大阪市立総合医療センター,Osaka City General Hospital

TEL.06-6929-1221

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抄読会 血液内科

2019年

再発または難治性の緩徐進行性リンパ腫におけるレナリドマイドとリツキシマブ、プラセボとリツキシマブの第III相試験

J Clin Oncol 2019;37:1188-1199

背景:低悪性度非ホジキンリンパ腫はfirst-lineの化学療法への反応性は良好である。再発時はリツキシマブ単剤療法が用いられることも多いが、免疫調整薬であるレナリドミド(LEN)はリツキシマブ(R)の作用を高める可能性がある。
方法:第3相, 多施設共同, ランダム化比較試験にて、再発難治性のFLまたはMZL患者を、R+LEN群もしくはR+プラセボ群に割付け、比較する。主要評価項目は無進行生存期間である。
結果:358人がR+LEN群(178人)、R+プラセボ群(180)人に割付けられた。PFSはR+LEN群で有意に良好でHazard ratio 0.46 (95%CI, 0.34 to 0.62;p<0.001), PFS中央値は39.4ヶ月 vs 14.1ヶ月であった。主な有害事象は感染(63% vs 49%)、好中球減少(58% vs 23%)、皮膚障害(50% vs 13%)、白血球減少(7% vs 2%)であった。
結論:LENは再発難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫においてRの有効性を高め、またその安全性は許容できるものであった。

2019年6月10日中舎洋輔

芽球型形質細胞様樹状細胞腫瘍に対するTagraxofusp

N Engl J Med. 2019;380:1628-1637

背景:芽球型形質細胞様樹状細胞腫瘍(BPDCN)はCD123(IL3受容体サブユニットα)を高発現する血液腫瘍である。Tagraxofusp(SL-401)はCD123に結合するヒトIL3とジフテリア毒素を融合させた薬剤である。
方法:47名のBPDCN患者に対してTagraxofuspを5日間連続で静脈投与した(1サイクルは21日間)。治療は進行するまで、あるいは毒性による中止まで継続した。初回評価は未治療BPDCN患者における完全寛解症例数とした。第2評価項目は奏効期間とした。
結果:47名中32名が未治療、15名が既治療症例であった。年齢中央値は70歳(22-84歳)。29名の未治療患者では完全寛解は21名(72%)に得られた。奏効率(完全寛解+部分寛解)は90%であった。45%は移植(自家/同種)を行った。18ヶ月生存率(OS)は59%、24ヶ月では52%であった。15名の既治療患者の奏効は67%であった。生存期間中央値は8.5ヶ月であった。主な有害事象は肝障害(60%)、低アルブミン血症(55%)、浮腫(51%)、血小板減少(49%)であった。毛細血管濾出症候群により2名が死亡した(19%)。
結論:TagraxofuspはBPDCNに対する有望な治療薬である。

2019年5月27日吉田全宏

第一寛解期における節性末梢性T細胞リンパ腫症例に対する自家造血幹細胞移植の役割

Cancer 2019;125:1507-1517

背景:第一寛解期(CR1)での自家造血幹細胞移植(ASCT)は確立されていない。本研究は新規発症末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)のCR1でのASCTの意義を検証するものである。
方法:新規発症PTCLを前方視的にCOMPLETE(Comprehensive Oncology Measures for PTCL Treatment、)に登録。CR1の症例を解析した。
結果:PTCL213名がCR1、うち119名が節性PTCL(ALK陰性ALCL、AITL、PTCL-NOS)、83名がASCTなし、36名が地固めASCTを受けた。追跡中央期間は2.8年、生存期間(OS)はASCTあり群で中央値に至らず、ASCTなし群では中央値57.6ヶ月(p=0.06)。CR1でのASCTは進行期や国際予後指標で中間から高リスクの症例でOSの延長が得られた。CR1でのASCTは血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)患者でOSと無病生存率(PFS)の延長に寄与するが、他のPTCL患者には影響を与えなかった。多変量解析の結果、ASCTは独立した予後改善因子であった(HR 0.37、95%CI 0.15-0.89)。
結論:この研究は初めての大規模前向き臨床試験である。ASCTはPTCLの特定の型に影響を与える。しかし標準的治療を位置づけるには、前向き無作為試験が必要である。この研究は未治療PTCLの今後の臨床研究の土台となった。

2019年5月13日吉村卓朗

フィラデルフィア陰性高齢急性リンパ芽球性白血病に対する第一選択治療としてのブリナツモマブ併用または非併用のイノツズマブオゾガマイシン併用低強度化学療法(Mini-HCVD)と標準的強度化学療法(HCVAD)の比較

Cancer. 2019 Apr 15. doi: 10.1002/cncr.32139. [Epub ahead of print]

