消化器内科
主な疾患
食道 | 食道癌、食道静脈瘤,逆流性食道炎等など |
---|---|
胃 | 胃癌・胃潰瘍・胃ポリープ・胃粘膜下腫瘍・胃静脈瘤など |
十二指腸・小腸 | 十二指腸潰瘍・十二指腸癌・小腸腫瘍・クローン病など |
大腸 | 大腸癌・大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎・クローン病など |
胆道 | 胆道癌・総胆管結石・胆管炎など |
膵臓 | 膵臓癌・膵嚢胞・急性膵炎・自己免疫性膵炎など |
肝臓 | 肝細胞癌・B型肝炎・C型肝炎・肝硬変・脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)・薬剤性肝障害・自己免疫性肝炎・原発性胆汁性胆管炎・原発性硬化性胆管炎・特発性門脈圧亢進症・バッドキアリ症候群など |
診療実績
令和5年度(2023年)
内視鏡検査・治療 8828件 |
上部消化管内視鏡:5026件 大腸内視鏡:3325件 |
超音波内視鏡検査:868件 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA):146件 |
食道・胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 163件 |
大腸ポリープ・大腸早期癌に対する内視鏡的切除術 1409件 |
大腸がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 87件 |
消化管出血に対する内視鏡的止血術そのほか処置 458件 |
内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP) 430件 |
潰瘍性大腸炎症例 466名 |
胆膵癌化学療法 211名,1641件 |
肝細胞癌治療(ラジオ波焼灼療法:41件、エタノール注入療法:4件、分子標的治療:20件、免疫チェックポイント阻害薬:54件) |
B型肝炎治療(核酸アナログ:207件) |
C型肝炎治療(インターフェロンフリー:26件) |
疾患情報・コラム
-
消化器内科食道がん、胃がん、直腸がんの最新手術食道がん、胃がん、直腸がんの最新手術手術支援ロボット『ダヴィンチ』 手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは 近年、消化器外科領域において、低侵襲治療が急速に広がり、創が小さな腹腔鏡手術は、一般的な手術方法となっています。そして当院に導入となった、最先端医療機器である手術支援ロボット「da Vinci Surgical System」による腹腔鏡手術、いわゆるダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。 執刀する医師が患者さんに触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います(図1 配置図)。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートをロールインし(図2)、患者さんに接続した後に、執刀医は、サージョンコンソールに座ってカメラからの体内画像を見ながら、手足を使って遠隔操作して手術を行います(図3)。 ロボット支援手術の特徴 「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3D画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子やハサミは、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さい鉗子を用いて非常に細かな作業を正確に操作ができる特徴を有します(図4)。 胃がんのロボット支援手術 胃癌は、本邦で罹患(りかん)数は1位、死亡数は肺癌、大腸癌に次いで3位の癌です。遠隔転移を認めない場合や内視鏡で切除できる早期癌以外の標準治療は外科手術です。従来は開腹手術が行われていましたが、現在は、腹部に約1cm程度の穴を数か所あけて行う腹腔鏡手術が普及しています。腹腔鏡手術の利点は、手術創が小さいことによる術後の痛みの軽減、美容上の美しさ、より早い術後回復、より短い入院期間、などが挙げられます。しかし、腹腔鏡手術は、内視鏡手術用の細長い「かんし」と呼ばれる器具をポートと呼ばれる穴から挿入し、テレビモニターを見ながら手術操作を行います。ときに高度な技術が必要になることがあり、進行癌の場合などは、癌の根治性の低下や術後合併症の増加などが報告されています。そこで、近年、登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した胃癌手術です。ロボットの手は人間の手以上に関節の可動域が大きく、より繊細な動きが可能となり、腹腔鏡手術より安全で確実で合併症の少ない手術が行えるようになりました。特に従来の腹腔鏡下胃癌手術ではその操作性の悪さから膵臓へのダメージが危惧されていましたが、ロボット支援手術では多関節鉗子により膵臓への圧迫を大幅に減らした手術することが可能になります(図5)。そのおかげで術後の膵液漏(膵臓周囲のリンパ節郭清の影響で膵臓周囲から膵液が漏れること)などの合併症の頻度が少なくなります。また手術の創部も小さいことから、術後の痛みも軽減し整容性も良好です(図6)。そのメリットを生かして、胃癌に対するロボット支援手術が、海外、特に韓国では非常に普及しています。当院では、ロボット手術を多数行っている韓国の延世(よんせい)大学病院でトレーニングを受けた医師が、ロボット支援手術を行っています(図7)。2021年12月までに204人の患者さんにロボット手術を施行し、平均手術時出血量30mlと、少ない出血量で手術が可能となり、術後、平均11日間で退院されました。またロボット手術の比率も上昇し、2020年には、胃癌の87%にロボット手術を行いました(図8)。我々の施設の成績が、米国の論文に掲載されました(図9)。 