糖尿病・内分泌内科
2020年度 外来診療実績 : 4311名
外来診療実績 | 症例数 |
---|---|
1型糖尿病 | 329 |
持続皮下インスリン注入療法使用 | 90 |
妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠 | 159 |
妊娠糖尿病 | 126 |
1型糖尿病合併妊娠 | 7 |
2型糖尿病合併妊娠 | 26 |
外来在宅療養指導(通算数) | 2651 |
糖尿病腎症透析予防指導 | 804 |
フットケア | 799 |
CSIIおよび持続血糖モニター指導 | 532 |
自己血糖測定導入指導 | 160 |
外来インスリン/GLP-1受容体作動薬自己注射導入 | 146 |
その他 | 210 |
個人栄養指導(通算数) | 1702 |
2020年度 病棟入院実績 : 629症例
入院患者の原疾患による分類 | 症例数 |
---|---|
1型糖尿病 | 41 |
2型糖尿病 | 527 |
妊娠糖尿病/糖尿病合併妊娠 | 28 |
その他の糖尿病 | 26 |
低血糖の原因精査 | 4 |
その他 | 3 |
入院目的による分類 | 症例数 |
---|---|
血糖コントロール | 464 |
妊娠に関連した血糖管理 | 28 |
高血糖緊急症 | 11 |
低血糖症 | 6 |
合併症管理 | 29 |
血圧コントロール | 2 |
感染症 | 44 |
電解質異常 | 10 |
内分泌機能評価/治療 | 5 |
不明熱精査 | 5 |
循環器疾患 | 7 |
肝硬変 | 3 |
その他 | 15 |
糖尿病内科医を目指す先生方へ
私たちは糖尿病内科医を目指す先生方を歓迎しています。
当科は数多くの糖尿病および合併症を扱っており、その症例数および種類の豊富さは大阪府でも有数の施設であり糖尿病専門医を目指すに不足ありません。
医学生、前期・後期臨床研修医、ならびに糖尿病専門医を目指す先生方へ、私たちは糖尿病専門医の育成に力を入れております。
病院見学や相談を随時受け付けています。下記アドレスまでご連絡ください。

診療実績
2024年(令和6年)4月時点での外来通院患者数・内訳ならびに各年度毎の外来初診患者・入院患者数,各種検査,治療件数・人数は以下の通りです。
1.外来通院患者数
通院患者数(実人数) 1782人

(重複がある場合も主たる診断名で分類)
2.外来初診患者数
※重複がある場合も主たる診断名で分類
年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
下垂体疾患 |
48 |
50 |
84 |
87 |
78 |
71 | 90 | 101 |
甲状腺疾患 | 249 | 264 | 312 | 286 | 276 | 265 | 271 | 311 |
副腎疾患 | 54 | 80 | 90 | 97 | 117 | 92 | 88 | 95 |
副甲状腺・骨系統疾患 | 23 | 27 | 26 | 37 | 29 | 40 | 43 | 23 |
性腺疾患 | 1 | 2 | 4 | 2 | 8 | 4 | 4 | 1 |
内分泌腫瘍 | 3 | 4 | 2 | 2 | 3 | 1 | 6 | 5 |
遺伝性疾患 | 4 | 13 | 7 | 6 | 2 | 8 | 7 |
6 |
その他の疾患 | 13 | 9 | 20 | 12 | 13 | 19 | 10 | 13 |
計 | 395 | 449 | 545 | 529 | 526 | 500 | 519 | 555 |
3.入院患者数
※カッコ内は術後評価などで再入院した場合を含めた延べ人数
年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
下垂体疾患 | 33(40) | 25(27) | 39(47) | 50(61) | 36(50) | 24(29) | 44(52) | 47(60) |