背景:新たに診断されたフィラデルフィア染色体(Ph)陰性高齢急性リンパ芽球性白血病(ALL)の転帰は不良である。(分子)標的治療薬と低強度化学療法の併用は安全かつ効果的である。今回、ブリナツモマブ(商品名ビーリンサイト)併用または非併用のイノツズマブオゾガマイシン(商品名ベスポンサ)と低強度化学療法(低用量シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾン)の併用療法を受けた患者と標準的な、集中的な高用量シクロホスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン、およびデキサメタゾン(HCVAD)レジメンを受けた患者の転帰を比較した。
方法:新たに診断されたフィラデルフィア陰性急性リンパ芽球性白血病135例に対して標準HCVAD(n = 77)、ブリナツモマブまたはイノツズマブオゾガマイシンとmini-HCVDの併用療法(blinatumomab併用)(n = 58)を施行した。
結果:ブリナツモマブand/orイノツズマブオゾガマイシンと低強度化学療法の組み合わせは標準的強度化学療法よりも高い奏効率(98%対88%)を誘導し、早期寛解率はより早期に得られ(0%対8%)、完全寛解期での死亡率はより低くなった(5%対17%)。HCVADを受けた患者、およびブリナツモマブを併用する、または併用しないイノツズマブオゾガマイシン併用mini-HCVDを受けた患者の3年無病生存率は、それぞれ34%および64%でした(P = 0.003)。そして3年全生存率は、それぞれ34%と63%であった(P = 0.004)。多変量解析により年齢およびブリナツモマブ併用または非併用のイノツズマブオゾガマイシン併用mini-HCVD(P = 0.020、ハザード比、0.550)を生存に対する独立した予後因子として特定した。
結論:イブリナツモマブ併用または併用しないノナツズマブオゾガマイシン併用mini-HCVD療法は新たに診断されたPh陰性高齢ALL患者に安全かつ効果的であり、標準的強度化学療法と比較してより良い結果をもたらす。

2019年4月22日林 良樹

CD30陽性末梢性T細胞リンパ腫に対するブレンツキシマブ・ベドチン併用化学療法:国際共同二重盲検無作為割付第III相試験

J Clin Oncol. 2014;32:3137-43

背景:第Ⅰ相試験の良好な成績と安全性を受けてECHELON-2試験が実施された。これはCD30陽性PTCLを対象としてブレンツキシマブ・ベドチンにシクロフォスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロンを組み合わせた化学療法(A+CHP)もしくは通常のCHOP療法のいずれかを行い、有効性、安全性を比較する試験である。
方法:ECHELON-2試験は二重盲検、プラセボ比較試験である。17か国の132施設より集められたCD30陽性PTCL成人患者(75%が全身性ALCL)が、1:1の割合で21日周期で6-8サイクルのBV併用化学療法を受ける群と通常のCHOP療法を受ける群とに無作為に割り付けられた。割付の際には病理組織所見とIPIにより層別化を行った。すべての患者はシクロフォスファミド750mg/m2とドキソルビシン50mg/m2を各サイクルの1日目に経静脈投与し、プレドニゾロン100mg/bodyを各サイクルの1日目から5日目にわたり経口投与した。そしてA+CHP群には1.8mg/kgのBVとビンクリスチンのプラセボを、CHOP群には1.4mg/m2のビンクリスチンおよびBVのプラセボを各サイクルの1日目に経静脈投与した。試験の主要評価項目である無進行生存期間は割付結果を知らない独立した監査機関でITT解析により評価した。なおこの試験はClinicalTrials.govにNCT01777152として登録され実施された。
結果:2013年1月24日より2016年11月7日までの間に601名の患者が適格性を評価された。そのうち452名が試験に参加し、A+CHP群とCHOP群に226名ずつが割り付けられた。A+CHP群の無進行生存期間の中央値は48.2カ月(35.2カ月-未達)、CHOP群では20.8カ月(12.7-47.6カ月)であった(ハザード比0.71[95% CI 0.54-0.93]、p-0.0110)。発熱性好中球減少症と末梢神経障害を含む有害事象の出現率と重症度は両群で差はなかった(発熱性好中球減少症はA+CHP群で41名[18%]、CHOP群で33名[15%]、末梢神経障害はA+CHP群で117名[52%]、CHOP群で124名[55%])。致死的な有害事象はA+CHP群で7名(3%)、CHOP群で9名(4%)発生した。
結論:CD30陽性PTCLの初回治療としてのA+CHP療法はCHOP療法に比し無再発生存期間において優れており、安全性にも特に問題はなかった。

