各器具での外傷の危険があります。家に一人しかいない時の入浴は避けたほうがよく、声かけや音声モニターを利用する、湯を浅めにする、風呂場の角部分を減らす、マットを敷く、などの工夫は必要でしょう。プールについては、一人での遊泳は原則として禁止ですが、介助員や監視体制があれば許可されることも多いです。実際は、泳いでいる途中など精神的に緊張した状態では発作は生じにくいですが、プールから上がった後などホッとした時に多く、安全な場所で安静にするのが望ましいでしょう。 3) てんかんに関するよくある誤解 ・「予防接種」に関する誤解(てんかんと診断されれば予防接種ができない):発作コントロールの良好なてんかんでは、最終発作から2-3か月経過していれば現行のすべての予防接種を実施してもよいとされています。コントロールができていない場合でも、病状と体調が整っていれば、主治医判断で行うことができます。メリット・デメリットをしっかりと判断したうえで行う必要があります。 ・「運転免許」についての誤解(てんかんと診断されれば運転免許が取得できない):ここ数年間、てんかんと自動車事故に関する話題が、メディアや新聞で大きく報道されました。てんかんのある人やご家族の皆さんにとりましては、運転免許取得について、ご心配のこともあろうかと推察いたします。てんかんと診断されたからといって、運転免許が取得できないわけではありません。適切なてんかん治療を受けており、病状を正しく申告し、発作の種類や頻度などに関して一定の条件がクリアできていれば問題ありません。詳細は継続的に診察している主治医に聞くのがよいでしょう。 ・「遺伝」に関する誤解(てんかんは遺伝病である):この誤解は根強いですが、てんかんは原則として遺伝病ではありません。遺伝の関連するてんかんはてんかん全体のうちわずか5%程度といわれており、そのほとんどが、薬で発作を抑えることができます。遺伝を心配するよりも、どのような種類のてんかんであるのか、診断を受けることのほうが重要です。最近では遺伝学的検査が飛躍的に進歩しているため、将来はより詳細なことが分かるかもしれません。 ・「治療期間」についての誤解(生涯にわたって内服治療しなければならない):てんかんの種類によって異なりますが、てんかん全体で考えると、半分以上の患者さんで適切な期間内服を続けることで、治療を終結することができます。また、内服を継続していれば、発作なく過ごせる患者さんも多くおられます。 てんかん外科治療の実際 治療戦略の観点から 「てんかん」の手術は、3段階に分けられます。 ①てんかん原性領域を切除する焦点切除術海馬扁桃体摘出・海馬多切 焦点切除 半球離断②てんかん波の伝播を抑制する遮断手術脳梁離断軟膜下皮質多切術(Multiple Subpial Transection: MST)③てんかん発作の発生を緩和する手術迷走神経刺激(Vagus Nerve Stimulation: VNS) 焦点切除術 てんかんの焦点が各種検査で同定できた場合には、てんかんの根本的な治療である焦点切除術の適応となります。特に、皮質形成異常、脳腫瘍、海馬硬化、瘢痕脳などが原因で、MRIで病変が同定できた場合には、70%を超える高い発作抑制率が期待できます。これらの原因で発作が難治である場合には積極的に手術が勧められます。一方、MRIで病変が同定できない場合には、頭蓋内電極留置による脳波モニタリングを行ってからの焦点切除術を考慮します。ただし複数回の手術が必要となることや、手術による発作抑制効果は下がるため、より慎重な判断が必要になります。 半球離断術 片側大脳半球の広い範囲にわたって、てんかんの原因となる領域が広がっている疾患に対して適応となります。具体的な疾患としては、片側巨脳症やスタージ・ウエーバー症候群、ラスムッセン脳炎、広範囲な皮質形成異常、虚血性脳血管障害後、外傷後などがあります。この手術法は、病側脳から発生するてんかん波が、健常脳へ伝わるのを防ぐ手術法です。70%を超える発作消失率が期待できる方法であり、近年では適応となる疾患ではより早期に積極的に本手術を行う流れにあります。当院では、(1)てんかんの原因がどれだけ片側脳に偏っているか (2)片側脳にどれだけ脳機能が残存しているか (3)年齢 の3つの要素を慎重に判断しながら、適応を決定し手術を行っています。 脳梁離断術 両側の大脳半球がほぼ同時に異常放電して転倒をきたすようなてんかんに対しては脳梁離断術が有効です。脳梁とは左右の脳を連絡している橋のような部分です。脳梁離断術とは、この脳梁を離断することにより、てんかん異常波が反対側の脳へ伝播するのを防ぐ手術法です。急に全身の力が抜けて倒れてしまうような脱力発作に対して最も効果的ですが、スパスム(手足や頭部に1~3秒間力が入る発作)、強直間代発作、欠神発作などの発作にも効果が見込めます。てんかんの原因部位を取り除く手術法ではないので、てんかんの根治的治療ではありませんが、特に怪我を伴うような大きな発作の頻度や程度を著明に軽減する事が期待できます。主に内科的治療が行われている点頭てんかん(ウエスト症候群)やレノックス・ガストー症候群などに対しても上述したような発作を軽減するために行うことがあります。当院では、小児では一期的に全脳梁離断を行い、年長児および成人では急性離断症状を避ける目的で二期的な脳梁離断術を行っております。 迷走神経刺激療法(Vagus Nerve Stimulation: VNS) 迷走神経は、脳と内蔵を連絡している神経です。この手術は頸部の迷走神経に刺激電極、前胸部にジェネレーターを埋め込み、迷走神経を刺激することにより、大脳皮質の抑制機能を高め、てんかん発作の程度や頻度の改善を図る緩和的な外科治療法です。日本では2010年7月に保険適用となりました。おおよそ50%の症例に対して50%程度の発作抑制効果が見込めるとされており、我々の見解もおおよそ過去の報告と一致しています。緩和療法ではありますが、年齢や発作型への適応制限はなく、従来の内科的、外科的治療の効果への上乗せ効果が期待できる手術方法です。詳しく見る
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脳神経外科膠芽腫に対する腫瘍治療電場療法について腫瘍治療電場療法 腫瘍治療電場療法(製品名:オプチューン®)は膠芽腫に対する新しい治療法として開発されたものです。この治療は脳内に特殊な電場を発生させて腫瘍増殖を抑制する、膠芽腫に対する新たな治療方法です。初回手術後に膠芽腫と診断されて、初期治療の放射線療法、それと併用して行われる化学療法 (テモゾロミド)を終了した膠芽腫の患者さんに維持療法として使用される治療機器です。 治療実績について(症例数) 2017年12月度に初発膠芽腫の成人患者への保険適用が承認されて以降、日本では累計350例以上、アメリカでは累計1万例を超えています(2020年1月時点)。 治療実績について(臨床成績) この治療はEF-14という臨床試験でその有効性が示されました。初発膠芽腫患者695人を対象としてテモゾロミド+オプチューン®の併用療法を、テモゾロミドの単独療法と比較したところ、テモゾロミド+オプチューン®の併用療法を受けた患者は、テモゾロミドの単独療法を受けた患者と比較して、新たな副作用を伴わずに全生存期間の有意な延長が証明されました(テモゾロミド単独療法16.0ヶ月に対してテモゾロミド+オプチューン®併用療法20.9ヶ月)。オプチューン®治療を受けた患者が、テモゾロミド単独療法を受けた患者と比較して、より長期にわたってQOLを維持できたことも示されました。この結果に基づき、欧米ではこの治療法が行われるようになり、日本でも2015年に薬事承認され、2017年12月より成人の初発膠芽腫を対象に保険診療の認可がおりています。 オプチューン治療中の生活 オプチューン®は、電場を作り出す粘着性シートに取り付けられたセラミック製の電極パッド(アレイ)を、頭髪をきれいに剃った頭部に4枚貼り付けることで脳内に治療電場を作り出し、急速に増殖を繰り返す膠芽腫の細胞分裂を阻害することで、腫瘍細胞を抑えるように作用します。 アレイは1週間に2回程度貼り替えます。一人でアレイを貼り替えるのは難しいので、治療協力者の補助が必要です。基本的に自宅で行う治療です。バッテリーで作動する携帯タイプの医療機器で、昼夜を問わず継続して長時間使用することができるように設計されています。可能な限りの継続的治療が推奨されるため、頭皮の副作用を避けて、できるだけ継続して(少なくとも4週間以上の継続的使用 / 使用時間率75%以上)治療を続けることが大切です。 画像提供;ノボキュア株式会社 有害事象 オプチューンの主な副作用は、アレイの貼付箇所の皮膚炎症です。臨床試験では約半数に皮膚障害が生じたことが報告されましたが、症状はいずれも軽度から中程度のもので、局所的な対応や治療を一時的に中断することで対処できました。化学療法などで見られる吐き気や食欲不振、血球数の減少などの全身性の副作用が少なく、体に負担の少ない治療法です。 稀に頭痛、脱力、転倒、疲労、筋攣縮、皮膚潰瘍が生じることがあります。 入院期間・費用は? 基本的に自宅で治療を行います。治療開始の時に機器の取り扱いについて外来で医師から説明します。機器のサポートはメーカー担当者が行います。 費用は初発膠芽腫に限り、保険診療の範囲内で治療が可能です。 ※費用は高額療養費の対象になります。 健康保険や国民健康保険加入者が、同じ月内に同じ医療機関に支払う医療費の自己負担額(食事の費用・自費分は除く)が高額になった場合は、限度額の認定証の交付を受け、入院事務担当者にご提示いただくと、病院窓口での自己負担額が限度額までの金額となります。(70歳未満の方が対象で、健康保険組合や国保窓口に事前に申請が必要です。) 当院ではオプチューン使用のための認定講習を修了したスタッフがおり、積極的にオプチューン® (NovoTTF-100Aシステム)治療に取り組んでおります。詳しい説明や治療をご希望される患者さんはかかりつけ医から地域医療連携室へ必ずご連絡いただき脳神経外科 石橋医師の外来(毎週木曜日)をご予約の上、ご受診ください。詳しく見る
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心臓血管外科自己弁温存手術|心臓血管外科大動脈弁閉鎖不全症に対する自己弁温存手術 大動脈弁は僧帽弁に比べて、一般に自己弁を温存する形成手術が困難であると考えられています。しかし、解剖学的な一定の条件を満たす患者様においては、自己弁を温存した手術が可能となる場合もあります。特に若年の患者様には人工弁置換に伴うワーファリンの内服を回避できるなど様々なメリットがあるため、このような手術方法を選択肢としてご提供します。 ■ 自己弁温存大動脈基部置換術後の大動脈弁 ■ 大動脈基部の形態 ■ 2尖弁も形成術によって逆流を制御可能詳しく見る
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小児青年てんかん診療センターてんかんとはてんかんとは てんかんとは、熱などを伴わない「てんかん発作」を繰り返す状態であり、神経細胞の過剰な興奮が原因とされています。100人に1人程度の患者さんがいる(日本で100万人以上)とも言われ、特に小児期や思春期に比較的多く認められます。「てんかん発作」には、体全体に力が入り転倒するような危険な発作から、数秒間ボーっとする軽い発作、脳の発達に悪影響を及ぼす発作など様々です。小児期においては適切な管理により完全に治癒するてんかんも多くあります。しかし現状では、「とても怖い病気」としての印象が強く、園・学校生活や社会活動に制約を受けている患者さんも少なくありません。個々の患者さんにおいて、正確な診断、適切な治療、正しい情報提供がなされることにより、患者さんの人生が大きく変わることもよく経験されます。 てんかん診療 先ず問診と診察を行います。特にてんかん発作の様子を観察者から詳しく聴取します。最近ではスマートフォンの普及により、発作の様子が録画されている場合があり、患者-医療者間で視覚的に共有されるようになってきました。 次に、脳波検査を実施します。問診と診察の結果と総合して、どのようなてんかんかを診断(推測)します。必要に応じて、「脳の構造」を調べる検査(CTやMRI)を組み合わせて評価します。 てんかんの種類が分かれば、効果が期待できる薬や使用を控えるべき薬がわかる場合があります。患者さんそれぞれについて「最善の治療」を提供し、治療を選択します。再発する可能性が低いと推測される場合、てんかんでない可能性が高いと判断した場合は、薬を使用せずに経過をみることがあります。 定期的に外来受診していただき、てんかん発作の経過や園や学校生活の様子を報告していただきます。また抗てんかん薬の副作用がないかの診察や血中濃度測定を行います。それらの結果によっては、内服している薬の微調節や、効果の期待できる薬の導入、効果が得られなかった薬の減薬などを行います。 集中的な内科治療が必要な場合は入院にて精密検査(ビデオ脳波同時記録や脳核医学検査)・専門的治療を行い、外科治療が必要な場合は小児脳神経外科と協力して包括的にてんかん診療を行っています。 公開セミナー こどものひきつけ2017(終了しました)pdf こどものひきつけ2018(終了しました)pdf こどものひきつけ2019(終了しました)pdf詳しく見る
