耳鼻いんこう科・頭頸部外科
科の特色
耳鼻咽喉科・頭頸部領域には、耳、鼻、口腔、咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺などの様々な臓器が含まれています。当科では、これらの臓器の機能異常や腫瘍性疾患などを対象に、診断から治療まで行います。
当院は、診療の理念と1つとして“High technology”を掲げ、高度な専門医療を提供し、優れた医療人を育成することを目指しています。我々は、この理念に沿い、最先端の診療機器を導入し、高品質の治療を提供できるよう心がけております。
診療方針
耳科疾患
ZEISSの手術顕微鏡として最高峰機種であるOPMI PENTERO 800を用いて、鮮明な術野の下、様々な聴力改善手術を施行しております。また術野において顔面神経に近接した部位を操作する必要がある場合には、神経モニタリング装置を用いて、術中に顔面神経が通過する位置を確実に同定し、神経損傷を回避しています。
慢性化膿性中耳炎・真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術、耳硬化症に対するアブミ骨手術に加え、耳後部削開を要しない場合には、内視鏡を用いて低侵襲な鼓室形成手術・鼓膜形成手術を施行しております。さらに、両側高度感音難聴に対する人工内耳埋込術、難治性伝音性難聴に対する埋め込み型骨導補聴器 (BAHA)埋込手術など最先端の人工装置を用いた聴力改善手術を施行しております。
その他、突発性難聴、メニエール病、顔面神経麻痺などに対する内科的治療も行っております。
鼻科疾患
慢性副鼻腔炎、副鼻腔嚢胞などの鼻副鼻腔疾患の手術においては、フルハイビジョンの内視鏡システムで得られる精緻な画質に加えて手術用ナビゲーション装置を併用し、安全かつ精細な操作を心がけています。
嗅覚・味覚障害を対象とする専門外来を毎週金曜午後に行っております。アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法も施行しております。
頭頸部腫瘍
当院は『地域がん診療連携拠点病院』に認定されており、その一部門として、当科では、口腔、咽頭、喉頭、副鼻腔、唾液腺、甲状腺など、頭頸部領域に含まれる臓器から発生する全ての悪性腫瘍に対応しています。初診時に即日頸部エコー検査下の穿刺吸引細胞診、あるいは病変の一部切除 (生検)を行うことにより迅速な診断を心がけています (ただし、抗血栓薬の内服があれば休薬の必要あり)。もちろん、良性腫瘍についても対応しております、
特に咽頭・喉頭・口腔の粘膜から発生する悪性腫瘍 (主に扁平上皮癌)に対しては、診療ガイドラインが推奨している標準的治療法に基づき、腫瘍の進行度、患者様の年齢、社会背景、合併症、患者様のご希望などを考慮した上で、手術・放射線治療・化学療法を的確に組み合わせて治療方針を決定しています。特に手術治療においては、形成外科、消化器外科、口腔外科などの他科と協力して、腫瘍切除後の再建術を行い、機能と形態の温存の両立を目指しています。
また甲状腺の腫瘍性疾患、および内分泌疾患については、当院の内分泌内科と連携して、的確な術前診断、術後管理を行っています。甲状腺悪性腫瘍に関しては、術後合併症としての声嗄れ (嗄声)発症を予防するために、術中に神経モニタリング装置を用いて反回神経を確認して損傷を回避し、神経機能の温存を確実に行っています。また整容面を考慮し、皮膚切開の大きさと位置を症例毎に丁寧に検討しております。
咽喉頭疾患
当科では、特に咽喉頭の機能である発声 (音声を発する)、嚥下 (食物を口から食道を経て胃に送り込む)、気道 (呼吸時に空気を通す)の機能低下に対して精密な診療を行っています。咽喉頭炎・扁桃炎など感染による炎症性疾患についてももちろん対応しております。
発声に関する最も多い訴えは声嗄れ (嗄声)です。外来に配備された高画質の内視鏡を用いて声帯を観察して嗄声の原因を診断し、疾患に応じて薬物治療、手術療法、訓練療法を選択しています。特に手術療法に関しては、喉頭微細手術、喉頭形成手術、声帯内コラーゲン注入術など様々な音声改善手術を行っています。
嚥下障害を持つ患者さんの数は、本邦の高齢化の進行とともに急速に増加しています。内視鏡を用いた嚥下内視鏡検査 (VE)のみでなく、X線透視機器を用いた嚥下造影検査 (VF)も施行しております。軽症の嚥下障害の患者さんには、食事の内容、摂食方法、および訓練法などの指導を行っております。一方、肺炎を生じるような重症の嚥下障害の患者さんには、嚥下機能改善手術・誤嚥防止手術を施行しています。
気道の障害に関しては、喉頭狭窄、閉塞性睡眠時無呼吸が代表的です。喉頭狭窄が重度の場合には、初期治療として気管切開術を施行し、呼吸困難症状を改善することが必要となります。両側声帯麻痺、声門癒着など狭窄の原因、部位に応じて、声門開大術、声門下・気管形成術など、狭窄部位を解除する手術を選択して行っております。一方、閉塞性睡眠時無呼吸に対しては、鼻腔・口腔・咽喉頭を観察して咽喉頭狭小化の原因を同定し、睡眠機能検査で重症度を評価した後に治療方針を決定しています。