大阪市立総合医療センター,Osaka City General Hospital

TEL.06-6929-1221

TEL. 06-6929-1221

論文 血液内科

2023年

原著

NEW  多施設共同研究 Erina Nakahara, Keiko Shimojima Yamamoto, Hiromi Ogura, Takako Aoki, Taiju Utsugisawa, Kenko Azuma, Hiroyuki Akagawa, Kenichiro Watanabe, Michiko Muraoka, Fumihiko Nakamura, Michi Kamei, Koji Tatebayashi, Jun Shinozuka, Takahisa Yamane, Makoto Hibino, Yoshiya Katsura, Sonoko Nakano-Akamatsu, Norimitsu Kadowaki, Yoshiro Maru, Etsuro Ito, Shouichi Ohga, Hiroshi Yagasaki, Ichiro Morioka, Toshiyuki Yamamoto, Hitoshi Kanno

Variant spectrum of PIEZO1 and KCNN4 in Japanese patients with dehydrated hereditary stomatocytosis

日本人脱水型遺伝性有口赤血球症患者におけるPIEZO1およびKCNN4の変異スペクトラム

 

Human Genome Variation, https://doi.org/10.1038/s41439-023-00235-y

 

2022年

原著

NEWYoshimura T, Miyoshi H. Shimono J, Nakashima K, Takeuchi M, Yanagida E, Yamada K, Shimasaki Y, Moritsubo M, Furuta T, Kohno K, Ohshima K.

濾胞性リンパ腫におけるCD37発現

Ann Hematol. 2022 May;101(5):1067-1075

 

 

 

NEW Nakaya Y, Imasaki M, Shirano M, Shimizu K, Yagi N, Tsutsumi M, Yoshida M, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Yamane T.

成人血液内科病棟において末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)はカテーテル関連血流感染症(CLABSI)の発生リスクを低下させ、微生物学的な疫学の変化を引き起こす

 

Ann Hematol. 2022 Sep;101(9):2069-2077

要旨

末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)は従来の中心静脈カテーテル(CICC)と比較してカテーテル関連血流感染症(CLABSI)の発生リスクを低下させる可能性がある。しかし、血液疾患患者におけるデータは限定的であり、統計学的検討も不十分である。そこで我々は血液内科病棟においてCICC (n = 472)およびPICC (n = 557)を留置した血液疾患患者のCLABSI発生リスクを、多変量モデルおよび傾向スコアを用いた解析であるIPTW法を用いて後方視的に比較検討した。1000カテーテル留置日数あたりのCLABSI発生率はCICC 5.11PICC 3.29 (P = 0.024)であった。Cause-specific Cox比例ハザードモデル(hazard ratio [HR]: 0.48; 95% confdence interval [CI]: 0.31–0.75; P=0.001)およびFine grayモデル(HR: 0.59; 95% CI: 0.37–0.93; P=0.023)による多変量解析では、PICCCICCと比較して有意にCLABSI発生リスクを低下させた。また傾向スコアを用いたIPTW法による解析でもPICCCICCと比較して有意にCLABSI発生リスクを低下させた(HR: 0.58; 95% CI: 0.35–0.94; P=0.029)。微生物学にはPICCの使用はグラム陽性球菌(特に黄色ブドウ球菌)の発生率を低下させる一方(P = 0.001)、グラム陽性杆菌(特にコリネバクテリウム属)の発生率を増加させた(P = 0.002)。今回の研究により、血液内科病棟におけるCLABSI予防の観点からPICCCICCの有用な代替デバイスであることが示されたが、同時に微生物学的なプロファイルの変化を引き起こす可能性があることが判明した。

 

 

NEW 多施設共同研究 Masataka Kuwana, Tomoki Ito, Shugo Kowata3 | Yoshihiro Hatta, Katsumichi Fujimaki, Kazuki Tanimoto, Kensuke Naito, Shingo Kurahashi, Toshiya Kagoo, R788-1301 Investigators

Fostamatinib for the treatment of Japanese patients with primary immune thrombocytopenia: A phase 3, placebo-controlled, double-blind, parallel-group study

日本での特発性血小板減少性紫斑病患者に対するフォスタマチニブの検討:第3相 プラセボ対照 二重盲検研究

 

Br J Haematol. 2022;00:1–10. DOI: 10.1111/bjh.18582

要旨

脾臓チロシンキナーゼ阻害剤であるフォスタマチニブは、米国、カナダ、欧州などで慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対して適応となっている。日本人のITP患者を対象として、フォスタマチニブの有効性と安全性を検討するため、第3相 プラセボ対照 二重盲検研究を実施した。34名が登録され、フォスタマチニブ群22名、プラセブ群12名に割り当てられ、1日2回100-150mg内服を24週間実施した。病勢安定(14-24週のうち、6回の検査で4回以上で血小板数 5万/mcl以上が確認できた場合と定義)はフォスタマチニブ群で8名(36%)認めたが、プラセボ群では認めなかった(p=0.03)。全奏功率はフォスタマチニブ群で45%、プラセボ軍では0%(p=0.006)であった。フォスタマチニブ群では、プラセボ群と比較して、救援療法や出血頻度が少なかった。有害事象は軽度から中等度であり対応可能な範囲であった。

 

 

