腎臓・高血圧内科
●IgA腎症はもっとも多くみられる慢性腎炎です。
●腎生検で診断され、当科では700人以上の患者さんを診療して参りました。
●治療には、レニン・アンジオテンシン系阻害薬(血圧の薬)、扁桃摘出術やステロイドパルス療法などがあり、寛解(完治)へと導けるように努めています。
腎臓の糸球体についたIgA(腎生検)
●常染色体優性多発性嚢胞腎は、腎臓にのう胞という袋がたくさんできて、だんだん大きくなるために、腎臓の力が少しずつ落ちていく病気です。
●これまで、効果的な治療法はありませんでしたが、2014年3月からサムスカ®(トルバプタン)が使えるようになりました。この薬には、のう胞が大きくなることや腎臓の力が落ちるのを抑える効果があります。
●2015年1月から難病医療費助成制度の対象となり、費用負担が軽くなって、より身近な薬となりました。お薬を始める時には、水分摂取の練習や副作用のモニタリングなどのために短期間の入院が必要です。
●当科の医師は処方をするのに必要な、eラーニングを受講しております。
●当院では腎臓の大きさを正確に測定するための3次元画像解析システムVINCENTを導入しており、年々の変化や治療効果を評価することが可能です。
VINCENTでCTから腎臓の大きさを測定します。
●慢性腎炎、糖尿病性腎臓病、高血圧性腎硬化症など種々の腎臓病が原因で、腎臓の力がだんだんと落ちていき、生命にかかわるような状態になった場合、透析療法で救命をする必要があります。
●透析が必要となるのは、①尿毒素がたまったために吐き気や嘔吐が続き、食事が食べられなくなる、②全身に水がたまって心不全から呼吸が苦しくなる、③カリウムがたまって心臓が止まってしまうような不整脈を起きてくる、などの場合です。
●実際のところは、安全のために、このような状態になる前に透析をはじめることが肝腎です。当院では、透析療法(血液透析と腹膜透析)を、1年間に80人ほどの患者さんに導入しております。
●透析療法選択の手助けとして、専門看護師による腎代替療法外来を開設して、十分な理解のもとでの透析導入に努めています。
●血液透析の場合は、入院で内シャント術を行った後に透析を導入します。数回行って、ある程度おちついた段階で、患者さんのご自宅近くの透析施設へ外来通院して頂くことになります。
●腹膜透析の場合は、入院で腹膜透析用のチューブを挿入して、2週間ほど御自分で透析液の入れ替えをして頂けるように練習をします。これができるようになった段階で退院となり、当院の外来に1か月に1日程度通院して頂くことになります。
血液透析
腹膜透析
膠原病・膠原病類縁疾患 37例
疾患名 | 例数 | 疾患名 | 例数 |
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ANCA関連血管炎 | 10例 | 多発性筋炎・皮膚筋炎 | 8例 |
ベーチェット病 | 4例 | IgG4関連疾患 | 3例 |
アミロイドーシス | 3例 | 全身性エリテマトーデス | 2例 |
その他(関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE、大動脈炎症候群など) | 7例 |
感染症疾患 計66例
疾患名 | 例数 | 疾患名 | 例数 |
---|---|---|---|
肺炎、気管支肺炎 | 18例 | 尿路感染症 | 23例 |
蜂窩織炎 | 2例 | COVID-19 | 3例 |
感染性腸炎 | 5例 | 敗血症 | 3例 |
膿瘍(臀部、腎、腸腰筋) | 3例 | その他(CAPD腹膜炎、結核性胸膜炎、肺アスペルギルス症など) | 9例 |
その他 計51例
疾患名 | 例数 | 疾患名 | 例数 |
---|---|---|---|
うっ血性心不全 | 8例 | 脳梗塞 | 2例 |
胸膜炎、胸水貯留 | 5例 | 間質性肺炎 | 3例 |
多発性骨髄腫 | 2例 | その他(横紋筋融解症、圧迫骨折、めまい、末梢神経障害性疼痛など) | 31例 |
2021年度 腎生検実績:114例