甲状腺疾患 | 8(9) | 10(10) | 11(11) | 10(10) | 8(8) | 7(7) | 9(9) | 13(13) |
副腎疾患 | 25(41) | 30(37) | 46(66) | 51(63) | 68(96) | 46(62) | 47(71) | 60(82) |
副甲状腺・骨系統疾患 | 0 | 0 | 1(1) | 5(5) | 4(4) | 0 | 0 | 1(1) |
内分泌腫瘍 | 1(2) | 3(5) | 2(3) | 1(1) | 0 | 2(2) | 3(4) | 2(2) |
遺伝性疾患 | 0 | 1(2) | 2(2) | 0 | 0 | 1(1) | 0 | 0 |
その他の疾患 | 0 | 0 | 1(1) | 1(1) | 3(3) | 3(4) | 8(11) | 9(9) |
計 | 67(92) | 69(81) |
102 (131) |
118 (141) |
119 (161) |
83 (105) |
111 (147) |
132 (167) |
4.各種検査,治療件数・人数
※いずれも当科で実施したもの
年度 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
甲状腺超音波検査(件) | 319 | 322 | 764 | 828 | 858 | 952 | 997 |
1089 |
甲状腺穿刺吸引細胞診(件) | 54 | 71 | 243 | 189 | 247 | 200 | 250 | 215 |
アイソトープ治療(甲状腺癌に対するアブレーション治療)(人) | 1 | 4 | 15 | 12 | 19 | 19 | 19 | 21 |
アイソトープ治療(バセドウ病)(人) | 9 | 8 | 6 | 11 | 9 | 13 | 16 | 15 |
副腎静脈サンプリング検査 | 10 | 4 | 12 | 12 | 27 | 10 | 9 | 13 |
主な疾患
1.下垂体疾患
- 下垂体腫瘍(先端巨大症,プロラクチン産生下垂体腺腫,クッシング病,TSH産生下垂体腺腫など)
- 鞍上部腫瘍(頭蓋咽頭腫,ラトケ嚢腫など)
- リンパ球性下垂体炎
- IgG4関連下垂体炎
- 下垂体機能低下症
- 成人成長ホルモン分泌不全症
- 視床下部性性腺機能低下症
- 中枢性尿崩症
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
など
下垂体腫瘍など腫瘍性病変の手術前・後の内分泌機能評価,下垂体機能低下症や尿崩症などの診断・内分泌機能評価のための内分泌学的検査(負荷検査など)やプロラクチン産生下垂体腺腫(プロラクチノーマ),手術で治りきらない先端巨大症などに対する薬物治療,ホルモン分泌低下症(下垂体機能低下症,中枢性尿崩症)に対するホルモン補充療法を行っています。ホルモンは不足しているのはもちろんダメですが,かといって多ければいいというのでもありません。ホルモン補充療法については,患者さんの状態や内分泌学的検査結果を見ながら,補充量を適切に調整するように努めています。下垂体腫瘍など腫瘍性病変の治療は脳神経外科と連携して行っています。
この患者さんはめまいの原因を調べるためMRIを行ったところ,下垂体腫瘍を認め紹介受診されました。MRIで視神経を圧迫する大きな下垂体腫瘍を認め(写真上段),視野の障害も認めました。内分泌学的検査からは機能性ゴナドトロピン産生下垂体腫瘍という珍しいタイプの腫瘍でした。脳神経外科で手術を行い,腫瘍は完全に切除されました(写真下段)。

2.甲状腺疾患
- 甲状腺機能亢進症・中毒症
- バセドウ病
- バセドウ眼症(甲状腺眼症)
- 橋本病
- 甲状腺機能低下症
- 亜急性甲状腺炎
- 無痛性甲状腺炎
- 甲状腺腫瘍・結節
- 甲状腺ホルモン不応症
など