NEW 多施設共同研究 Chie Onishi, Momoko Nishikori, Kimikazu Yakushijin, Shingo Kurahashi, Hideyuki Nakazawa, Yasushi Takamatsu, Yoshinori Hashimoto, Hiro Tatetsu, Yuichiro Nawa, Masahiro Yoshida, Tsutomu Kobayashi, Tatsuo Oyake, Shingo Yano, Aki Oride, Ritsuro Suzuki

Lymphoma during pregnancy in Japan: a multicenter retrospective cohort study

日本におけるリンパ腫合併妊娠の多施設共同後方視的研究

 

International Journal of Hematology https://doi.org/10.1007/s12185-021-03281-w

要旨

目的:リンパ腫合併妊娠における、母体及び胎児に与える影響について解析する

方法:13施設より29患者のデータを収集し、28患者について解析を実施した

結果:6例(21%)はホジキンリンパ腫(HL)、22例は(79%)は非ホジキンリンパ腫(NHL)であった。HL患者は全例でリンパ節腫脹を認めたが、NHL患者は15例(68%)で節外病変のみで発症した。観察期間中央値1325日で、5年生存率はNHLで63%、HLで100%であった。妊娠中に化学療法をうけた13例中3例(23%)でニューモシスチス肺炎(PcP)を発症した。第1三半期で子宮内胎児死亡1例と自然流産1例を認めた。15例(54%)は早期産であった。

結論:日本におけるリンパ腫合併妊娠において、西欧諸国と同様にHLと比較してNHLが多いことが示された。母体のPcP罹患率が高いことや、早期産が多いことに対して、治療マネジメントの改善が必要である。

 

 

2021年

症例報告

AIDS関連心臓原発リンパ腫に対しVA-ECMO管理下でリツキシマブ併用化学療法を施行した症例.

Clin Case Rep. 2021 Aug 24;9(8):e04704. doi: 10.1002/ccr3.4704. eCollection 2021 Aug.

 

原著

Nakaya Y, Sakaida M, Yoshida M, Shimizu K, Yagi N, Tsutsumi M, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Inoue T, Yamane T.

フローサイトメトリーで免疫グロブリン軽鎖制限を示さないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の臨床病理学的検討.

J Clin Exp Hematopathol. 2022;62(1):9-17.

 

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫における、診断から治療開始までの間隔の重要性.

Sci Rep. 2021;11(1):2837-2843.

 

2020年

症例報告

Horiuchi M, Yoshida M, Yamasaki K, Sakagami R, Aoyama T, Tatsumi N, Tsutsumi M, Nakaya Y, Fuseya H, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Yamane T

イマチニブが有効であったEBF1-PDGFRB遺伝子融合急性Bリンパ芽球性白血病.

Ann Hematol. 2021;100(5):1329-1331.

要旨:症例は22歳男性、既往歴はなし。1週間程度続く微熱とリンパ節腫大のため前医を受診したところ血液検査で血小板低下、貧血と白血球200,000/μL (芽球93.5%) と異常が見られたため当院紹介となった。骨髄検査では96.4%のリンパ芽球が見られ表面抗原はCD10, 19, 20, HLA-DRが確認され、G-band法での染色体異常は見られなかった。フィラデルフィア染色体陰性急性リンパ性白血病の診断となり JALSG ALL202 under プロトコールで治療開始とした。しかしDay 42の骨髄検査で59 %の芽球が残存しており速やかに次治療を開始としたもののやはり治療後に骨髄中に30 %の芽球が確認された。同時期にarray-CGHの結果が判明し、IKZF1欠損、PAX5欠損、EBF1-PDGFRB融合遺伝子陽性が判明した。EBF1-PDGFRB融合遺伝子陽性の急性リンパ性白血病の場合はチロシンキナーゼ阻害薬が有効という報告があり、イマチニブ400mg/日併用Hyper-CVAD療法を施行したところ血液学的完全寛解に至った。

EBF1-PDGFRB融合遺伝子を持つ急性リンパ性白血病は予後不良と報告されている。この変異はチロシンキナーゼを活性化させる事が知られているおり、イマチニブ等のチロシンキナーゼ阻害薬がの予後を改善させる可能性がある。

 

 

発症時に歯肉の顆粒球肉腫を併発した急性前骨髄球性白血病

臨床病理. 2020;68(10):810-813

 

 

臍帯血移植後に発症したドナー幹細胞由来の発作性夜間ヘモグロビン尿症

Eur J Haematol. 2020;105(5):659-661.