疾患名 | 例数 | 疾患名 | 例数 |
---|---|---|---|
IgA腎症 | 31例 | minor glomerular abnormality(thin basement membrane disease含む) | 15例 |
ループス腎炎 | 3例 | 糖尿病性腎症 | 5例 |
急速進行性糸球体腎炎(顕微鏡的多発血管炎・抗GBM抗体型腎炎など) | 13例 | 間質性腎炎 | 3例 |
膜性腎症 | 7例 | 悪性腎硬化症・良性腎硬化症 | 5例 |
アミロイドーシス | 2例 | 微小変化型ネフローゼ症候群 | 9例 |
IgA血管炎 | 3例 | 巣状糸球体硬化症 | 4例 |
急性尿細管壊死 | 3例 | 感染後糸球体腎炎 | 1例 |
肥満関連腎症 | 1例 | 骨髄腫腎 | 1例 |
血栓性微小血管障害 | 2例 | IgG4関連腎臓病 | 2例 |
遺伝性腎炎 | 2例 | メサンギウム増殖性腎炎 | 2例 |
2021年度 透析導入実績:135例
血液透析導入:113例
疾患名 | 例数 | 疾患名 | 例数 |
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糖尿病性腎症 | 44例 | 腎硬化症 | 30例 |
慢性糸球体腎炎 | 17例 | その他(多発性嚢胞腎、薬剤性腎疾患など) | 22例 |
腹膜透析導入:22例
2021年度 腎教室:82件 (糖尿病性腎臓病、慢性腎炎、腎硬化症など)
業績
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- 森川貴 シリーズGノート、逃げない内科診療「専門外なので・・・」から「全身を診る!」へ検尿異常~それは、腎臓からのSOSかも!~ P131−132 羊土社、東京2021
- 山﨑大輔 腎臓専門医講座(腎臓専門医のための模擬テスト) 腎臓内科 第13巻第4号 P559-563ページ 科学評論社 東京2021
- 小西啓夫 病気の見取り図(監修西口幸雄) 急性糸球体腎炎 P166−167 照林社 東京2022
- 小西啓夫 病気の見取り図(監修西口幸雄) ネフローゼ症候群 P168−169 照林社 東京2022
- 小西啓夫 病気の見取り図(監修西口幸雄) 糖尿病性腎症 P170−171 照林社 東京2022
- 小西啓夫 病気の見取り図(監修西口幸雄) 腎盂腎炎 P172−173 照林社 東京2022
- Kadosawa K, Morikawa T, Konishi Y. Zebra bodies without Fabry disease or hydroxychloroquine. Clin Exp Nephrol. 2021;25:94-96. doi: 10.1007/s10157-020-01965-x
- Ubara Y, Kawaguchi T, Nagasawa T, Miura K, Katsuno T, Morikawa T, Ishikawa E, Ogura M, Matsumura H, Kurayama R, et al. Correction to: Kidney biopsy guidebook 2020 in Japan. Clin Exp Nephrol. 2021;25:1161. doi: 10.1007/s10157-021-02120-w
- Ubara Y, Kawaguchi T, Nagasawa T, Miura K, Katsuno T, Morikawa T, Ishikawa E, Ogura M, Matsumura H, Kurayama R, et al. Kidney biopsy guidebook 2020 in Japan. Clin Exp Nephrol. 2021;25:325-364. doi: 10.1007/s10157-020-01986-6
