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小児系診療科 > 小児整形外科<完全予約制>
股関節臼蓋形成不全
先天性下腿偽関節症
先天性脛骨・腓骨列欠損
尖足変形
外反偏平足
良性骨腫瘍(骨軟骨腫、内軟骨腫、等)
良性軟部腫瘍
悪性骨腫瘍(骨肉腫、Ewing肉腫、他)
悪性軟部腫瘍(滑膜肉腫、他)
骨腫瘍類似疾患
合指症
裂手症
橈側列形成不全
橈尺骨癒合症
環軸椎回旋位固定
先天性側弯症などの先天性の脊椎の異常
特発性側弯症
腰椎分離症
腰椎椎間板ヘルニア
四肢骨折
内反肘・外反肘
手指腱損傷
骨髄炎
骨系統疾患
脳性麻痺による脊柱・下肢の異常
二分脊椎による足部異常
先天性股関節脱臼はその名前から想像されるように、生まれた時にすでに股関節が脱臼している(股関節がはずれている)病気と思われがちですが、実は生まれた時にすでに脱臼が完成している場合は今まで考えられていたより少ないと言われています。つまり、脱臼しやすい状態のまま生まれてきて、だんだんと脱臼が進んでそのうちに股関節脱臼が出来上がってしまう場合が少なくないということです。もちろん、股関節脱臼の発生には今まで述べた以外の要素もあり、おなかの中にいる時からすでに脱臼している場合もあります。一般に先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)は女性に多く、また家族性があるといわれています。女の子に比べて少ないですが、男の子の先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)もあります。どのような股関節の格好が脱臼しやすいかといいますと、下肢を伸した状態が脱臼しやすい格好であるといわれています。逆に股関節を開いた格好が赤ちゃんには自然な状態であり、同時に股関節にとっても脱臼しにくい格好であるといえます。このような股関節の自然な格好というのは股関節と膝を曲げた状態、下肢はちょうどアルファベットのMの字の形になっている状態です。新生児期から抱っこの仕方やおむつの当て方を工夫してこのMの字の形を保つことにより、股関節脱臼の完成を予防することがある程度可能です。
股関節が脱臼あるいは脱臼しやすい状態であることが早くにわかれば治療しやすく、新生児期など早期に見つかればおむつのあて方だけでなおる場合があります。先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)が発見されるのは3-4ヵ月の乳児健診の時が最も多く、これは新生児期にはレントゲンでの診断が難しいという理由もありますが、最初に述べたように新生児期には不安定性だけが存在し、まだ脱臼が完成されていないことが多いのもその理由です。当院では超音波(エコー検査)による先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の診断を行っています。まだ骨に成長せずに軟骨がほとんどの新生児に対しても有効な診断法です。逆子(骨盤位)、家族歴あり、秋冬生まれ、女児、双子・三つ子、帝王切開などが脱臼の危険因子とされています。また、大腿部皮膚溝(皺)の数や深さの左右差、開排制限、脚長差、クリック(抱っこやおむつ換えの時に股関節から音が聞こえたり触れたりすること)は脱臼を疑うサインです。
治療については先に述べましたが、新生児期など早くに見つかればおむつのあてかただけで整復される場合があります。歩きはじめてからの治療は一般に難しく手術が必要になる場合も少なくありません。生後5-6ヶ月までに発見された場合、一般的にはリーメンビューゲルというバンドによる治療がよく行われていますが、無理な整復は関節の変形を残すこともあるので、専門医の注意を良く聞いて無理なく治療されるのが良いでしょう。入院のうえ牽引による治療が必要な場合もあります。7ヶ月以降に診断された場合や歩行開始後に診断された場合でも、当院では、手術的に股関節を整復する方法を出来るだけ回避して、牽引法により整復を行っています。牽引法によっても十分な整復が得られない場合でも、内視鏡を用いた低侵襲の手術により整復位が得られるように治療を行っています(関節鏡視下整復術)。治療後の遺残変形(臼蓋形成不全や亜脱臼)に対しても、装具療法や骨切り術(骨盤骨切り術、臼蓋移動術、棚形成術、大腿骨骨術)などにより治療しています。