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脳神経外科覚醒下開頭頭蓋内腫瘍摘出術について覚醒下頭蓋内腫瘍摘出術 脳腫瘍の中には、脳そのものの中に発生するものがあります。このような腫瘍を摘出しようとする際には、脳に切開を加えたり、時には脳そのものを切除したりする必要が生じます。一方で、脳腫瘍の中には摘出度(どれぐらい腫瘍を摘出するか)がその後の再発しやすさに影響するものがあり、そのような場合にはできるだけ多くの腫瘍組織を摘出した方が良いということになります。 このように、腫瘍を積極的に摘出することは、脳の機能を損傷するリスクを生じることと隣り合わせの状況となるので、脳の機能を温存しながらできるだけ積極的な腫瘍摘出を行うための方法として覚醒下頭蓋内腫瘍摘出術が発達してきました。 この手術方法は、全身麻酔下に開頭を行い、腫瘍と周囲の脳組織が露出された後に麻酔を切って患者さんを覚醒状態とし、会話ができるような状況で、さまざまな高次脳機能検査、運動機能の評価をしながら腫瘍を摘出することにより、手術による神経症状の悪化を回避する治療方法です。当院では、覚醒下手術に習熟したチーム(脳神経外科、麻酔科、手術室看護師、言語聴覚士、理学療法士、臨床検査技師)により患者さんをしっかりとサポートします。積極的な腫瘍の摘出を行いながら、患者さんの神経症状(失語の有無、麻痺の有無)をその場で詳しく観察・評価し、同時に神経生理モニタリングでも神経機能をチェックし、良好な腫瘍の摘出を可能にしております。 覚醒下で手術を行っている際、患者さんの痛み、吐き気、暑さ寒さなどの負担が大きくなっていないかどうかを手術室看護師がチェックします。それぞれの患者さんに無理のない覚醒下手術を受けていただけるよう、それぞれの方にあわせた手術計画を事前に検討しています。 当施設は、安全な覚醒下手術を施行できる十分な体制を設けており、日本Awake surgery学会の認定施設となっています。 覚醒下頭蓋内腫瘍摘出術の流れ 実際の手術の流れを説明します。 左前頭葉の運動性言語野に発生した神経膠腫に対して言語機能を温存することを目的とした覚醒下手術を行う場合です。 術前 術前準備として、術前の患者さんの神経機能を言語聴覚士が評価します。失語症があるのかどうか含めて高次脳機能の検査を行います。 次に機能MRI(fMRI)を用いて脳の機能を画像化します。この方の場合には腫瘍の後方に言語機能が存在しているのではないかと思われました。 次に患者さんと手術の打ち合わせをします。手術中はどのような体勢でいるのか、実際にどのような事をして、失語症の有無を評価するのか(しりとりや、カードの物品呼称など)、痛みや吐き気を感じたときにはどのようにすればよいか、などについて、詳しく説明を聞いて頂きます。手術室看護師は、自分が好きな音楽のCDなど持ち込んでもらったり、部屋の温度はどれくらいが良さそうか、腰や背中にクッションを入れておいた方がいいかどうか、などの聞き取りをさせて頂きます。 手術当日 手術当日、手術室に入室し、麻酔がかかる前に頭部の向きや身体の姿勢について、確認をとっておきます。(図1) 次に静脈麻酔を用いて麻酔がかかった状態とし、口から人工呼吸のための器具を入れて全身麻酔の状態とします。 皮膚切開部分を消毒し、十分に局所麻酔を行い覚醒時に痛みを感じないように準備します。 全身麻酔の状態で手術を開始、皮膚や頭蓋骨を展開し、病変部が露出された状態にします。 次に麻酔の薬を中止し、患者さんを覚醒状態にします。(図2) 麻酔科医師が痛みや吐き気などがないかどうかの確認をとり、患者さんの状態が安定しているかどうか評価します。 脳外科医師が、病変部の周囲の脳に対して電気刺激を加え、失語症状などがどの部位で生じるのかを言語聴覚士が判断していきます。(図3) この患者さんでは、腫瘍の直上およびごく近い周囲の電気刺激では言語症状が認められず、腫瘍の後方の部分で失語症が生じることが分かりました。 この結果をうけて、腫瘍を全摘出することが可能であると判断し、患者さんの神経症状を評価しながら、最終的には腫瘍を全摘出することができました。(図4,図5) 術後 術後、言語機能は温存されました。一過性の記憶障害を認めましたが、徐々に改善しました。患者さんは術後2週間で自宅退院され現在は職場復帰をされています。 術前後のMRIで、言語野に存在していた腫瘍が全摘出されたことが確認されました。(図6) この患者さんの、術後のヒアリングですが、「手術前、覚醒下手術に対する不安はありました、事前に手術の流れの説明は受けていましたが、やはり実感がわかないというか、想像ができないので心配でした。手術当日は、一回麻酔で寝た後に徐々に意識が戻ってきて、ああ手術なんだなと分かりました。痛みは思ったほど感じなかったです。たまに咳が出たり、口が渇いたりしましたが、リハビリの先生の指示もよく聞こえたので、自分なりに、指示通り手足を動かしたり会話をしたり、概ね問題なくできました。途中で一度頭がいたくなって、そのことを看護師さんに伝えました。痛み止めを注射してもらって楽になったと思います。手術そのもので、辛いことはなかったと思います。術後のリハビリもスムーズでしたのでよかったと思います。ただ仕事に戻ったときは、人の名前を思い出せなかったりということがあって、しばらく少し苦労しました。」 大阪市立総合医療センターでは... 大阪市立総合医療センターでは、覚醒下手術を安全・確実に受けて頂くため、さまざまな部門が協力し、患者さんを術前、術中、術後と一貫してしっかりとサポートする体制をとっています。(図7) 当院で治療を希望される方は、地域医療連携室から診察予約をとって頂き、担当医からの説明を受けていただけます。 ※写真はすべて患者さんの許諾を得て使用しています。詳しく見る
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小児循環器・不整脈内科小児不整脈科のカテーテルアブレーション治療実績|小児不整脈科小児不整脈科のカテーテルアブレーション治療実績 2006年から2018年までの12年の小児不整脈科のアブレーション治療成績が Heart Rhythm雑誌(アメリカ不整脈学会雑誌)に掲載されました. これまでの論文リスト(pubmed) 小児と,成人先天性心疾患症例のアブレーション治療 1021件の治療成績の報告です. 年齢分布と体重分布です.小学生,中学生が多いですが,1歳以下,4歳以下でも難治性不整脈に対しては治療を行っています. 頻拍発作の種類です.WPWが一番多く約1/3を占めます. 治療成績です. WPWだけ抽出して,治療に至った理由,副伝導路の場所を記載しています. 顕性は左 50%, 右30%, 中隔 20%ですが,潜在性は 左 65%, 右 15%, 中隔 20%と,右が少ないことがわかります. WPWの部位別,年代別の成績です. 透視時間が,2015-2018年で飛躍的に少なくなっているのは,CARTO UNIVU system導入がきっかけです. 透視時間 0という症例も数例ですが存在しています (赤線). 心室性不整脈の分布です.一番成績が良い右室流出路が圧倒的多数を占めています. 15kg以下の乳幼児の成績,先天性心疾患をもつ小児・成人の不整脈治療成績です.詳しく見る
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脳神経外科脊椎脊髄疾患 | 脳神経外科症状 病気がある場所により様々な症状が出ます。 頸椎 手のしびれ・使いにくさ・痛み、歩行時のふらつき、残尿など 胸・腰椎 体幹から下肢のしびれ・痛み、腰痛、間欠性跛行(歩くと下肢のしびれ・痛みが強くなり、しばらく休むと歩くことが可能)、残尿など 疾患分類 変性疾患 頸椎 (変形性頸椎症,頸椎椎間板ヘルニア,頸椎後靭帯骨化症など) 胸椎 (胸椎後縦靱帯・黄色靱帯骨化症など) 腰椎 (腰椎椎間板ヘルニア,腰椎脊柱管狭窄症,腰椎すべり症、腰椎変性側彎症など) 頭蓋頸椎移行部病変 (環椎軸椎亜脱臼、キアリ奇形など) その他 (脊髄腫瘍,脊髄動静脈奇形,脊椎・脊髄外傷,2分脊椎,脊髄空洞症など) 変性疾患 30歳頃から椎間板の変性、脊椎骨・関節の変形・不安定性や帯の肥厚が生じ、脊髄あるいは神経根を圧迫すると、症状が出現します。多くの場合は加齢による変化ですので、椎間板ヘルニアを除いて、一般的には自然治癒は少ないと思われます。 保存的治療を優先します。鎮痛薬、コルセット装着、理学療法等を行い、日常生活で大きな支障がなければそのまま経過を見ます。症状が進行している、日々の生活で支障を来している際、外科的治療を考えます。 外科的治療は大きく分けて前もしくは横から進入して圧迫部の除圧と骨の固定を行う方法(前方除圧固定術)と後ろから進入して脊髄の圧迫部を除圧する方法(後方除圧術、椎弓形成術)の2種類の手術があります。後方から固定することもあります。どういった治療を選択するかは、症状と脊髄への圧迫の状態、骨の変形の有無などから判断します。 頸椎後縦靱帯骨化症 骨と骨をつないでいる靭帯が骨化する病気の1つで、脊柱の後面(脊髄の前面)にある靭帯が骨化したものです。硬い骨が神経を圧迫し、症状が出現します。 (左)局所突出型の後縦靱帯の骨化病変により脊髄が圧迫。 (右)前方除圧固定術を行い、上肢のしびれ・歩行障害は軽快。 腰部脊柱管狭窄症 腰椎の変性、例えば、すべり症、椎間板の膨隆、黄色靱帯の肥厚、椎間関節の肥厚変形など、背骨に加齢に伴う変化が加わることが原因で脊柱管の狭窄が起こります。老化現象の一つで、年をとると多かれ少なかれ脊柱管は狭くなっていきます。腰痛などに加えて、足にしびれや痛みがある、普段はなんともないが、歩き出すと足がしびれて歩けなかったり、歩きにくくなるが、前かがみで休むとまた歩けるようになる(間欠跛行)などが代表的な症状です。 (左)前方の椎間板、後方の肥厚した黄色靱帯により硬膜嚢の狭小化。 (右)片側アプローチで両側除圧術を行い、間欠性跛行は改善。 腰椎変性後側彎症 ここ10年で脊柱変形が日常生活動作に悪影響を及ぼすことがわかってきました。変形や症状が軽い場合には、薬物療法や理学療法を行いますが、障害が大きい場合、手術が治療選択枝の1つになります。 (左)ダブルカーブの側彎および矢状面バランスの不良。 (右)後方から矯正固定術を行い、腰痛・歩行障害は改善。 頭蓋頸椎移行部 頭部と頚部のつなぎ目を特に頭蓋頸椎移行部と呼びます。頭部と頸椎の動きを司るため複雑に関節が組み合わさっています。また、延髄や脊髄、小脳といった重要な神経組織や、椎骨動脈などの大きな血管が存在します。このような特徴を有するため、骨と骨との間の関節がずれる(脱臼)などの不安定性(関節がぐらぐらすること)を来すことがあり、また神経組織が障害を受けると四肢麻痺や呼吸障害 などの重大な症状を生じることがあります。このような異常を起こす原因には外傷、関節リウマチなどの炎症性疾患、先天性疾患、変性疾患、腫瘍、血管障害などがあります。 環軸椎亜脱臼 先天性の骨形成異常を有する小児の患者さまです。進行性の四肢不全麻痺があり、MRIで頭蓋頸椎移行部亜脱臼が認められます(図A,B)。この患者さまに対して、脳幹および脊髄の温存、不全麻痺の改善を目的として環軸椎後方矯正固定術を行いました。