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学会発表・論文等アルコール使用障害特定テスト(AUDIT)スコアは既存の採血検査に比し飲酒量の推定に有用である
-消化器内科からの成果報告-
過度のアルコール摂取は多種多様な疾病、障害、けがに関与しています。飲酒スクリーニングによって、医療従事者はアルコール関連リスク低下のための予防措置を講じる機会を得られます。しかしながら、わが国で常用される有用なスクリーニング法は皆無です。アルコール使用障害特定テスト(AUDIT) は世界保健機構が作成した世界的に有名な質問票ですが、我が国における有用性の報告は少数にとどまっています。今回私達は、当院内科外来に通院中の患者さんを対象に、電子カルテ上で自動計算された飲酒量 (g/日)を外的基準にAUDITスコアの適切なカットオフ値を算出し、飲酒量の推定においてAUDITスコアが既存の採血検査に比し有用であることを専門誌に論文発表しましたのでご紹介します
BMC Public Health 2016 May 10;16(1):379. doi: 10.1186/s12889-016-3053-6
http://www.biomedcentral.com/1471-2458/16/379
目的
飲酒量を正確に把握することは医療者にとって重要です。飲酒量の推定には①患者さんへの質問票、②採血検査が用いられますが、どちらの方法でも飲酒量を正確に把握するのは難しいのが現状です。私達は、より正確・簡便に患者さんの飲酒量を把握するために、電子カルテ上に飲酒頻度 (日、週、月)、種類 (ビール、ワイン、ウイスキー等)、および量 (コップ、グラス等)から1日あたりの摂取エタノール量 (g/日)を自動計算するテンプレートを作成しました (十三飲酒量計算機; JAC; 図1)。次に、当院通院中の患者さんに飲酒量調査としてこのテンプレートへの記入に加えAUDIT (10項目の簡潔な質問文からなり、内容は飲酒量3項目・飲酒行動3項目・心理的反応2項目・アルコール関連諸問題2項目で各項目 0~4点の配点で、10項目の合計をAUDIT スコアとする)を行い、1日あたりの飲酒量とAUDITスコアとの相関を検討し、更に飲酒量の推定に用いられる既存の採血検査との比較検討を行いました。
結果
危険な飲酒 (男性 40 g/日以上、女性 20 g/日以上)の患者さんを予測するための適切なAUDITスコアは8.2点でした。また、危険な飲酒を予測するためにAUDITがAST/ALT比やγ-GTP、MCV等既存の採血検査と比べて有用かを検討したところ、AUDITスコア、中でもAUDIT-Cスコアという最初の3項目の合計点のみが有用であることが分かりました (図2)。
この研究について
今回の研究では、一般内科および肝臓外来において、AUDITのような質問票が既存の採血検査よりも正確に飲酒量の推定が出来る事が分かりました。また、肝疾患以外の疾患の患者さんでもAUDITは有用であることが分かりました。AUDITがより多くの医療現場で使用されることを願います。
図1; 十三飲酒量計算機; JAC
図2; 危険な飲酒を拾い上げるための方法*1
危険な飲酒 (男性 ≧40g/日, 女性 ≧ 20g/日) | オッズ比 | p値 |
---|---|---|
AUDIT-C | 3.45 | <0.001 |
AST/ALT比 | 2.94 | 0.063 |
γ-GTP | 1.00 | 0.895 |
MCV | 1.10 | 0.084 |
*1. 解析は性別、BMIも含む