脳神経外科
科の特色
脳神経外科は血管障害 (脳卒中を含む),脳腫瘍,機能的疾患 (神経血管圧迫症候群, 正常圧水頭症など),脊髄脊椎疾患,頭部外傷など,非常に多岐にわたる疾患が対象になります.さらに外科手術のみを行っているのではなく,それぞれの分野で血管内治療 (カテーテル手術),内科的治療 (薬物療法),放射線治療 (定位放射線治療)などの治療法もあり,これら全てを脳神経外科で行っています.
したがって1人の脳神経外科医が全ての分野のエキスパートになることは不可能であり,当科では1993年の開院以来,脳神経外科内でそれぞれの分野に特化したエキスパートを中心に診療を行っています.
治療の効果が同じで,その危険性も同じであれば外科手術よりも血管内治療や放射線治療の方が体への負担が少なく,さらに血管内手術や放射線治療よりも内科的治療の方が患者さんにとって望ましいことは言うまでもありません.しかし同じ疾患であっても最適な治療は,患者さんの健康年齢,基礎疾患,社会背景などに応じて異なってくるのも事実です.したがって当科では外科手術だけを中心に考えるのではなく,あらゆる治療法の中からその患者さんおよびご家族にとって最適なものを選択するようにしています.
特に外科手術,血管内治療に関しては,その分野に特化したエキスパートを中心に真っ当な適応で高水準なものを提供しており,対応可能な疾患 (表)に対しては当院で治療が完結できるようにしています.
表:当科で対応可能な疾患と対応困難な疾患

また当科では脳神経疾患のみでなく,オスラー病や全身の脈管奇形の診療をしていることも特色として挙げられます.
当科で診療しているそれぞれの疾患に関しては下記をご参照下さい.
診療方針
脳血管障害は血管が詰まって起こる虚血性血管障害と血管が破れて起こる出血性血管障害に分かれます.虚血性血管障害の代表が脳梗塞で,出血性血管障害には脳内出血やくも膜下出血などがあります.発症率は出血性よりも虚血性血管障害の方が2倍前後多くなります.
いずれも原因となる疾患は数多くあり,その代表的なものを下記で解説しています.
◆ 脳動脈瘤
◆ 頚部内頚動脈狭窄症
◆ もやもや病
◆ 動静脈シャント疾患 (脳動静脈奇形,硬膜動静脈瘻,脊髄・脊椎動静脈シャント疾患,頭頚部動静脈奇形,肺動静脈瘻)
◆ 脳卒中 (脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血)
小児の脳血管障害も成人と同様に血管が詰まって起こる虚血性血管障害と血管が破れて起こる出血性血管障害に分かれます.ただし発症率は成人の1/15~50と頻度が低く,また成人と異なり虚血性と出血性の割合に大きな差はありません.原因となる疾患は成人と同様のものもあれば,小児に特有なものもあり,また成人と同じ疾患であってもその基礎疾患や危険因子が成人とは異なるものもあります.
小児の代表的な脳血管障害を下記で解説しています.
最新医療機器を用いて専門医が治療
当科における脳腫瘍の治療方針は,高精度な顕微鏡手術を中心としてガンマナイフや血管内治療との最適な連携の元に,安全で確実な最良の治療を提供することです.
様々な治療法を組み合わせ,それぞれの専門領域の医師が協力することにより,どのような腫瘍性疾患であっても,どのような病状であっても,最高の治療を行える体制をとっております.
良性脳腫瘍(髄膜腫,神経鞘腫など)
良性脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫など)では,手術治療によって神経機能を確実に温存しつつ可及的最大限の腫瘍切除を行います.必要に応じてガンマナイフ治療などの追加治療を検討します.当科の特徴として手術治療とガンマナイフ治療を同一の診療科で行っているので,手術による摘出が絶対に必要な部分とガンマナイフで治療可能な部分を治療前に評価し,それぞれの患者様に対して最適な治療計画を検討する事が可能で,良好な治療結果を得ております.