画像上の良好な除圧と固定がなされています(図C,D) 。通常、小児例では後頭骨から頸椎にかけて全体的な固定をすることが多いですが、固定範囲が大きくなると術後に運動制限等で困る場合があるので、当院では短い範囲での固定を心掛けており、術後の日常生活に支障を来さないような良好な治療成績を得ております。 その他 脊髄腫瘍 脊椎や脊椎管内、脊髄そのものに発生した腫瘍を広く脊髄腫瘍といいます。極めて稀な疾患で、その発生頻度は年間人口10万人あたり1-2人とされています。通常、腫瘍の発生した部位によって、硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、髄内腫瘍の三つに分類されます。画像上、腫瘍性病変が強く疑われた際は前向きに外科治療を検討します。理由として、症状が軽い内に治療を行うと機能予後が良いことと病理診断をつけることです。病理検査結果により放射線治療や化学療法を検討する場合があります。 歩行障害で発症した脊髄腫瘍の患者さまです。MRIで第2胸椎レベル脊髄腹側に血流の豊富な脊髄血管芽細胞腫が認められ、上下に広範な浮腫を認めます(図A,B)。脊髄前面に腫瘍があることから前方アプローチにより腫瘍を摘出する方針としました。脊髄の正常神経組織を温存するために、術中神経生理モニタリングを行い、胸部外科と合同で前方からの椎体切除、病変の摘出、椎体再建を行いました。手術後は神経症状の悪化なく、画像上も病変は切除されています(図C,D)。 脊髄動静脈奇形 脊髄動静脈奇形は、脊髄腫瘍よりもさらに稀な疾患です。さらに、小児から中高年までの幅広い年齢層に発症し、臨床症状は急性発症から慢性進行性まで多彩であるため、臨床症状だけで他の脊髄疾患と鑑別することは難しく、発症から診断までに長期を要することも少なくありません。脊髄血管造影において、脊髄動静脈奇形のタイプ分類(髄内型、脊髄周囲型、硬膜型)を行います。脊髄動静脈奇形のタイプ分類に応じて、治療方針(手術治療か血管内治療)を決定します。 (左)脊髄の腫脹と髄外に異常血管。肋間動脈造影にて動静脈瘻( )と拡張した脊髄静脈。 (右)片側アプローチで顕微鏡下に動静脈瘻の遮断を行い、腰痛・歩行障害は軽快。 脊椎脊髄損傷 脊椎損傷とは、人間の体を支えている脊椎が過剰な外力を加えられることで骨折または脱臼することで、脊髄損傷(手足の麻痺、感覚障害、膀胱直腸障害)を伴う時と伴わない時があります。また脊髄損傷に脊椎損傷を伴わないこともあります。 先ずは病態を把握し、不安定性が強い時は早期に内固定(手術)を行います。現在、脊髄損傷に対する再生医療が臨床応用できないため、脊髄に良い環境(整復+除圧+内固定)で早期リハビリテーションを行うことを目標にしています。 (左)頸椎椎体破裂骨折。 (右)前方除圧固定術を行い、上肢の痛みは軽快。 (左)胸椎圧迫骨折。 (右)椎体形成および後方除圧固定術を行い、歩行障害は軽快。詳しく見る
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婦人科主な疾患・検査実績 | 婦人科腹腔鏡外科主な疾患 子宮の病気 ・子宮筋腫 ・子宮腺筋症 ・子宮内膜増殖症 ・早期子宮体がん ・子宮頸がん ・子宮内膜症 卵巣の病気 ・卵巣嚢腫(良性卵巣嚢腫) 卵管の病気 ・卵管留水腫 ・卵管留血腫など 診療実績 平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年 子宮に対する手術 腹腔鏡下子宮全摘出術 58 40 60 65 63 腹腔鏡下子宮筋腫核出術 22 14 35 34 35 卵巣に対する手術 腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術 66 83 77 97 72 腹腔鏡下卵巣卵管摘出術 25 51 49 40 40 その他の腹腔鏡手術 4 3 3 6 8 ロボット支援下腹腔鏡下手術 19 合計 175 191 224 242 237 入院中と退院について 術後経過が順調な場合、術後1日目より歩行と水分摂取、食事が開始となります。血液検査で貧血の状態などの確認を行います。経過が良好なら術後2日目よりシャワーが可能になります。必要時には追加で血液検査や診察を行い、問題がなければ術後4日目の退院となります。退院1~2週間後に外来診察があります。腫瘍を摘出した場合は、この際に病理組織診断の結果の説明をします。 手術は全身麻酔で行います。当院では麻酔科医が24時間常在しています。手術の際には麻酔科医による全身管理を行います。 婦人科病棟(さくら10病棟)は、全員女性看護師が担当しています。常に女性ならではの気配り、心遣いで入院中の患者さんが安心して治療に専念できるように療養環境を整えています。また患者さん、ご家族の立場に立った良質な看護を提供しています。詳しく見る
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婦人科適用となる病気 | 婦人科子宮筋腫 子宮筋腫は女性の30%程度にみられる良性の疾患です。子宮筋腫は発生する部位により漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に分類されます。これらの筋腫により症状を伴った場合に治療の対象となります。子宮筋腫があるというだけで手術になるわけではありません。 症状 過多月経:筋腫により月経量が多くなることです。これによって貧血になることもあります。 腹部膨満感:子宮筋腫を含む子宮の大きさが直径15cm程度になってくるとお腹が張ったりすることがあります。 周辺の臓器への圧迫:子宮の前には膀胱があり、大きさによっては頻尿や尿閉を認めることがあります。子宮の横には尿管という腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管があり、これらの通過障害による水腎症(腎盃と呼ばれるところに尿がたまり腎臓が腫れる)などをおこすことがあります。 腸骨静脈(骨盤内の太い静脈)を圧迫することにより、深部静脈血栓症をおこすことがあります。 不妊症:子宮筋腫の存在している部位によっては原因の1つになります。 治療 子宮筋腫に対する腹腔鏡手術について 腹腔鏡下子宮筋腫核出術:挙児希望のある方・子宮を残したい方 腹腔鏡下子宮全摘出術:挙児希望のない方 腹腔鏡下子宮筋腫核出術 1.子宮に血管収縮剤投与 2.体内にて子宮筋腫摘出 3.子宮筋腫を回収袋に収納 4.子宮を体内にて縫合後 5.臍部より子宮筋腫を回収 卵巣嚢腫 若年から高齢の方まで幅広い年齢層にみられます。漿液性•粘液性嚢胞腺腫(卵巣に水や粘液がたまる)、卵巣成熟奇形種(卵巣に脂肪や髪の毛、歯などが生じる)、卵巣チョコレート嚢胞(卵巣内に血液がたまる:子宮内膜症の一種)などがあります。卵巣が捻れたり、破裂した場合には緊急手術が必要となることが多いです。一般的には5~7 cm前後になると手術が必要となります。卵巣はお腹のなかにある臓器のため良性か悪性かは最終的には手術後の病理組織検査によって診断されます。 症状 腹部膨満感:卵巣の大きさは通常2~3cmですが、卵巣が10cmや20cm程度に大きくなることがあります。それによってお腹が張った感じやスカート、ズボンが閉まりにくいなどの症状を認めることがあります。 月経不順:順調であった月経周期に異常を認めることがあります。 下腹部痛:卵巣が大きくなることにより下腹部痛を認めることがあります。 治療 腹腔鏡手術について ・腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術 : 挙児希望のある方、卵巣を残したい方、月経のある方 ・腹腔鏡下卵巣、卵管摘出術 : 挙児希望のない方 早期子宮体がん 子宮体がんは子宮の奥にできるがんで、年々増加傾向にあります。診断は子宮内膜細胞診や子宮内膜組織診で診断します。治療は手術が第一選択となることが多いです。 症状 ・出血が最もみられる症状です:特に閉経後に少量ずつ長く続く出血がある場合は注意が必要です。 ・褐色のおりものなども子宮体がんの症状のことがあり注意が必要です。 ・下腹痛や骨盤領域の痛みなどの症状を感じる場合には病気によることもあります。 治療 腹腔鏡下子宮体がん根治術 従来、子宮体がんに対する手術はすべて開腹手術で行われていました。平成26年4月から早期子宮体がんについては、腹腔鏡手術が保険適用となり、当院でも施設認定を取得しております(ただし病気の進行程度や全身状態によっては腹腔鏡手術が不可能な場合があります)。 手術方法 腹腔鏡にて子宮摘出 腹腔鏡にてリンパ節摘出 子宮頸がん 子宮頸がんは、子宮の入り口にできるがんです。ヒトパピローマウイルスが関連しているといわれています。診断は子宮頸部細胞診、子宮頸部組織診で診断します。治療は手術が第一選択となることが多いです。 症状 ・初期の子宮頸がんの時は、症状がないことがあります。・性行為の際に出血した場合には、病気の部分と接触することによる出血の事があり注意が必要です。 ・普段と違うおりものが多くなる場合、月経血の量の増加や月経期間の延長の際には病気による事もあります。 治療 腹腔鏡下子宮頸がん手術 従来、子宮頸がんに対する手術はすべて開腹手術で行われていました。平成30年4月から子宮頸がんについて、腹腔鏡下手術が保険適用となり、当院でも施設認定を取得しております(ただし病気の進行程度や全身状態によっては腹腔鏡手術が不可能な場合があります)。 手術方法 腹腔鏡にて子宮摘出 腹腔鏡にてリンパ節摘出 子宮内膜症 生殖可能年齢の約15%に子宮内膜症がみられます。原因は不明ですが、月経時の血液が卵管から腹腔内に流れ、卵巣、卵管、腸に付着し子宮内膜症がおこると考えられています。 子宮内膜症とは、子宮内膜が卵巣、直腸、ダクラス窩(子宮後面と直腸全面にできるくぼみのような場所)にできる病気です。 症状 月経困難症:月経中に1日に何度も痛み止めが必要になります。 性交時痛、排便時痛:ダクラス窩に子宮内膜症が存在すると強い痛みを伴うことがあります。 卵巣チョコレート嚢腫:子宮内膜症が卵巣内で増殖し卵巣内で出血をおこします。大きくなれば囊腫が破裂することがあります。癌化する可能性もあります。 治療 鎮痛剤で経過観察をすることが多いです。ただし内服が多くなる場合には他の治療法が必要となります。 ピルの内服により疼痛が減ることがあります。最近では子宮内膜症の部分に直接働く薬剤もあります。詳しく見る
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整形外科手外科 | 整形外科手外科の紹介 脊椎外科 関節外科 股関節疾患 手外科 スポーツ整形外科・関節鏡手術 主な対象・疾患 骨折・脱臼 骨の癒合や安定性を得るだけでなく、手指・手関節の動きが重要です。そのため手術のみならず、その後のリハビリにも力を入れています。 肘の複雑な骨折に対するプレート、スクリューによる骨接合術 腱(屈筋腱、伸筋腱)損傷 腱断裂は切創による損傷だけでなく、骨棘や偽関節により腱が磨耗し、皮下で断裂が生じることがあります。これらに対し腱縫合や腱移植術を行いますが、腱の治療では手術だけでなく術後の後療法が重要となります。当科では専門の作業療法士の下、早期運動療法を行うことで腱の癒着を防止し良好な可動域の獲得を目指しています。 屈筋腱断裂に対する腱縫合術では、早期運動療法と組み合わせることで良好な可動域が獲得できます。 断裂腱の縫合が困難であったり、状態が不良である場合、他の腱を力源としてその動きを回復させることができます。 母指伸筋腱断裂に対し示指の伸筋腱を移行し母指の伸展を再建しています。 末梢神経障害 感覚や運動機能の障害を緻密に評価すると共に、神経伝導検査・筋電図など電気生理学的検査も私たち自身が行うことにより、病巣を正確に診断し、的確な治療を行うことがます。神経の修復や除圧によっても回復しない麻痺に対しては、腱移行や遊離筋肉移植などによる機能再建も行っています。 神経の障害が残ってしまう場合、残存する腱を移行させることで機能回復を行うこともできます。写真は正中神経麻痺により対立不能となった母指に対し、示指伸筋腱を移行し対立可能となっています。 関節リウマチによる手指の変形や腱断裂 変形の矯正、人工関節、腱移行・腱移植など様々な治療を行っています。 切断指や血管・神経損傷 顕微鏡を用いたマイクロサージャリー手術を行っています。 指尖部の切断においても鋭的損傷の場合再接着が可能なことがあります。 外傷後の偽関節や骨髄炎 通常の手術では治療困難なものに対してマイクロサージャリーを用いた組織移植による治療を行っています。 数十年前の骨折でのプレート固定後の難治性潰瘍 プレートを抜去し、遊離皮弁(前外側大腿皮弁)により欠損部を被覆した。 関節鏡手術 三角線維軟骨損傷やガングリオン、テニス肘に対し関節鏡を用いた低侵襲手術を行うことができます。 先天異常手(生まれつきの手の変形や異常) 小児整形外科グループと協力し、患児の将来を見据えたきめ細やかな治療を行っています。 母指形成不全に対する母指化術 その他 上肢に関わるすべての疾患について、積極的に治療を行っています。詳しく見る