バセドウ病に対する薬物治療や甲状腺機能低下症に対するホルモン補充療法,甲状腺眼症(バセドウ眼症)に対するステロイドパルス治療+放射線治療(放射線治療は放射線腫瘍科に依頼しています)などを行っています。結節性・腫瘍性病変に関しては頚部超音波検査や吸引細胞診により診断し,方針を決定の上,手術が必要な場合は耳鼻咽喉科・頭頸部外科と連携して診療にあたっています。
また,2016年(平成28年)よりバセドウ病治療ならびに甲状腺がん全摘術後の外来アブレーションを目的としたアイソトープ治療(131I内用療法)を開始しています。
- この患者さんは複視(物が二重に見える)で眼科を受診された際に甲状腺眼症が疑われ紹介受診されました。MRIで特に矢印部分の外眼筋(眼を動かす筋肉)の腫脹,浮腫を認めており,炎症活動性が高いと考えられました。ステロイドパルス療法+放射線治療を行うことにより,自覚症状,他覚所見は改善しました。
3.副腎疾患
- 副腎腫瘍(クッシング症候群,原発性アルドステロン症,褐色細胞腫など)
- 副腎皮質機能低下症・アジソン病
- 先天性副腎過形成・低形成
など
内分泌疾患を原因とする高血圧(内分泌性高血圧症)の多くを占める原発性アルドステロン症の診断ならびに原因となる病変が左右どちらの副腎にあるかを診断するための副腎静脈サンプリング検査(放射線診断科とともに実施)を行うとともに,クッシング症候群,褐色細胞腫など機能性副腎腫瘍の診断,術後の内分泌機能評価,副腎皮質機能低下症の診断・機能評価のための内分泌学的検査(負荷検査など)を行っています。また,褐色細胞腫においてより安全に手術を受けて頂くための降圧剤,輸液による治療(術前プレパレーション),両側の副腎からのアルドステロン過剰分泌を原因とする原発性アルドステロン症(特発性アルドステロン症)に対する薬物療法,副腎皮質機能低下症,先天性副腎皮質過形成・低形成などに対するホルモン補充療法などを行っています。副腎腫瘍など腫瘍性病変で手術が必要な場合は,泌尿器科と連携して診療にあたっています。
- この患者さんは35歳の時からコントロール不良の高血圧ならびに低カリウム血症を認めました。左副腎に1cm程度の副腎腫瘍を認め(○印),内分泌学的検査で原発性アルドステロン症と診断し,副腎静脈サンプリング検査で腫瘍のある左副腎からのアルドステロン過剰分泌が証明されたため腹腔鏡下に左副腎摘出術を行いました。
手術までは3種類の降圧剤とカリウム製剤12錠を服用していましたが,術後1週間で全ての薬が不要になりました。
4.副甲状腺・骨系統疾患
- 原発性副甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能低下症
- 偽性副甲状腺機能低下症
- 骨粗鬆症
- 骨系統・骨代謝疾患
など
原発性副甲状腺機能亢進症の原因(多くは副甲状腺腫瘍です),病変の場所を確定診断するための画像検査,合併症の評価を行って適切な治療方針を決定の上,治療を行っています。年々増加している骨粗鬆症に対しては,DXA法による骨密度測定,骨代謝マーカー測定を行って治療することに加え,加齢によるものに加えて内分泌疾患が原因となることもあるため,その原因に応じて適切な治療を行います。
- この患者さんはカルシウム,リンの異常で紹介受診されました。副甲状腺ホルモンの値が高く頚部超音波検査で甲状腺の背側に腫瘍が疑われたため副甲状腺シンチグラフィを行ったところ,腫瘍に一致して集積を認め(矢印),原発性副甲状腺機能亢進症と診断しました。腫瘍摘出術を行うことにより,副甲状腺ホルモンは低下し,カルシウム,リンの異常も改善しました。
5.性腺疾患
- ターナー症候群
- クラインフェルター症候群
- 多嚢胞性卵巣症候群
- 原発性性腺機能低下症
など
原因検索および内分泌機能評価を行って適切な治療方針を決定の上,状況に応じたホルモン補充療法等の治療を行います。
また,遺伝性疾患や先天性疾患が疑われる場合は,遺伝子診療部と連携して遺伝カウンセリングも行っています。
6.内分泌腫瘍
- 多発性内分泌腫瘍症(MEN)
- フォンヒッペル・リンドウ病(VHL)
- 膵内分泌腫瘍(インスリノーマ,ガストリノーマ,グルカゴノーマ)など
