大阪市立総合医療センター,Osaka City General Hospital

TEL.06-6929-1221

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疾患概説 血液内科

主な血液疾患を概説いたします。

●急性白血病

急性白血病は代表的な造血器悪性疾患ですが、分子標的薬などの導入により近年の治療法の進歩には著しいものがあります。当院では年間約20-30例の新規発症の急性白血病患者の治療にあたっています(2017年度診療実績:急性リンパ性白血病15例、急性骨髄性白血病30例)。多くは地域医療機関から紹介いただいた患者様ですが、院内他科から紹介される患者様や治験への参加目的に来院される方もおられます。急性白血病の治療の基本は抗癌剤化学療法で、まずは寛解導入療法で完全寛解を目指し、完全寛解を得た後に地固め療法、維持療法を繰り返すことになります。適応のある症例に対しては、治癒を目指した強力な治療である造血幹細胞移植を実施しており、当院は骨髄バンク認定施設として、血縁者間の移植だけではなく非血縁者間造血幹細胞移植や臍帯血移植も手がけています。また急性骨髄性白血病に対する治験にも積極的に参加(2019年4月現在6件、うち5件は国際共同治験)しており、新規治療薬の臨床現場への導入にも貢献するよう心がけています。また再発を繰り返し難治性となった急性白血病症例に対しては、地域医療機関や当院の緩和医療科と連携し、可能な限り自宅で生活が送れるように支援しています。

*無菌室(17階さくら病棟)

(1)17階さくら病棟には部屋全体が無菌室になっている個室が5室あります。壁面(頭側)から無菌層風が吹き出し、肺炎を予防します。主として移植症例で使用され、ほぼ1ヶ月間、過ごす事になります。窓からは街の景色が広がっております。17階さくら病棟にはこの他、個室3室にベッド型アイソレーターを設置して治療に使用しております。

無菌室
景色

(左):無菌室・(右):無菌室からの景色

●悪性リンパ腫

悪性リンパ腫の発症のピークは70歳代であり、本邦では高齢化とともに患者数が年々増加しています。古典的ホジキン・非ホジキンリンパ腫に大別されてきましたが、昨今の診断技術の進歩と病態の解明に伴い、全70種類以上に細かく分類されています。病型別に予後・治療方針が異なるため正確な診断は必須で、病理診断科との連携が重要です。当院では隔週で病理組織カンファレンスを開催し、臨床情報と組織所見を照合して診断精度の向上に努めています。
治療の中心は抗がん化学療法(および放射線治療)ですが、分子標的薬をはじめとした新規治療開発が進んでおり、治療が複雑化してきました。当科では、最新情報に基づき随時治療法を見直し、常に最適な治療選択ができるよう心がけています。再発・難治症例に対しては、自家および同種造血幹細胞移植を含む積極的治療も行っており、幅広い治療選択を準備しています。
また本症は希少疾患に部類され、治療開発、疾患予後の解明には多数例での検討が必要であり、当科では他施設共同研究をはじめとする臨床研究にも積極的に取り組んでいます。

●多発性骨髄腫

多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍で、貧血を主とする造血障害、腎障害、高Ca血症、溶骨性病変など多彩な臨床症状を呈します。長らく治療困難な疾患でありましたが、近年新規治療薬が多数使用可能となり、治療成績が飛躍的に向上しています。
65歳以下の患者さんは、自家末梢血幹細胞併用大量化学療法の適応となります。 カドロン)を用いるVRd療法にて寛解導入を図り、その後自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行います。さらにカルフィルゾミブ(カイプロリス)などの新規治療薬を用いて地固め療法や維持療法を施行し、できるだけ長期間の寛解維持を目指しています。65歳以上の自家移植非適応患者さんには、レナリドマイド+デキサメタゾン(Rd)療法やVRd療法を減量したVRd-lite療法で治療を開始し、主にレナリドマイドで維持療法を行います。また治療抵抗例にはカルフィルゾミブ+レナリドマイド+デキサメタゾン(KRd)療法、イキサゾミブ+レナリドマイド+デキサメタゾン(IRd)療法、ポマリドマイド(ポマリスト)+デカドロンを用いるPom-DEX療法、さらには抗体薬であるダラツムマブ(ダラザレックス)やエロツズマブ(エムプリシティ)を用いて救援治療を行っております。今後さらに、セレニキソール、ベネトクラクス、イサツキシマブといった有望な新規薬剤が本邦でも使用できるようになると期待されています。当科では、1年間に平均25名前後の新規発症患者様の診療を行なっています。

●骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群は、未熟な造血細胞に生じた異常が原因であると考えられている造血器の腫瘍性疾患です。1〜3系統の血球減少や、末梢血中の芽球(”異常細胞”や”Blast”と表現されます)出現が特徴的です。複数の疾患からなる「症候群」であり、血球減少の程度、末梢血や骨髄中の芽球割合、造血細胞の異形成、染色体異常などによって分類されるため、正確な診断には骨髄検査が必要です。予後は、血球減少に関連した合併症(感染症や出血など)と白血病化によって大きく決定されます。
主に低リスクと高リスクに分けられ、低リスクで臨床症状・所見の乏しい場合は無治療経過観察とすることもあります。低リスクで臨床症状・所見のある場合は、対症療法としての輸血、鉄キレート療法(内服)、サイトカイン療法(エリスロポエチン製剤)が行われ、一部の疾患(5q-症候群)では抗がん剤レナリドミドの内服を行います。高リスクの場合、根本治療は同種造血幹細胞移植(血縁・非血縁)になりますが、臓器合併症が多い方や高齢の患者様で同種移植が困難と考えられる場合はアザシチジンやレナリドミドなどの抗がん剤治療が行われます。白血病化した場合は、急性白血病に準じた治療を行います。当科では、1年間に平均20名前後の新規発症患者様の診療を行なっています。

●慢性骨髄性白血病

慢性骨髄性白血病は造血幹細胞レベルの異常による白血球増加を主体とする慢性骨髄増殖性腫瘍の一つです。予後を規定するのは急性白血病への移行であり、2005年7月に慢性骨髄性白血病の原因遺伝子であるBCR-ABL融合遺伝子に対する分子標的治療薬としてイマチニブが登場するまでは慢性骨髄性白血病の治癒は同種移植が必須でした。現在ではイマチニブを含めた5種類の分子標的治療薬によってBCR-ABL融合遺伝子の消失が確認された症例については分子標的治療薬を中止することも可能となっております(臨床研究)。当科では、1年間に平均10名前後の新規発症患者様の診療を行なっています。

●本態性血小板血症・真性多血症

慢性骨髄増殖性腫瘍に属する疾患です。主として前者は血小板、後者は赤血球数が増加します。両者ともに後天的な遺伝子異常(JAK2)により発症する症例(特に真性多血症)が多く、合併症として最も注意を要するのは血栓症です。特に高齢、糖尿病、高血圧等の動脈硬化が進行した症例で発症率が高まるため、バイアスピリンなどの血液をサラサラにする薬剤、血小板、赤血球が徐々に増加する症例ではハイドレア等を使用してコントロールいたします。急性白血病への移行もあるため注意深い観察が必要な疾患です。

●特発性血小板減少性紫斑病

自己抗体による血小板破壊によって血小板数が減少します。当科で最も多く診察している良性疾患(難病指定)です。急性型、慢性型に分類されますが、前者は突然始まる出血傾向で受診されます。出血は皮下出血、粘膜出血で確認できますが、粘膜出血(鼻出血、歯肉出血、口腔内粘膜出血、過多月経、消化管出血)が著しい場合には迅速な治療を要します。プレドニン、トロンボポエチン受容体作動薬、ガンマグロブリン大量療法、血小板輸血、摘脾、特発性血小板減少性紫斑病の原因の一つとされるピロリ菌の除菌等の治療が行われます。

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