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気管狭窄について基本情報基本 情報 主な疾患・検査実績疾患・ 検査実績 外来担当・休診一覧表外来担当 休診一覧表 気管狭窄について 喘息と間違う気管腫瘍,気管軟化症 喘息と言う病気の名前は皆さんも一度はお聞きになったことがあると思います.あるいは身近な方に治療を受けられている方がいるかもしれません.主な症状は,喘鳴(ぜいめい:のどのヒューヒューという高い音),息切れ,咳,痰,などです.喘息は成人で約3%が罹患する病気ですから頻度は少なくありません.本日ご紹介する二つの病気は稀な病気ですが,その多くが“喘息”として治療されているにもかかわらず改善傾向がなく,その後極めて重篤な状態で受診されます.症状も喘息に非常に似ているので通常の診察,胸部レントゲン検査では発見できないのです.それではそれぞれの病気を説明していきましょう. 気管腫瘍 ヒトが生きていくためには,体の中に酸素を取り入れる必要があります.酸素は,肺で血液中に取り込まれます.その酸素の取り入れ口となる肺と,のどの奥の咽頭(いんとう)を結ぶ空気の流通路を気道と呼びます.その中で咽頭から左右に分かれるまでの一本の管を,気管と呼びます.左右の肺へ,更に肺に向けて交わることなく繰り返し分岐する部分を気管支と呼びます.咽頭から肺までを一本の木に例えると,根っこが咽頭,幹が気管,枝分かれをしている部分が気管支,葉に相当する部位が肺と思って頂くとわかりやすいでしょう. 気管腫瘍とは,この気管と呼ばれる部位にできる腫瘍です.頻度は2人/10万人程度ですので稀な病気です.病因ははっきりしませんが,喫煙との関連が最も多いとされています.気管腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分類されます.小児に発生する気管腫瘍は約90%が良性腫瘍ですが,成人の場合は逆に約90%が悪性腫瘍です.良性腫瘍はその成長のスピードこそ遅いのですが,悪性腫瘍と同じく気管内腔に突出するように大きくなります.そうして腫瘍が大きくなると症状が出現します.気管腫瘍の症状としては,腫瘍により気管が狭窄することによる喘鳴,労作時呼吸困難,咳,痰などです.また血痰が出ることもあります.通常気管は内腔(ないくう)が80%程度狭くなっても症状があまり強く出ません.多くの場合少しずつ大きくなりますので,この間に喘息として治療されていて良くならない,それに最近ちょっと症状が強くなって来た,という状態になります.一旦症状が強くなると急速に症状が悪化しほぼ窒息に近い状態になります.というのは空気の通り道である気管がほぼ詰まりかけてしまう訳ですから,呼吸で取り込んだ空気中の酸素が肺には到達しないのです.そのため病気が見つかった時は,いわゆる“Oncological Emergency(腫瘍による緊急事態)”,という生命の危機にさらされた状態になってしまいます. 実例を提示します.喫煙歴のある30歳代の方です.呼吸困難,血痰を主訴に前医を受診されました.約3年前から喘息として投薬加療を受けていましたが,改善傾向はありませんでした.恐らく腫瘍が気管の中で緩徐に増大していたと思われます.受診した際の胸部レントゲン上異常は指摘されませんでした.しかし血痰を認めたために胸部CTを撮影され気管内をほぼ閉塞する腫瘍が発見されました(図1).この患者さんはCT検査当日に当院に紹介となり,緊急入院され緊急手術を行いました(図2).手術は硬性気管支鏡と呼ばれる特殊な内視鏡を口から気管内に挿入し,硬性気管支鏡中に,長い電気メスなどを差し入れ,腫瘍を切除しました.この手術により窒息状態からは回復しました.その際に切除した腫瘍の組織学的検査で悪性腫瘍(腺様嚢胞癌:せんようのうほうがん)と判明しました.硬性気管支鏡による手術では,気管内腔にできた腫瘍しか取り除けないため,気管の壁に腫瘍が残ります(図3).良性腫瘍であれば,このままでも問題ないのですが,悪性腫瘍であったため気管の壁に残った腫瘍を完全に取り除くのが最善の治療となります.そこで他の臓器などに転移がないことを精査した後に初回手術の約3週間後に気管切除術を行いました.気管切除術は高度な手術技術と術後管理が非常に大変な手術の一つですが,順調に経過され合併症なく退院されました.術後5年経過していますが無再発で元気にされています. 何故一度に気管切除をしないかと疑問をもたれるかもしれません.理由は二つあります.まず一つは,良性腫瘍の場合は再度手術をしなくてよいこともありますので,まずは腫瘍の組織学的診断をつけることが必要になるためです.もう一つの理由は,まずは呼吸状態の改善をはかり,全身状態を良くすることが必要なためです. 気管腫瘍切除の手術は日本で1年間に90例ほど施行されており,手術死亡率が約4%の手術です.肺癌の手術死亡率が約0.5%ですから,如何に困難な手術であることがご理解頂けると思います.また最初の手術の際に用いた硬性気管支鏡という内視鏡を用いての手術ですが日本国内では施行できる施設は限られており,大阪市内では当センターのみが行っています. 図1 図2 図3 気管軟化症 気管は軟骨成分からなら気管軟骨と,筋肉成分からなる膜様部で構成されています.断面は円形ではなく馬蹄形になっており,膜様部が平らな形をしています(図4).気管軟骨が,CもしくはU字型になっているわけです. 気管軟化症とは,気管軟骨が何らかの原因でその剛性を保てなくなり,扁平となることによって内腔の形を保持できなくなる疾患です(図5).空気の通り道となる内腔が保持できなければ,先ほど述べた気管腫瘍のために詰まるのと同じく肺に空気が取り込まれないという状態になり窒息してしまいます.先天性(生まれついて起こる)と後天性(成人してから起こる)とにわけられますが,今回は後天性気管軟化症について記述します.病因は,①気管外傷後,②肺気腫,③腫瘍や大動脈などによる長時間続く圧迫,④再発性多発性軟骨症,などがあげられます. 症状としては,気道が狭くなることによって起こる喘鳴,労作時呼吸困難,咳,痰という気管腫瘍とほぼ同じようなものがあげられますが,血痰は出ません.多くの場合は喘息として治療されており,投薬によっても良くならないという状態で発見されることが多いのです.薬による治療は奏功しないことが多く,外科的な手術が必要になります. 手術法としては,①膜様部を気管の外から当て布をして補強する方法,②気管の腹側にある上行大動脈を胸骨につり上げて固定して圧迫を解除する方法,③気管内にステント(シリコン製もしくは金属製の筒)を入れる方法があります. どの方法を選ぶかは,柔らかくなった気管の長さ,全身状態,などによって異なります. 図4 図5詳しく見る
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呼吸器外科肺癌手術について肺癌手術について 二極に向かう肺癌手術:低侵襲手術,拡大手術 手術は肺癌に対する有効な治療の一つです.肺癌は進行度により,1期(早期)から4期(多臓器への遠隔転移あり)まで分かれます.通常外科治療の適応となるのは,1期から3期の一部です.従来肺癌の手術は,肩甲骨の周囲の肋骨の間を約15〜20cmほど切開し,開胸器と呼ばれる肋骨の間を広げる器具を使って行う開胸術が行われて来ました.肺は胸腔(きょうくう:肋骨と横隔膜で囲まれた空間)内にあります.ヒトの胸を鳥かごに例えてみると,鳥かごの柵にあたる部分が肋骨,鳥かごの中が胸腔,その中に入った風船が肺といったイメージです.開胸術とは,鳥かごの柵にあたる肋骨の間をこじ開けて,中の風船を取り出すような手術です. 低侵襲な手術:胸腔鏡下手術 約15年前から,手術器具の進歩により胸腔鏡下手術が行われるようになって来ました.胸腔鏡下手術とは,肋骨の間に2cmほど切開しそこから,胸腔鏡と呼ばれるCCDカメラを取り付けた器具を胸腔内に入れて行う手術です.更に小切開を二カ所から三カ所行い,そこから手術器具を差し入れて手術を行います.つまり肋骨の間を開胸器で広げることなく手術を行うのです.胸腔鏡で胸腔内の様子をハイビジョンモニターに映し出して.画面を見ながら手術機器を操作して肺の切除を開胸術と同じように行います(図1:二つの円形の中に胸腔内の画像が映っています).現在日本では肺癌に対する手術は年間に約34,000件行われています.その中で胸腔鏡下手術は約21000件(約63%)に行われるようになりました(日本胸部外科学会年次報告). 胸腔鏡下手術は開胸術に比べて,皮膚の切開創が小さく筋肉の切開の長さも小さいため,術後の疼痛が少なく術後の回復が早いのです(図2,創部写真.患者さんの許可を得て撮影し,許可を得て掲載).しかしながら,すべての方に胸腔鏡下手術ができる訳ではありません.腫瘍が大きい場合,リンパ節転移がある場合,胸腔内の癒着が強い場合などは胸腔鏡下手術では安全性,癌の根治性などに支障が生じる可能性があります.その際には,胸腔鏡下手術にこだわって手術を進めるのではなく,より確実でより安全で,そしてより低侵襲な手術を心がけて手術を行っています. 我々は1期肺癌,2期肺癌の一部に胸腔鏡下手術を行っています.肺癌に対する手術は,肺葉(はいよう)切除が標準術式とされています.右肺は,上葉(じょうよう),中葉(ちゅうよう),下葉(かよう)の三つの肺葉,左肺は上葉,下葉の二つの肺葉からなります.例えば右肺上葉に腫瘍があるケースでは右肺上葉を切除します.しかしこれだけで手術が終わる訳ではありません.空気の通り道である気管支の周囲にはリンパ節があります.がんの再発に対する予防的措置として上葉周囲にあるリンパ節を郭清(かくせい:リンパ節周囲の組織を含めてリンパ節を切除すること)を追加して肺癌に対する手術が完成します.これらの操作を開胸術と同等に胸腔鏡下に行うのです.胸腔鏡下手術の利点は,傷が小さいだけではありません.手術に参加している外科医師,麻酔科医師,看護師がモニターに映し出された同じ術野を共有することができます.そのため意思の疎通がスムーズにはかれ,また教育という点からも有利なことがあります.しかし三次元のものを二次元モニターに映し出して手術をしますので,モニターを見て距離を測ったりするには慣れと技術の習熟が必須です.そのため我々の施設では,胸腔鏡下手術のトレーニングとして専用の機器を準備しており,少しでも空いた時間があれば自分でトレーニングをしています.また当科では,ブタを用いての実際の手術をトレーニングとして2〜3回/年に行っています. 図1 図2 拡大手術 拡大手術とは進行癌に対して行われる手術ですが,通常の肺葉切除に加えて癌が浸潤している臓器(心臓,椎体,食道,気管,肋骨など),大動脈,肺動脈などの血管,気管支などを切除する手術です.癌の進行度としては,ⅢA期/ⅢB期になります.肺癌手術例の約3%を占め,手術死亡率は約1.5%と通常の肺癌手術の約3倍です(日本胸部外科学会年次報告).我々の施設は,心臓血管外科,整形外科,消化器外科と連携協力して切除可能と判断した進行癌に対して積極的に手術を行っています. 実例を提示します.患者さんは77歳女性,他院で右肺上葉肺癌と診断されました.腫瘍が右主気管支の入口に近く(図3:気管支鏡写真),当院に紹介となりました.当院紹介前には,二つの専門病院で手術ができないと言われたそうです.このかたは呼吸機能が悪く,肺の切除量としては右肺上葉切除に耐えるのがやっとの状態でした.手術前に手術の危険性を十分にお話しし手術に対する承諾を得ました,この手術は空気の通り道となる気管の切除も予想されたため手術中の麻酔が通常の手術とは全く異なります.そこで外科医師チームのみならず麻酔科医師チームとの検討を通常の手術よりも十分に時間を割いて行なったのち手術に望みました.右肺上葉と気管分岐部を切除し,気管支をつなぎ合わせる手術を行いました.合併症なく順調に経過し,術後8ヶ月目に施行した気管支鏡では,つなぎ合わせた気管支の治癒も良好でした(図4).術後5年経過しましたが再発,転移なく経過しており,患者さんご家族とも非常に喜ばれています. しかし拡大手術は先程述べたように,手術死亡率も高く合併症も多い手術です.医学の父と呼ばれるヒポクラテスの言葉の中にこの一節があります.”At least, do no harm.” (少なくとも害は患者さんに与えるな)よかれと思ってしたことが逆に不利益をもたらすことをあるのでやらない方が良い場合もある,との意味です. 拡大手術は危険な手術であり,通常の手術より患者さんの状態によく留意をして手術の適応を慎重に見極める必要があります.また手術になった際には手術チームも十分に事前に準備をして手術に望むことは言うまでもありません. 図3 図4詳しく見る
