経カテーテル的大動脈弁置換術TAVI
TAVIとは
近年、超高齢化時代に突入し、心臓弁膜症の潜在患者数増加の一途をたどっていますが、弁膜症の中で、最も急増しているのが、大動脈弁狭窄症です。重症の大動脈弁狭窄症は、胸痛、息切れ、失神などの症状がでると数年で死に到る進行性の病気で、従来、外科的人工弁置換術(手術)が唯一の延命効果のある治療とされていました。しかし、心臓外科手術が必要となった患者さんにおいて、手術リスクが高い場合(高齢の方、心臓の開心手術を過去に行った事がある方、全身状態が良くない方、体力の低下を認める方)、手術による治療を断念するケースが少なくありませんでした。
「TAVI」とは、「経カテーテル大動脈弁治療(Transcatheter Aortic Valve Implantation)」、略して「TAVI」と呼ばれます。胸を開かずまた、心臓を止めることなく、「人工弁」を患者さんの心臓に装着することができる治療法です。2002年にフランスで初めて治療応用に成功し、世界では欧米を中心に25万例近い治療が行われています。日本においても、2013年10月より 公的保険の適用が認められたことでTAVIによる治療が可能となり、当院も2016年4月に開始し、2021年3月までに259例に達し、大きな合併症なく良好な成績を収めています。日本における現時点のTAVI治療の適応を図に示します。これまで、概ね80歳以上の高リスクな症例がTAVIの適応でしたが、最近は、二尖弁や僧帽弁置換術後の症例にもTAVIを行っています。海外ではすでに、中等度リスクや低リスク症例のTAVIについて多くの臨床治験が施行され、今後ますます適応の拡大が予想されます。
TAVIチームは、循環器内科・心臓血管外科だけではなく、麻酔科・中央臨床工学部・看護部・中央放射線部などの関連部門で構成され、毎週火曜日には「ASカンファレンス」を開催して、知識の向上、患者情報の共有に努めています。
今後、当院でTAVI治療が行えることにより、これまでの治療(経過観察または内科的治療、外科的治療(大動脈弁置換術)に、TAVI治療という選択肢が増えることになり、患者さんにとって より適切な治療を選択することができ、大きな福音になると考えています。