2019年4月8日中尾隆文

2018年


新規診断多発性骨髄腫症例の骨病変に対するデノスマブとゾレドロン酸の治療効果の比較-国際、二重盲検、二重ダミー、無作為化比較試験

Lancet Oncol 2018;19:370-381

MM患者に対してゾレドロン酸静注投与群の無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)はクロドロネート経口群と比較して優位に延長するとされている。またデノスマブとゾレドロン酸の骨関連事象の発現抑制効果は同等であるが、OSにおいてはデノスマブの方が劣っている事が報告された。しかしこの報告は解析患者数が少なく,予後に影響を与えるリスク因子や治療内容を加味した割り付けも行われていない。今回、二重盲検,二重ダミー、無作為化された,国際的第三層試験を行った。:259の病院,29カ国の18歳以上の1718例、新規に診断された多発性骨髄腫で,少なくとも1つの溶骨性病変を有する患者が対象となった。効果は最初の骨関連事象までの発症時間を一次評価とし、二次評価として① デノスマブがゾレドロン酸より優れていたか、 ② OSが挙げられた。結果は最初の骨関連事象までの発症時間においてデノスマブはゾレドロン酸に劣っておらず、PFSはデノスマブ投与群の方が延長していた。また腎障害もデノスマブの方が少なかった。これらの結果より症例によってはデノスマブ投与を検討する必要がある。

2018年11月2日 伏屋帆悠里

JALSG AML201で治療を受けた成人急性骨髄性白血病におけるELN-2017遺伝子学的リスク分類による予後解析

Leukemia Res 2018;66:20-27

AML予後に関わる複数の遺伝子異常が同定され、それに基づくリスク分類が提唱されてきている。欧州ではELN-2010が初めに作られ、ELN-2017へ更新された。今回、JALSG AML201研究のデータをもとに、本邦AML患者に関してELN-2017分類を
検証した。ELN-2017の3群により、-2010の4群わけと比較してもOS,CRRはうまく分離できたが、予後良好群と中間群についてはなお議論の余地がある。
・FLT3-ITD変異陽性AML患者において、 FLT3-ITD low allelic ratioは必ずしも良好な予後と関連しない。
・ NPM1およびCEBPA変異のような予後良好と考えらえる遺伝子異常においては、染色体異常(cytogenetic abnormalities)がその予後に影響を与えるかもしれない。
*FLT3阻害剤など分子標的療法の開発にともない、治療戦略の進展とマッチした遺伝学的リスク分類の構築を続けていくことが必要である。

2018年10月15日 林 良樹

 MYC以外に遺伝子再構成がないDLBCL/BCLU患者の予後は不良である

Br J Haematol 2016;175:631-640

はじめに
・MYC遺伝子再構成(rMYC)は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の10%、B細胞リンパ腫分類不能型(BCLU)の50%に認められ、不良な予後と関連している。
・DLBCLでは、R-CHOPで治療した場合、rMYCのある群が、ない群と比較してOSが不良である。
・rMYCに加えてBCL2やBCL6の遺伝子再構成がある患者(DHL)は特に予後不良だが、初回からの強力な化学療法によって予後が改善する可能性がある。
・ rMYCはあるが、BCL2やBCL6の遺伝子再構成がないDLBCL/BCLU患者(SHL)は、rMYCのうち40%(DLBCL)〜50%(BCLU)を占めるが、予後データは乏しい。
・DLBCL/BCLU患者におけるMYC遺伝子増幅(MYCamp)の意義も定まっていない。
→SHL、MYCampの意義を明らかにするため、多施設後方視的解析を行った。
要約
・MYC遺伝子再構成はDLBCLとBCLUにおける予後不良因子であり、DHL(double hit lymphoma)が有名である。
・BCL2やBCL6の遺伝子再構成を伴わないMYC遺伝子再構成(SHL: single hit lymphoma)や、MYC遺伝子増幅(MYC amp)の意義に関するデータは乏しい。(BCL2/6未検索が多い)
・R-CHOPかintensive 治療を受けた、 SHL、MYC amp、MYC normal、DHL患者の予後を検討した。
・SHL患者では、R-CHOP群と比較して、Intensive群で良好なPFSを示したが、OSは不変であった。
・R-CHOP治療を受けたSHL患者は、MYC normal患者と比較して有意にPFSとOSが不良であった。
・SHL患者の予後は不良であり、Intensive治療によって予後が改善する可能性がある。

2018年6月25日 吉田全宏

骨髄異形成症候群/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPNs)に対するルキソリチニブとアザシチジン併用量法の第II相試験.