 

 

Yoshimura T, Hayashi Y, Shimizu K, Yagi N, Tsutsumi M, Nakaya Y, Fuseya H, Horiuchi M, Yoshida M, Naokao T, Inoue T, Yamane T

早期発症過粘稠症候群原因疾患の鑑別に窮した症例-IgM型多発性骨髄腫の1例

 要旨:過粘稠度症候群(hyperviscosity syndrome)は、直ちに治療しないと複数の臓器が障害を受ける。 IgM多発性骨髄腫(IgM multiple myeloma)は、血清IgM上昇や貧血などの臨床的特徴を伴う非常に稀な形態の骨髄腫であり、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(Waldenström macroglobulinemia)に似ている。これら2つの疾患を区別することは重要であるが、その鑑別が難解である場合がある。MyD88変異とt11; 14)転座が鑑別診断に役立つことがよく知られている。 今回、我々はIgM MM症例(29歳男性)に生じたHVSを経験した。彼はボルテゾミブ、レナリドマイドおよびデキサメサゾンによる治療を受けた後、メルファラン大量療法を前処置とした自家造血幹細胞移植およびカルフィルゾミブ、レナリドマイドおよびデキサメサゾンによる治療を受けた。血清IgM値とマルチパラメータ細胞表面抗原分析による骨髄中の骨髄腫細胞数によってモニターされた。この一連の治療の後、HSVは改善、深い完全寛解に至った。 HVSの早期発症症例ではWMに加えてIgM MMを考慮する必要がある。

 

 

Nakaya Y, Ishii N, Kasamatsu Y, Shimizu K, Tatsumi N, Tsutsumi M, Yoshida M, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Inoue T, Yamane T.

胚中心向性の形質芽球集簇を伴うHHV8陽性多中心性キャッスルマン病

Pathol Int. 2020;70(8):574-580.

要旨:HHV8関連リンパ増殖性疾患は、その希少性と各病型が相互にオーバーラップする傾向があることから診断が困難である。症例は43歳のHIV陽性の男性。持続する発熱、リンパ節腫大、黄疸、全身性浮腫で当科へ紹介となった。左腋窩リンパ節生検では比較的リンパ節構造は保たれており、多中心性キャッスルマン病の病理学的特徴を有していた。胚中心構造にはHHV8陽性の形質芽球が集簇しており、免疫染色ではCD38、MUM1/IRF4、LCA、IgM、λが陽性、CD30、c-MYC、p53が部分的に陽性、CD138、CD20、PAX-5、κ、CD2、CD3、CD5が陰性であった。EBER陽性の大型細胞が胚中心外側~マントル層にかけて浸潤していたが、EBERとHHV8の共陽性は明らかではなかった。以上より我々は、HHV8陽性胚中心向性リンパ増殖性疾患と中間的な特徴を持つ、胚中心向性の形質芽球集簇を伴うHHV8陽性多中心性キャッスルマン病と診断した。HHV8陽性リンパ増殖性疾患における各病型は細胞起源、宿主の免疫状態、細胞質内免疫グロブリンの発現、クローン性、EBV感染の有無によって異なるが、それらの因子はしばしばオーバーラップし、複雑化した臨床像や病理所見を呈する。

 

 

Fuseya H, Yoshida M, Oyama R, Tatsumi N, Tsutsumi M, Nakaya Y, Horiuchi M, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Aoyama T, Nozuchi N, Fukushima H, Inoue T, Yamane T

核内でCyclin D1がドット状に陽性となったマントル細胞リンパ腫

Leuk Lymphoma. 2020;61(8):2016-2019

要旨:65歳女性。多発リンパ節腫脹を認め、頸部リンパ節生検を施行した。病理所見では、細胞質が乏しく核小体明瞭な異型細胞がびまん性に増殖し、免疫組織学的にCD20陽性、CD5陽性、CD23弱陽性、cyclin D1は核内でドット状に染色を示した。cyclin D1が核にびまん性に染色されなかったため、当初はcyclin D1陰性と判定しびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断とした。しかし、FISHでCCND1/IGH転座を認め、腫瘍細胞がsox11陽性を示したことから、マントル細胞リンパ腫 blastoid variantに診断を変更し、cyclinD1は陽性であったと判断した。R-CHOP、R-DHAP、R-BAC500を施行し完全寛解に達した。MCLでcyclin D1がドット状に染色される例は報告されておらず、cyclin D1染色の判定において、ドット状染色は陽性である可能性がある。

 

 

Tsutsumi M, Yoshimura T, Tatsumi N, Nakaya Y, Fuseya H, Horiuchi M, Yoshida M, Hayashi Y, Nakao T, Inoue T, Yamane T

リツキシマブ単独で治療を行った進行性舌根部Epstein-Barrウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍

Clin Lymphoma Myeloma Leuk. 2020;20(6):e291-e294

要旨:Epstein-Barrウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍(Epstein-Barr virus-positive mucocutaneous ulcer (EBVMCU))はB細胞リンパ増殖性疾患に属し、加齢性あるいは医原性免疫抑制患者に発症する。EBVMCUは口腔粘膜、皮膚および消化管に病変が存在する。今回、免疫抑制剤を使用していない79歳男性に発症したEBVMCUを報告する。主訴は咽頭痛と右舌根潰瘍であった。潰瘍の組織病理学的所見ではCD20、CD79a、CD30およびEBV-encoded small RNA in situ hybridization陽性の異型細胞浸潤が認められた。急速に増悪する懸念があったため、リツキシマブを投与したところ、潰瘍は消失した。臨床経過は画像検査ではガリウムシンチ、検血では可溶性インターロイキン2受容体および定性的EBVポリメラーゼ連鎖反応によって追跡した。

 

吉田全宏、堤美菜子、巽 尚子、中舎洋輔、吉村卓朗、林 良樹、中尾隆文、山根孝久

水痘帯状疱疹ウイルスと単純ヘルペスウイルスの共再活性化による皮膚病変

臨床血液. 2020; 61(1):1 (Picture in Clinical Hematology)