悪性脳腫瘍(神経膠腫,中枢神経原発悪性リンパ腫,転移性脳腫瘍など)
悪性脳腫瘍(神経膠腫、中枢神経原発悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍など)では,最大限度の腫瘍摘出を目標として手術ナビゲーションシステム,術中神経機能モニタリング,術中蛍光診断などの高度先端医療を駆使した手術治療を行っています.言語野や運動野などの重要な脳組織に近接した腫瘍に対しては,麻酔科やリハビリテーション部,手術室看護部とのチームによる覚醒下手術を用いて徹底的な摘出を行っています.また化学療法,放射線治療,緩和治療に関しては血液内科,腫瘍内科,小児血液腫瘍科,放射線腫瘍科,緩和医療科との緊密な連携により最良の治療を提供します.
間脳下垂体腫瘍(下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫など)
間脳下垂体腫瘍(下垂体腺腫,頭蓋咽頭腫など)では,各種ホルモン検査による内分泌評価,MRIなどを用いた画像診断,視力および視野などの眼科的評価を行った後,それぞれの患者様に最も適切な治療方針を検討し内分泌内科や耳鼻咽喉科との緊密な連携の下で安全な治療を受けて頂けるように努めております.この領域の腫瘍は経鼻内視鏡手術によって治療を行う事が主流となっております.当科においてもハイビジョン内視鏡などの最新医療機器を用いて専門医が治療にあたります.
頭蓋内で脳神経が脳血管に圧迫されることで症状が出現する疾患です.顔の痛み,耳やのどの刺すような痛み,顔のぴくつきといった症状がみられた場合はこの疾患を考える必要があります.当科では様々な薬物治療を試み,症状が改善しない場合には手術治療を検討します.圧迫されている血管は脳の深部に存在し,様々な合併症をきたしうる部位に存在します.手術は術中ナビゲーションシステム,術中神経機能モニタリング,神経内視鏡を用い,より安全に,低侵襲な治療を行っています.また三叉神経痛,舌咽神経痛に対しては放射線治療であるガンマナイフも有効であり,より低侵襲な治療も積極的に行っています.
特発性正常圧水頭症とは,脳室(脳の中の水が溜まっているスペース)が徐々に拡大することで,歩行障害、尿失禁、認知症といった症状を呈する疾患です.近年分類の変更があり,ハキム病と呼ばれるようになりました.当院では脳神経内科,リハビリテーション科とも連携し,評価を行い,シャント手術(脳室腹腔シャント術、腰椎腹腔シャン術など)を積極的に行っています.
◆特発性正常圧水頭症
脈管奇形 (血管奇形)は身体の様々な部位に発生しますが,頭頚部は好発部位の1つであり,また頭頚部の脈管奇形は頭蓋内病変と関連することもあります.古典的には大きく血管腫にまとめられていましたが,現在では脈管奇形を血管腫と呼ぶことは間違っています.血管腫は血管性腫瘍を指し,血管の内皮細胞が異常増殖する疾患であるのに対して,脈管奇形は血管内皮細胞の異常増殖はなく,あくまで脈管の形成異常による血管奇形です.脈管奇形は国際的な基準であるISSVA (イスバ)分類によって大きく,静脈奇形,リンパ管奇形,毛細血管奇形,動静脈奇形・動静脈瘻に分けられます.これらは単独のこともあれば,静脈奇形+毛細血管奇形といったように一緒に認められる (混合型脈管奇形)こともあります.脈管奇形は同じ疾患であっても発生部位・年齢・症状によって診療科が異なってしまうのが現状ですが,その病態はどの部位でも同じです.したがって当院では特に静脈奇形と動静脈奇形・動静脈瘻は病変の部位に関係なく脳神経外科を中心に,必要に応じて形成外科,口腔外科,整形外科などと一緒に診療に当たっています.
各々の脈管奇形は下記で解説しています.