ペルテス病は成長期における股関節(大腿の付け根の関節)の阻血性疾患(血液の循環が途絶して壊死に陥る病気)です。発症時年齢は2歳から14歳ですが、多くは4歳から8歳の幼児期から学童期早期に集中しています。病態は十分解明されていません。予防法も見つかっていません。男児のほうが女児に比べて多い傾向にあります。装具療法を中心とした保存療法と骨切り術を行う手術療法がありますが治療の基本的な考え方は同じです。装具治療の場合、装着期間は2年から3年必要とされます。これは、新しい骨が出来るまでの期間に一致します。9〜10歳を過ぎて発症した場合は丸い球形の骨頭が出来にくいと言われています。 治療の基本的な考え方は血行が再開して新しい骨が出来るまでの期間、臼蓋(骨盤側の股関節のくぼみ)を鋳型として可能な限り球形の骨頭の形成を促すというものです(図)。同時に、新しい丈夫な骨が形成されるまで、荷重が壊死骨に加わり圧壊して変形が増悪することを防ぐ必要があります。股関節を治療肢位に保ち、かつ免荷(体重が罹患股関節に加わらないようにする)を保って圧壊を防ぐための装具(写真)が各種開発されて、通院しながらでも治療を受けることができます。発症年齢、レントゲン所見などから重症度を判断し予後(成長終了時に球形に近い骨頭になるかどうか)を予測して治療法(装具療法もしくは手術治療)を決定しますが、年長児発症や壊死範囲が広い場合には骨切り術などの手術的治療が勧められる場合もあります。現在は、骨切り術の新しい手術法が開発され、また、手術材料も進歩したために、治療成績が向上しています。
成長期に見られる稀な疾患でが近年増加傾向にあります。10歳から14歳の骨成長の旺盛な時期に発生率が高く、また男児に多いのが特徴です。大腿骨の股関節側の成長軟骨のところでずれる(すべる)ことにより、疼痛や歩容異常、場合によっては歩行困難になります。原因は明らかではありあませんが、外傷や内分泌異常と関係があるともいわれています。急にすべる場合や徐々にすべる場合があり、症状が異なります。発症すれば必ず手術が必要です。手術前に牽引する場合もあります。骨頭すべりの程度により手術方法が変わります。
大腿骨頭すべり症は1)安定型大腿骨頭すべり症、と2)不安定型大腿骨頭すべり症とに別けることが出来ます。発症時からあるくことが出来ない不安定型大腿骨頭すべり症では合併症の発生頻度が高くなります。安定型大腿骨頭すべり症であっても、すべり角度によって治療法や合併症の発生頻度が異なります。すべり角度が小さい場合はそのままの位置でスクリューなどにより固定するだけでよく、手術時間も短く、治癒後の変形も少なくて済みます。しかし、すべり角度が大きい場合は、変形治癒後、大腿骨・臼蓋インピンジメント(股関節の動きに合わせて軟骨どうしが衝突すること)が発症したり、不安定型大腿骨頭すべり症では大腿骨頭壊死や軟骨融解症といった合併症が発症することによる変形性股関節症の早期発症が危惧されます。これらの合併症を極力回避すると同時に、発症した場合でも新しい治療法(大腿骨骨切り術、関節鏡視下手術)などにより治療を行っています。
さまざまな原因により下肢の変形や歩容異常が生じます。脚の長さの左右の違いに対しては、創外固定器による仮骨延長法(イリザロフ法)という方法により骨を伸ばすことが可能です。同時に変形が存在する場合も同じような方法にて矯正が可能です。近年、エイトプレートと言う小さなチタン製プレート用いた骨端線成長抑制法による骨長調整や変形矯正をも行われるようになりました。歩容異常の中では内旋歩行が気になり受診される場合が多いのですが、内旋歩行の原因は内転足、下腿のねじれ、大腿骨のねじれのうちのどれかが原因となっていることがほとんどです。下腿の骨や大腿骨のねじれは座り方に大きく影響を受けるといわれています。正座や正座を崩して足をお尻の外側にして座っている児に多いのも事実です。この場合は正座をさせないことが自然矯正を妨げずに良いと言われています。むしろ、胡座が薦められます。