要旨:水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)と単純ヘルペスウイルス(HSV)の共再活性化による皮疹は比較的まれな現象である。免疫不全の有無にかかわらず共再活性化による皮疹の報告があり、デルマトームは同一のこともあれば、異なる部位に再活性化による皮疹が起きることもある。患者は66歳女性。びまん性大細胞型B 細胞リンパ腫の再発に対して救援化学療法と自家末梢血幹細胞移植を行った2 ヶ月後に、10 日間の発熱と左臀部の皮疹を主訴に来院した。身体所見上、左鼠蹊部・外陰部・臀部・大腿後面に発赤・水泡を認めた。臨床的にVZV 再活性化に伴う帯状疱疹と診断され、加療目的に入院した。血清および水泡内容液(図内C)のPCR 検査で、VZV だけでなく、HSV-1 が陽性となった。図内A、 B から採取した水泡内容液ではVZV のみが検出された。血液学的検査でVZV IgG、 HSV-1 IgG は陽性、VZV IgM、 HSV-1 IgM は陰性であり、これらのウイルスの再活性化による皮膚病変と診断した。入院後、アシクロビル点滴投与を8 日間行った後、バラシクロビルを7 日間内服し、全ての病変は痂皮化した。臨床において、VZV 再活性化による帯状疱疹の診断は臨床所見のみでなされることが多いが、外観からHSV-1 との共再活性化かどうかを判断することは不可能である。VZV、HSV-1 双方に対する治療の第一選択はアシクロビルおよびバラシクロビルなので、通常は共再活性化かどうかを診断する意義は乏しい。しかし、血液疾患患者や造血細胞移植後の患者においては、20%前後でアシクロビル耐性VZV およびHSV-1 が検出されるとの報告があるため、帯状疱疹が難治性であった場合、アシクロビル耐性VZV だけでなく、アシクロビル耐性HSV-1 感染の可能性を考慮する必要がある。

2019年

症例報告

Nakaya Y, Yoshida M, Tsutsumi M, Fuseya H, Horiuchi M, Yoshimura T, Hayashi Y, Nakao T, Koh KR, Niino D, Inoue T, Yamane T.
HTLV-1関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺の経過観察中に発生したホジキン様成人T細胞白血病/リンパ腫

J Clin Exp Hematop. 2019;59(3):130-134

要旨:ホジキン様成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)は典型的なATLLと比較して緩慢な臨床経過をたどる初期腫瘍期と考えられるATLLの稀なバリアントである。ヒトTリンパ球向性ウイルスタイプ1(HTLV-1)関連脊髄症/熱帯性痙性対麻痺(HAM/TSP)は、下肢の麻痺と尿路障害を特徴とする神経障害であり、HTLV-1感染によって引き起こされる。ホジキン様ATLLとHAM/TSPの併発症例の報告はなく、今回、我々はHAM/TSPを合併したホジキン様ATLLを初めて報告する。患者は右鼠径部リンパ節腫脹のある56歳の男性でHAM/TSPと診断されてから13年間神経内科外来に通院していた。一般状態が不良であったため強力な化学療法あるいは同種幹細胞移植を受けることができなかったが、病勢は約2年間安定していた。

Nakaya Y, Yoshimura T, Nakajima R, Yamane
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の残存病変を疑わせたタルク胸膜癒着誘発異物肉芽腫

JPN J Clin Oncol. 2019;49(9):886-887

要旨:65歳女性、腹腔内bulky病変を伴う全身リンパ節腫大で呼吸器内科へ紹介となり、左胸膜生検にてびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の診断,加療目的に当科へ紹介となった。リツキシマブ、エンドキサン、ドキソルビシン、オンコビンおよびプレドニン併用療法8コースを実施し、効果判定のPET-CTでは腹腔内病変、全身リンパ節病変は消退したが、左胸膜病変の異常集積は残存、一部新規病変が出現していた。その後リツキシマブ、シタラビン、エトポシドおよびデキサメタゾン併用療法2コースを実施するも、同病変に変化は見られず。胸腔鏡下で左胸膜の再生検を行ったところ、リンパ腫の残存・再燃ではなく、異物肉芽種の診断であった。初診時に左胸水貯留に対し、タルクによる胸膜癒着術も行われていたため、タルクに含まれるケイ酸マグネシウムに対し異物反応が生じ、肉芽種を形成したものと考えられた。悪性リンパ腫治療中のタルク肉芽種の形成はこれまで報告がなく、タルク胸膜癒着術を実施した患者のPET-CTでの治療効果判定には注意を要する。

Nozuchi N, Nakaya Y, Ishii N, Fukushima H, Horiuchi M, Tsutsumi M, Fuseya H, Yamane T, Inoue T