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形成外科自家培養表皮による巨大色素性母斑の治療 | 形成外科2016年12月に保険適応が認められました 自家培養表皮移植とは、従来の治療法に比べ、はるかに患者さんの負担の少ない手術です これまで巨大色素性母斑に対して行われてきた治療方法は、少しずつ切除していく方法(10回以上の手術が必要になることもあります)・組織拡張器を用いた切除方法・切除して自家皮膚移植(皮膚を取るところに大きな傷が残ります)などがあります。しかしながら、多数回にわたる手術など負担が大きいものでした。 自家培養表皮による巨大母斑の治療は、上記のとおりその負担を軽減できる新しい治療法で、当院では、積極的に治療を開始しています。 自家培養表皮による巨大母斑の治療の保険適応に当たっては、当施設は保険を獲得するための治験(保険診療を獲得するために患者様に同意を得て行う臨床治療)に深く関わってきました。 この治験は、2013年2月に関東3施設(国立成育医療研究センター・聖マリアンナ医科大学・栃木こども医療センター)と大阪市立総合医療センターの4施設で開始され、2013年11月まで行われました。当施設では4施設の中で最も多くの治験症例に対応し、全例100%生着という結果をだし、保険適応に大きく貢献しました。この治験症例の手術は、関東以外で当施設において初めて行われ、全治験症例中2例目でした。これらの経験をもとに私たちは、安全かつ適切な加療を行っています。 シート化された培養表皮 (J-TECホームページより引用) 自家培養表皮移植の実際 母斑のない正常部位から約1×2㎝の皮膚を取ります。局所麻酔が可能であれば、通院で採取は可能です この皮膚から再生医療により自家培養表皮を作成します。作成は業者に依頼し、約4週間で自家培養表皮ができあがります。 入院の上、全身麻酔下に色素性母斑の切除(皮膚の深い部分(真皮)は一部残します。よって母斑を完全に切除するわけではありません)し、培養表皮を移植します。 入院は手術した範囲、母斑の大きさや手術時年齢にもよりますが、およそ1~2週間です。 自家培養表皮はおよそ2週間で生着します。 退院後は数ヶ月移植部位の保護が必要です。 自家培養表皮移植の1例 術前 培養表皮移植時 術後1年3ヶ月 大きい色素性母斑をお持ちの方は、ご遠慮なく一度ご相談下さい。 当科受診には、原則としてかかりつけの医師からの紹介状が必要です。また、完全予約制を取っております詳しく見る
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循環器内科冷凍アブレーションクライオアブレーションとは 従来、アブレーションは高周波を用いて心筋組織を焼灼することで心筋の伝導を障害し、不整脈を治療してきました。 クライオアブレーションとは焼灼するのではなく、組織を冷凍凝固することで心筋組織に障害をもたらし、不整脈を治療するものです。 カテーテル先端部で液化亜酸化窒素ガスというガスが組織から熱を奪うことで心筋組織をマイナス40℃~50℃に冷却して組織障害を来します。 心房細動に対するカテーテルアブレーション 心房細動の原因となる期外刺激の8~9割が肺静脈を起源とすることがわかって以降、心房細動に対する肺静脈隔離術が広く行われるようになりました。 従来の高周波アブレーションでは肺静脈起始部を1点ずつ焼灼し、線とすることで、肺静脈を電気的に隔離します。 新たに登場してきたクライオアブレーションではバルーン(クライオバルーン)を用いて肺静脈起始部を1回の冷却で隔離することができるようになり、手技時間を短縮することが可能となりました。 クライオバルーンアブレーションのメリット なんといってもそのメリットは手技の簡便さと高い治療成績です。従来の高周波アブレーションと比較して手技時間の短縮が報告されています。 治療成績も、1年非再発率が約80%と高周波アブレーションを上回る成績が報告されています。 当院では2015年11月より発作性心房細動の患者さんに対してクライオバルーンによるアブレーションを開始しています。 心房細動は発作性から持続性心房細動へと進行し、心房細動の持続期間が長くなるほどアブレーションによる治療成績が低下することがわかっています。 そのため、発作性の時期に短時間で施行でき治療成績も良好なクライオアブレーションを積極的に行っていきたいと考えております。詳しく見る
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薬剤部お子さまへの薬の飲ませ方|薬剤部お子さまへの薬の飲ませ方 シロップ剤 シロップ剤には計量カップかスポイトをお付けしています。 薬瓶に貼ってあるラベルに記載の用法・用量にしたがって、正しく一回分の量を測りとります。 乳児には一度に飲ませようとせず、少しずつスプーンやスポイトなどで飲ませます。口直しに水やぬるま湯を飲ませます。 ※ シロップ剤は幾種類かを調合している場合、あまり保存がききません。飲み残したお薬は捨ててください。 ※ 使った計量カップ、スポイト等はきれいに洗って乾かしておきましょう。 ドライシロップ剤 一回分を適当な量の水にとかしてシロップにして飲ませます。 (ミルクに混ぜて飲ませるとミルク嫌いになってしまうことがあります。) ※ 粉薬が飲めるお子さんなら、そのままコップ一杯の水で飲ませます。 粉薬(顆粒剤) 口の中を湿らせてからコップ一杯の水で飲ませます。 どうしても嫌がったり、うまく飲めないときは次のような方法があります。いろいろ工夫してください。 ※ 一回分を適量の水、ぬるま湯でとかし、スプーンやスポイドで少しずつ飲ませます。 ※ ほんの少量の水、ぬるま湯などでだんご状にして、ほっぺたの内側や上あごにこすり付けて飲ませます。 ※ 一回量を水に溶かし砂糖を加えて凍らせてシャーベット状にして飲ませます。 ※ ミルクに混ぜて飲ませるとミルク嫌いになってしまうことがあります。 錠剤・カプセル剤 口の中を湿らせてからコップ一杯の水で飲ませます。 いつまでも口の中に含んでいると溶け出して苦味などが出てくるものもあります。 坐剤 先のとがった方から入れます。 先を溶かしたり、肛門や坐剤の先にオリーブ油などを塗ると入りやすくなります。 赤ちゃんならオムツをかえるときの姿勢で、大きいお子さんは横向きに寝た姿勢で入れるとよいでしょう。 ※ 二分の一個とか三分の二個とかの指示のときは中身を出す前に清潔なハサミ等で包装ごと切ります。 ※ 坐剤を入れた直後に排便とともにくすりが出てしまっていたら、もう一度同じ量を与えても構いません。10~15分たっているなら、どのくらい吸収しているかわかりませんのでそのままにして、4時間以上あけてください。30分以上たっていれば、ほとんど吸収されていると考えてよいでしょう。 ※ 坐薬を入れた刺激で排便することがあるのでなるべく排便をすませてから使用してください。 点眼剤 まず、手をきれいに洗いましょう。 小さなお子さんは仰向けに寝かせて親の太ももで頭を動かないようにします。 容器の先が目にさわらないようにして1滴を落とします。 ※ さした後、お子さんが目をこすらないようにしてください。 塗り薬 患部をきれいにします。適量を指先につけて、指示のあったところにうすく塗りのばします。 手をきれいに洗います。 適量を指先につけて、指示のあったところにうすく塗りのばします。 ※ チューブから直接塗らないでください。 ※ たくさんぬったからといって効果は変わりません。 関連リンク 薬剤部 薬と食の相互作用 院外処方せん、後発(ジェネリック)医薬品への変更詳しく見る
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薬剤部薬と食の相互作用|薬剤部薬と食の相互作用 本来、薬は体にとって異物であることから、効果を発現し病気を治す主作用だけでなく、逆に体にとって危険な作用を及ぼす副作用、有害作用も常に存在し、よく言われる「両刃の剣」であります。薬と薬の「飲み合わせ」により、十分な薬の効果が得られなかったり、逆に重篤な副作用、有害作用が起こってしまうことはよくご存知でしょうが、薬と食べ物との併用でも、組み合わせによっては薬が有している作用が十分得られなかったり、時として副作用だけが出てしまったりすることもあります。 薬と食の相互作用について、すべてを説明することはできませんが、いくつか例をあげてお話させていただきます。 薬とグレープフルーツジュース ある種の薬物〔血圧を下げる薬(一部のカルシウム拮抗剤)、免疫を抑える薬(シクロスポリン、タクロリムス水和物)、てんかんを抑える薬(カルバマゼピン)、抗マラリア薬、一部の抗がん剤等〕とグレープフルーツジュースを同時に摂取した場合、血液中の薬物濃度が上昇し、作用が強くなり、時として重篤な副作用が出ることがあります。 少し詳しく説明すると、上記の薬物は小腸の粘膜(上皮)細胞に存在する代謝酵素で大半が代謝分解(解毒)され、それを逃れた薬のみが体内に吸収され、全身循環に乗り作用部位に到達し、薬の効果が発現されます。薬の服用と同時にグレープフルーツジュースを飲用すると、グレープフルーツジュースに含まれている成分(フラノクマリン)が代謝分解(解毒)酵素の働きを弱めてしまい、薬の解毒が阻害され、より多くの薬が小腸から吸収されて効果発現を強めてしまいます。このグレープフルーツジュースの解毒酵素の働きを弱める作用は、薬物によっては数日間持続することもありますので、上記の薬を服用中はグレープフルーツジュースの摂取を控える必要があります。 薬とセントジョーンズワート セントジョーンズワート(St.John’s Wort;学名Hypericum perforatum)は和名をセイヨウオトギリソウといい、ヨーロッパ・西アジア・北アフリカ近辺を原産とするオトギリソウ科の多年草である。日本の山野に自生し、民間薬に使われるオトギリソウは別種である。 近年ドイツをはじめとするヨーロッパの諸国では医薬品として承認され、適応症として軽症ないし中等症のうつ病に効果を有している。日本では、平成10年にハーブ類が規制緩和され食品として店頭で入手可能となりました。 ある種の薬物〔免疫を抑える薬(シクロスポリン、タクロリムス水和物)、気管支を拡張する薬(テオフィリン等)、てんかんを抑える薬(フェニトイン等)、心臓の働きを強める薬(ジゴキシン等)、不整脈を抑える薬(ジソピラミド等)、経口避妊薬、一部の抗がん剤等〕と健康食品であるセントジョーンズワートを摂取した場合、血液中の薬物濃度が下がり、期待される効果が減弱されることがあります。 セントジョーンズワートと相性の悪いお薬(上記に記載されているお薬)を服用されている場合は、セントジョーンズワートの摂取を避ける必要があります。 薬とタバコ タバコ自体の循環器系に対する作用も懸念されており、欧米の報告では喫煙者は非喫煙者に比べ、明らかに虚血性心疾患の発生率及び死亡率が高いと言われています。 