など
インスリノーマやガストリノーマなどホルモンを過剰に分泌する膵臓の内分泌腫瘍が疑われる場合は,内分泌機能評価を内分泌学的検査(負荷検査など)で行い,病変の場所を確定診断するため放射線診断科とともに選択的動脈内刺激薬注入(SASI:selective arterial secretagogue injection)試験行っています[組織診断のための超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)は消化器内科に依頼しています]。遺伝性腫瘍が疑われる場合は,複数の臓器に腫瘍性病変を認めることもあるため,関係する診療科と連携して治療に当たるとともに,遺伝子診療部と連携して遺伝カウンセリングも行っています。
- この患者さんは低血糖の原因を調べるため紹介受診されました。内分泌学的検査でインスリンの不適切な分泌が疑われ,CT・MRIで膵臓に小さな腫瘍性病変(矢印)が疑われました。EUS-FNAで膵内分泌腫瘍と診断し,SASI試験で腫瘍からのインスリン過剰分泌が確認されました。腫瘍摘出術を行い,低血糖は完全に消失しました。
7.その他
- 低・高ナトリウム血症
- 低・高カリウム血症
- 低・高カルシウム血症
- バーター症候群
- ギッテルマン症候群
- 偽性バーター症候群
- 腎性尿崩症
- 家族性高コレステロール血症
など
疾患情報・コラム
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糖尿病・内分泌内科内分泌(学)とサイエンスが大好きな、あるいは苦手だけど興味があるみなさんへ内分泌内科・内分泌学とサイエンスが大好きな、あるいは苦手だけど興味があるみなさんを歓迎します! 大阪市立総合医療センター内分泌内科は,2014年(平成26年)4月に糖尿病センターを糖尿病・内分泌センターへと拡大発展させることに伴い,専門性を高めるために新たに開設されました。以後,内分泌領域においてより高度な専門性を有する医療を提供するとともに,糖尿病・内分泌センターとして診療科間で連携をとりながら幅広い疾患に対応しています。 生体がさまざまな環境の変化に対応して,一定の状態を保って生存を維持する現象を恒常性といいます。ホメオスタシス(ギリシャ語)ともいい,血液の性状や体温調節などがその例で,多少の変動があっても一定の範囲に収まるように調節されています。内分泌(系)はこの恒常性の維持に神経(系),免疫(系)とともに非常に重要な役割を果たしています。 恒常性を保つため,ホルモンは過不足がないように常に全身状態に応じて必要量が分泌されるように巧妙に調節されています。その代表がネガティブフィードバック機構で,ほかにはコルチゾールや成長ホルモンのように,リズムをもって分泌されるホルモンもあります。この巧妙な調節機構が何かしらの理由で狂う,破綻するとホルモン分泌異常という形で内分泌疾患を発症します。内分泌疾患は,その原因が自己免疫,腫瘍,炎症,血流障害,遺伝子異常(先天性)など,多彩であることが特徴です。 内分泌疾患は稀少疾患と言われていますが,必ずしもそうではありません。糖尿病,高血圧症,脂質異常症,骨粗鬆症など生活習慣病の原因となっていたり,最近では,これまで肥満が原因として治療されてきた高血圧症患者の中に原発性アルドステロン症患者が多く存在することが示唆されたりしています。悪性腫瘍など種々の疾患に対する治療法が進歩していますが,それらの治療に用いられる薬物や放射線治療がホルモンの分泌に影響を与え,治療が必要になることもあります。また,内分泌疾患は非特異的な症状,徴候を呈することが多く,これまではっきりと診断がつかなかったり他疾患として治療されていたりしたものが実は内分泌疾患であったということもあります。このように,実は内分泌疾患はごく身近なところに存在している可能性があり,さまざまな病歴,症状,徴候,身体所見を手がかりに的確に診断,治療することにより患者さんのQOLを改善し,生命予後を維持・改善できるところが内分泌診療の醍醐味です。