Am J Hematol 2018;93:277-285

Ruxolitinib(RUX)とAzacitidine(AZA)はMDS/MPNsの治療薬である。MDS/MPNs患者はRUXを1日2回28日間、3サイクル投与。その後、AZAは25mg/sqを5日間から開始し、疾患状態で75mg/sqまで増量。病勢が急速進行している場合や末梢血芽球が増加している場合は、RUX単剤投与中でもAZAを先行投与することができる。35例(MDS/MPN-U(分類不能型) 14例、CMML(慢性骨髄単球性白血病) 17例、aCML(非定型慢性骨髄性白血病) 4例)が治療され、追跡中央値は15.2ヶ月(1-41.5)。評価は2015年international consortium proposal of response criteria for MDS/MPNs (2015 ICP MDS/MPN)で行い、20例(57%)が反応した。24ヶ月時点で50%以上脾腫が改善した症例は9/14例(64%)であった。治療効果があった患者はJAK2変異(p=0.02)や脾腫(p=0.03)がある症例で有意に多かった。Grade3/4の貧血は18例(51%)、血小板減少は19例(54%)、中止は1例(3%)。生存中央値はMDS/MPN-Uで26.5ヶ月、CMMLで15.1ヶ月、aCMLで8ヶ月であった(p=0.034)。RUXとAZA併用療法は耐用性良好でありICP MDS/MPNで57%反応があり、MDS/MPN-Uの患者で最も生存に有意性があった。
*Ruxolitinib(RUX):ルキソリチニブ⇒商品名ジャガビ・日本での保険適応は骨髄線維症、真性多血症
*Azacitidine(AZA):アザシチジン⇒商品名ビダーザ・日本での保険適応は骨髄異形成症候群

2018年6月11日 吉村卓朗

第一寛解期FLT3-ITD変異を有する急性骨髄性白血病に対する造血幹細胞移植後維持療法としてのソラフェニブ(有/無)の有効性.

Br J Haematol 2016;175:496-504

FLT3(Fms-related tyrosine kinase 3)をコードする遺伝子にITD(internal tandem duplication)変異を持つ急性骨髄性白血病(AML)の患者では同種造血幹細胞移植後に再発した場合には非常に予後は不良である。複数のチロシンキナーゼに対する阻害剤であるソラフェニブがFLT3-ITD陽性白血病細胞によるIL-15産生を増加、これに伴いCD8+CD107a+INT-γ+陽性T細胞が増加、レシピエントでの白血病を根絶した事が報告されている。

今回、FLT3-ITD AMLに対する同種移植後のソラフェニブ維持療法の効果について後方視的に検討。2008-2014年に診断され、第一寛解期に同種移植をうけたFLT3-ITD AMLを対象とした。移植後のソラフェニブ開始あり/なしについては、OS/PFS解析において時間依存共変量として評価し、対照群のなかでsorafenib開始中央値時点で無再発生存の患者を用いたlandmark解析を行った。ソラフェニブ群26例、対照群55例、計81例が解析対象。移植後観察期間の中央値は各群で27.2、38.4ヶ月であった(P = .021)。Sorafenib開始日の中央値はday+68で、この時点で無再発生存の対照群患者は43例。ソラフェニブ群では、day+68時点のlandmark analysisで2年生存率が改善(81% vs. 62%, P = .029)、同様に2年無進行生存率も改善(82% vs. 53%, P = .0081)、2年累積再発率も改善 (8.2% vs. 37.7%, P = .0077)。多変量解析ではソラフェニブが良好なOS(HR 0.26, P = .021)、良好なPFS(HR 0.25, P = .016)の有意な因子であった。2年非再発死亡率(9.8% vs. 9.3%, P = .82) 、1年慢性GVHD発症率(55.5% vs. 37.2%, P = .28)に両群で有意差はなかった。FLT3-ITD陽性AMLに対して同種移植後のソラフェニブ維持療法は同種免疫を介して再発を予防する有効な治療法と考えられた。

2018年5月24日 林 良樹

新規診断non-GCB型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対してレナリドマイド併用R-CHOP療法は予後を改善する.

