唇顎口蓋裂
唇顎口蓋裂
先天性疾患として古くから治療の歴史のある唇顎口蓋裂は、多くの手術法や、治療体制が報告されていますが、当科では、手術してから成人するまでの間、総合的に診療することにより、より統制のとれた診療を心がけております。そのため、矯正歯科・小児言語科・小児耳鼻咽喉科・口腔外科とともにチーム治療を行っています。小児期特有の複雑な病態を明瞭に把握するために、小児形成外科が軸として他科との協力を行い、診療しております。
顎裂を伴う唇裂には、矯正歯科と協力してプレートを用いた顎誘導を行うことで、本来備わっている顎の成長を促します。これにともなって、唇裂を縫いよせたときに、傷口にストレスがかかりにくくなり、より美しい形態を作成できると考えています。成人するまでの治療のスケジュールは大まかには、下に示したスケジュールとしています。もちろん、お子様の一人ひとりの状況に応じて、手術時期の調整を行います。
口唇形成術は、片側、両側、それぞれの裂の形に応じて手術法を選択しております。
当院では、口蓋裂の手術もまた、小児形成外科で行っています。
外鼻形成に関しては、初回手術では介入を最小限として、お子様の本来もっている鼻の軟骨の成長を促したほうがよいと考えています。そのため、鼻の穴の対称性は、小学校入学前ごろを目安として、この外鼻形成術で改善を図ります。
顎裂に対しては、歯列混合期(永久歯が生えてくる時期)に矯正歯科による加療を行い、必要に応じて小児形成外科にて行っています。骨の採取は、腸骨からの採取としています。
修正術に関しては、顔面の成長には2回成長期があり、そのいずれもが終了し、十分に顔の高さ、深さが整った高校生以降に、最終的な調整手術を行っています。具体的には、キズ痕の修正術や、顔面骨の骨切、軟骨移植による鼻を整える手術などです。
唇顎口蓋裂の治療は、出生直後から開始し、成人で完了する非常に長期的なものです。しかしそのひとつひとつは、最終的な仕上がりのために、重要な要素をなしており、どれをとっても、成立しないといっていいいほど密に関係しあっています。治療を受けられる際には、十分に時間をかけて、構築された診療スケジュールを理解していただいたうえで、診療を受けていただくことを心がけております。
口唇形成術

口蓋形成術
口蓋裂の手術は言葉を覚える時期に行う必要があります。これは、空気の通り道が口蓋裂にあるために、鼻に抜けてしまい、独特な発音法を身に着けてしまうことを避けるためです。(異常構音)
当院では、プッシュバック法という手術をおこなっています。古典的な方法ですが、言語成績は良好で、術後ICUに入ることなく、一般病棟へ帰棟することができます。
術後は、創部が落ち着いたところで言語科での評価をしてもらい、言語への影響を見てもらいます。
もとより、口蓋が短いお子さんや、軟口蓋を動かす筋肉が弱いお子さんの場合、この手術を行っても息もれが改善しないことがあります。その場合には、咽頭弁という別の手術を追加して行うこともあります。