- Zhang A, Nakano D, Morisawa N, Kitada K, Kittikulsuth W, Rahman A, Morikawa T, Konishi Y, Nishiyama A. Effects of molidustat, a hypoxia-inducible factor prolyl hydroxylase inhibitor, on sodium dynamics in hypertensive subtotally nephrectomized rats. J Pharmacol Sci. 2021;146:98-104. doi: 10.1016/j.jphs.2021.03.007
- 森川貴 高血圧療養指導士セミナー3、『慢性腎臓病(CKD)~チーム医療による、その克服の重要性を含めて』 第9回臨床高血圧フォーラム 2021年5月15日 大阪
- 森川貴 『腎血管性高血圧の診断と治療~腎動脈超音波が診断に有用であった自験例の検討も交えて』 第9回臨床高血圧フォーラム 2021年5月15日 大阪
- 小林 正忠(楽天株式会社 CWO)、中村 敏子、吉田 守美子、荒川 仁香、人見 浩史、山﨑 大輔 『企業におけるダイバーシティ推進の取り組み』第9回臨床高血圧フォーラム、2021年5月15日大阪
- 山崎大輔、森川貴、小西啓夫、鈴木仁、鈴木祐介、西山成 『IgA腎症モデルマウスに対するSGLT2阻害薬の蛋白尿・腎機能に対する影響』第9回臨床高血圧フォーラム 2021年5月15日 大阪
- 柴田幹子、濱田真宏、長辻克史、山崎大輔、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『腎生検で診断されたIgA腎症患者における高血圧発症に関与する因子についての検討』 第9回臨床高血圧フォーラム 2021年5月15日 大阪
- 長辻克史、山崎大輔、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『透析を離脱し得た血栓性微小血管症を合併した悪性高血圧症の2例』第9回臨床高血圧フォーラム 2021年5月15日 大阪
- 山崎大輔、北田研人、森澤紀彦、藤澤良秀、中野大介、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫、イエンス ティッチェ、西山成 『腎除神経は高食塩摂取マウスの体内Na含有量に影響を与えない』 第64回日本腎臓学会学術総会 2021年6月18日 横浜
- 長辻克史、田中志歩、松木葵、門澤啓太、坂田侑子、山崎大輔、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『ペムブロリズマブ投与中にANCA陰性の壊死性半月体形成性糸球体腎炎を来した1例』 第51回日本腎臓学会 西部学術大会、2021年10月15日 福井
- 向井文香、長辻克史、松木葵、門澤啓太、坂田侑子、山崎大輔、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『抗糸球体基底膜腎炎により透析導入に至ったが救命し得た1例』 第234回日本内科学会近畿地方会、2021年12月4日 京都
- 浅井利大、山﨑大輔、濱田真宏 『腎移植後、巣状糸球体硬化症(FSGS)再発とBKウイルス腎症(BKVN)を合併した一例』 第39回日本アフェレシス学会関西地方会、2022年2月13日 大阪
- 山﨑大輔、福家顕宏、浅井利大、田中志歩、松木葵、門澤啓太、坂田侑子、長辻克史、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『新型コロナウイルス感染症に関連する急性腎障害に対してネクロプシーを施行した1例』 第1回インターベンショナルネフロロジー学会、2022年2月21日オンライン
- 濱田真宏、山崎大輔、浅井利大 『巣状分節性糸球体硬化症の再発とBKウイルス腎症を合併した一例』 第55回日本臨床腎移植学会 2022年2月24日 東京
- 丸田剛史、松木葵、門澤啓太、坂田侑子、長辻克史、山崎大輔、濱田真宏、北林千津子、森川貴、小西啓夫 『COVID-19ワクチン接種後の血尿を契機に明らかとなったIgA腎症の1例』 第235回日本内科学会近畿地方会、2022年3月12日 大阪