骨髄異形成症候群に併発した赤芽球肉腫

Pathol Int. 2019;69(8):505-507

要旨:Erythroblastic sarcoma(赤芽球肉腫)は赤血球系の芽球からなる腫瘍で極めて稀な疾患である。我々は骨髄病変に先行して脊柱管内に発症したerythroblastic sarcomaの1例を経験したので報告する。症例は30歳代女性で、急速に進行する片麻痺を主訴に来院した。急速な症状悪化を示す脊髄腫瘍に対して緊急減圧術が施行された。手術検体は組織学的にいわゆるsmall round cell tumorの像を示し、免疫組織学的に未熟な赤芽球のマーカーであるCD71, glycophorin A が陽性であり赤芽球肉腫の診断に至った。手術検体中に含まれていた骨髄では骨髄異形成症候群を疑う血球の異形成を認め、腫瘍性と考えられる未熟赤芽球が増生していた。各種化学療法 (IDR+AraC, high-dose AraC, and MEC (mitoxantrone + etoposide + cytarabine)) や局所放射線療法が施行されたが、病勢は進行し診断から5ヵ月後に死亡した。赤芽球肉腫は一般的なmyeloidマーカーであるCD34, CD68, c-kitなどが陰性となることから診断に苦慮する場合がありsmall round cell tumorの鑑別の際に念頭に置く必要がある。

伏屋帆悠里、中尾隆文、堤 美菜子、中舎洋輔、堀内美令、吉田全宏、吉村卓朗、林 良樹、福島裕子、井上 健、愛場庸雅、山根孝久

外科的切除後に自家造血幹細胞移植を施行し寛解を維持しているランゲルハンス細胞肉腫

臨床血液. 2019; 60(4):314-318

要旨:ランゲルハンス細胞肉腫(LCS)はランゲルハンス細胞由来の予後不良な造血器悪性疾患であるが、その希少性により標準治療は確立していない。我々は右頸部の複数のリンパ節に生じたランゲルハンス細胞肉腫に対し、外科的切除後に自家造血幹細胞移植を行うことで寛解を維持している症例を経験したので報告する。症例は58歳、男性。右顎下の腫瘤を主訴に受診。PET-CTで右頸部の複数のリンパ節腫大を指摘され、生検にてLCSと診断された。CHOP療法を行ったが、治療終了後も急速に腫瘤は増大したため、CHOP療法開始16日目に頸部郭清術を施行した。術中所見にて腫瘍の残存が疑われたため、エトポシド、シスプラチン、イホスファミド、ゲムシタビンを用いた化学療法を実施し、PET-CTにて寛解を確認。その後に自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法を実施したが、移植2年を経た現在も寛解を維持している。LCSに対する自家造血幹細胞移植の報告例はないが、有効な治療手段となる可能性がある。

堀内美令、中尾隆文、堤 美菜子、中舎洋輔、伏屋帆悠里、吉田全宏、吉村卓朗、林 良樹、福島裕子、井上 健、山根孝久

左房周囲への腫瘤形成で再発したHHV8陰性primary effusion lymphoma-like lymphoma.

臨床血液. 2019; 60(3):218-222

要旨:Primary effusion lymphoma(PEL)は成熟B細胞腫瘍の稀な一亜型で、腫瘍細胞が腫瘤を形成することなく体腔液中でのみ増殖することを特徴とし、発症にはhuman herpesvirus 8 (HHV8)が関与するとされている。一方でHHV8が陰性の体腔液リンパ腫が報告されており、HHV8陰性PEL-like lymphomaと称されている。我々は心嚢液に発症したHHV8陰性PEL-like lymphomaが、寛解を得た4年後に左房周囲に腫瘤を形成して再発した稀な症例を経験したので報告する。症例は74歳、女性。心嚢液貯留による心タンポナーデにて入院。心嚢液の細胞診にてB細胞性の体腔液リンパ腫と診断されたが、穿刺排液のみで寛解が得られたため、無治療で経過を観察されていた。寛解4年後に不整脈による失神が出現。左房周囲の腫瘤および縦隔リンパ節腫大が指摘された。HHV8陰性PEL-like lymphomaでは排液により寛解が得られたとしても、年余にわたる慎重な経過観察が必要と考えられる。

原著

多施設共同研究:Fujisawa S(横浜市立大学), Ueda Y, Usuki K, Kobayashi H, Kondo E, Doki N, Nakao T, kanda Y, Kosugi N, Kosugi H, KUmagai T, Harada H, Shikami M, Maeda Y, Sakura T, Inokuchi K, Saito A, Nara Y, Ogasawara M, Nishida J, Kondo T, Yoshida C, Kuroda H, Tabe Y, Maeda Y, Imajo K, Kojima K, Morita S, Kumukai S, Kawaguchi A, Sakamoto J, Kimura S

Feasibility of the imatinib stop study in the Japanese clinical setting: delightedly overcome CML expert stop TKI trial (DOMEST Trial).

Int J Clin Oncol. 2019; 24(4):445-453

要旨:(背景)分子反応(MR)を維持することができる無治療寛解(TFR)はチロシンキナーゼ阻害剤(TKl)で治療された慢性骨髄性白血病(CML)患者の約50%に認められる。(方法)イマチニブを中止する事による安全性と有効性を確認するため多施設第2相試験(DOMEST試験)を実施した。少なくとも2年間、MR4.0またはMR4.0相当が持続しており、試験の開始時にMR4.0が確認されたCML患者が登録された。 TER段階では、国際規模(IS)をIS-PCR検査によって定期的にモニターした。分子再発はMR4.0の喪失として定義された。再発患者は直ちにダサチニブまたはイマチニブを含む他のTKlで治療された。 110人の登録患者のうち、99名が評価可能であった。診断からイマチニブ中止までの期間中央値は103ヶ月、イマチニブ療法の期間中央値は100ヶ月でであった。無分子再発生存率は、6、12、および24ヶ月でそれぞれ69.6%、68.6%、および64.3%であった。イマチニブ治療の中止後、26名の患者が分子再発を示し、25名がダサチニブ治療後に深いMRを再び達成した。分子応答MR4.0は6ヶ月以内に23名、12ヶ月以内に25名の患者で達成された。多変量解析では診断からイマチニブ治療の中止までのより長い時間(p = 0.0002)および長期間のイマチニブ治療(p = 0.0029)が予後良好な要因である事が判明した。