J Clin Oncol 2015;33(3):251-257

目的:レナリドミドは再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)治療に際して重要な薬剤であり、R-CHOP(リツキシマブ、シクロホスファミド、アドリアシン、ビンクリスチンおよびプレドニン併用)療法とレナリドマイド併用量法(R2CHOP)については、その安全性が報告されている。。今回、新規に診断されたDLBCL患者に対するR2CHOP療法の有効性を評価する目的で、PhaseⅡ試験を実施した。
患者と方法:新規未治療のstageⅡ-ⅣのCD20陽性DLBCLの成人患者を登録。通常量のR-CHOP療法に25mg/日のレナリドミドをday1-10の期間内服し、21日おきに計6サイクル実施した。全ての患者はペグフィルグラスチムを各サイクルday2に投与し、アスピリンによる血栓予防内服を行った。DLBCLのmolecular subtypeは腫瘍の免疫染色にて決定し、GCB(Germinal center B-cell-like)およびnon-GCB typeに分類した。
結果:64例のDLBCL患者が登録され、うち60例が反応性の評価が可能であった。R2CHOP群の全奏効率は98%(59/60例)、うちCR率は80%(48/60例)であった。24ヶ月時点での無進行生存率・全生存率はそれぞれ59%、78%であった。R-CHOP群での24ヶ月時点でのPFS・OSは28% vs 64%(non-GCB)、46% vs 78%(GCB)であった。R2CHOP療法のnon-GCB、GCB群それぞれの24ヶ月時点での無進行再発率(60%vs59%)、全生存率(83%vs75%)に有意な差を認めなかった。
結論:R2CHOP療法はDLBCLに有望な効果を示した。レナリドミドの併用はnon-GCB型DLBCLに対しても有効であることが示された。

2018年3月1日 中舎洋輔

2017年

日本人多発性骨髄腫症例における末梢血幹細胞移植目的に行われる末梢血造血細胞動員および採取に対するPlerixaforの有効性と安全性.

Int J Hematol 2017;106:562-572

*多発性骨髄腫(MM)は血液疾患で2番目に多く、発症率は10万人中3人(人年)、死亡数は4000人/年と増加している。
*大量化学療法併用自家末梢血幹細胞移植は適応のある人に行われており、末梢血幹細胞採取は顆粒球コロニー増殖因子(G-CSF) aloneもしくは 化学療法+G-CSFで行われている。
*しかし、初期治療後5-30%がどちらの方法を用いても充分な末梢血幹細胞採取ができず、これらの患者はpoor mobilizerと言われる。効率的に末梢血幹細胞採取が可能となる薬剤は、MM患者にとって希望をもたらす。
*Plerixaforはstromal cell derived factor 1α(SDF-1α)とそれに伴うCXCR4受容体を選択的に阻害し、造血幹細胞が骨髄から末梢血中に動員される。USAやEUでは広く使用されており、日本では2016年12月に承認された。
*HSCTを成功させるCD34+細胞の最低量は2.0×106/kgと考えられており、できれば5.0×106/kg以上が望まれる。MMと悪性リンパ腫の患者において5.0×106/kg以上のCD34+細胞を輸注すると、生存率と無病生存率が延長されると報告されている。
*しかしPlerixaforを用いた日本人のデータは限られているため、安全性と効果を検証する必要があり、本研究が行われた。
抄録
*日本のMM患者において、末梢血幹細胞採取におけるPlerixaforの効能と安全性を評価。
*ランダマイズ試験、filgrastim 400μg/m2/dayを4日間投与後、Plerixaforを投与。その後PG群(plerixafor 240μg/kg/day+G-CSF)7人 vs G群(G-CSF alone)7人で比較。
*Day5に末梢血幹細胞採取を開始し、CD34+細胞が 6.0×106/kg以上となるまで、最大4日間採取。
*PG群で5人、G群で0人がアフェレーシス2日以内にCD34+細胞が 6.0×106/kg以上となった。
*これらの結果は、PG群では2日以内に採取が終了することを示している。
*治療中に発生した有害事象(TEAEs)はPG群で高かったが、許容範囲内であった。
*Plerixaforは日本の多発性骨髄腫患者での末梢血幹細胞採取に有効であることが示された。

2017年12月14日 吉村卓朗

中枢神経原発リンパ腫症例に対する大量メソトレキセートをベースとした化学免疫療法後の地固め療法としての全脳照射あるいは自家造血幹細胞移植.