外鼻形成術

当院では初回の口唇形成術にでは、鼻の変形の治療は積極的には行っておりません。これは、早い時期での手術操作が、軟骨本来が有している成長を邪魔してしまうと考えているからです。
このため、鼻の変形を整える手術は、5歳前後に行っております。
当科での方法は長期的に安定しております。
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形成外科脳神経外科静脈奇形静脈奇形は静脈レベルの脈管奇形で,脈管奇形の中で最も多く認められます.病変部には静脈がブドウの房状に認められ,その静脈壁の筋肉は弱いため異常に拡張してしまいます.発生部位は頭頚部と四肢がそれぞれ約40%,体幹部が約20%となります.ほとんどは単発性 (孤発性)で患者さん個人レベルのものとなりますが,多発性の場合は遺伝性,すなわち子供さんへ遺伝する可能性も考慮しなくてはいけません.病変が皮膚の表面の近くにある場合には外観上,静脈の色調 (青~紫色)を呈し,姿勢によって病変部の腫脹が確認できます (図1A, B).頭頚部では啼泣時などでも病変部の腫脹を認めます.腫脹しても内部の血流は静脈なので触ると軟らかく (それほど固くはなく),また拍動は認めません.一方,病変が皮膚の表面から深い場合には表皮の色調変化や腫脹を認めないこともあります. 図1A 図1B 図1:頬部の静脈奇形 1A:病変が皮膚の表面から近くにあれば,外観上も静脈の色調を認めている.病変が皮膚の表面から深いものは表皮の色調変化は認めない. 1B:顔を傾けて病変を下にすると病変内の静脈がうっ滞して,腫脹が増悪する. 症状は疼痛や腫脹した際の不快感や見た目の問題となりますが,目の奥 (眼窩内)やのど (咽頭部)にできた病変は,視力や呼吸に影響を及ぼすこともあります.また病変内の血流がうっ滞して血液が固まる (血栓化)ことで,急激に腫脹し,強い痛みを認めることもあります.四肢や体幹部で広範囲の静脈奇形を認める場合は体の中の血液を固める因子が病変内で消費されて病変内で凝固異常をきたしていることがあり,そのような患者さんでは外傷や妊娠などによって全身の凝固異常に移行して重症化することがあるため注意が必要です.典型的には出生時から2歳までの乳幼児期までに皮下の膨らみとして気づかれることが多いですが,皮膚の表面から深い病変では学童期以降に疼痛をきっかけに見つかることもあります. 治療には内科的治療,硬化療法,外科手術があります.内科的治療が第一選択で,静脈奇形に対する分子標的薬,疼痛に対する鎮痛薬,血栓化予防のための血をサラサラにする薬 (抗血栓薬)などがあり,部位によっては弾性ストッキングを用いた圧迫療法を選択することもあります.硬化療法は内科的治療の次に考慮され,病変部に直接針を刺し,血管を閉塞させる薬 (硬化剤)を注入します (図2).外科手術は美容的・機能的問題もあり選択されることは少なく,病変が小範囲で限局している場合に限られます.限局した病変に対する外科手術を除いて,病変が完全に消失することはありません.したがって普段の生活の中で静脈奇形によって困ることが少なくなるように,内科的治療や硬化療法を行っていきます. 図2 図2:静脈奇形に対する硬化療法 エコーで病変を確認しながら,皮膚の表面から針を刺す. 針先が病変内にあるのを確認した後に,硬化剤を注入する.詳しく見る -
形成外科脳神経外科動静脈奇形動静脈奇形・動静脈瘻は動静脈シャント疾患で,頭頚部,体幹,四肢など様々な部位に発生します.症状は部位によって違いもありますが,共通しているのが最初は皮膚の発赤・熱感のみ (静止期)であったものが,次第に病変部が腫脹して血管の拍動を認めるようになり (拡張期),さらに進行すると病変部の皮膚に潰瘍ができ,出血するようになります (破壊期).症状は動静脈シャントの血流量と比例しており,その血流量は年齢が上がるにつれて増えてくることが多く,また外傷,感染,ホルモン変化,血行動態の変化などによって急激に増えることもあります. 治療のタイミングは患者さん毎に検討する必要がありますが,疼痛,潰瘍,出血などの症状が出現している場合や美容的理由がある場合には治療適応となります.病変部の発赤や腫脹のみの場合には病変の大きさや血管構築などから根治が可能かどうかで治療適応を判断します. 症状,治療のタイミングともに病変の部位で大きな違いはないので,頭頚部動静脈奇形も参照してください. 治療には血管内治療や外科手術(切除+再建)がありますが,その複雑な血管構築からほとんどの場合で血管内治療と外科手術を組み合わせて行います.血管内治療は病変がどの部位でも脳神経外科で行いますが,外科手術は病変の部位に応じて担当科は変わります.病変の範囲が限られたものでは根治が見込めますが,広範囲なものは根治が困難であるのが現状です.詳しく見る -
形成外科脳神経外科リンパ管奇形リンパ管奇形は出生時から2歳までに皮下腫瘤として指摘されることが多い病変です.赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時期にリンパ管の形成異常が起こり,本来は細い管状になるべきリンパ管が膨らんで,大小様々なリンパ袋 (嚢胞)が集まって塊になったものと考えられています.発生部位は頭頚部が50%以上と多く,次いで胸壁,わきの下 (腋窩),四肢などに認められます.嚢胞の内部はリンパ液ですが,病変内で内出血や感染をきたすことがあります.体表の病変は膨らんでおり,触ると軟らかく弾力性があることが多いですが,静脈奇形と異なり姿勢で病変が腫脹することはありません.通常,皮膚の色調は正常ですが,内出血や感染をきたすと腫脹・炎症を起こして,皮膚の色調も変化します.また口腔内や舌,頚部のリンパ管奇形では急性の腫脹によって気道が狭窄することがあるため注意が必要です.治療には静脈奇形と同様に内科的治療,硬化療法,外科手術があります.詳しく見る