内分泌内科(学)は症候学,診断学にもつながり,まさに「全身を診る」内科と言っても過言ではありません。 大阪市立総合医療センター内分泌内科は,以下に挙げるような強みを有しており,みなさんの興味,要望に応えることができます。 屈指の症例数を誇り,多種多様な内分泌疾患の診療を経験できる 経験豊富なスタッフによる指導,教育ができる 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医,甲状腺専門医,臨床遺伝専門医を取得できる(糖尿病・内分泌センターとして,それぞれが極めてレベルの高い診療を行っており,糖尿病症例も十分に経験できる) さまざまな専門性(サブスペシャリティ)を有する学会,研究会に参加,発表し勉強できる その気になれば臨床研究もできる 進路について色々な方向性で相談・対応できる 内分泌内科開設以降,年を追う毎に患者数は増加し,最近は年間五百数十名の外来初診患者(他の医療機関からの紹介,もしくは院内他科からの紹介)と百数十名の入院患者を受け入れています(具体的内訳,推移は「主な疾患・検査成績」を参照下さい)。内分泌疾患の症例数としては大阪ではトップクラスで,大学病院にも匹敵する症例数を誇る,関西圏でも有数の病院です。疾患のバリエーションも非常に幅広く,ほぼ全ての内分泌領域の患者さんの診療にあたっており,いわゆる稀少疾患とされている範疇に入る疾患や患者数が少ない領域,疾患についても多くの診療を行っています。 下垂体疾患に関しては,当院脳神経外科には内視鏡下経鼻的下垂体手術,放射線治療(ガンマナイフ)をそれぞれ専門とする経験豊富な脳神経外科医がいずれも診療に従事しており,検査,手術,放射線治療(ガンマナイフ),内科的治療を全て当院で一貫して行うことができます。先端巨大症,クッシング病などの下垂体機能亢進症ならびに下垂体機能低下症の診断に必要不可欠な内分泌学的負荷検査を積極的に行っており,CRH・TRH・LHRH負荷試験やGHRP-2負荷試験などの種々の負荷検査に加え,視床下部-下垂体-副腎系の予備能評価や成長ホルモン分泌不全症の診断に重要であるインスリン低血糖検査も安全性を担保しつつ積極的に行っています。 甲状腺疾患に関しては,バセドウ病など甲状腺機能亢進症や橋本病,甲状腺機能低下症などの診療,結節性病変に対する検査[超音波検査,穿刺吸引細胞診(これらの検査については当科分のみならず病院全体分を当科で担当しています)],診療ならびに,甲状腺眼症のステロイドパルス治療(+放射線治療)を行うとともに,バセドウ病治療ならびに甲状腺分化癌全摘術後の外来アブレーションを目的としたアイソトープ治療を行っています。アイソトープ治療については,2021年度に設備増強により131I投与可能量が増量し,治療可能患者数が増加しました。 副腎疾患に関しては,原発性アルドステロン症に対するカプトプリル負荷試験や生理食塩水負荷試験などの内分泌学的負荷検査を行うことに加え,放射線診断科とともに副腎静脈サンプリング検査を行い,治療方針を決定しています。クッシング症候群や褐色細胞腫に対しては,内分泌学的検査,核医学検査を行うとともに,手術を安全に行うために術前,周術期管理を行っています。また,術後にも迅速ACTH負荷試験などの内分泌学的検査を行い,内分泌学的に寛解・治癒が得られたかの評価,残存副腎予備能評価を行うことにより,術後の診療方針を決定しています。核医学検査については,2021年度に機器更新によりSPECT/CT装置が導入され,より精度の高い診断が可能になっています。 副甲状腺・骨系統疾患も症例数が増加しています。原発性副甲状腺機能亢進症に関しては,内分泌学的検査,画像診断(超音波検査,核医学検査等)による診断,合併症評価を行い,治療適応を決定しています。治療薬の増加により治療方法の選択肢が増えた骨粗鬆症については,DXA法による骨密度測定,内分泌疾患による二次性骨粗鬆症の除外等を行った上で,それぞれの患者さんに適した治療を行っています。