ガンマナイフ治療

ガンマナイフ治療について

ガンマナイフは,スウェーデンのカロリンスカ大学の脳神経外科医であるレクセル教授により開発され,1968年より臨床応用が始められた頭蓋内疾患専用の定位的放射線治療装置です.定位というのは位置を定めるという意味であり,治療標的に対してピンポイントの照射を行うことをいいます.これにより様々な頭蓋内疾患の高い制御効果が得られます.開頭手術のような切開を加える必要はありませんので,体には極めて負担が少なく,短期間での入院による治療が可能です.

ガンマナイフ治療の原理

ガンマナイフユニットの中には192個のコバルト(Co60)線源が半球状に配置されており,各々からガンマ線が中心の1点に向けて集中照射するように配置されています(図1).そのため標的病変に対して短時間で高線量の照射が可能となる一方,周囲組織に対する影響は最小限となっています.非常にシャープな線量分布であり,他の定位放射線治療装置に比較すると,周辺組織への被曝は極めて少ない特徴があります(図2).

  

図1.照射のイメージ              図2. ガンマナイフの線量計画(聴神経腫瘍)

最新型レクセルガンマナイフlcon(アイコン)の特徴

スライド1

 図3.レクセルガンマナイフ アイコン

 2020年7月,従来のガンマナイフパーフェクションから最新型であるIcon(アイコン)による治療がスタートしました.この装置にはコーンビームCTと照射中の患者さんの動きをリアルタイムにモニタリングするシステム(HDMM)が備わっています.これらを用いることにより従来からの頭部をフレームで固定する治療(単回照射)に加えて,マスクで固定する分割照射(複数回照射)も可能となりました.分割照射の利点として,大きな病変やリスクの高い部位にある病変の治療をより安全かつ効果的に行うことができます.治療の適応範囲が広がることにより、より多くの患者様のニーズに応えることができるようになりました.

ガンマナイフ治療の適応

ガンマナイフ治療の対象となるのは,基本的には大きさが3cmまでの脳疾患です.主な適応疾患は,転移性脳腫瘍,聴神経腫瘍,髄膜腫,下垂体腺腫,脳動静脈奇形などです.脳腫瘍の治療後は約90%の症例で腫瘍を大きくしない効果(消失、縮小、不変を含む)があります.また最近では三叉神経痛にも良好な効果が得られており,2015年に保険適応として認められるとともに治療症例数が増加しています.

ガンマナイフアイコンではマスク固定を用いた分割照射(複数回照射)による治療が容易に可能です.疾患にもよりますが,3cmを超えるような大きな病変にも効果的で安全な治療を行うことができます.

各疾患について


転移性脳腫瘍
最も多い治療疾患が転移性脳腫瘍です.適応は直径3cmまでの大きさの腫瘍で,治療後の腫瘍制御効果(少なくとも腫瘍を大きくさせない)は約90%です.神経症状のある場合もその改善が期待できます.病変の数が多発性にあっても1日で治療が可能であり,以前に全脳照射等の放射線治療を受けられた方にも治療は可能です.治療が1日で終わるので,必要であれば速やかに全身化学療法など次の治療へ移っていただくこともできます.大きな病変に対しては、分割照射(複数回照射)による治療をお勧めする場合があります.

右前頭葉の転移性脳腫瘍症例
 
治療時         6ヶ月後
6ヶ月後に腫瘍は消失しました.

転移性脳腫瘍(15カ所の腫瘍)の線量計画

多発性の病変にも治療が可能です.


聴神経腫瘍

片側の難聴で発症することの多い疾患です.大きな腫瘍で水頭症を合併しているような場合は開頭手術が適応となります.ガンマナイフ治療の適応として,大きさは2.5cm以下であり,かつ小脳失調症状や顔面のしびれ等の脳圧迫症状がないことが条件となります.治療から5~10年後の腫瘍局所制御率は約90%です.特徴としては約6割の症例で治療後3カ月~2年半の間に一時的に腫瘍が膨化してやや増大します.その後徐々に縮小していきます.合併症として顔面神経麻痺の発生する確率は非常に低く,当院では約700例の治療後一過性に軽度の症状が出現した患者さんが2人おられるのみでした.治療時に有効聴力のある患者さんの6割は5年後にも有効聴力が保たれています.また手術加療が必要な大きな聴神経腫瘍に対しましても,機能温存を考えて腫瘍摘出を行い,その後ガンマナイフ治療を行うことで,神経機能を温存した治療が可能です.

左側聴神経腫瘍症例
  
治療時         2年後         9年後
9年後腫瘍は著明に縮小しています.


