腎移植・腎不全治療について

腎移植、腎不全治療について

腎臓の機能について

腎臓は腰の上あたりに背骨をはさんで左右に1つずつあります。形はそら豆に似ていて、大きさはにぎりこぶしぐらいです。腎臓は人体を正常な状態に保つための大切な臓器であり、①尿を作り老廃物や余分な水分を体から排出する、②体内環境を一定のバランスに保つ、③血圧を調整する、④造血ホルモンを分泌して血液を増やす、⑤ビタミンDを活性化して骨を丈夫にする、といった役割があります。

医事課
腎不全について

腎臓の機能が低下することを「腎不全」といいます。腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」の2種類があります。これは古い名称であり、現在はそれぞれ「急性腎障害」、「慢性腎臓病」と言うようになりました。急性腎障害は腎機能が急速(数時間から数週以内)に低下するものをいいます。脱水やショック状態、薬剤、腫瘍や尿路結石などが原因となります。こちらは早期診断、早期治療により腎機能が回復する可能性があります。一方、慢性腎臓病は糖尿病、高血圧、慢性腎炎など様々な原因によって数か月~数年かけて徐々に腎機能が低下していく病気です。慢性腎臓病が進行すると、さまざまな治療を行っても元どおりの正常な腎機能までの回復は難しく、腎機能が高度に低下すると末期腎不全へと至り、最終的には腎臓の代わりをする治療、すなわち腎代替療法が必要となります。

末期腎不全の治療法と特徴

末期腎不全患者さんが選択できる腎代替療法として腎移植、血液透析、腹膜透析があります。腎移植は最も成績が良く、生活の質の改善ならびに余命の延長が期待できる治療法です。

腎移植には血縁者・非血縁者から2つのうち1つの腎臓の提供を受ける生体腎移植と、亡くなられた方(心停止や脳死)から腎臓の提供を受ける献腎移植があります。

血液透析は週3回、14時間程度といった時間的制約に加え、食事や水分摂取の制限が必要です。

腹膜透析は自宅で行うことができるため、時間的制約が少なく、状態が安定していれば通院も月に1回程度で済みます。食事・水分制限も血液透析よりは緩やかですが、完全に尿が出なくなると血液透析に移行する必要があること、操作を本人や家族が行う必要があるため、機械管理や感染のケアに注意が必要です。

医事課
腎移植について

腎機能が低下した慢性腎不全患者さんの体内で、提供者の腎臓を機能させることにより腎機能を回復させる治療法です。血液透析や腹膜透析とくらべ、腎移植をうけることで生命予後や生活の質を高めることができます。唯一の根治的な腎代替療法であり、妊娠や地震のような災害時にも強い医療ということができます。

腎移植レシピエントの適応

腎移植レシピエントとなれない方は①活動性の感染症がある方、②悪性疾患(がん)がある方です。また、移植後には免疫抑制剤の内服が必須ですが、内服できない方や管理不能な精神疾患を持った方は適応から外れる場合があります。
腎不全の原因となった疾患によって腎移植ができない方はほとんどおられません。

腎移植ドナーの適応

生体腎移植での腎提供後は腎臓が1つになり、腎機能は平均して3割ほど低下するといわれています。そのため、日本移植学会と日本臨床腎移植学会の生体腎移植ドナーガイドラインを尊守し、腎臓を提供されても問題が無いか、リスクの評価をしっかりと行います。

入院、手術の特色

腎移植の手術・入院経過

ドナーから採取した腎臓に付随する腎動脈、腎静脈、尿管のそれぞれをレシピエントの内腸骨動脈(もしくは外腸骨動脈)、外腸骨静脈、膀胱に吻合します。腎臓はレシピエントの骨盤の中(腸骨窩)に移植します。
生体腎移植ではほぼすべての場合、血管吻合後から手術終了までに移植腎からの尿の生成がみられ、術後より透析療法が不要となります。献腎移植で阻血時間が長い場合には腎機能の回復は遅れ、術後1~2週間の透析療法が必要となることがあります。
入院期間は経過が良好であれば術後約3週間で退院となります。合併症を発症した場合、その治療のため入院期間が延長となることがあります。

腎移植③1
腎移植の成績

日本における生体腎移植における生存率・生着率ですが、2010年以降では1年生存率、5年生存率が99.2%、96.8%、1年生着率、5年生着率が98.6%、93.3%となっています。

腎移植の入院・費用

腎移植にはおおよそ400万円程度の医療費がかかります。しかしながら保険適応ですので所得に応じて1~3割負担になるほか、特定疾病療養受領書、重度心身障害者医療費助成制度や自立支援医療を使うことで自己負担は0~2万円/月程度となります。

退院後の外来通院

腎移植をしてから拒絶の発生などを予防するため、退院後の外来通院は必ず指定された期日に来ていただくことになります。
外来では血液検査、超音波検査などを行います。血液検査では腎機能、感染症、免疫抑制剤の血中濃度などを評価します。超音波検査では移植腎の血流や腎臓の形態を評価します。その他、高血圧、糖尿病、脂質異常症、悪性疾患などの合併症が生じないか外来で定期的に検査します。
当院外来での検査のみならず、がん検診もきちんと受けるようにして下さい。

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信念

大阪市立総合医療センターでは腎移植医療において泌尿器科だけでなく腎臓内科、糖尿病内科、移植コーディネーター、薬剤師、栄養士など様々な科、職種と連携し、安全で質の高い腎移植医療を心がけております。
担当医:
浅井利大 腎移植・透析部 部長、泌尿器科 副部長 
西出峻治 泌尿器科 医長
濱田真宏 腎臓内科 医長
山﨑大輔 腎臓内科 医長
 
奥田友子 移植コーディネーター

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