多施設共同研究:Yamasaki S(国立病院機構九州がんセンター), Chihara D, Kim SW, Kawata T, Mizuta S, Ago H, Chou T, Yamane T, Uchiyama H, Oyake T, Miura K, Saito B, Taji H, Nakamae H, Miyamoto T, Fukuda T, Kanada J, Atsuta Y, Suzuki R

Risk factors and timing of autologous stem cell transplantation for patients with peripheral T-cell lymphoma.

Int J Hematol. 2019; 109(2):175-186

要旨:自家造血幹細胞移植を併用した大量化学療法(HDC-ASCT)は末梢T細胞リンパ腫(PTCL)症例のオプションの一つである。しかしながら前向き研究も後向き研究でもASCTを前向きに実施することを支持しておらず、HDC-ASCTの時期は依然として議論の的になる。我々は非特定型PTCL(PTCL-NOS)と血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AILT)を含むPTCL570症例の転帰に関する危険因子を後方視的に解析した。570症例の内訳は前向き地固め療法としてASCTを受けた症例がPTCL-NOS、AILT症例それぞれ98例および75例あるいは再発後代替療法として受けた症例がそれぞれ112例、75例、初回寛解導入不能(PIF)例の代替療法として受けた症例がそれぞれ127例、83例であった(期間は2000年から2015年)。前向きASCT後の生存率(OS)の有意な危険因子はPTCL-NOS症例についてはT細胞リンパ腫予後因子が2点以上(p<0.001)、ASCT時部分寛解(p=0.041)、AILT症例については60歳以上(p=0.0028)、ASCT時部分寛解(p=0.0013)であった。化学療法に感受性のあるPIF症例のASCT後のOSに対する危険因子はPTCL-NOS症例についてはperformance statusがASCT時に2以上(p<0.001)、ASCT以前に3レジメン以上の治療を受けている事((p=0.018)、AILT症例についてはASCT時60歳以上(p=0.0018)であった。PTCL患者を慎重に選択する戦略はASCTに適した症例の特定を可能にするものと考えられる。

2018年

症例報告

中舎洋輔、堤 美菜子、伏屋帆悠里、堀内美令、吉村卓朗、林 良樹、金島 広、中尾隆文、山根孝久

Mogamulizumab単剤療法にて長期寛解を維持している化学療法抵抗性adult T-cell leukemia-lymphoma.

臨床血液. 2018; 59(3):326-329

要旨:症例は79歳女性。成人T細胞白血病/リンパ腫の診断を受け、pirarubicin、cyclophosphamide、vincristinおよびprednisone併用量法を2コース施行したが、病勢は進行した。救援療法としてmogamulizumabを8コース施行したところ、完全寛解に至った。投与終了役1年後に乳房腫瘤が出現(生検ではT細胞リンパ腫)したが、2ヶ月の経過で自然消失した。mogamulizumabは成人T細胞白血病/リンパ腫の90%以上に発現している細胞表面抗原の一つであるCCR4を標的としたヒト化モノクロナール抗体である。本症例のようにmogamulizumab単独治療により長期寛解が得られる症例があり、このような症例の特徴に関して更なる症例の集積が必要である。

堀内美令、林 良樹、堤 美菜子、中舎洋輔、伏屋帆悠里、吉村卓朗、金島 広、中尾隆文、福島裕子、井上 健、山根孝久

自家末梢血幹細胞移植後に急性GVHDを発症した多発性骨髄腫.

臨床病理. 2018; 66(1):19-23

要旨:症例はIgG-κ型多発性骨髄腫と診断された67歳女性。Bortezomib +Dexamethasone療法によりpartial responseとなり、その後、cyclophosphamide大量療法ならびにG-CSFを用いて末梢血幹細胞を採取した。melphalanを前処置として自家末梢血幹細胞移植を施行した。移植後10日目に好中球生着、12日目より播種性紅斑、水様性下痢ならびに肝酵素の急上昇が認められた。急性GVHDを疑い、15日目よりmPSL 1 mg/kgの投与を開始した。同日皮膚および大腸生検が施行され、急性GVHDと診断された。治療により皮膚・下痢は改善したが、肝障害は遷延した。肝GVHDを考え、mPSL増量やシクロスポリンを追加投与したが、難治性であった。35日目に行われた肝生検ではアミロイドーシスと診断された。患者はサイトメガロウイルス腸炎、緑膿菌血症を併発し、108日目に死亡した。自家移植後の急性GVHDは同種移植と比較すると頻度は少ないながらも発症する。特に多発性骨髄腫における報告が多い。自家移植後に皮疹、下痢、肝障害といった症状が出現した場合にはGVHDを念頭に置く必要がある。

原著

多施設共同研究:Harada K(都立駒込病院), Doki N, Hagino T, Miyawaki S, Ohtake S, Kiyoi H, Miyazaki Y, Fujita H, Usui N, Okumura H, Miyawaki K, Nakaseko C, Fujieda A, Nagai T, Yamane T, Skakamaki H, Ohnishi K, Naoe T, Ohno R, Ohashi K.