経口避妊薬(ピル)を服用している期間中に喫煙すると、静脈血栓症、肺塞栓、心筋梗塞、脳卒中などの症状が起こりやすいことが報告されており、症状が重い場合には、生命に関わることがあります。特に、35歳以上の人が1日15本以上タバコを吸っている場合には危険性が増加すると言われており、経口避妊薬(ピル)の服用は危険であり、35歳以上の人で服用する場合には、禁煙することが必要であります。 一方、ある種の薬物〔気管支を拡張する薬(テオフィリン等)〕は喫煙により血液中の薬物濃度が下がり、期待される効果が減弱されることがあります。 このことは、間接喫煙者においても同様の報告がなされており、喫煙者と同様の注意が必要であります。 禁煙によって、もとの状態にもどるのに少なくとも1週間以上は要することから、テオフィリン等のお薬を服用されている患者さんは禁煙することが必要であります。 薬とアルコール ある種の薬物〔脳神経に作用する薬(睡眠導入薬、抗不安薬、抗うつ薬等)、血圧を下げる薬等〕とアルコールを同時に摂取した場合、血液中の薬物濃度が上昇し、作用が強くなり、重篤な副作用が出ることがあります。 少し詳しく説明すると、アルコールは肝臓においてアルコール脱水素酵素とチトクロムP450という2種類の解毒酵素により代謝されています。上記の薬物と同時にアルコールを摂取した場合、チトクロムP450による上記の薬物の代謝(解毒)が阻害され、結果としてお薬の効果が強く発現れることになります。上記の薬を服用する場合にはアルコールの摂取を控える必要があります。 薬と乳製品 ある種の薬物〔骨を強くする薬(ビスホスホネート系)、抗がん剤(エストラサイト)、菌を殺す薬(一部のニューキノロン系、テトラサイクリン系)〕は、牛乳や乳製品のようにカルシウムを多く含む飲食物と同時に服用した場合、消化管から吸収されにくい難溶性の物質が生成され、血液中の薬物濃度が下がり、期待される効果が減弱されることがあります。上記のお薬を服用される際には水、または白湯でお薬を飲む必要があります。 薬とビタミンK含有の食・嗜好品・健康食品・栄養剤 ある種の薬物〔血液を固まりにくくする薬(ワルファリン)〕は、ビタミンKの作用(血液を固まりやすくする作用)に拮抗して、肝臓におけるビタミンKによる血液凝固因子の生成を抑え効果を発現します。 ビタミンKを産生する納豆菌を含む納豆、ビタミンKを多く含んでいるクロレラ含有の健康食品の摂取は控える必要があります。尚、ビタミンKを含んでいるホウレン草等の緑色野菜を禁止することは食生活上問題がありますので、1日摂取量が過量にならないよう注意して食する必要があります。 薬とマグロ ある種の薬物〔結核菌を殺す薬(イソニアジド)〕を服用中の患者さんが、新鮮でないマグロの刺身などを摂取すると、ヒスタミン中毒(頭痛、顔面紅潮、発疹、蕁麻疹、悪心・嘔吐、発汗、動悸、全身倦怠感など)症状を起こすことがあります。 少し詳しく説明すると、通常マグロなど赤身の魚に含まれるアミノ酸のヒスチジンは細菌(Morganella morganii)により有毒なヒスタミンから無毒な代謝分解産物へと代謝されていきます。しかし、上記の薬物はヒスタミンが無毒な代謝分解産物へと代謝(解毒)される酵素を阻害し、ヒスタミンが血液中に高濃度となり、ヒスタミン中毒症状を呈する場合があります。 新鮮な魚肉中にもヒスチジンは多く存在するものの、ヒスタミンはほとんど存在しませんが、マグロ、サバ、イワシなど赤身の魚は、時間が経過するにつれ増殖する細菌によりヒスタミンが産生され、上記の薬物を服用している患者さんは、新鮮でないマグロ等の刺身を食することを控える必要があります。 関連リンク 薬剤部 お子さまへの薬の飲ませ方 院外処方せん、後発(ジェネリック)医薬品への変更詳しく見る
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脳神経外科転移性脳腫瘍 | 脳神経外科肺がんなどの癌腫が他臓器に転移した場合の治療法は、抗がん剤が主に用いられますが、脳に転移した場合(転移性脳腫瘍)は、抗がん剤の効果が小さいため、また別の治療法を検討する必要があります。近年は癌に対する化学療法などの治療成績が向上し、転移性脳腫瘍の患者さんの数は増加する傾向にあります。 従来、転移性脳腫瘍に対する標準的治療は、手術 + 全脳照射 とされていましたが、全脳照射による高次脳機能障害を避ける目的で、ガンマナイフが積極的に用いられるようになっています。当院では、転移性脳腫瘍に対してガンマナイフ治療を行い非常に良好な成績を得ています。この治療は身体の負担が少なく、短期間で終わり、高い有効性を持つために転移性脳腫瘍の患者さんに対して勧められる治療と考えます。 (左)右前頭葉に肺がんの脳転移が認められる。(右)ガンマナイフ治療後6ヶ月経過し、転移性脳腫瘍が完全に消失している。詳しく見る
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形成外科唇顎口蓋裂 | 形成外科唇顎口蓋裂 先天性疾患として古くから治療の歴史のある唇顎口蓋裂は、多くの手術法や、治療体制が報告されていますが、当科では、手術してから成人するまでの間、総合的に診療することにより、より統制のとれた診療を心がけております。そのため、矯正歯科・小児言語科・小児耳鼻咽喉科・口腔外科とともにチーム治療を行っています。小児期特有の複雑な病態を明瞭に把握するために、小児形成外科が軸として他科との協力を行い、診療しております。 顎裂を伴う唇裂には、矯正歯科と協力してプレートを用いた顎誘導を行うことで、本来備わっている顎の成長を促します。これにともなって、唇裂を縫いよせたときに、傷口にストレスがかかりにくくなり、より美しい形態を作成できると考えています。成人するまでの治療のスケジュールは大まかには、下に示したスケジュールとしています。もちろん、お子様の一人ひとりの状況に応じて、手術時期の調整を行います。 口唇形成術は、片側、両側、それぞれの裂の形に応じて手術法を選択しております。 当院では、口蓋裂の手術もまた、小児形成外科で行っています。 外鼻形成に関しては、初回手術では介入を最小限として、お子様の本来もっている鼻の軟骨の成長を促したほうがよいと考えています。そのため、鼻の穴の対称性は、小学校入学前ごろを目安として、この外鼻形成術で改善を図ります。 顎裂に対しては、歯列混合期(永久歯が生えてくる時期)に矯正歯科による加療を行い、必要に応じて小児形成外科にて行っています。骨の採取は、腸骨からの採取としています。 修正術に関しては、顔面の成長には2回成長期があり、そのいずれもが終了し、十分に顔の高さ、深さが整った高校生以降に、最終的な調整手術を行っています。具体的には、キズ痕の修正術や、顔面骨の骨切、軟骨移植による鼻を整える手術などです。 唇顎口蓋裂の治療は、出生直後から開始し、成人で完了する非常に長期的なものです。しかしそのひとつひとつは、最終的な仕上がりのために、重要な要素をなしており、どれをとっても、成立しないといっていいいほど密に関係しあっています。治療を受けられる際には、十分に時間をかけて、構築された診療スケジュールを理解していただいたうえで、診療を受けていただくことを心がけております。 口唇形成術 口蓋形成術 口蓋裂の手術は言葉を覚える時期に行う必要があります。これは、空気の通り道が口蓋裂にあるために、鼻に抜けてしまい、独特な発音法を身に着けてしまうことを避けるためです。(異常構音) 当院では、プッシュバック法という手術をおこなっています。古典的な方法ですが、言語成績は良好で、術後ICUに入ることなく、一般病棟へ帰棟することができます。術後は、創部が落ち着いたところで言語科での評価をしてもらい、言語への影響を見てもらいます。 もとより、口蓋が短いお子さんや、軟口蓋を動かす筋肉が弱いお子さんの場合、この手術を行っても息もれが改善しないことがあります。その場合には、咽頭弁という別の手術を追加して行うこともあります。 外鼻形成術 当院では初回の口唇形成術にでは、鼻の変形の治療は積極的には行っておりません。これは、早い時期での手術操作が、軟骨本来が有している成長を邪魔してしまうと考えているからです。 このため、鼻の変形を整える手術は、5歳前後に行っております。 当科での方法は長期的に安定しております。詳しく見る
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形成外科頭蓋顔面外科 | 形成外科頭蓋顔面外科 頭蓋(骨)縫合早期癒合症や顔面の低形成の病気に対して、小児脳神経外科・矯正歯科・小児耳鼻咽喉科・口腔外科とともにチーム医療を行っています。CTデータから作成した実物大の実体モデルを利用して、手術前シミュレーションし、より正確で高度な治療を行います。これらの手術は、月齢により治療方針が大きく異なるため、できるだけ早期に受診していただき、正確な診断の元、治療を開始することが望まれます。 頭蓋(骨)縫合早期癒合症に対する頭蓋形成術 この病気は、一般的には約1万人に4-14人と稀な疾患です。一方、当医療センターにおいては17例/年と多くの症例を治療しています。病気の原因としては、おなかの中で、本来作られるはずの骨の継ぎ目(頭蓋縫合)が、生まれる前に閉じてしまうことです(早期癒合症)。そのため、脳が成長するスペースが足りなくなったり(脳圧亢進)、頭や顔の変形を生じてしまうことが問題です。 手術が必要かどうかの判断は、眼の検査(眼窩底所見)、頭の検査(頭部レントゲン、CT、MRI所見)によって判断します。 手術の方法は月齢に応じて異なり、早期に受診していただいた場合、3か月までにくっついているところ(縫合部)を切り離す手術(開溝術)を検討し、それ以降は、拡大に必要な容量を当院オリジナルデータで照合したうえで、骨延長法もしくは、一期法による頭の形成術を行います。 短頭症に対して骨延長法にて頭蓋形成術を施行。術後、骨延長した部分に新しく骨の形成を認め、頭の形のバランスが改善している。(青矢印) 舟状頭に対して頭蓋形成術(一期法)を行った症例。術後前後方向の長さが短縮してバランスが取れている。 三角頭蓋に対して頭蓋形成を行った症例。術後おでこの突出した部分の形態が丸みを帯びて改善している。 顔面骨異動術 クルーゾン症候群やアペール症候群などの症候群性の頭蓋(骨)縫合早期癒合症で、成長に伴って顔面の陥凹が目立ってきます。つまり眼が飛びでた状態(眼球突出)となり、かみ合わせ(咬合)が合わない状態となります。また、上顎が成長しないために睡眠時無呼吸発作を生じることがあります。この状態に対して改善する方法を顔面骨切術(LeFort骨切術)といいます。具体的には、顔面の真ん中の部分を周囲の骨から切り離し、前方へと牽引することで、本来成長することによって得られる顔貌と咬合を獲得しようとするものです。当院では、年齢と顔面の陥凹の程度に応じて一期法(骨移植を併用)と骨延長法を行っております。 創外(ハロー)固定型骨延長器を装着しているところ 当院では、骨延長術と同時に顎間ゴムの装着を行い、よりバランスのとれた咬合を獲得できるように工夫しています。 アペール症候群に対してLeFortⅢ型骨切延長術を施行。術前の中顔面の低形成による眼球突出感は術後改善している。 骨延長法では、定期的な術後のレントゲンにて、必要量までの延長量を術後に決定することができる。 当科では頭蓋骨から顔面骨まで一連の治療として手術療法を行っています。他院からのご紹介、セカンドオピニオンなど幅広く対応させていただいております。専門外来(頭蓋顔面外来)へご相談ください。詳しく見る
