がんセンター
ごあいさつ
がんは、我が国において1991年より死因の第1位であり、生涯のうちに約2人に1人ががんにかかると推計されています。わが国のがん対策のより一層の推進を図るため、2006年6月にがん対策基本法が制定されました。2023年3月に改訂された第4期がん対策基本法では、“誰一人取り残さないがん対策を推進し、全ての国民とがんの克服を目指す”を全体目標とした上で、「がん予防」「がん医療」「がんとの共生」を3本の柱とし、「がん医療」に対してはがんゲノム医療やチーム医療、希少がん・小児がん・AYA世代や高齢者のがん対策、「がんとの共生」に対しては相談支援やがん患者の社会的な問題などが取り組むべき課題や施策としてあげられています。
当院は開院当初より、高度専門医療に対応するため臓器別診療体制をとりがん診療に携わってきましたが、薬物療法や放射線治療などのがん治療の進歩により、これらの治療を基軸とした臓器横断的な診療体制が必要であると考えられ、臨床腫瘍科(2015年より腫瘍内科に名称変更)が設立されました。2005年にはがん診療連携拠点病院に指定され、臨床腫瘍センター(2019年からがんセンターに名称変更)を組織し、がん薬物療法専門医を中心に希少がんを含む幅広いがん腫に対する薬物療法を主体とした治療、放射線治療科や外科などの各診療科と連携した集学的治療を行っています。放射線治療に関しては、放射線治療専門医が中心となり、医学物理士と放射線治療専門技師とともに特徴の異なる複数の外照射装置を用いて症例ごとに最適な治療を行っています。また、造血器悪性腫瘍に対しては、高度で先進的な薬物療法や放射線療法を行うとともに、移植治療にも積極的に取り組んでいます。
がん薬物療法の治療の主体は外来へと移行していますが、患者さんが日常生活を送りながらより快適に外来治療が行えるよう2017年度に外来化学療法室の大幅な増床を行いました。これらの治療を確実に、安全に安心して患者さんに提供できるように、各々の部署で多くの専門性を持ったメディカルスタッフ(がん専門薬剤師、がん看護認定看護師、がん医療相談員など)が配置されており、医師とともにチームとして患者さんを適切にサポートできる体制をとっています。近年、がん薬物療法は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などさまざまな薬剤開発が進んでおり飛躍的な進歩を遂げていますが、特徴的で多種多様な副作用に対する対応も重要となっています。当院では総合病院としての強みをいかし、専門性の高い他診療科やメディカルスタッフらと連携し、適切かつ迅速に対応できる体制を整えています。また、当院はがん診療連携拠点病院の中では数少ない緩和ケア病棟を有しており、緩和ケア専門医を中心とした多職種からなる緩和ケアチームが中心となり、がん治療医とともに “早期からの緩和ケア”を目指したチーム医療を実践しています。
2018年度からは、患者さん一人一人の病態に基づいたがん医療である“個別化医療”を実現させるためのがんゲノム医療推進に向けた取り組みがはじまっています。当院はがんゲノム医療連携拠点病院に選出されており、個々の患者さんにより適切な治療選択が行えるような体制作りを行っています。また、より良い治療開発のために、新規薬剤の治験や臨床試験にも数多く携わっています。
当院のがんセンターは、地域のがん診療連携拠点病院として、その責務を果たし、ますます増えると予測されるがん患者さんにとって、心強いサポーターとなれることを目標にしています。また、そのようなサポーターをひとりでも多く育てることも、がんセンターの大きな責務と考えています。
がんセンター長 駄賀 晴子