Underweight status at diagnosis is associated with poorer outcomes in adult patients with acute myeloid leukemia: a retrospective study of JALSG AML 201.

Ann Hematol. 2018; 9(1):73-81

要旨:成人急性骨髄性白血病(AML)患者における肥満と過体重(太りすぎ)であることの様々な影響は最近の研究で述べられているが、低体重(やせ)であることの影響についてはほとんど知られていない。我々は低体重患者の結果を正常体重と過体重患者と比較した。JALSG AML201研究(1057症例)に登録された成人AML患者を3群に分類した。すなわち低体重(ボディマス指数[BMI]<18.5、n = 92)、正常体重(BMI 18.5-25、n = 746)と過体重(BMI≧25、n = 219)である。年齢と男性の/女性の比率を除いては、患者特徴は3つの群の間で一致した。寛解導入療法後の完全寛解率は、3つの群(p = 0.68)の間で同程度だった。低体重患者と正常体重患者の間に総生存率(OS)、無病生存率(DFS)と非再発死亡率(NRM)で有意差が認められた(3年総生存率 34.8対47.7%、p = 0.01;無病生存率 28.6%対39.6%、p=0.02; 1年無再発死亡率 6.2%対2.6%、p=0.05)が、低体重患者群と過体重患者群では有意差は認められなかった。多変量解析では低体重はOS(p < 0.01)、DFS(p = 0.01)とNRM(p = 0.04)の独立した予後不良因子であった。初回寛解導入療法後に発症した重症感染と重篤な有害事象の発生率は低体重患者において正常体重患者より高かった(重症感染 16%対8.1%、p = 0.04;、重篤な有害事象 36%対24%、P=0.05)。体重不足は成人のAML患者における生存の独立した予後不良因子であった。

2017年

症例報告

伏屋帆悠里、中尾隆文、橋村光晴、堀内美令、林 良樹、萩原潔通、金島 広、奥野高裕、福島裕子、井上 健、真鍋隆夫、山根孝久

Lymphomatosis cerebri様の中枢神経病変を有した末梢性T細胞リンパ腫-非特定型.

臨床血液. 2017; 58(7):760-765

要旨:Lymphomatosis cerebri (LC)は原発性中枢神経リンパ腫の稀な亜型で,MRIで造影効果を受けない悪性リンパ腫病変が腫瘤を形成することなく両側の大脳白質にびまん性に浸潤することを特徴とする。我々は全身性の末梢性T細胞性リンパ腫-非特定型(peripheral T-cell lymphoma, not otherwise specified, PTCL-NOS)にLC様の中枢神経病変を伴った症例を経験したので報告する。症例は72歳,男性。急速に進行する認知機能低下を主訴に受診した。PET-CTにて皮膚および骨にFDG異常集積を認め,皮膚生検よりPTCL-NOSと診断した。頭部MRIでは頭蓋内には腫瘤は認められず,両側前頭葉優位に造影効果を受けないびまん性のFLAIR高信号域が認められた。脳生検を実施したところ,中枢神経病変の病理所見もPTCL-NOSとして矛盾しないものであった。ステロイド投与や多剤併用化学療法に対する反応性は乏しく,診断から4ヶ月後に死亡した。全身性の悪性リンパ腫にLC様の中枢神経病変を伴った例は非常に稀であり,貴重な症例と考え報告する。

萩原潔通、伏屋帆悠里、堀内美令、林 良樹、金島 広、中尾隆文、山根孝久、徳原成未、光野典子、金髙克成、福島裕子、井上 健

形質芽細胞性リンパ腫の骨髄浸潤.

臨床血液. 2017; 58(6):581(Picture in Clinical Hematology)

要旨:72歳の男性。当院耳鼻咽喉科にて左上顎腫瘍を切除,病理診断では明瞭な核小体と粗造なクロマチンを有する大型の核を持つた異型細胞のびまん性増生を認め,免疫染色ではCD3,L26,CD79a, CD138陰性,CD38,λ,IgG, EMAが陽性であり,形質芽細胞性リンパ腫と診断された。血液検査ではM蛋白は認めなかった。PET検査において左上顎部に残存病変が認められたため,同部位に対して50Gyの放射線照射を行い,完全寛解となった。2015年11月PET検査において左内胸および右横隔膜脚後に腫瘤形成を認め,再発と診断した。本人の希望もあり外来にてエトポシド内服治療を行っていたが,全身倦怠感,食欲低下が著しくなったため2016年8月当科に入院した。入院後腰痛があり,骨髄浸潤が疑われたため骨髄穿刺ならびに骨髄生検が施行された。骨髄塗抹標本(メイ・ギムザ染色)では細胞質青染性,円形核,時に多核,核小体を有する非常に大型(最大径10細胞平均50pm)の異常細胞を認めた。細胞表面抗原解析を施行したが,同細胞を集団として認識できず,表面抗原の同定はできなかった。この大型細胞は骨髄生検でも確認され,免疫染色ではCD38,λ陽性,CD20, CD79a,κ陰性であった。以上より形質芽細胞性リンパ腫の骨髄浸潤と診断した。浸潤細胞は50μmと巨核球と同等のサイズ(好中球の3~4倍)であり,がん胞巣の形態は取っていないが,上皮性悪性腫瘍の骨髄浸潤細胞に類似しており,両者の鑑別に骨髄生検が有用であった。