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形成外科乳がん術後の乳房再建 | 形成外科乳がん術後の乳房再建 右記はこれまで乳房再建が行われてこなかった時代の乳房切除術の状態です。現在では、定型的乳房切断術は行われなくなり、乳輪、乳頭温存の有無にかかわらず、皮下乳腺全摘術や、部分切除+放射線治療が主流となっています。 しかし、乳房温存術という部分切除術でさえ、言葉以上に変形は目立ち、温泉やボディラインが目立つような服装は控えるようになってしまいます。そんな生活の質(QOL)を向上する方法が乳房再建です。具体的には、自分の組織を使う方法、人工物を使う方法、乳癌の切除と同時に行う方法、別々に行う方法の4つの因子がさまざまな組み合わせを生みます。それぞれのメリット、デメリットがあり、それぞれの患者さんに一番あった方法を選択していくこととなります。そのために、乳房再建外来でのご相談をさせていただいております。(下記参照) 広背筋を用いた再建 広背筋という背中の筋肉とその上についている皮膚、脂肪を用いて乳房を作ります。背中の皮膚、皮下脂肪の厚みにもよりますが、比較的小さな乳房の再建に使用します。 また、広背筋自体は手術で使用しても日常生活への影響はほぼないといわれていますが、術後の肩こりや腰痛の憎悪などが問題となることがあります。 再建手術時間 約3~4時間 腹部穿通枝皮弁による再建 腹部の皮膚、脂肪、時に筋肉の一部を用いて乳房を作ります。非常に細い血管を丁寧に処理し、一度血管を切離して、顕微鏡下に血管をつなぐ必要があります。この手術は難易度が高く、どの施設でも行っている手術ではありませんが、当院では積極的に行っています。 いずれも腹部の多くの皮膚、脂肪を用いることができるため、大きな乳房をつくることができ、筋体の損傷がきわめて少ないため、術後の機能的な問題はごくわずかです。 再建手術時間 約8~10時間 人工乳房(インプラント)による再建 皮膚に余裕のある場合にはシリコンインプラントを挿入します。ただし、原則としてエクスパンダーを挿入してから入れ替えることが推奨されています。 再建手術時間 約1.5時間 皮膚に余裕のない場合、または皮膚が縮むのを防止したい場合にはティシュエキスパンダーという医療用の風船を使用します。この風船に徐々に生理食塩水を注入することで、皮膚を引き延ばしておく効果があります。最終的にはシリコンインプラントでの置き換えが必要です。 再建手術時間 約2~3時間 乳輪乳頭の再建 通常乳房の再建の手術の後、6か月程度で傷の状態が落ち着きます。その後、乳輪、乳頭の再建を希望された場合、自家組織、人工物による乳頭の手術、自家組織、入れ墨による乳輪の中から選択することができます。 再建手術時間 約1~2時間 「※写真の転写は禁止します。」詳しく見る
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形成外科先天性眼瞼下垂・睫毛内反症(逆まつげ) | 形成外科先天性眼瞼下垂・睫毛内反症とは 当院では小児眼科と協力して、先天性眼瞼下垂や睫毛内反症の治療を行っています。 先天性眼瞼下垂は10万人に7.9人と非常にまれな疾患で、10%前後に家族性があり、5%程度は両側性であるとされており、そのほとんどは、片側性でやや左に多いとされています(Ophtalmology2011)。しかし当院での症例は平均22例/年(320例/14年)と数が多く、単純性のものや瞼裂狭小を伴う複雑なものまで、さまざまな病態に対して手術加療を行っています。これは、小児眼科にて適切に視力検査等を実施し、正確な診断をもとに、まずはアイパッチ等の保存的な治療を行っています。 その保存的な治療でも視力の左右差が改善しない場合には、年齢に応じて手術療法を行っています。身長が低いお子さんの場合には、ナイロン糸による仮のつり上げ術(フリーデンワルド法)を行います。ただし、このナイロン糸は通常、数年の期間がたつと、徐々に下がってきてしまい、再度手術を行う必要があります。 一方、十分に身長が伸びたお子さんの場合(目安としては100cmとしています)、太ももからの筋膜を採取して瞼とおでこの筋肉をつなぐ、筋膜つり上げ術を行っています。この筋膜を採取することで歩いたり走ったりすることに対して、通常、影響は与えないと言われています。 先天性眼瞼下垂に対する 筋膜つり上げ術 睫毛内反症手術 逆まつ毛(睫毛内反症手術)も非常に数の多い手術です。平均26例/年(368例/14年)のうち、おもに下まつ毛によるものが90%ですが、上まつ毛や両側上下に生じることもあります。 上まつ毛の場合、二重手術に準じた手術を行い、まつ毛の上に皮膚がおおいかぶさらないようにします。一方、下まつ毛の場合には、まつ毛前方の余剰な筋肉、皮膚を切除し、さらにまつ毛の生える方向を変えるために、一工夫をしております。 また、目頭の部分にモンゴルひだ(贅皮)がある場合には、目頭切開術(内眥形成術)を合わせて行い、再発しやすい内側部分への配慮をしております。詳しく見る
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形成外科眼瞼下垂症 | 形成外科眼瞼下垂症とは 眼瞼下垂症とは、一般的に、眼を開ける筋肉や膜が弱ることで、眼があきにくくなる病気です。しかしその病気の種類はさまざまあり重症筋無力症のような内科疾患が隠れていることや、肩こり、片頭痛などの自律神経症状を引き起こしていることもあり、きちんとした診断のもとに治療を行う必要があります。 心当たりのある方、お近くでおでこに深いしわのある方がいらっしゃいましたら、当院形成外科、眼瞼外来までご相談ください。 眼を開ける仕組み 眼瞼下垂症の種類 ①腱膜がのびて緩んでいる場合(腱膜性弛緩性眼瞼下垂) 挙筋の力が伝わらないので、おでこの筋肉(前頭筋)で瞼をあげようとします。このため、おでこに『しわ』がついてしまいます。 このような方の場合、おでこを手で押さえつけると、眼を開けることができなくなります。 また、筋肉センサーであるミュラー筋が強く収縮することで、体の変調をきたし、頭痛や、肩こりなどの周辺症状が出現することがあります。 ②腱膜がはずれている場合(腱膜解離性眼瞼下垂) おでこの力を使っても、ほとんど眼を開けることができず、足元がようやく見える程度です。通常この状態になると、片方の眼でようやく見えている程度で、日常生活への支障を生じます。 ③まぶたがけいれんする場合(眼瞼痙攣) 眼をあけようとすると、目の周りの筋肉(眼輪筋)がぴくぴくとして眼が開けられなくなります。 眼を開けようとする信号と、眼をつぶろうとする信号(顔面神経)がうまく協力できず、強制的に眼をつぶってしまう病気です。 脳の中で(大脳基底核)おこる機能障害とされていますが、原因としては、腫瘍による圧迫、神経疾患による症状、薬剤による副作用などさまざまなものがあり、詳しく調べる必要があります。 ④皮膚がたるんで瞳孔にかかる場合(皮膚弛緩性眼瞼下垂) 通称『三角眼』とよばれる状態で、主に目尻の部分でまぶたの皮膚が垂れ下がり、外側を見たい時に、カーテンのように皮膚が覆いかぶさり、視野の妨げとなります。 背景に、腱膜性の眼瞼下垂も隠れていることが多いです。 眼瞼下垂の程度 眼瞼下垂の症状、サイン 治療方法 基本的に、眼を開ける仕組みを作り直す手術を行います。すべての術式で局所麻酔での手術となります。日帰り、または、短期入院での手術が可能です。 手術の方法によって、手術時間や、術後の腫れがでる期間などが異なります。 手術前に瞳(瞳孔)にかぶさっていた瞼は上がり、丸い瞳が見えています。また、眉毛が無理に上げる必要がなくなり、自然な位置に戻っています。 余剰皮膚切除術 二重のラインで切開し、余った皮膚を切除する方法と、眉毛の下の皮膚を切除する方法があります。 二重ライン 眉毛下 手術時間(両側) 1.5-2.0時間 1.5-2.0時間 術後の腫れ具合と期間 強い・2-3週間 弱い・1-2週間 キズの見え具合 二重の底で見えない 眉毛の際でめだちにくい 外来手術 可(両側の場合は、短期入院をおすすめしています。) 可 二重の調整 可 不可 挙筋タッキング法、短縮法 緩んで伸びてしまったり、瞼板からはずれてしまった腱膜を再び、瞼板に戻す手術です。ミュラー筋の操作は、眼瞼けいれんの場合を除いて行わないようにしています。 二重ライン 眉毛下 手術時間(両側) 1.5-2.0時間 2-3時間 術後の腫れ具合と期間 強い・2-3週間 強い・2-3週間 キズの見え具合 二重の底で見えない 二重の底で見えない 外来手術 可(両側の場合は、短期入院をおすすめしています。) 可(両側の場合は、短期入院をおすすめしています。) 二重の調整 可 可 具体的な方針決定 具体的な手術法は各個人の眼瞼下垂の状況を詳しく検査し、どの部分に問題がある可能性があるかを検討の上、最適な治療法を提案しています。そのため、実際には、いくつかの治療法を同時に行うこともあります。 眼瞼下垂は、多くの人が最初は気が付かず、徐々に進行し中等度、重度になってから受診をされます。しかし、周囲を見渡せば、実は多くの人が眼瞼下垂の初期の状態にあります。知らず知らずのうちに、眼を開けるために、おでこに力をいれたり、余計な力がかかっていることがあります。眉毛の位置が少し高いなという方、おでこにしわのある方は、要注意です。 また、初期の眼瞼下垂の方で、片頭痛、肩こりがひどい方の場合、眼瞼下垂の手術を行うことでそういった症状が軽快することもよく経験されます。適切な時期に、適切な治療を行うことで、日常生活の質(Quality of Life: QOL)を改善につながればと、診療しております。 まずは、具体的な話しをきいていただき、ご理解を深めていただくことが肝要と考えています。ご遠慮なく主治医または、形成外科の外来へご相談ください。 なお、当院眼瞼外来を受診される場合には、当院形成外科眼瞼外来宛ての紹介状をご持参の上、地域医療連携室にてご予約をおとりください。 ※写真の転写は禁止します。詳しく見る
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形成外科顔面骨骨折 | 形成外科顔面骨折とは 顔の骨折は、骨折の部位により治療方針が異なります。当院で対応している骨折は①陳旧性鼻骨骨折・鼻篩骨骨折、②頬骨骨折・頬骨弓骨折、③眼窩内骨折、④上顎骨骨折、⑤前頭骨骨折に分類されます。これらが複数組み合わさる場合もあります。また顔面・頭蓋(ずがい、とうがい)は多くの骨の組み合わせからなるため、骨折の部位・症状によって眼科・耳鼻咽喉科・脳神経外科・歯科と協力して治療を行うことがあります。診断は症状と検査(レントゲン写真CT・MRI)を組み合わせて行います。また、当院では、複雑な骨折では3次元実体モデルを術前に作成し、治療に反映させています。 陳旧性鼻骨骨折・鼻篩骨骨折 当施設では、新鮮な鼻骨骨折については耳鼻咽喉科が対応しています。しかし、骨折後2週間以上経過をしていたり、変形が残った場合には、鼻骨の骨切り術や骨移植を行う必要が生じるために形成外科で手術を行っています。 頬骨骨折・頬骨弓骨折 転倒や打撲により顔面を強打した場合によく見られる骨折です。症状としては、口が開きにくくなったり、顔面の感覚の異常、奥歯が浮いた感じ、物を噛むと痛みを感じたり、時に物がだぶって見えたりすることなどが生じます。眼球や視力に影響が無い場合は、1週間くらい待って腫れが落ち着いてから手術を行うことが多いです。症状が軽かったり、骨折による骨のずれが少ない場合には手術をせずに経過を見ることもあります。手術は、ずれた骨片を元の位置にもどし、吸収性もしくは金属のプレートやワイヤーなどで固定します。固定に使用したプレートは、後に除去する必要は必ずしもありません。頬骨弓単独の場合は、元の位置に戻すだけの手術で済み、プレートなどで固定の必要はありません。 頬骨骨折・頬骨弓骨折 転倒や打撲により顔面を強打した場合によく見られる骨折です。症状としては、口が開きにくくなったり、顔面の感覚の異常、奥歯が浮いた感じ、物を噛むと痛みを感じたり、時に物がだぶって見えたりすることなどが生じます。眼球や視力に影響が無い場合は、1週間くらい待って腫れが落ち着いてから手術を行うことが多いです。症状が軽かったり、骨折による骨のずれが少ない場合には手術をせずに経過を見ることもあります。手術は、ずれた骨片を元の位置にもどし、吸収性もしくは金属のプレートやワイヤーなどで固定します。固定に使用したプレートは、後に除去する必要は必ずしもありません。頬骨弓単独の場合は、元の位置に戻すだけの手術で済み、プレートなどで固定の必要はありません。 眼窩内骨折 ブローアウト骨折とも呼ばれます。眼の周囲にある薄い骨の骨折で「眼を殴られた」等、眼球に衝撃が加わることで起こります。物がだぶって見える(複視)、目がへこむ(眼球陥凹)、頬や歯茎のしびれといった症状が現れます。症状とCTやMRIで診断を行います。手術するかどうかは眼球陥凹の有無と複視の程度で判断します。眼球陥凹が高度である場合は原則的に手術の対象になります。