髄膜腫

最も頻度の高い良性脳腫瘍で脳を包む膜から発生します.頭蓋内のあらゆる部位に発生しますが,脳の表面に近いものや大きなものは基本的に開頭手術による治療となります.ガンマナイフ治療の適応としては,脳の深部に存在し手術の危険性が高いものや径3cmまでの大きさで脳圧迫症状のないことが条件となります.手術による摘出術後に残存した病変も治療の対象です.治療後5-10年の腫瘍制御率は約90%です.

頭蓋底に存在し視路に近接する髄膜腫の場合,分割照射(複数回照射)による治療により,安全かつ効果的な治療を行うことができます.

髄膜腫の症例
 
治療時           10年後

摘出術が困難な右海綿静脈洞部の髄膜腫です.治療10年後縮小した状態が続いています.


下垂体腺腫(非機能性)の症例
  
摘出術前          ガンマナイフ時線量計画   治療8年後

44歳女性.視力視野障害で発症した非機能性下垂体腺腫を経鼻的手術で摘出しました.術後左海綿静脈同部に残存した腫瘍を含めてガンマナイフ治療を施行.治療8年後腫瘍は消失しています.

 


脳動静脈奇形

典型的には若年者に頭蓋内出血あるいは症候性てんかんなどで発症する疾患です.未治療の状態では年間に約2%の確率で出血すると言われており,出血した場合神経症状を後遺したり最悪の場合生命に危険が及ぶこともあります.治療の目的は異常な血管網を閉塞させて,結果として出血を予防することです.閉塞までは少し時間がかかり,治療から3年後の閉塞率は奇形の大きさにもよりますが,60-90%程度です.完全な閉塞が確認されればほぼ出血の危険性はなくなりますが,少しでも残った場合は出血の危険性は残ります.もし病変が残存した場合は再度治療を行い閉塞に導くことも可能です.

脳動静脈奇形症例

ガンマナイフ治療時         2年後

治療2年後に脳動静脈奇形は閉塞しました.


三叉神経痛(特発性)

顔面片側の強い痛み(電撃痛と呼ばれます)が特徴的で,原因は頭蓋内の血管が三叉神経のある部分で接触していることにより起こります.開頭術により接触している血管を神経から離す手術(微小血管減圧術)により高い確率で治癒が期待できます.ただ患者さんの中にはご高齢の方あるいは全身状態が良くなく全身麻酔による手術が困難な方もおられ,このような方が治療の良い適応となります.手術のように治療後すぐに痛みがなくなるわけではありませんが,治療2カ月後の痛みの緩和率は約80%です.2015年に保険収載されてから患者さんの数は増加してきています.

三叉神経痛に対する線量計画

右側脳槽部三叉神経に対してガンマナイフ治療を施行しています.

ガンマナイフ治療の合併症について

病変の種類,大きさや部位によって異なりますが,治療数週~数か月後に病変周囲の脳浮腫が生じて神経症状の悪化をきたすことがあります.極めてまれですが,放射線壊死という病態に進行し外科的な治療が必要になる場合もあります.

病変が脳の表面にありかつ大きい場合には,近傍の皮膚にも放射線が当たるため,その部分に脱毛が生じることがあります.

治療実績(1994年1月~2023年12月、計8230症例)

 

治療の流れ

頭部をマスクで固定する方法とフレームによる固定方法があります.

 

1.マスク固定(主に分割照射) 照射回数に応じた入院(または通院)治療

 
①MRI、CTスキャンなどを撮影し,病変部位の決定後,最も有効で周囲神経組織に障害 を与えない線量計画を行います(外来あるいは入院日).

②マスクを作成し装着します.

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③ガンマナイフユニットに一体化されたコーンビームCTを照射前に撮影し,線量計画の画像と合成することにより,正確な治療の位置を設定します.

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④線量計画に従って自動的に病変に照射します.

マーカーや赤外線カメラにより高い治療精度を維持しながら照射します.

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2.フレーム固定(単回照射) 基本的に3日間の入院治療

①局所麻酔下に頭部にフレームを固定します.

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②線量計画のためにMRI,CT,脳血管撮影(脳動静脈奇形のみ)などの検査を行います.

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③専用のコンピューターを用いて病変に対して最も有効で周囲神経組織に障害を与えない線量計画を行います.

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④線量計画に従って自動的に病変に照射します.実際の治療時間は病変の大きさや性状,個数により異なりますが,約15分から3時間程度です.

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治療後は紹介元の病院で36カ月毎のMRI撮影を行い,経過観察していただきます.

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