Lancet Haematol 2017;4: 510-523

背景:初発PCNSLを対象としたIELSG32 trialは国際共同P2試験でkey questionは2つ;1つ目の無作為化によりMTX/AraC/Thiotepa/Rituximab (MATRix regimen) が他の寛解導入療法に勝る成績であった。2つ目の無作為化により、大量MTXを含む免疫化学療法後の地固めとして、骨髄破壊的前処置を用いた自家移植とWBRTのいずれが有用であるかを検討した。
患者と方法:HIV陰性、18?70歳の初発PCNSLで、ECOG PS 0-3の症例を対象とした。以下3つのいずれかの初回治療に無作為割り付けを行い、3週間毎に4サイクルを施行:MTX3.5g/m2+Ara-C 2g/m2 twice daily*2days (group A); group A +rituximab 375mg/m2*2 days (group B); group B +thiotepa 30mg/m2 (group C)。CR,PR,SDの症例の内、十分量の幹細胞採取ができ合併症の遷延がない症例が次の無作為化に進み、WBRT (group D)とcarmustine?thiotepa conditioned ASCT (group E)に割り付けられた。主要評価項目は2年無増悪生存で、各寛解導入グループと寛解治療への奏効を層別化因子とした。解析はITTに基づく。
結果:Feb 19, 2010 - Aug 27, 2014. 5か国53施設227人が集められ、219人が評価対象。122人の2次無作為化適格例のうち、各群59例、計118例が実際に割り付けられた。
WBRT、ASCTともに奏功し、開始前の期待奏功閾値である2年時無増悪生存40例(/最初の52例)に到達。2yPFSに有意差はなし(WBRT and ASCT: 80% (95% CI 70?90) in group D and 69% (59?79) in group E (HR 1.50, 95% CI 0.83?2.71; p=0.17)。両群ともに忍容性に問題なく、Grade 4の非血液毒性は少なかった。血液毒性は想定通りASCT群で多かった。2例の合併症死亡が、いずれもASCT群でみられており、いずれも感染症死亡であった。
結論:全脳照射+自家造血幹細胞移植は70歳以下の中枢神経原発リンパ腫症例において大量MTXをベースにした化学免疫療法後の地固め療法として可能かつ有効である。全脳照射後の認知障害のリスクと影響は治療決定時に考慮されなければならない。

2017年11月16日 林 良樹

再発・治療抵抗性の急性骨髄性白血病に対するFLT3選択的阻害薬gilteritinibの他施設共同、First-in-human、open-label、第I-II相試験.

Lancet Oncol 2017;18:1061-1075

背景:FLT3-ITD変異は急性骨髄性白血病によく認められる変異で、早期の再発や全生存期間の短縮に関連することが知られている。これまでにも様々なFLT3阻害薬が開発されてきたが、耐性獲得に関与する遺伝子変異(特にAsp835に生じる変異)が早期に出現することもあり、その効果は限定的であった。本研究の目的は、再発・治療抵抗性のAML患者に対する、高度に選択的な経口FLT3阻害薬であるgilteritinibを評価することである。
方法:この第I-II相試験では、寛解に導入できなかったもしくは寛解に至った後に再発したAML患者(18歳以上)を対象とした。患者は用量漸増コホートもしくは用量拡張コホートに登録され、1回/日のgilteritinib(20、40、80、120、200、300、450mg)が経口投与された。コホートの拡張は、安全性と忍容性、FLT3に関連するアッセイ、ならびに抗白血病効果に基づき行われた。試験組み入れ基準にFLT3変異を有することを必須としていなかったが、拡張コホートについては、各投与量につきFLT3変異陽性患者を10名以上組み入れるようにした。試験の途中経過の結果に基づき、投与量120mgと200mgの群には更に多くのFLT3遺伝子陽性患者を割り付けた。試験の主要評価項目はgilteritinibの安全性、忍容性および薬物動態とした。安全性と忍容性についてはsafety analysis set(少なくとも1回はgilteritinibを投与された患者群)において評価し、効果についてはfull analysis set(少なくとも1回はgilteritinibを投与され、少なくとも1回の評価を受けた患者)で評価した。薬物動態については、safety analysis setのうち、必要な時点の血清でgilteritinibの血中濃度が測定可能であった患者について評価した。この試験はClinicalTrials.govに登録されており、現在も進行中である。
結果:2013年10月15日から2015年8月27日までの間に、252人の再発・治療抵抗性の成人AML患者が用量漸増コホート(n=23)および用量拡張コホート(n=229)に割り付けられた。gilteritinibの忍容性は良好であった。用量漸増コホートで450mg/dayに割り付けられた3人の患者のうち、2人にgrade3の下痢とgrade3のAST上昇が認められたため、最大耐容量は300mg/dayと規定された。試験との関連の有無にかかわらず、最もよく見られたgrade3-4の有害事象は、発熱性好中球減少症(39%)、貧血(24%)、血小板減少(13%)、敗血症(11%)、肺炎(11%)であった。試験に関連する有害事象で数多く報告された者は、下痢(37%)、貧血(34%)、倦怠感(33%)、AST上昇(26%)、ALT上昇(19%)であった。5%以上の患者に現れた重大な有害事象としては、発熱性減少症(39%;5人は治療関連)、病勢の進行(17%)、敗血症(14%;2人は治療関連)、肺炎(11%)、急性腎不全(10%;5人は治療関連)、発熱(8%;3人は治療関連)、菌血症(6%;1人は治療関連)、呼吸不全(6%)が挙げられた。Safety analysis setのうち95人が死亡し、そのうち7人の死亡は試験薬との関連が否定できなかった(肺塞栓症[200mg/day]、呼吸不全[120mg/day]、喀血[80mg/day]、頭蓋内出血[20mg/day]、心室細動[120mg/day]、敗血症性ショック[80mg/day]、好中球減少[120mg/day])。FLT3のリン酸化阻害の程度はgilteritinibの用量依存性に増加した。またin vivoでのFLT3リン酸化阻害効果は全ての用量群で確認された。80mg/day以上のgilteritinibを投与された患者の大部分において、投与8日目までに90%以上のFLT3リン酸化阻害が確認された。Full analysis setの249人の患者のうち、100人(40%)に奏功が認められ、そのうち19人(8%)が完全寛解(CR)に到達し、10人(4%)がCR with incomplete platelet recovery、46人(18%)がCR with incomplete hematological recovery、そして25人(10%)が部分寛解であった。
考察:gilteritinibの安全性は良好で、再発・難治性の急性骨髄性白血病患者のFLT3を持続的に阻害することが示された。本試験により、FLT3が再発・難治性の急性骨髄性白血病患者の重要な治療標的である事が確認された。本データに基づき、120mg/dayのgilteritinibを評価する第III相試験が行われている。