複視は腫れが引くに従って改善する場合も多いので、数週間様子を見て改善されない場合に手術を行います。例外的に骨折部に眼を動かす筋肉が挟み込まれてしまった場合は緊急手術になります。手術は、下まぶたや口内を切開して骨折線を確認し、落ち込んだ眼の周りの組織を元の場所に戻します。眼窩内の骨の欠損が大きい場合は再び眼窩内容が落ち込まないように、自分の骨や軟骨を移植して、眼窩周囲の骨を作り直します。入院期間は1週間前後です。複視は、手術直後に改善することは少なく、数週間~数か月かかります。 上顎骨骨折 顔の真ん中の骨の骨折でかなり強い力で起こります。多くの場合、上アゴを左右に横断するように骨折線が生じます。かみ合わせのずれ(咬合不全)、口が開けにくい(開口障害)、顔面の平坦化が主な症状です。症状とレントゲン写真とCTで診断を行います。手術するかどうかは症状の程度で決まります。治療の主な目的は元のかみ合わせに戻すことです。骨やかみ合わせのずれが少ない場合は手術を行わず、上アゴと下アゴをゴムやワイヤーで固定する顎間固定を行って数週間待ちます。ずれが大きい場合は手術の対象になります。手術は口内を切開してずれた骨を整復し、プレートで固定します。術後も骨がくっつくまで3週間前後、顎間固定を行います。顎間固定中は口を開けられませんが、しゃべることは可能です。その間、手術だけでかみ合わせが十分に戻らない場合は、歯科矯正を行うこともあります。 前頭骨骨折 前頭骨は、額の部分を作る骨で、鼻の上方や眉毛の部分には骨の中に空洞(前頭洞)が存在します。この空洞を含めた額を、強くぶつけた場合に生じる骨折が、前頭骨骨折です。診断は、症状とレントゲン・CTにより行います。変形が軽度で頭蓋内に問題が無ければ、手術の必要はありません。しかし、大きく陥凹したり、頭蓋内側の骨も折れて、感染の危険性がある場合は手術の適応となります。手術は、傷跡を額につけたくない場合は頭髪の中に切開線をおいて行います。この際、髪の毛をすべて剃ったりするようなことはせず、術後も髪の毛で隠せるように工夫しています。 ※写真の転写は禁止いたします。詳しく見る
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脳神経外科開頭頭蓋内腫瘍摘出手術 | 脳神経外科開頭頭蓋内腫瘍摘出術の適応 ほぼ全ての脳腫瘍に対して適応があります。(髄膜腫、神経鞘腫、神経膠腫、頭蓋咽頭腫、転移性脳腫瘍など。) 腫瘍により何らかの神経症状を認める場合、腫瘍が大きく、脳や神経組織に対する圧迫が強いと判断される場合、経過観察中に腫瘍が増大している場合などには、より積極的な手術治療の適応と考えられます。 一方で、脳悪性リンパ腫や胚細胞腫瘍といった疾患に対しては、摘出術よりも放射線治療・化学療法の効果が高いので、摘出術ではなく別の治療方法を検討します。 手術のリスク 腫瘍の局在、大きさ、血管や神経との関係性、全身状態などにより手術のリスクが発生します。開頭頭蓋内腫瘍摘出術は、一般的に3−5%の手術リスクと考えられていますが、当科では最新の医療機器(手術用顕微鏡、術中ナビゲーションシステム、術中神経生理学的モニタリングシステム、術中迅速病理診断、ハイビジョン内視鏡など)を完備し、専門性の高いスタッフからなるチーム医療を行うことにより手術リスクを極めて低い水準に保っています。 最近2年間の当科で施行した開頭頭蓋内腫瘍摘出術に関連した手術合併症の状況は、以下のとおりでした。この結果は個々の患者さんの手術リスクの確率としてあてはまるわけではありませんが、全体として高い安全性が示されていると判断します。 開頭頭蓋内腫瘍摘出術に関連した手術合併症 周術期死亡 0% 重度の神経症状悪化 0% 一過性の神経症状悪化(意図しなかったもの) 2% 全身併発症の悪化 1% 麻酔方法、手術時間 通常は全身麻酔下で手術を行います。手術時間は5時間から10時間程度で、腫瘍の部位、大きさ、性状、周囲構造物との関係、および患者さんの状態により手術時間がかわります。 手術および治療に関わる費用 手術および入院に関わる自己負担費用は手術内容や疾患の状況によって大きく変わります。診断がある程度確定した時点で事前に費用の概算を調べることが出来ます(医療相談窓口)。大きな手術等で医療費が高額になる場合には高額療養費制度の適応になり、医療費の負担を減らすことが出来ます。 頭髪の処置について 開頭腫瘍摘出術では、頭部の切開部位に応じて部分的に頭髪を剃毛する事があります。早期の社会復帰を目標とする場合は最小限の剃毛で極力目立たないように考慮を行います。一方で、病状によっては全頭部を剃毛する場合もあります。術前の手術説明時に最終的な打ち合わせを行います。 手術の流れ 術前は2〜3日前からの入院です。麻酔科による術前診察を受けて頂き、問診と全身状態の確認、歯牙のチェックなどを行います。 手術当日、8時45分に手術室に入室となります。 手術台に仰向けになって頂き、点滴による麻酔導入で意識のない状態になります。 この後、気管内挿管を行い、全身麻酔の状態とし、頭部の固定、手術部位の消毒をおこなって手術を開始します。 病変の露出に必要な部位に対して皮膚切開をおこない、頭部の筋肉および頭蓋骨を開いて開頭します。 腫瘍の露出を行い、周囲組織との剥離を行いながら摘出します。 摘出が終了したら脳を覆う膜(硬膜)を閉じて、外した頭蓋骨の固定を行い、筋肉および皮膚を縫合して手術を終了します。 全身麻酔を終了して意識を回復させ、頭部CTを施行してICUに入室します。 手術の経過をご家族に説明し、ICUで面会して頂きます。 術後の一般的な経過 通常は、手術翌日に一般病棟に移動します。 座ったり、飲水の練習を行います。可能であれば食事を開始します。開頭腫瘍摘出術は他の部位の手術と比較して痛みは少ないですが、手術直後は手術部位などの疼痛に対して痛み止めが良く効きますので、痛みがあれば積極的に痛み止めを使用します。 状態が落ち着いていれば歩いたり、トイレに行ったりするようになります。 手術から3〜5日めで、病棟内歩行、シャワー浴などを徐々に行います。必要があればリハビリテーションも行います。リハビリテーションの内容は病状に応じて様々ですが、理学療法、言語療法、作業療法などに分けられます。 血液検査やMRIなどの画像検査を必要に応じて行い、腫瘍の摘出度の確認をします。手術部位の観察、消毒を適宜行い、約1週間で抜糸します。 追加治療をしない場合の術後経過としては、おおよそ平均して10日間ぐらいの入院です。 退院後の生活 退院後、散髪やパーマ、毛染めなどは約1ヶ月後から可能です。 復職や復学、旅行、スポーツ、車の運転などの時期については主治医にご相談ください。詳しく見る
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脳神経外科内視鏡下経鼻的下垂体手術 | 脳神経外科内視鏡下経鼻的下垂体手術 脳下垂体は脳の下面に存在する小さな器官で、たくさんのホルモンを分泌する働きを持っています。脳下垂体およびその周囲にはさまざまな腫瘍が発生しますが、脳の下面で頭部のちょうど中央部分であるため、開頭による手術が難しいところであると言えます。この部分に対する手術治療として、鼻腔から細い内視鏡を挿入して病変に到達する内視鏡下経鼻的下垂体手術が発達しました。 適応 下垂体およびその周囲に発生する腫瘍性疾患が対象となります。非機能性下垂体腺腫、機能性下垂体腺腫(先端巨大症、クッシング病、プロラクチン産生腺腫の一部、TSH産生腫瘍、など)、頭蓋咽頭腫、髄膜腫の一部、斜台部脊索腫、軟骨肉腫、海綿静脈洞部神経鞘腫などです。 手術リスク 本手術法は大きな切開を必要とせず、身体の負担が少ない低侵襲の手術法ですが、一般的には、4〜5%の確率で合併症が出現すると考えられています。幸い当科では現在までに重篤な合併症は発生していません。最近2年間の当科で施行した内視鏡下経鼻的下垂体手術に関連した手術合併症の状況は、 内視鏡下経鼻的下垂体手術に関連した手術合併症 周術期死亡 0% 重度の神経症状悪化 0% 一過性の神経症状悪化(意図しなかったもの) 4% 全身併発症の悪化 0% でした。個々の患者さんにこれらの確率があてはまるわけではありませんが、全体として高い安全性を確保しており安心して手術を受けていただけます。 麻酔方法、手術時間、治療費 全身麻酔下で手術を行います。手術時間は5時間から10時間程度で、腫瘍の部位、大きさ、性状、周囲構造物との関係、および患者さんの状態により手術時間がかわります。 治療費については開頭頭蓋内腫瘍摘出術を参照してください。 開頭頭蓋内腫瘍摘出術はこちら 手術の流れ 入院は手術の2〜3日前からとなります。担当する耳鼻咽喉科医師による鼻腔内の診察および鼻腔内処置に関する説明を受けて頂きます。また麻酔科による術前診察で問診と全身状態の確認、歯牙のチェックなどを行います。 手術当日、8時45分に手術室に入室となります。 手術台に仰向けになって頂き、点滴による麻酔導入で意識のない状態になります。 この後、気管内挿管を行い、全身麻酔の状態とし、頭部の固定、手術部位(鼻腔)の消毒をおこなって手術を開始します。 手術は鼻腔内操作(耳鼻咽喉科)の後に病変摘出(脳神経外科)の順番です。 まず耳鼻咽喉科により、鼻腔内で粘膜を切開し、深部の骨を削開して腫瘍の下面を露出させます。腫瘍の近くまで来たら脳神経外科にかわって、内視鏡で腫瘍と正常組織の境界を確認しながら腫瘍の摘出を行います。 全身麻酔を終了して意識を回復させ、頭部CTを施行してICUに入室します。 手術の経過をご家族に説明し、ICUで面会して頂きます。 術後の一般的な経過 通常は、手術翌日に一般病棟に移動します。 通常の開頭腫瘍摘出術と同様に、座ったり、飲水の練習を行います。可能であれば食事を開始します。手術直後は手術部位などの疼痛に対して痛み止めが良く効きますので、痛みがあれば積極的に痛み止めを使用します。 状態が落ち着いていれば歩いたり、トイレに行ったりするようになります。 手術から2〜3日めで、病棟内歩行、シャワー浴などを徐々に行います。 血液検査やMRIなどの画像検査を必要に応じて行い、腫瘍の摘出度の確認をします。定期的に耳鼻咽喉科で鼻内の処置を行います。 通常の術後経過としては、おおよそ平均して6〜8日間ぐらいの入院です。 退院後の生活 鼻処置についての説明は耳鼻咽喉科から聞いて頂きます。 復職や復学、旅行、スポーツ、車の運転などの時期については主治医にご相談ください。 実際の手術の写真 この患者さんは、クッシング病という病気で、下垂体に出来た微小な腫瘍が、高血圧や脂質異常症、全身のむくみなどのホルモンの過剰症状を出していました。 脳下垂体を露出させたところです。 青丸で囲まれた部分がこの患者さんの病気の本体(微小腺腫)で、腫瘍の大きさはおよそ6mmでした。 腫瘍の周囲を剥離して、摘出を行っているところです。 全ての腫瘍組織を摘出したところです。正常の下垂体は損傷されておらず、腫瘍組織が完全に摘出されています。この患者さんの場合は術後にホルモンが正常化し、クッシング病が治りました。現在追加治療なしで良好な経過をとっています。詳しく見る
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脳神経外科神経鞘腫 | 脳神経外科特徴 末梢神経のさや(シュワン鞘)から発生する良性の腫瘍です。聴神経(音を聞いたり身体のバランスをとったりする神経)から発生する事が多く、これを聴神経鞘腫(もしくは聴神経腫瘍)と言います。難聴や耳鳴り、めまいで発症する事が多く、進行すると顔面の痺れ、歩行障害を来します。最初は突発性難聴と診断される事もしばしばあります。 治療方法 大きく分けて、①開頭による摘出術、②定位的放射線治療(ガンマナイフ)、③経過観察、の3つの選択肢があり、これらを組み合わせて治療を検討します。一般的には手術治療(2〜3週間の入院期間)よりガンマナイフ治療(2泊3日の入院期間)が好まれる傾向にありますが、患者様の年齢や腫瘍の進行度を見て、治療の目標が何なのかを考えて、治療の根治性(短期および長期の有効性)と安全性のバランスが最も良い治療方針を提供します。 (左)最大径4㎝の聴神経鞘腫による脳幹の圧迫を認める、(中央)手術により脳幹の圧迫を解除し、残存腫瘍に対してガンマナイフ治療を追加した、(右)治療後10年経過し再発なし詳しく見る