- Failure to confirm a SGLT2 inhibitor-induced hematopoietic effect in non-diabetic rats withrenal anemia. Yamazaki D, Konishi Y, Morikawa T, Nishiyama A. International Society of Hypertension. Glasgow. Apr. 2021
●京都大学医学部腎臓内科の学生実習担当科です。
●大阪市立大学医学部の学生実習担当病院です。
●腎臓内科に興味のある医学生さんの見学を受け付けております。
(期日後の場合、申し訳ありませんが次の掲載をお待ちください。)
研修医・内科専攻医
疾患情報・コラム
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腎臓・高血圧内科IgA腎症IgA腎症:一番よくある腎炎 医師からのメッセージ 次のような場合、IgA腎症の可能性がありますので、ご来院ください。 ①尿検査で、タンパク尿、血尿が続く ②のど風邪の後、赤茶色のおしっこが続く Q&A IgA腎症って、どんな病気ですか? IgA腎症は、腎臓の中に100万個近くある糸球体という、ろか装置にIgA(免疫グロブリンA)というタンパク質がへばりついて、炎症などの悪さをする病気です。この悪さのせいで、血尿やタンパク尿などがみられるようになると、だんだんと腎臓が力を落としていきます。腎生検を受けた患者さんの30-40%くらいがこの病気で、一番よくみられる腎炎です。 IgA腎症は、いつ頃からわかってきたのですか? 1968年にフランス人のBerger先生らによって、世界で初めて報告されました。この頃は、腎不全になることの少ない、それほど悪くない病気とされていました。しかし、1990年代になって、何の治療もしないと、20年後には40%近くの患者さんが、透析を必要とする末期腎不全になることが示されました。だんだんと、油断できない病気であることがわかってきたのです。1990年以降は、早期診断や数々の治療(レニン・アンジオテンシン系阻害薬、ステロイド(パルス)療法、扁桃摘出術など)の進歩によって、悪くなる前に治せることも多くなってきました。 IgA腎症は、どんな『きっかけ』で、みつかるのですか? IgA腎症がみつかる『きっかけ』は、 ①学校や職場の健診、病院の尿検査(タンパク尿、血尿): 80% ②肉眼的血尿(赤茶色のコーラみたいな、おしっこ): 12% ③むくみや尿の減少: 8% です。 日本では、健診・検尿が広まっているので、タンパク尿や血尿だけで、自覚症状が無く腎臓がそれほど弱っていない時にみつかることが多いです。このため、腎臓が弱る前の早期にIgA腎症をみつけて治療を行うことで、透析にならないようにすることが可能になってきています。 肉眼的血尿は、風邪や、のどの炎症の後、12~72 時間後くらいに出てくるコーラみたいな、おしっこです。これがあった場合、むくんだり、おしっこが急に減ったりして、時には、腎臓がけっこう早く悪くなることがあるので、要注意です。他には、ご家族がIgA腎症で、ご本人もIgA腎症ということが、10%くらいあるので、一応、気にかけておく必要があります。 IgA腎症は、どんな仕組みで起こるのですか? はっきりとはわかっていませんが、考えられている仕組みはあります。 ① のどの扁桃腺や鼻の奥への感染などの刺激によって、形の変なIgAが血の中に増える。 ② このIgAに対して別のIgAやIgGなどのタンパク質が作られる ③ 形の変なIgAと、これに反応するIgGやIgAが大きなタンパク質の塊をつくる ④ この塊が腎臓の糸球体に、へばりついて炎症などの悪さをする、 というものです。 病気の起こり初めは、炎症が少しだけですので、血尿がみられる程度です。しかし、炎症がひどくなって糸球体の全体に広がると、タンパク尿も出てきます。