2017年8月31日 中尾隆文

再発・再燃成人T細胞白血病/リンパ腫におけるレナリドマイドの多施設第II相試験

J Clin Oncol 2016;34: 4086-4093

目的:成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)の治療法はほとんどなく,疾患の予後は不良である。レナリドマイドの第I相試験では,再発ATL患者に対して抗腫瘍活性を示した。今回第II相試験では,再発または再燃のATL患者におけるレナリドマイド単独療法の有効性および安全性を評価した。
患者と方法:適格患者はATLに対して1回以上の先行する化学療法を受け, 最終の治療法でSD以上を達成し,その後再発または再燃した急性,リンパ腫または予後不良因子を有する慢性ATLで20歳以上。患者は,病状の進行または容認できない毒性が出現するまでレナリドマイド25mg/日を連日投与された。プライマリエンドポイントは全奏効率(overall response rate;ORR)。セカンダリエンドポイントは,安全性,腫瘍コントロール率(tumor contral rate;SD以上),奏効までの期間(time to response;TTR),奏効持続期間(duration of response;DOR),病状進行までの期間(time to progression;TTP),無増悪生存期間(progression-free survival;PFS)および全生存期間(overall survival;OS)。
結果:26例の患者中,4例の完全寛解と1例の不確定完全寛解を含む11例に効果が示された(全体の奏効率:42%,95%CI,23%-63%)。SD以上は73%であった。奏効までの平均期間および持続期間は1.9ヶ月,推定不能であり,進行期間の中央値は3.8ヶ月であった。無増悪生存期間中央値および生存期間の中央値は,それぞれ3.8および20.3ヶ月であった。最も多くのgrade3以上の有害事象は,好中球減少症(65%),白血球減少症(38%),リンパ球減少症(38%)および血小板減少症(23%)であった。
結論:レナリドミドは,再発または再燃ATL患者において,臨床的に有意な抗腫瘍活性および許容される毒性であり,治療選択肢となる可能性を示唆している。 ATLおよび他の成熟T細胞新生物におけるレナリドマイドのさらなる調査が期待される。

2017年8月10日 金島 広

リツキシマブ曝露は総代謝腫瘍量の基礎値に影響を受け、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例の予後を予測できる

Blood 2017;129: 2111-2119

リツキシマブ治療後の患者予後が疾患毎に異なる理由の一つに、腫瘍量に影響されるリツキシマブ濃度とリツキシマブの薬物動態(PK)がある。我々はDLBCL患者にリツキサンを使用した場合、リツキサンのPKがどの程度、総代謝腫瘍量(TMTV0)の基礎値やTMTV0自身に影響を与えるかを調べた。TMTV0は2件の前方視的研究のデータを用いた。無治療びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 108名を2週間毎に375mg /m2のリツキシマブを4回投与行いAUC1 9400mg h/Lで2群に分け、FDG-PETで治療効果を評価した。2群の母集団でリツキサンのPKとリツキサンのAUCを測定した。4サイクル後のPFSとOSは、TMTV0とAUCの代謝関連反応と同様、コックスモデルとロジスティック解析で評価した。患者の予後を決定するカットオフ値はROC曲線解析で決定した。リツキサンの暴露量はTMTV0が増えるに従い減少した(R2 =0.41, P < .0001)。1サイクルの高いAUC(≧9400 mg × h/L)はよい反応率(odds ratio, 5.56;P= .0006)とPFSの延長(hazard ratio [HR], 0.38;P = .011)とOSの延長(HR, 0.17;P= .001)と相関した。従来の投与方法であるリツキサン375mg/m2は、TMTV0に従って最適なAUCを得るためには、TMTV0<281cm3の患者に適している。要約すると、リツキサンの暴露はTMTV0に影響を受け、DLBCL患者の予後と反応率と相関する。TMTV0に従った個別の容量調節は前方視的研究で評価されるべきである。

