小児脳神経・言語療法内科
診療実績
小児脳神経内科専門外来を(月)から(金)の毎日行なっており、毎月約600~800名のこどもたちが来院されています。
難治性のけいれん・運動麻痺など、外来では十分診療できない方は、入院で時間をかけて診療(診断と治療)を行っております。毎月約50~80例のこどもが新しく入院されています。
てんかんの症例では必要に応じてビデオ・脳波同時記録システムを用いて発作時脳波を記録し、正確な診断を行うことが大切ですが、当科では2017年度で約450件のビデオ・脳波同時記録を実施しています。
主な疾患
発作性疾患 | てんかん(あらゆるタイプ) 熱性けいれん 頭痛 めまい 等 |
発達障がい | 発達(言葉など)の遅れ、注意欠如・多動症(ADHD) 等 |
運動障がい | 重症筋無力症 筋疾患 不随意運動 等 |
炎症性疾患 | ギランバレー症候群 慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー 急性散在性脳脊髄炎(ADEM) 多発性硬化症
脳炎/脳症 急性小脳失調症 等 |
遺伝性神経疾患 | 白質ジストロフィー 脊髄性筋萎縮症 結節性硬化症(TSC) 神経線維腫症(NF-1)
SturgeWeber症候群(SWS) DRPLA 等 |
染色体異常・症候群 | ダウン症候群 ウイリアムス症候群 アンジェルマン症候群 等 |
代謝性神経疾患 | ミトコンドリア病 ライソソーム病(ゴーシェ病) 等 |
その他 | 脳梗塞 骨系統疾患 等 |
てんかん(けいれん)の精密検査と治療
「てんかん」は適切な投薬と管理で、7〜8割の児で軽快します。ただし、1〜2割の「てんかん」の児では、投薬によってもおさまらないことがあり、「難治てんかん」といいます。当科では、こういった「てんかん」に対して、小児神経専門外来や時には入院で診療をおこなってきました。2014年度よりこの「てんかん外来」を開設し、多くのけいれんの小児が受診されており、入院でも年間約400件を超える「てんかん」の診断と治療をおこなっています。大田原症候群、ウエスト症候群など、乳児期からのてんかんにも専門的な診断と治療をおこなっており、ビデオ脳波同時記録装置・脳血流検査(SPECT)など最先端の診断・治療にも対応しています。
こどものひきつけ2017 pdf(終了しました)
こどものひきつけ2018 pdf(終了しました)
こどものひきつけ2019 pdf(終了しました)
急な神経症状の診察と診断
急な神経症状として
- 運動麻痺:力が入らなくなり、歩けなくなったり、体の一部(顔面や手など)が動かなくなったりすること
- 不随意運動:勝手に手が震えたり、体が動いたりすること
- 知覚障がい:体が痛くなったり 感じなくなったりする
- その他:意識障がい・高次機能障がい(計算、書字、記憶、言葉)・嚥下(飲み込み)障がい、複視(ものが2つに見える)など多くの神経症状が見られます。
こういった症状は、とくに小児では感染(風邪・下痢)の途中や感染の後にみられることが多くあります。病気としては、運動の麻痺をきたす疾患としては、ギランバレー症候群・ADEM(急性散在性脳脊髄炎)などがあります。早期に診断して治療に移る必要があったり、集中治療(ICU)が必要なことも多く、急な神経症状に対しては、予約外でも対応しております。
神経遺伝に関連する診療
こどもの先天的な疾患や障がいについては、幅広い種々の症状や原因があります。特に発達が進まなくなった例や退行(後戻り)した児の中に、神経の病気や遺伝子の変異がある例がみられます。 こうした先天的な疾患や、遺伝子の変異が疑われる疾患の診断について、神経遺伝に関連する診療を行っております。
療育相談室との連携
疾患の診断や治療の他に、療育相談室(すみれ7病棟内)と協力して、通院中のお子さんたちの普段の療育・教育環境に対する相談を行っております。特に教育現場と医療現場との連携を深めるため、時には担当者(養護教育専門・元教師)とともに、主治医が教育現場の先生達にお子さんの説明を行うようにしております。
遺伝カウンセリング室との連携
遺伝子の変異が関わる疾患についての説明(経過や予後)や相談を遺伝カウンセリングといいます。医師と心理師で遺伝カウンセリングを行っておりますが、医師の方は小児神経内科医が産科医と分担・協力して行っております。(遺伝カウンセリング:産科保健相談室)
診療実績
2018年度の診療実績:年間初診患者数 638人、年間訓練件数 4827件。
初診患者の内訳(重複あり):言語発達遅滞293人、構音障がい178人、吃音症98人、高次脳機能障がい45人、その他(摂食嚥下機能障がい、口蓋裂など)
主な疾患
言語発達遅滞、構音障がい、失語症、高次脳機能障がい、吃音症、摂食嚥下機能障がい
言語発達遅滞
生活年齢から期待される言語発達が得られない状態を言語発達遅滞といいます。言語発達遅滞の原因には、発達遅滞、発達障がい、難聴などがあります。これらの原因がなく、言語のみが遅れる場合もあります。医師による診察・面談と、言語聴覚士による評価をもとに、言語発達の程度や言語発達遅滞の原因を明らかにします。言語発達遅滞の原因に応じて、保護者に対し関わり方の指導を行ったり、訓練を開始したり、療育機関などに紹介したりしています。
構音障がい
通常、言語発達年齢が上がるにつれて明瞭に発音できる音が増えていきますが、言語発達年齢から期待される発音が習得されていない状態を構音障がいといいます。医師による診察・面談と、言語聴覚士による評価をもとに、言語発達や構音障がいの程度・原因を明らかにします。基本的には、4~5歳児に対して訓練開始を検討します。口腔周辺の器質的・機能的な問題が疑われる場合には、小児耳鼻咽喉科や小児形成外科と連携して評価・訓練・治療を行います。
吃音症
音や音節の繰り返し、音の延長、音の出始めがつまるなどの会話の流暢さの困難により、日常生活で困難をきたしている状態を吃音症といいます。医師による診察・面談と、言語聴覚士による評価をもとに、吃音症の有無・程度を評価します。吃音が軽快することが最も望ましいのですが、軽快しない場合も、自己肯定感を持たせること、二次的な問題を起こさないように環境調整を行うことが大切であると考えています。なお、リッカム・プログラム等の直接訓練は施行しておりません。
高次脳機能障がい
頭部外傷、急性脳炎/脳症、脳腫瘍、脳血管障害などの後天性脳損傷の後に、病前には認めなかった記憶障がい・注意障がい・遂行機能障がい・社会的行動障がいなどが発生し、日常生活や社会生活に制約をきたす状態のことを高次脳機能障がいといいます。このほかに、失語・失認・失行・易疲労性・半側空間無視・病識欠如なども高次脳機能障がいの症状です。
金曜午後の高次脳機能外来では、小児脳神経内科医・言語聴覚士・臨床心理士が連携して、客観的な評価とそれに基づいた診断、訓練、指導を行っています。
失語症
失語症は、高次脳機能障がいの1つで、「きく・はなす・よむ・かく」のいずれかまたはすべてが苦手になる状態を表します。客観的な評価・診断をもとに、訓練・指導を行っています。
口蓋裂の言語管理
口蓋裂に伴い、鼻咽腔閉鎖機能不全や構音障がいなどが出現することがあります。これらについて乳児期から定期的に評価を行い、必要に応じて訓練を行っています。小児耳鼻咽喉科や小児形成外科と連携して、評価・訓練・治療を行います。
疾患情報・コラム
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