さらに進むと、糸球体自体が働かなくなり、働ける糸球体の数が減っていき、腎臓の力がだんだんと落ちてしまいます。 わかりやすく例えますと、悪さをするタンパク質の塊は、『火だね』のようなもので、尿を作る工場を燃やして火事を起こします。火事が少しのボヤ程度であれば血尿のみで済みますが、どんどん広がるとタンパク尿が出てきます。さらに、火事が続くと工場全体が燃えてしまうように、糸球体が壊れてしまいます。 IgA腎症は、どのように診断されるのですか? IgA腎症は、腎生検でのみ診断できます。腎臓の糸球体にIgAがへばりついていることを確認する必要があるからです。また、腎生検の様子が、腎臓の弱り具合や、治療が効きやすいかどうかの参考になりますので、治療法の決定の参考になります。当院では、これまでに650人以上のIgA腎症の患者さんを、診断・治療しております。 IgA腎症は、どのように治療されるのですか? gA腎症と一口に言っても、患者さんによって病状はさまざまで、これによって、治療法は大きく変わってきます。日本腎臓学会のIgA腎症診療ガイドライン2017によりますと、腎臓の力(GFR:糸球体ろか量)とタンパク尿の量(1日当たりの)によって、図1のような治療が薦められています。それらの代表的なものについて解説します。 ★保存療法 食事療法: 減塩(一日6g以下)、タンパク制限(状態によります)、エネルギー調整(食べ過ぎない) 日常生活: 適度な運動、禁煙、適度な飲酒 (ビール350ml、日本酒1合、ワイングラス1杯程度) 。ただし、週2日は休肝日を作りましょう。毎日飲むと肝臓が弱ります。 ★薬物療法・手術 ① レニン・アンジオテンシン系阻害薬(血圧を下げる薬) この薬は、糸球体の中の圧力を下げて、仕事量を減らすことで、タンパク尿を減らしたり、腎臓の力が落ちるのを抑えたりします。薬を始めた頃に、一時的に血の検査でクレアチニンが上がったり、eGFRが下がったりすることがありますが、その後、検査が悪くならなければ、効果を発揮していると考えられます。タンパク尿が多い場合は、特に薦められます。 ② ステロイド薬 ステロイド薬は、IgAが原因で起こす炎症を抑える (火事を消す)ことで、血尿やタンパク尿を減らしたり、腎臓の力が落ちるのをおさえたりします。血尿やタンパク尿があって、腎臓の力がそれほど落ちていない患者さんほど、ステロイド治療のメリットが大きいと考えられています。逆に、腎臓の力がすでにかなり落ちてしまって、炎症がある程度終わっている場合は、あまり効かないこともあり、薬を使うかどうかを、慎重に考えなければなりません。 ③ 扁桃摘出術(+ステロイドパルス療法) 扁桃腺が病気のもとの一つ(火事の例え話の火種をつくる原因)、と考えられているので、これを取ってしまう扁桃摘出術をしばしば行います。これにステロドパルス療法を加えた治療が,1988年に仙台の堀田修先生(現:堀田修クリニック院長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表)らよって考案され,その後、日本の多くの施設で行われています。最近の日本の研究でも、その効果が科学的に確認され、IgA腎症に対して最も必要な治療といってよいでしょう。 一方、IgA腎症になって間もない患者さんで、扁桃摘出術だけでも、血尿や蛋白尿が良くなったり、長期間の観察で腎臓が悪くなりにくかったりすることが、当院や他の施設からも報告されています。 私達は、これまでに、多くのIgA腎症の患者さんを治療している中で、扁桃摘出術やステロイドパルス療法が、有効な治療であることを実感しているので、できるだけ早く診断をつけて、治療を始めたいと考えています。 ステロイドパルス療法(仙台方式):点滴(メチルプレドニゾロン500mg)を 3日間して、飲み薬(プレドニゾロン30mg:5mg錠を6個)を 4日間します(合計で1週間)。これを3回、つまり3週間続けて行います。その後、飲み薬(プレドニゾロン30mg:5mg錠を6個)を一日おきに、2ヶ月間飲み、5mg錠を1個ずつ、2ヶ月毎に減らしていきます。