頚部内頚動脈狭窄症

脳は左右の内頚動脈,椎骨動脈によって栄養されており,内頚動脈は首のレベルで総頚動脈から枝分かれします.その起始部が狭くなったものが頚部内頚動脈狭窄症で,脳梗塞の原因となります.狭くなる原因のほとんどは動脈硬化ですが,稀に頚部の放射線治療後の変化や大動脈炎症候群などもあります.動脈硬化によって分厚くなった血管壁にはコレステロールや脂肪が溜まっておりプラーク (粥腫 (じゅくしゅ))と呼ばれます (図1).プラークの一部が脳へ飛んでいくことで脳梗塞が起こりますが、その他にも狭窄部位を通る血液が固まり,血栓が脳へ飛んでいくこと、狭窄が進行すると脳血流が低下することでも脳梗塞を起こします.脳梗塞は片側 (狭窄と反対側)の手足の麻痺や言語障害を起こしますが,プラークや血栓が眼への血管 (眼動脈)へ飛んでいくと,片眼 (狭窄と同じ側)の視野が欠ける黒内障を起こすことがあります

図1

図1:頚部内頚動脈狭窄症

脳は左右の内頚動脈と椎骨動脈によって栄養されている.

頚部内頚動脈狭窄症は内頚動脈の起始部に,動脈硬化によるプラークが形成され,血管が狭窄している.

頚部内頚動脈狭窄症は脳梗塞や黒内障を起こした,または起こしかけた(数分で症状が消失)際に見つかる (症候性)だけでなく,頚動脈エコーなどで偶然に発見される (無症候性)こともあります.いずれも治療は脳梗塞の予防または再発予防が目的となります.それにはまず内科的治療が基本となり,動脈硬化の危険因子である高血圧,糖尿病,脂質異常症のコントロール禁煙,節酒などの生活習慣の改善,そして狭窄の程度によっては血をサラサラにする薬 (抗血小板剤)の内服も行います.症候性にせよ無症候性にせよ,狭窄が軽度な場合には内科的治療のみで予防を行っていきます.しかし症候性で狭窄が中等度以上の場合や無症候性でも狭窄進行して高度になると,内科的治療に加えて外科的治療も行った方が再発の予防効果が高くなります.外科的治療には血管内手術 (カテーテル手術)である頚動脈ステント留置術と直達手術である内膜剥離術があり,当院では基本的に頚動脈ステント留置術を選択していますが,そのリスクが高いと判断された場合には内膜剥離術をお勧めすることもあります

頚動脈ステント留置術

頚動脈ステント留置術は原則,局所麻酔で行います.太ももまたは腕の動脈からガイディングカテーテルと呼ばれる直径2-3mmの管を総頚動脈まで進め (2A)、その中からメッシュ状の金属の筒 (ステント)を狭窄部に留置して拡げます (2D).狭窄部を拡げる際にプラークが飛散することがあり,それが脳へ飛んでいくと術中に脳梗塞となるため,それを防ぐための道具 (風船型 (2B)フィルター型 (2C))を,あらかじめ狭窄部より奥の内頚動脈に留置して手技を行います.風船型かフィルター型の選択は,患者さんのプラークの性状 (柔らかいかどうか),長さ,血管の曲がり具合,脳血管の状態などによって決定します.

図2A

図2B

図2C

図2D

図2A-D:頚動脈ステント留置術

太ももまたは腕からガイディングカテーテルを総頚動脈まで誘導し (2A),その中を通して金属の筒 (ステント)を狭窄部に留置して拡げる (2D).狭窄部を拡げた際に飛散したプラークが脳へ飛んでいかないように,風船 (バルーン) (2B)またはフィルター型 (2C)の道具 (デバイス)をあらかじめ狭窄部より奥の内頚動脈に留置しておく.風船型は血流を一時的に遮断した状態でステントを留置し,飛散したプラークは最後に吸引カテーテルで吸引・除去する.一方,フィルター型では血流は流れたままで,飛散したプラークはフィルター内に回収される.

内膜剥離術

当院ではより低侵襲な頚動脈ステント留置術を第一選択として検討しますが,大動脈や総頚動脈の動脈硬化が非常に強い患者さんやプラークが非常に柔らかいまたは非常に硬い患者さん,造影剤が使用できない患者さんなどでは,内膜剥離術をお勧めすることがあります

内膜剥離術は全身麻酔で行います.首の皮膚を切開し,筋肉と筋肉の間から狭窄部を含む頚部血管 (総頚動脈,内頚動脈,外頚動脈)を露出させます.プラークが脳へ飛んでいかないように血流を一時的に遮断した状態で,内頚動脈から総頚動脈に割を入れて,その内腔にあるプラークを直視下に剥離して切除します (3A).一時的な血流遮断によって脳血流の低下が懸念される患者さんでは,内シャントと呼ばれるチューブ状の道具 (デバイス)を総頚動脈と内頚動脈の間に留置して,血流を流した状態でプラークの剥離・切除を行うこともあります (3B)

図3A

図3B

図3A, B:内膜剥離術

内膜剥離術は総頚動脈,内頚動脈,外頚動脈の血流を一時的に遮断した状態で,内頚動脈に割を入れて,直視下にプラークを剥離して切除する (3A).

内シャントと呼ばれる道具 (デバイス)を総頚動脈と内頚動脈の間に留置して,血流を流した状態でプラークの剥離・切除を行うやり方 (3B)もあり,当院では原則,内シャントを使用している.

当院では傷が目立たないように,首のしわに沿った皮膚切開(横切開)を行っています.また手技は多少煩雑になりますが,遮断に伴う血流低下及び脳梗塞の予防のため,原則,全例で内シャントを使用しています

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