2017年6月29日 吉村卓朗

2000-2014年に新たに診断されたALアミロイドーシスの改善された予後

Blood 2017;129: 2111-2119

ALアミロイドーシスの大きな進歩は明らかであるが、2000-2014年に当院で新たに診断されたALアミロイドーシス1551人の傾向、治療方針、予後に関して評価した。2つ以上の臓器に病変を持つ患者で、2000-2004年、2005-2009年の2つの期間と2010-2014年に診断された患者を比較した。自家移植を行っている患者は1/3と全期間通して同じであったが、2010-2014年では自家移植前にボルテゾミブを使用して寛解導入を行っている患者が増加、メルファランを使用する点は変わらなかった。移植を行わない患者は2010-2014年では65%でfirst lineにボルテゾミブベースの治療を行っていたが、2005-2009年は79%でメルファラン-デキサメサゾン併用療法、2000-204年ではメルファラン-プレドニゾロン併用療法であった。very good partial response(VGPR)以上に至る割合は近年で多く(66%,58%,51%)、非移植患者で大きく改善されている。全生存率も改善されており、改善されている段階は移植群と非移植群で異なる。移植患者で大きく改善したのは2010年以降で4年生存率は91%と73%、65%と比較して大きく改善している。非移植患者では2005年以降で大きく変化しており4年生存率は38%、32%、16%となっている。診断後6ヶ月以内に亡くなる患者は2005-2014年の期間で減少している(24%、25%、37%)。以上より、ALアミロイドーシスの患者は診断が早期につけば、VGPR率は上昇し、早期死亡は減少、全生存率も改善されている。

2017年6月16日 堀内美令

後天性TTPに対するCaplacizumabの第Ⅱ相臨床試験

N Engl J Med 2016;374: 511-522

背景:後天性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は、血小板が巨大vWF重合体に凝集することで発症する。この微小血管血栓症は生命を脅かす可能性のある合併症を伴う多臓器の虚血を引き起こす。連日の血漿交換と免疫抑制療法により寛解導入が可能であるが、微小血栓に起因する死亡と合併症の発生率は依然として高い。
方法:抗vWFヒト化単一可変領域免疫グロブリンであるcaplacizumabは、巨大vWF重合体と血小板の相互作用を阻害する。第Ⅱ相比較試験において、後天性TTP患者を、血漿交換療法中とその後 30 日間、caplacizumab(10 mg/日)を皮下投与する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は奏効までの期間とし、血小板数の正常化が確認されることとした。副次的評価項目は増悪・再発とした。
結果:75 例を無作為化した(caplacizumab群36例、プラセボ群39例)。奏効までの期間は、caplacizumab群のほうがプラセボ群よりも有意に短縮した(期間中央値が39%短縮、P=0.005)。増悪をきたした患者はcaplacizumab群では3例であったのに対し、プラセボ群は11例であった。caplacizumab群の8例が試験薬中止後1ヵ月以内に再発をきたし、うち7例では ADAMTS13 活性が依然として10%未満であったことから、自己免疫活性は消失していないことが示唆された。出血に関連した有害事象は大半が軽度から中等度であり、caplacizumab群のほうがプラセボ群よりも頻度が高かった(54% vs 38%)。その他の有害事象の頻度は両群で同程度であった。プラセボ群では2例が死亡したのに対し、caplacizumab群では死亡例はなかった。
結論:caplacizumabによって、プラセボ群との比較で急性TTPの速やかな改善が得られた。caplacizumabの血小板保護効果は、治療期間を通して維持された。caplacizumabはプラセボと比較して出血傾向の増大に関連した。"
抗vWF療法 caplacizumabはvWFに対する低分子抗体でありvWFと血小板の粘着を阻害することによって血栓症の進展を抑制する。このため血漿交換療法と副腎皮質ステロイドに併用すれば血小板数が正常化するまでの期間を短縮し、必要な血漿交換療法の回数を減らすことができる。本試験では血漿交換療法終了後30日間でcaplacizumabの投与を中止したが、現在海外で進められている第Ⅲ相試験ではcaplacizumabの維持療法が行われており、再燃と急性期における死亡を減らす効果が期待できる。今後我が国でも臨床開発が期待される新薬である。(「血液疾患最新の治療2017-2019 」南江堂)

2017年6月6日 中舎洋輔

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