だいたい1年間で治療が終了します。この治療経過中に血尿やタンパク尿が良くなれば、早めに減らしたり、やめたりすることもできます。 ④ B-SPOT療法・EAT(鼻咽頭擦過療法) 扁桃摘出術を施行した後にも、腎炎がくすぶる場合には、鼻咽頭の炎症が原因の可能性もあり、専門的に行っている耳鼻咽喉科の先生へ紹介させて頂きます。 ⑤ 免疫抑制薬 ステロイド薬に加えて免疫抑制剤を一緒に服用して頂くことがあります。 ⑥ 抗血小板薬 ジピリダモール(ペルサンチン®)、塩酸ジラゼプ(コメリアン®)などで、活性化した血小板が腎臓を弱らせるのを抑えようとするものです。1980 年代に日本でタンパク尿を減らす可能性のあることが報告され、慢性糸球体腎炎やIgA腎症に保険適応があります。 ⑦ n—3 系脂肪酸(魚油) 動脈硬化や血栓の防止に有効とされます。 図1)成人IgA腎症の腎機能障害の進行抑制を目的とした治療介入の適応:IgA腎症診療ガイドライン2017 p.83を一部改変 腎臓の力(GFR)と蛋白尿の量(1日あたり何gか)によって治療法をみたものです。実際の診療では、これらに加えて腎生検の様子や年齢も併せて、治療法を慎重に決めます。 注1:その他の治療:扁桃摘出術(+ステロイドパルス併用療法)、免疫抑制薬、抗血小板薬、n-3 系脂肪酸(魚油) 注2:その他の治療:保存療法を行います。必要に応じて、高血圧、食塩摂取、脂質異常症、耐糖能異常、肥満、喫煙、貧血、骨やミネラル、代謝性アシドーシスなどの管理を参照にします。 イラスト: 『かわいいフリー素材集 いらすとや』 さん 参考文献: ① IgA腎症診療ガイドライン2017 ② Hospitalist 腎疾患2 vol.6 No.1 2018 p.160-p.168 『IgA腎症と感染後糸球体腎炎:最もコモンな腎炎と古くて新しい腎炎』 森川貴詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎臓病教室目的:透析や腎移植などの腎代替療法を予防すること ● 腎臓や腎臓病について理解を深める。 ● 食事療法、薬物療法、日常生活の注意点について学ぶ。 ● 患者さんや御家族が学んだことを、退院後にも、できる範囲で続ける。 ● 以上から、透析や腎移植などの腎代替療法にならないように予防し、なりそうであっても、少しでも先延ばしにする。 スケジュール (水) (木) (金) (土)(日) (月) 午前 医師:講義 『腎臓病について』 薬剤師:講義 『薬物療法』 3泊4日コース: 退院 5泊6日コース: 外泊・食事表記入 管理栄養士:食事表の確認、指導。 5泊6日コース退院 午後 入院 検査 看護師:講義、DVD 『腎臓の働き、日常生活の過ごし方』 管理栄養士:集団栄養指導 食育SATシステム 『慢性腎臓病の食餌療法』 ● 5泊6日コース:週末に外泊中の食事内容を記載して、個人栄養指導の時に栄養士と改善点を相談した後、退院します。 ● 3泊4日コース:週末の外泊、食事内容の記載、個人栄養指導を入院中に行わず、外来で行います。 ● 入院中の講義がない時に、必要な検査を可能な範囲で行います。 医師、看護師、薬剤師、栄養士からの指導内容 ★医師 ● 腎臓の構造、働き、腎臓病で起こってくること、その予防法などについて、疑問点をうかがいながら、約50-70分お話をします。 ● 毎回1-4人くらいの人数で、講義というような堅苦しい雰囲気も無く、みなさん、和気あいあいと学んでおられます。 ● 御家族もいっしょに参加されています。 ★看護師 ● パンフレット、DVDなどによる学習を通じて、日常生活の改善点について相談します。 ★薬剤師 ● 腎臓病の方は、たくさんの薬をのんでおられることが多く、それぞれの効果について確認をします。 ● 状況に応じて薬剤の減量や調整も行います。 ★栄養士 ● 食育SATシステムを用いて、食事の改善点について相談します。 ● この内容を元に、ふだんの食事をどのように改善すればよいかを一緒に考えます。 