当科では、今後も積極的にロボット手術を行い、多くの患者さんにその恩恵を受けて頂きたいと考えています。 食道がんのロボット支援手術 食道がんは、遠隔転移を認めない進行がんの場合や内視鏡で切除できる早期がん以外の標準治療は外科手術です。手術を行う場合、従来は開胸手術が行われていましたが、胸壁の破壊を最小限に抑えるために、胸部に約1cmの穴を4か所あけて行う胸腔鏡手術が普及しています。胸腔鏡手術の利点は、手術創が小さいことによる術後の痛みの軽減、美容上の美しさ、より早い術後回復、より短い入院期間、などが挙げられます。しかし、食道がんに対する胸腔鏡手術は、内視鏡手術用の細長い「かんし」と呼ばれる器具を肋骨と肋骨の間に留置したポートと呼ばれる穴から挿入し、テレビモニターを見ながら手術操作を行います。高度な技術が必要になることがあり、進行癌の場合などは、癌の根治性の低下や術後合併症の増加などが報告されています。そこで、近年、登場したのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した食道がん手術です。ロボットの手は人間の手以上に関節の可動域が大きく、より繊細な動きが可能となり、胸腔鏡手術と同じ創(図10)で、胸腔鏡手術より安全確実で合併症の少ない手術が行えるようになりました。食道がんは、声を出す際の声帯を動かす反回神経の周囲にリンパ節転移を起こしやすいことがわかっています。従来の胸腔鏡下食道がん手術では、反回神経へのダメージが危惧されていましたが、ロボット支援手術では多関節鉗子により反回神経への影響を大幅に減らした手術することが可能になります。そのため術後の反回神経麻痺(声がれ)などの合併症の頻度が少なくなる可能性があります。そのメリットを生かして、食道がんに対するロボット支援手術が、海外、特に韓国では非常に普及しています。当院では、ロボット手術を多数行っている韓国の延世(よんせい)大学病院でトレーニングを受けた医師が、2018年4月から、ロボット支援下食道がん手術を開始し、2022年8月までに54名の患者さんに手術を行い、術後経過も良好でした(図11)。 直腸がんのロボット支援手術 ロボット支援手術は、小さくあけた穴から小型カメラや治療器具を入れて手術を行うことは腹腔鏡手術と同じです。しかし、腹腔鏡手術で使用する器具と異なり、ロボットの手術器具の先端は指のように自由に曲げることができるため、術野での繊細な操作が可能となります。また、3Dカメラで立体的な体内の画像を得られ、術者は患部を拡大してみることができます。腹腔鏡手術でも3Dカメラは使用可能ですが、ロボットの場合、手ぶれがなく、カメラが非常に安定しているため、狭い骨盤内であっても術野に近接しても安定した画像が得られるという利点があります。つまり、従来の開腹や腹腔鏡手術と比べてより繊細で精密な手術が施行できるということです。繊細な手術を行うことにより根治性、肛門・排尿・性機能などの機能温存の向上が期待できます。特に直腸に密接する骨盤神経叢(排尿や性機能を担っている神経)を繊細な操作で丁寧に温存することにより、術後の排尿・性機能の保持や早期の回復が期待され、後遺症の少ない、体に優しい手術が可能となります。また、従来の腹腔鏡よりも骨盤深部での手術操作が可能になることにより、従来よりも肛門に近い腫瘍であっても肛門を温存できる可能性が高くなります。直腸がんに対するロボット支援手術件数は著明に増加し、2021年12月までに133名の患者さんにロボット手術を行い、良好な成績をおさめています(図12)。詳しく見る
-
消化器内科内視鏡による消化器がんの手術;内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) | 消化器内科内視鏡を用いてお腹を切らずに行う治療は経験豊富なスタッフのもと、最新の治療機材も導入しながら安全で質の高い内視鏡治療を提供します。また、ほとんどの内視鏡治療は静脈麻酔や鎮痛剤を用いて行います。 ここでは当科で行なっている内視鏡検査・治療の一部をご紹介いたします。 ・内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 対象疾患:早期食道癌、早期胃癌、早期十二指腸癌、早期大腸癌 適応となるのは癌が消化管壁の表面にとどまり、リンパ節転移の可能性が非常に低い病変です。そのような早期癌に対しては、治療前に内視鏡検査やその他画像検査などで癌のサイズ、進行度を精密に評価した上でESDを行います。当院では年間約250件のESDを行っております。 治療方法 治療は静脈麻酔下(食道ESD、十二指腸ESDは全身麻酔下)で行います。治療時間は病変の大きさや場所によって異なりますが、15分〜2時間程度です。当院では術後症例や治療後再発症例などの治療困難例も数多く行なっています。術後は問題なければ2日後より食事を再開します。入院期間は1週間程度です。治療後は定期的に内視鏡検査での再発チェックを行います。 色素散布や拡大内視鏡観察等で病変の範囲を確認する(写真1,2) 青い色素を混ぜた生理食塩水やヒアルロン酸を粘膜下層に注入し、病変周囲を切開する(写真3) 注入液で青く、分厚くなった粘膜下層を1.5-2mmの電気メスで剥離していく(写真4) 剥離終了後、残存した血管を焼灼し、病変を回収する(写真5) 回収した検体は広げて固定し、病理検査に提出し分化度や深さを診断する(写真6) 早期胃がん ESD前 写真1 写真2 ESD中 [caption id="attachment_30912" align="alignleft" width="252"] 写真3[/caption] [caption id="attachment_30911" align="alignnone" width="291"] 写真4[/caption] ESD後 [caption id="attachment_30910" align="alignnone" width="294"] 写真5[/caption] [caption id="attachment_30914" align="alignnone" width="244"] 切除標本(写真6)[/caption]詳しく見る