もちろん,内分泌疾患が基礎疾患にある場合は,その検査,治療を行うことはいうまでもありません。 そのほか,原発性腺機能低下症などの性腺疾患やインスリノーマなどの内分泌腫瘍,遺伝性疾患などの,いわゆる稀少疾患とされている範疇に入る疾患や患者数が少ない領域,疾患についても多くの検査,治療を行い,全ての内分泌領域において幅広い診療を行っています。 本院は全国で15施設しかない「小児がん拠点病院」の一つに指定されています。加えて,「地域がん診療連携拠点病院」に指定されており,「がん診療連携拠点病院」と「小児がん拠点病院」両方の指定を受けた,大学病院を除くと全国で唯一の病院です。近年の治療の進歩により小児がんは治る疾患になってきました。その一方で,成⻑や時間の経過に伴い治療の影響による合併症(晩期合併症)の問題が指摘されており,最も多い合併症が内分泌異常と言われています。大阪市立総合医療センター内分泌内科では,当院の小児系診療科や他の医療機関と連携して,小児期医療から成人期医療へのトランジション後のホルモン補充療法や全身管理などシームレスな診療を行っています。 甲状腺機能異常合併妊娠管理を産科との併診により行うなど,他科患者の内分泌管理も併診により行っています。また,甲状腺クリーゼ,粘液水腫性昏睡などの内分泌救急疾患も救命救急部と併診し診療にあたっています。 大阪市立総合医療センター内分泌内科での研修は,当院の専門研修プログラムに則って他の内科分野の研修を行いつつ,内分泌,代謝,糖尿病領域の研修を行って内分泌代謝学の土台を固めた上で,上述のようなさまざまな内分泌領域の患者さんの診療を経験することにより内分泌領域の専門性を高めてスキルアップを図り,内科専門医,内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医取得を目指します。学会発表についても積極的に行っており,内科学会,内分泌学会の総会・地方会,内分泌代謝Update,甲状腺学会,臨床内分泌病理学会,間脳下垂体腫瘍学会などで発表することができます。また,臨床研究センターによるサポート体制もあり,チャレンジ精神があれば臨床研究を行うこともできます。 大阪市立総合医療センターは全54診療科という全国屈指の診療科数を有し,大学病院のように各分野のスペシャリストが診療にあたる一方で,大学病院とは異なり各診療科間の敷居は低く,非常に恵まれた環境で診療,研修することができることも,大きな利点です。 さあ,私たちと一緒にホルモンが織りなす美しく不思議な世界に一歩足を踏み入れてみませんか! お問い合わせ先 教育研修センターもしくは内分泌内科 金本 巨哲まで https://www.osakacity-hp.or.jp/byouin/resident/詳しく見る
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糖尿病・内分泌内科甲状腺疾患に対するアイソトープ治療(131I内用療法) | 内分泌内科<完全予約制>甲状腺疾患に対するアイソトープ治療 (131I内用療法) アイソトープ治療(131I内用療法)とは、甲状腺組織(がんを含む)がヨウ素を取り込む性質を有していることを利用し、131Iと呼ばれる放射線を放出するヨウ素(131Iカプセル)を内服して甲状腺内部から放射線を照射する治療です。甲状腺はヨウ素を原料としてホルモンを合成、分泌している臓器で、体内に取り込まれたヨウ素はそのほとんどが甲状腺に取り込まれて他の臓器への取り込みが極めて少ないこと、また体内に取り込まれた放射性ヨウ素から放出される放射線の到達距離は非常に短く他の臓器への影響や副作用が非常に少ないため、極めて安全に効果的に治療を行うことが可能です。このように、アイソトープ治療は有用な治療法ですが、特殊な装置や設備が必要であるため、実施可能な施設が非常に限られています。 当院は2014(平成26)年に日本甲状腺学会認定専門医施設に認定され甲状腺疾患に対する専門施設として診療を行っていますが、2016(平成28)年からバセドウ病に対するアイソトープ治療ならびに甲状腺がん手術後に残った甲状腺組織破壊(アブレーション)目的に対するアイソトープ治療を開始しました。 