食育SATシステムとは □たくさんの食品サンプルの中から、普段食べていそうな食品を選んで、トレイの上におくだけで、エネルギー、たんぱく、塩分などが、瞬時にわかります。 この中から、ためしに、若い頃に時々食べていたようなメニューを選んで、 トレイの上に置いてみると、、、 画面に摂取量が出るのですが、一食で エネルギー 1365 kcal タンパク質 45.5 g 食塩相当量 11.6 g これはダメでした。 各職種で患者さんの情報をまとめて、外来主治医と相談 □それぞれの患者さんについて、医師、栄養士、看護師、薬剤師がすべての指導の後にミーティングを行って、情報を共有します。この内容を各患者さんの主治医にフィードバックして、少しでも腎臓病の進行を抑えられるように、今後の外来における治療や指導へと活かします。大切なことは、患者さんができる範囲のことを、続けて頂くことです。すべてできなくてもかまいません。 Copyright © 大阪市立総合医療センター 腎臓・高血圧 内科. All Rights Reserved. ページトップへ詳しく見る
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腎臓・高血圧内科腎生検の解説腎生検 腎臓病の診断と治療に 大切な検査 腎臓の一部を細い針を使って採取して、顕微鏡で観察することで、腎臓病の診断や治療を決めるために行います。 腎生検の適応 次のような場合、腎生検を受けて頂く必要があるかもしれませんので、ご来院ください。 ❶ タンパク尿や血尿が続く ❷ たくさんのタンパク尿がある (ネフローゼ症候群) ❸ 原因不明または急に、腎臓が悪くなった ❹ 全身性の病気(膠原病など)をお持ちの患者さんで、腎臓が悪くなった 注)腎臓組織の観察から得られるメリットと、合併症(出血など)のデメリットを天秤にかけて、患者さんと十分に相談しながら、 行うかどうかを決めています。①~④があるからといって、必ず行うわけではありません。 Q&A 腎生検は、何のためにするのですか?(目的) ●腎臓の一部(長さ15mm×幅1mmくらいを約3本)を採取して、顕微鏡で観察します。 ●腎臓病の種類や程度を診断して、今後の病気の進み具合を予想したり、治療方針を決定します。 何人くらい、されていますか? どんな腎臓病が多いですか? 腎生検で診断された疾患の頻度(%) 当院約20年間 その他:アミロイドーシス、骨髄腫腎、フィブリラリー腎症、強皮症腎、血栓性血小板減少性紫斑病、血栓性微小血管障害コレステロール塞栓症、肥満関連腎症、基底膜菲薄症、アルポート症候群、ファブリー病、ミトコンドリア脳筋症、C3腎症、腎サルコイドーシス、IgG4関連腎炎、IgM陽性形質細胞を伴う尿細管間質性腎炎、急性尿細管壊死、妊娠高血圧腎症など どんな感じで行われますか?(方法) 日程: 毎週(火)(木)の午前中(一日最大4人くらい) 場所: 病棟の検査室(14階すみれ病棟) 体勢: ベッド上、うつぶせ 装置: 超音波 麻酔: 局所麻酔 検査時間: 約30分(準備とかたづけ:約20分、採取:約10分) 検査後の安静: あおむけで約6時間(徐々に楽にしていきます)。 18時頃の夕食で座位、21時頃の消灯以降でトイレに歩いて行けます。 合併症はありますか? ●あおむけの安静により、腰痛が起こることがあります。 ●腎臓のはしっこに出血をします。当院では、20年間で約2500人の患者さんに腎生検を行い、輸血5人(元々貧血の人、血小板の少ない人、かなりむくみの強い人などを含む)、血管内カテーテルによる止血は0人です。 ●これまでの報告よりも、かなり安全に行えている実績はありますが、常に安全第一、出血が最小限になるように努めています。 検査結果は、いつ頃わかりますか? ●院内で標本作成をしておりますので、たいていの場合、検査翌日に結果説明を行っています。 ●この時に、今後の治療方針をお話し、治療が必要な場合、継続して行うこともできます。 (電子顕微鏡の結果は、だいたい6週間後になります。) 検査後に気を付けることは? ●3週間くらいは、激しい運動をしたり、重いものを持ったりすることを避けてください。 ページトップへ詳しく見る