大阪市立総合医療センター,Osaka City General Hospital

TEL.06-6929-1221

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頭蓋咽頭腫

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頭蓋咽頭腫とは

頭蓋咽頭腫は、脳の正中付近に発生する稀な腫瘍です。視床下部や脳下垂体、視神経などに接して発生します。全脳腫瘍の13%の頻度であり、小児脳腫瘍では510%です。発生年齢に特徴があり、小児期に発生する場合と、成人期に発生する場合があります。

組織学的には良性ですが、しばしば患者さんの寿命を縮める場合があり、良性というよりは低悪性度の腫瘍と見なすべき、と考えられています。ほとんどの場合、嚢胞(袋状の部分)と実質(塊の部分)を含んでおり、嚢胞内はコレステロール結晶を含む濁った液体で満たされています。

頭蓋咽頭腫の臨床症状

通常はゆっくりと発育するので、症状が出てから診断が確定するまでに1年以上かかることも稀ではありません。
頭蓋咽頭腫が視神経を圧迫すると視力障害や視野障害の原因となります。多くの頭蓋咽頭腫の患者さんは、眼科で視野の検査をすると異常が認められます。
また脳下垂体や視床下部などの内分泌器官に影響を及ぼすことにより、さまざまな内分泌障害を来すことがあります。成長ホルモンや、性ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなどの分泌が障害され、小児の患者さんでは成長不全、成人の患者さんでは性機能障害などが認められることがあります。
腫瘍による圧迫によって中等度から重度の頭痛を認めたり、うつ症状を認めることがあります。

頭蓋咽頭腫の診断

頭蓋咽頭腫は、脳MRIおよび脳CT検査により診断を行います。
これらの画像診断に加えて、内分泌内科で詳細なホルモンの検査を行います。
また、眼科で視力や視野の評価を行います。
状況により、言語聴覚士が高次脳機能障害の有無を検査することがあります。

頭蓋咽頭腫の治療

頭蓋咽頭腫は腫瘍であるので、治療後に腫瘍組織が残存していれば、将来再発する可能性があります。そのため、手術による完全な摘出を目標とした治療計画を検討します。状況により手術を2回もしくは3回に分けて行う事もありますが、手術の安全性と治療効果を総合的に判断し、個々の患者さんに最適と思われる治療方法を検討します。一般的に、頭蓋咽頭腫の手術治療は高リスクであるので、全摘出を目指さずに部分的に摘出を行って放射線治療を行う治療計画が用いられる場合があります。当院の治療方針は、手術による切除を積極的に行って、完全な摘出を行う方針です。
状況によっては、ガンマナイフ等の放射線治療を追加で検討する場合があります。

①手術治療

当院では、開頭による腫瘍摘出術と、内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術の両方を施行しています。頭蓋咽頭腫は、腫瘍の大きさや発生部位、周囲の神経および血管等の重要構造物との関係性などに大きな個人差があるため、開頭による摘出術が有効なのか、内視鏡下経鼻的手術が有効なのかをさまざまな画像診断の所見を元に検討し、手術の方法を判断します。最近は内視鏡下経鼻的手術の割合が増加している傾向にあります。
開頭頭蓋内腫瘍摘出術は、腫瘍にアプローチする部分の頭皮を切開し、開頭を行い、脳の隙間の部分を通って腫瘍に到達し、少しずつ腫瘍を摘出してゆく方法です。
頭蓋咽頭腫は、頭部のほぼまん中に発生するので、前方からアプローチする場合もありますし、後方、側方からアプローチを行う事もあります。
これに対して、内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術は、開頭するのではなく、鼻腔側から内視鏡を用いて頭部のまん中に直接的に到達し、下側から腫瘍を摘出する方法です。
脳や神経を経由しないで、最も直接的に腫瘍を摘出できる利点があり、近年は使用されることが多くなっています。

 

当院では、開頭手術と経鼻内視鏡手術の両方を施行可能な体制をとっています、個々の患者さんに対して最適な方法を計画します。

②放射線治療

頭蓋咽頭腫に対する放射線治療として、定位放射線治療(SRS, SRT)や、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)などがあります。これらは、全て当院で施行可能です。外科切除後に病変が残存している場合や、当初は全摘出と考えられた腫瘍が再発した場合などの治療に用いられます。現在の技術では、腫瘍周辺の重要組織への放射線被曝を適正に制限し、起こりえる合併症のリスクを最小限にするように厳密に計算・管理された治療放射線を病変に照射することが可能となっています。

実際の治療

医事課
図1
医事課
図2

この方は、高次脳機能障害と両眼の視力障害が進行し、仕事に支障を来すようになって病院を受診され、MRIにて頭蓋咽頭腫と診断されました。
黄色で示した所に4センチ径の頭蓋咽頭腫を認めます(図1、図2)。脳の正中で、視神経や視床下部、内頚動脈などの重要構造物に囲まれたところに腫瘍が発生しています。眼科での検査では視野障害が認められ、言語聴覚士の脳機能の評価では軽度の高次脳機能障害を認めました。内分泌内科でのホルモン検査では、成長ホルモン、性ホルモンなどの内分泌障害を認めました。

 

この方に対する治療として、手術による積極的な腫瘍摘出を行いました。
まず、頭蓋底アプローチによる開頭頭蓋内腫瘍摘出術(前側方から大きく脳を露出させ、脳、神経、血管の間から腫瘍を摘出する方法:図3)で、大部分の腫瘍を切除しました。2週間の後、開頭で摘出困難な部分(視神経の裏側)の残存腫瘍に対して、拡大経蝶形骨洞手術(経鼻的に内視鏡を使用して直接腫瘍に到達する手術法:図4)で摘出を行いました。
重要な穿通枝動脈に癒着した腫瘍の嚢胞壁が少量残存したため、放射線治療(ガンマナイフ)を追加しました。

医事課
図3(1回目の手術:開頭による摘出術)
医事課
図4(2回目の手術:経鼻内視鏡手術)

最終的に腫瘍は全て消失し、現在治療後5年が経過し再発のない状態です(図5、図6)。

医事課
図5
医事課
図6

高次脳機能障害と視野障害は改善し、通常の生活を過ごされています。
ホルモンの低下症に対して、内服で補充療法を行いながら外来で経過観察しています。

このように、頭蓋咽頭腫の治療には、外科、内科、小児科、眼科、放射線治療、リハビリテーションなどさまざまな専門領域のスタッフが緊密に連携することが不可欠です、当院では経験豊富なスタッフが、しっかりと患者さんとご家族をサポートします。

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