もやもや病

もやもや病とは日本で最初に発見された疾患で両側の内頚動脈の終末部,前大脳動脈,中大脳動脈近位部が進行性に狭窄・閉塞する疾患です.それに伴い付近にもやもや血管と呼ばれる異常血管網(その多くは元々ある正常な細い血管)が発達します (図1).様々な研究がおこなわれていますが,原因はいまだに不明です.
1957年に竹内らが「両側内頚動脈形成不全症」として発表し,その後1969年に鈴木らにより,血管撮影検査を行った際にもやもや血管が,たばこの煙が「もやもや」立ち上がっている様子に似ていることから「もやもや病」と命名され,現在に至っています.最近は病態を表すため,「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれています.

図1

図1:もやもや病

正常 (左)では内頚動脈から前大脳動脈,中大脳動脈が分岐し,そこから細い穿通枝が分岐している.

もやもや病 (右)では血管内膜が肥厚することで,内頚動脈先端から前大脳動脈,中大脳動脈近位部が狭窄・閉塞して,代わりに穿通枝が異常発達し (もやもや血管),ネットワークを形成している.

遺伝子の解析も行われ,2014年にRNF213の遺伝子異常の報告がされています.ただし,直接病気を引き起こす原因遺伝子ではなく,もやもや病の患者に多く見られるといった関連遺伝子であり,現在も様々な研究がおこなわれています.自費診療となりますが,当院では院内でRNF213の遺伝子検査が可能です.

もやもや病の特徴

この疾患の特徴としては東アジアに多く,やや女性に多い疾患です.また,約10%程度に家族性にみられます

発症形式は大きくは虚血発症,出血発症に分けられます

虚血発症は脳を栄養する血流量が足らなくなることで,一過性の症状(一過性脳虚血発作)や永続的な症状(脳梗塞)を呈します.症状としては片側(両側同時に出ることはほぼありません)の脱力(運動障害),しびれ(感覚障害),言葉が出ない (言語障害)が代表的ですが,稀に脳の症状やけいれん発作,意図しない上下肢の運動(不随意運動),見えにくい(視野障害),けいれん発作などもあります.脳動脈は呼吸が早くなった時に細くなる特徴があり,したがって激しい運動の後や泣いた時,吹奏楽の演奏の際や熱いものを冷ます(ラーメンなどをフーフー冷ますとき)などに,症状が出現しやすくなります

出血発症は,内頚動脈などが狭窄・閉塞することで不足する脳血流を代償しているもやもや血管に負担がかかり,破綻することで脳内に出血します.時にもやもや血管に動脈瘤が形成され,それが破裂することでも脳出血を起こします.出血を起きると,突然の激しい頭痛や嘔吐を認め,さらには意識障害を呈することもあります.また虚血性と同様に運動障害や感覚障害,言語障害が出現することもあります.

発症年齢は10歳以下(小児例)と30-40歳代(成人例)の2つのピークがあります

小児例の発症形式はほとんどが虚血発症によるものです.

成人例の場合は半数が若年型と同様の虚血発症で,残りの半数が出血発症となります.

 

もやもや病の治療

脳梗塞,一過性脳虚血発作を起こした直後 (急性期)は,通常の脳梗塞治療と同様に血液をさらさらにする薬剤や,脳血流を改善する薬剤,脳を保護する薬剤などを使用する内科的治療を行います.

脳出血を起こした直後は,出血を起こした部位,大きさに応じて外科手術 (血腫除去術や脳室ドレナージ術)が必要になることがあります.またもやもや血管に出血の原因となる動脈瘤を認めた場合には,再出血を予防するため血管内治療 (カテーテル治療)を行うこともあります.

虚血発症にせよ,出血発症にせよ再発予防には頭蓋内外血行再建術 (バイパス術)が勧められます

頭蓋内外血行再建術 

頭蓋内外血行再建術とは頭蓋外の血管と脳の血管とつなぎ,脳血流を増やしてあげる治療法です.それには直接血行再建術と間接血行再建術の2通りがあります

直接血行再建術は,頭皮を栄養する浅側頭動脈を採取し,脳の表面の動脈に直接吻合することで,脳血流を上昇させます (図2).手術直後から早期に血流が上昇します

図2

図2:直接血行再建術

図の左方のように頭皮の血管を脳表の中大脳動脈に直接吻合し,頭皮の血管から脳内の血管に血流を供給する.

 

間接血行再建術は,皮下にある筋肉や骨膜,脳の表面の硬膜などを脳表に留置することで,これらの血流が徐々に脳に入るようになります.

治療としてはこれらのどちらかもしくは両方を行います.

成人例においては間接血行再建術単独の治療は効果が乏しいとされ,直接と間接の両方同時,または直接血行再建単独が行われます.

小児例はいずれにおいても効果が期待できるとされています.

当院では成人例,小児例とも直接と間接の両方同時に行っています

■ 当院での実際の手術の際の流れ

術前検査として,造影CT検査,MRI検査,脳血流検査などを行います.また脳血管撮影検査も,脳血流の血行動態(どの穿通枝が拡張しているか,どの領域に血流が足りていないかなど)を把握するために成人では全例で行っています.脳血管撮影検査は入院にて行っています.

以下は,実際の手術の際の流れになります.手術の際の入院は前日に行います (ただし出血,脳梗塞など発症されて入院された方は,そのまま入院を継続して,治療を行うこともあります).

1.入院は手術の前日になります.食事は前日夕食まで,水分摂取は当日の朝6時までになります.

2.手術当日は,午前8時半ごろに手術室に向かいます (8時過ぎから家族の面会も可能です).

3.手術室に入り,全身麻酔を行い,各種手術の設定を行い,実際の手術開始は10時過ぎになります.

 

手術時間は手術方法や縫合の難易度などで大きく異なります.通常複合バイパス術(2本の直接血行再建術+間接血行再建を行います.)であれば7-8時間前後となります.

手術後は,麻酔を覚まし,手術室を退室します.そのままCT検査を行い,術後出血などの問題がないか確認します.

手術後当日から翌日はICU(集中治療室)にて管理を行います.集中治療専門の医師と連携し,術後経過を見ていきます.翌日にMRI検査,脳血流検査を行い,評価を行います.

1週間前後にもMRI検査,脳血流検査を行いもやもや病術後の合併症の評価を行います.

浅側頭動脈を採取するため,皮膚の血流が悪くなると考えられ,皮膚を固定しているスキンステープラや糸の抜去は2週間目に行います.

入院期間は症状の出現などを評価し2-3週間になります.

当院では,多くのもやもや病患者さんをフォローしています

もやもや病は画像検査にて偶然に見つかることもあります.症状がない場合は外科手術 (血行再建術)は必要ありませんが,症状の出現がないか,症状がなくても狭窄の進行や小さな出血がないかなど,定期的に経過を見ていく必要があります.

また外科治療を行っても,それで終了にはなりません.その後も血管の狭窄の進行,脳梗塞,脳出血のリスクは0にはならないので,長期的に経過を見ていく必要があります.

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