2021年(令和3年)11月より,設備増強に伴い131I投与可能量が増加し,年間あたりの治療を行うことができる患者さんの数が増えました。 バセドウ病アイソトープ治療 バセドウ病に対する治療方法には薬物療法、手術とアイソトープ治療がありますが、それぞれの治療法には下の表のように長所と短所があります。 治療法 長所 短所 薬物療法 外来で治療を開始できる ほとんどすべての患者さんに施行できる 不可逆的な甲状腺機能低下症に陥ることがほとんどない 副作用が少し多い 薬の効き方に個人差がある 治療期間が長い 再発があり得る 手術 早くて確実性が高い 再発が少ない 入院、麻酔、手術痕は避けられない 基本的には甲状腺機能低下症になる 熟練した専門医によってなされなければならず、手術可能な施設が限られる アイソトープ治療 外来で治療できる 甲状腺の腫れを確実に小さくできる 副作用、合併症が少ない 再発が少ない 繰り返し治療できる 基本的には甲状腺機能低下症になる 治療後に甲状腺眼症が発症または憎悪する例がある 若年者、妊娠、授乳婦には行えない 実施できる施設が少ない そのような中で、アイソトープ治療は希望する場合に加えて、次のような場合にはよい治療法と考えられます。 薬物療法で副作用が出現したとき 薬物療法で十分に甲状腺ホルモンをコントロールできないとき 手術後に再発したとき 薬物療法や手術を望まないとき 心肺の病気や周期性四肢麻痺などにより確実なコントロールが必要なとき など 治療自体は131Iカプセルを内服するだけで、大変簡単なものです。治療は原則として外来で行いますが、状況により入院で行うこともあります。まず外来で治療について説明し、甲状腺眼症や心機能などのリスク評価、治療前検査などを行ったうえで治療を行います。 アブレーション治療 甲状腺がんに対するアイソトープ治療は60年以上の歴史を有し、その有用性が国際的に定着している安全な治療法です。特に、甲状腺を全摘した後に放射性ヨウ素でわずかに残存した甲状腺を破壊(アブレーション)しておくと、将来的に甲状腺がんの再発を減らせることが示されており、欧米では一般化しています。これまでわが国では、甲状腺がんに対するアイソトープ治療は治療のための病室に入室し治療する必要がありましたが、関連法規により患者さんの病状によってはアブレーションが外来でも行えるようになり、当院でも外来でのアブレーション治療を開始することになりました。 ※アブレーションとは 甲状腺がんと診断され甲状腺を全摘することにより病巣が全て取り除くことができたと判断された場合でも、わずかに甲状腺が残っていることがあります。そのわずかに残った甲状腺組織をそのままにしておくと甲状腺がんが再発したり他の部位へ転移したりすることがあります。これを予防するために、放射性ヨウ素でわずかに残った甲状腺の処置を行うことをアブレーションといい、再発予防になるだけではなく、万一再発した場合でも発見しやすくなることが知られています。 外来アブレーションの対象となるのは、以下の条件を満たす方です。 患者さん本人に関して 遠隔転移のない組織型が分化型の甲状腺癌で、甲状腺を全摘している 自立した生活ができる 1年以内の妊娠、授乳を望まない 患者さんの背景および環境への配慮に関して 公共交通機関を使わずに帰宅することができる(公共交通機関を利用する場合は継続乗車を1時間以内にすることができる 小児または妊婦が同居しない 水洗トイレが設けられている 投与後3日間は家族と別の部屋で一人での就寝が可能である 同居している家族の理解と協力が得られる 治療自体は131Iカプセルを内服するだけで、大変簡単なものです。外来アブレーションには2つの方法(「甲状腺ホルモン休薬法」、「タイロゲン法」)がありますが、いずれの治療法も選ぶことができ、患者さんと相談して決定します。まず外来で治療について説明し、治療前検査などを行ったうえで治療を行います。詳しく見る