大阪市立総合医療センター,Osaka City General Hospital

TEL.06-6929-1221

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小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術

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最新で高度な医療の提供を

小児での水腎症に対するロボット支援腹腔鏡下腎盂形成手術を、通常手術として実施しています

水腎症ロボット手術1
(図1)
水腎症ロボット手術2
(図2)
水腎症ロボット手術3
(図3)
水腎症ロボット手術4
(図4)

各診療科において低侵襲治療が近年急速に広がり、手術方法としても、創が小さな腹腔鏡手術は当院ではごく一般的な手術方法となっています。当院に導入となった、最先端医療機器である手術支援ロボットによる腹腔鏡手術、いわゆるダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。

執刀する医師が患児に直接触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートは患者さんに接続され実際に手術操作が行われるの部分です(図1、1歳患児の術中、ドッキング後)。人の眼の役割をするカメラと手の役割をする3本のロボットアームを持っています。患児の身体に小さな穴をいくつか開け、各アームに接続されたカメラや手術器具が体内に挿入、サージョンコンソールの術者からの指令で各器具が外科医の手の動きを忠実に再現し手術が進行します。サージョンコンソールは、執刀医が座ってカメラを通して体内の画像を見ながら、手足を使って鉗子類を操作するところです(図2)。ビジョンカートは、カメラからの画像の収集、処理をおこなうところです。当院で手術受けられた5歳男児の術直後(3)と、手術後5か月 (4)での創部写真を示します。臍より足側のみに創部を設置するなど、腹腔鏡手術よりもさらに低侵襲性で、創部が将来目立たない術式に改良中です。

「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3D画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏は、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さく、先が細い鉗子を用いて従来よりはるかに細かな作業でも正確に操作ができる特徴を有します(図5)

医事課
(図5)

患児の皮膚を切開する傷口は、鉗子を挿入する38mmほどの幅であり、明らかに傷が小さいことが挙げられ、疼痛が小さく、通園、通学などへの復帰がより早くなります。また手術中の炭酸ガスによる気腹の効果もあり、開放手術と比較すると非常に少ない出血量です。加えて鉗子の操作性が格段によくなり、細密な動きで操作するために、手術操作部位を丁寧で確実な縫合運針ができ、難症例でも完治できる可能性が高まったことが非常に重要な点です。

④小児水腎症に対するロボット支援手術

 

当院では20201月から最新機種である、「ダヴィンチXi」を2台導入しております。従来の機種にくらべ、さらに微細な操作が可能となっています。20204月の保険収載以降私たちは小児患者に対するロボット支援下腎盂形成手術を開始し、手術成績良好、創も小さくすみ、かつ小児にも安全にロボット支援手術ができることを確認しています。

いままで当科では、水腎症に対しては腹腔鏡下手術を主に行ってきましたが、それでも2次元のテレビモニター下の手術であり、また手の代わりとなる鉗子の可動範囲が制限されるなど欠点がありました。これらの欠点を大きく解消したのが「ダヴィンチ」手術です。今後はますます増加していく手術と考えています。

医事課
(図6)手術の流れ(Campbell-Walsh Urologyより引用)

「ダヴィンチ」手術はあくまで人が器械を操作して施行するのですが、3Dの視野下でまるで人の目で直に見ているようであり、さらに拡大して詳細に視認しながら手術ができます。使用する鉗子は人の手の数倍の細かさで動かすことができる為、例えば骨盤の奥のような、狭くて多くの臓器が入り組んだ場所での手術に特に適しており、明らかな術後手術成績の向上が多数報告されています。世界的にも器機の動作不良による致命的な有害事象の報告は一例もなく、安心して手術を受けてもらえると考えます。当センターには「ダヴィンチ」手術専用手術室が二室完備されています。今後は、年齢に関わらず、ますます「ダヴィンチ」手術が広まっていく期待は大きく、我々も支援ロボット手術センターを手術室スタッフとともに結成し日々前進しています。

医事課

文責:石井 啓一

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