脳神経外科
科の特色
脳神経外科では,脳腫瘍(良性・悪性)、脳血管障害(脳卒中を含む)、神経血管圧迫症候群(三叉神経痛、顔面痙攣など)のほか、救命救急部や小児脳神経外科とも協力し、頭部外傷,小児脳神経外科領域の疾患など多岐にわたる疾患の診療を担当しています。それぞれの領域における専門医・指導医が中心となり、最先端の知識・技術をもって、患者様に対して常に最良の医療を提供できるように努めています。また、紹介患者様や救急患者様に対しては、地域の医療機関との緊密な連携をはかりながら診療を行っています。
脳腫瘍および脳血管障害の手術では、術中ナビゲーションシステムや術中神経機能モニタリングシステム、術中蛍光血管撮影装置などの高度医療機器を使用した顕微鏡下開頭手術や、より低侵襲な神経内視鏡手術をおこなっています。病変の部位によって覚醒下開頭手術や高解像度内視鏡による内視鏡手術やハイブリッド手術室にて術中血管撮影を行いながらの開頭手術を行っており、最先端の外科治療を積極的に取り入れています。
脳血管障害では、近年カテーテル治療(血管内治療)の進歩が目覚ましく、より低侵襲に治療が可能なカテーテル治療の対象疾患が増えています。当施設では、早くから最先端の血管内治療を積極的に取り入れて提供してきました。
また、ガンマナイフによる低侵襲治療も当施設の大きな特色です。大型総合病院でいち早く導入し、様々な疾患に対し非常に豊富な治療経験を有しています。ガンマナイフは、開頭術をせずとも病変に集中的に放射線を照射することで治療効果が得られる負担の少ない治療法です。
当科では、脳卒中を中心とした救急診療も積極的に行っており、脳神経外科直通電話・ニューロライン(急性期脳卒中を対象)を設置し、近隣医療機関、救急隊から直接連絡を受け、時間的なロスなく、最短時間で診断・治療ができるように連携しています。入院後は、脳卒中ケアユニット(SCU: Stroke care unit)で、多職種からなる脳卒中専門チームによる集中的な治療および早期からのリハビリテーションを計画的かつ組織的に行っています。
■当センターは「一次脳卒中センター(PSC)コア施設」に認定されています。
*PSCコア施設とは、一次脳卒中センター(PSC)のうち、脳梗塞に対する超急性期治療(機械的血栓回収療法)の治療実績や診療体制をもとに、24時間365日機械的血栓回収療法を行うことができる「地域におけるコア(中核)となるPSC施設」です。
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診療方針
最新医療機器を用いて専門医が治療
当科における脳腫瘍の治療方針は、高精度な顕微鏡手術を中心としてガンマナイフや血管内カテーテル治療などとの最適な連携の元に、安全で確実な最良の治療を提供する事ということです。
様々な治療法を組み合わせ、それぞれの専門領域の医師が協力することにより、どのような腫瘍性疾患であっても、どのような病状であっても、最高の治療を行える体制をとっております。
良性脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫など)
良性脳腫瘍(髄膜腫、神経鞘腫など)では、手術治療によって神経機能を確実に温存しつつ可及的最大限の腫瘍切除を行います。必要に応じてガンマナイフ治療などの追加治療を検討します。当科の特徴として手術治療とガンマナイフ治療を同一の診療科で行っているので、手術による摘出が絶対に必要な部分とガンマナイフで治療可能な部分を治療前に評価し、それぞれの患者様に対して最適な治療計画を検討する事が可能で、良好な治療結果を得ております。
悪性脳腫瘍(神経膠腫、脳悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍など)
悪性脳腫瘍(神経膠腫、脳悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍など)では、最大限度の腫瘍摘出を目標として手術ナビゲーションシステム、術中神経機能モニタリング、術中蛍光診断などの高度先端医療を駆使した手術治療を行っています。言語野や運動野などの重要な脳組織に近接した腫瘍に対しては、麻酔科やリハビリテーション部、手術室看護部とのチームによる覚醒下手術を用いて徹底的な摘出を行っています。また、化学療法、放射線治療、緩和治療に関しては血液内科、腫瘍内科、小児血液腫瘍科、放射線腫瘍科、緩和医療科との緊密な連携により最良の治療を提供します。
間脳下垂体腫瘍(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫など)
間脳下垂体腫瘍(下垂体腺腫、頭蓋咽頭腫など)では、各種ホルモン検査による内分泌評価、MRIなどを用いた画像診断、視力および視野などの眼科的評価を行った後、それぞれの患者様に最も適切な治療方針を検討し内分泌内科や耳鼻咽喉科との緊密な連携の下で安全な治療を受けて頂けるように努めております。この領域の腫瘍は経鼻内視鏡手術によって治療を行う事が主流となっております。当科においてもハイビジョン内視鏡などの最新医療機器を用いて専門医が治療にあたります。
脳血管障害に対する治療方針としては、「より安全に、より低侵襲に」を目標に行っており、病変の種類・部位・大きさおよび患者様の年齢・症状・合併症などに応じて直達手術もしくは血管内カテーテル治療をうまく使い分け最適な治療を提供しています。
脳血管内治療学会指導医・専門医、脳卒中の外科学会技術指導医、脳卒中指導医・専門医が脳血管障害の治療を担当します。
◆脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)
◆脳動脈瘤
◆脳動静脈奇形
◆内頚動脈狭窄症
◆もやもや病
◆硬膜動静脈瘻
◆海綿状血管奇形
頭蓋内で脳神経が脳血管に圧迫されることで症状が出現する疾患です。顔の痛み、耳やのどの刺すような痛み、顔のぴくつきといった症状がみられた場合はこの疾患を考える必要があります。当科では様々な薬物治療を試み、症状が改善しない場合には手術治療を検討します。圧迫されている血管は脳の深部に存在し、様々な合併症をきたしうる部位に存在します。手術は術中ナビゲーションシステム、術中神経機能モニタリング、神経内視鏡を用い、より安全に、低侵襲な治療を行っています。また、三叉神経痛、舌咽神経痛に対しては放射線治療であるガンマナイフも有効であり、より低侵襲な治療も積極的に行っています。
特発性正常圧水頭症とは、脳室(脳の中の水が溜まっているスペース)が徐々に拡大することで、歩行障害、尿失禁、認知症といった症状を呈する疾患です。近年分類の変更があり、ハキム病と呼ばれるようになりました。当院では脳神経内科、リハビリテーション科とも連携し、評価を行い、シャント手術(脳室腹腔シャント術、腰椎腹腔シャン術など)を積極的に行っています。
◆特発性正常圧水頭症