小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術
最新で高度な医療の提供を
小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術を、通常手術として実施しています



各診療科において低侵襲治療が近年急速に広がり、手術方法としても、創が小さな腹腔鏡手術は当院ではごく一般的な手術方法となっています。当院に導入となった、最先端医療機器である手術支援ロボットによる腹腔鏡手術、いわゆるダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。
執刀する医師が患児に直接触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートは患者さんに接続され実際に手術操作が行われる”腕”の部分です(図1、1歳患児の術中、ドッキング後)。人の眼の役割をするカメラと手の役割をする3本のロボットアームを持っています。患児の身体に小さな穴をいくつか開け、各アームに接続されたカメラや手術器具が体内に挿入、サージョンコンソールの術者からの指令で各器具が外科医の手の動きを忠実に再現し手術が進行します。サージョンコンソールは、執刀医が座ってカメラを通して体内の画像を見ながら、手足を使って鉗子類を操作するところです(図2)。ビジョンカートは、カメラからの画像の収集、処理をおこなうところです。当院で手術受けられた4歳男児の手術後3か月 (図3)での創部写真を示します。臍より足側のみに創部を設置するなど、腹腔鏡手術よりもさらに低侵襲性で、創部が将来目立たない術式に改良中です。
当院では2020年1月から最新機種である、「ダヴィンチXi」を2台導入しております。従来の機種にくらべ、さらに微細な操作が可能となっています。2020年4月の保険収載以降私たちは小児患者に対するロボット支援下腎盂形成手術を開始し、手術成績良好、創も小さくすみ、かつ小児にも安全にロボット支援手術ができることを確認しています。
いままで当科では、水腎症に対しては腹腔鏡下手術を主に行ってきましたが、それでも2次元のテレビモニター下の手術であり、また手の代わりとなる鉗子の可動範囲が制限されるなど欠点がありました。これらの欠点を大きく解消したのが「ダヴィンチ」手術です。今後はますます増加していく手術と考えています。

「ダヴィンチ」手術はあくまで人が器械を操作して施行するのですが、3Dの視野下でまるで人の目で直に見ているようであり、さらに拡大して詳細に視認しながら手術ができます。使用する鉗子は人の手の数倍の細かさで動かすことができる為、例えば骨盤の奥のような、狭くて多くの臓器が入り組んだ場所での手術に特に適しており、明らかな術後手術成績の向上が多数報告されています。世界的にも器機の動作不良による致命的な有害事象の報告は一例もなく、安心して手術を受けてもらえると考えます。当センターには「ダヴィンチ」手術専用手術室が二室完備されています。今後は、年齢に関わらず、ますます「ダヴィンチ」手術が広まっていく期待は大きく、我々も支援ロボット手術センターを手術室スタッフとともに結成し日々前進しています。

文責:石井 啓一