当院では足外科・歩容異常外来という専門外来を開設しています。
O脚とは、両側の膝関節が外側凸に弯曲した変形であり、X脚とは、逆に両側の膝関節が内側凸に弯曲した変形と定義されています。小児では生後1歳6か月~2歳ごろまではO脚で、その後X脚になり、就学ごろに大人の下肢アライメントに近くなります。年齢相応の変形であれば治療の必要はありませんが、程度が強い場合はくる病やBlount病など治療が必要なO脚の可能性があります。
生まれつきの足の変形です。踵から足の裏が内側を向き、つま先を伸ばした状態で硬くなっている状態のまま生まれてきます。病態は十分解明されていません。予防法も見つかっていません。治療は早期からのギプス矯正が中心ですが、手術が必要な場合も少なくありません。装具や矯正靴が必要なこともあります。片方の足のみの場合と両方が罹患している場合があります。内反足とは違い、内転足といって足の前のほうだけの変形と鑑別が必要です。早い時期に専門医の診断を受けるのが良いでしょう。
当院では、Ponseti法により治療しています。
日本を含むアジアでは多指症のなかでも親指の多指症(母指多指症)が多く、最も頻度の高い手の先天異常です。それぞれの指は正常な母指というわけではなく、母指の重複というよりは、母指が分離したと考えるほうが適切かもしれません。指が完全に分かれたものや、部分的に分かれたもの、親指の外側に袋状についているものなど、いろいろな形態があります。治療はできるだけ正常に近い母指を作る手術療法を行います。手術には、爪、皮膚の被覆、関節の適合性、腱の走行などに配慮した注意深い術前計画ときめ細やかな技術が必要です。手術時期はだいたい1歳ぐらいですが、個人差もあります。また、お子さんの成長に伴って追加手術が必要となることがあります。
母指形成不全は橈側列形成障害の部分症であり、重症度により大きく5つの型に分類され、それにより治療法も異なります。比較的軽症の場合は低形成の母指を温存し、母示指間(親指と人差し指の間)の指間形成や、母指の関節の安定化、筋腱移行による運動再建などが行われますが、重症の場合は示指の母指化術(人指し指を親指に変える手術)を行います。
首の筋肉が固く縮んだ状態になり首が傾いている疾患です。原因はいくつか考えられていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。乳児期は基本的に経過観察を行います。マッサージが積極的に行われていた時期がありますが、むしろ有害であることがわかり、現在は行われません。頭部変形を生じさせないように注意が必要です。多くは1.2歳までに自然に改善しますが、その時期を超えても治らない場合は、固くなっている胸鎖乳突筋という筋肉を切る手術と、その後の装具装着、ストレッチを行います。
こどもの骨折は、早期に適切な治療が行われると、変形を残さずに治すことができます。できることなら手術をせずに、ギプス等で保存治療を行いたいですが、許容範囲を超える骨のずれに対して、いたずらに保存治療を選択すると変形を残す原因となります。
こどもでは多少の骨のずれは、成長に伴って自然な矯正が期待できますが、許容範囲を超える変形に対しては、できるだけ早期に矯正手術を行う必要があります。
単純性関節炎は一過性に生じる関節炎で、炎症の程度が比較的軽度で、安静により自然軽快する疾患です。感冒様症状が先行することがありますが、原因はまだはっきりわかっていません。化膿性関節炎、ペルテス病、大腿骨頭すべり症、腫瘍性疾患などとの鑑別が必要です。
化膿性関節炎は関節に細菌が侵入し、治療が遅れると関節破壊や成長障害などの将来にわたって困る変形を生じる恐れがある、怖い病気の一つです。単純性関節炎と異なり、少しでも早期の診断と迅速な治療が必要であり、発熱と四肢の痛みを生じている場合は、その鑑別が重要です。しかし、特に病気の初期では、判断に困ることがあり、早期に専門病院を受診する必要があります。化膿性関節炎と診断がつけば、迅速な排膿と抗菌薬治療を行います。当院では小児感染症科と連携し、最適な治療法を検討しています。
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