原著

多施設共同研究Hosen N(大阪大学), Matsunaga Y, Hasegawa K, Matsuno H, Nakamura Y, Makita M, Watanabe K, Yoshida M, Satoh K, Morimoto S, Fujiki F, Nakajima H, Nakata J, Nishida S, Tsuboi A, Oka Y, Manabe M, Ishihara H, Aoyama Y, Mugitani A, Nakao T, Hino M, Uchibori R, Ozawa K, Baba Y, Terakura S, Wada N, Morii E, Nishimura J, Takeda K, Oji Y, Sugiyama H, Takagi J, Kumanogoh A

The activated conformation of integrin β7 is a novel multiple myeloma-specific target for CAR T cell therapy.

Nat Med. 2017; 23(12):1436-1443

要旨:モノクローナル抗体を用いた免疫療法を行う際に、がん特異的な細胞表面抗原は理想的な標的となり得るが、トランスクリプトームやプロテオーム解析により既に大半の抗原は同定されていると思われる。今回我々は、活性化型の立体構造をとるインテグリンが多発性骨髄腫に特異的な治療標的として有用であることを見出したので報告する。我々は、多発性骨髄腫細胞に結合するモノクローナル抗体10,000クローン以上をスクリーニングし、多発性骨髄腫細胞のインテグリン7分子にのみ結合するモノクローナル抗体MMG49を同定した。MMG49が結合するエピトープは7鎖のN末端領域にあり、インテグリンが不活性型の立体構造にある際にはMMG49とは結合できず、活性化型の立体構造となったときにのみエピトープが露出し結合可能となるものと考えられた。多発性骨髄腫細胞では恒常的に活性化しているインテグリン7が強発現しているためMMG49 が強く反応する。しかしインテグリン7を持つ通常のリンパ球を含め他の種類の細胞に対してMMG49はほとんど結合しなかった。MMG49の抗原認識部位を持つCAR-T細胞は抗骨髄腫活性を発揮する一方で、他の種類の血液細胞には影響を与えなかった。MMT49を用いたCART療法は多発性骨髄腫の治療手段として有望であり、また細胞の生理学的状態に即した特殊な立体構造ががん免疫療法の標的となり得ることが示された。

2016年

症例報告

堀内美令、伏屋帆悠里、堤 美菜子、林 良樹、萩原潔通、金島 広、中尾隆文、福島裕子、井上 健、山根孝久

Follicular Lymphomaの形態を取ったBCL2、MYC転座陽性Double-Hit Lymphoma.

癌と化学療法. 2016; 43(9):1135-1138

double-hit lymphoma(DHL)は MYC/8q24転座を含む複数の転座,主としてBCL2を含むt(14; 18)(q32;q21)を有するまれな腫瘍である。2 か月に及ぶ腹部膨満感を有する38 歳,女性の症例を報告する。PET を施行したところ,FDG の高集積が多数のリンパ節,腹膜,腹腔内腫瘤に認められた。頸部リンパ節組織で濾胞性リンパ腫(Grade 3A),またFISH法にてMYC ならびにBCL2 転座細胞の両者が認められたため,DHL と診断した。最初にR-CHOP 療法,1 コース後にDAEPOCH-R 療法が施行された。しかしながら,種々の化学療法およびHLA半合致移植に反応を示さなかった。DA-EPOCHR療法が奏効しなかった場合,救援化学療法,自家および同種造血幹細胞移植を含めた治療戦略の開発が重要となる。

奥野高裕(病理診断部)、福島裕子、井上 健、堀内美令、植田英也、萩原潔通、金島 広、中尾隆文、山根孝久、中村友之

Angiomyomatous hamartoma.

臨床血液. 2016;57:395(Picure in Clinical Hematology)

原著

Yoshida M, Nakao T, Horiuchi M, Ueda H, Hagihara K, Kanashima H, Inoue T, Sakamoto E, Hirai M, Koh H, Nakane T, Hino M, Yamane T.

Analysis of elderly patients with diffuse large B-cell lymphoma: Aggressive therapy is a reasonable approach for "unfit" patients classified by comprehensive geriatric assessment.

Eur J Haematol. 2016; 99(11):2285-2293

要旨:高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の解析:積極的治療は包括的老年評価(comprehensive geriatric assessment、CAG)により分類された”unfit”症例に対する適切な手法である。[背景]高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療戦略は問題が多い。数施設からCAG導入の有効性およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の”unfit”症例における治癒を目指した治療は無為であることが報告されているが、その結論は確立されたものではない。[対象・方法]データベースを用いて後方視的解析を行った。高齢者びまん性大細胞型B細胞リンパ腫症例は60歳以上と定義した。CGA層別化はカルテを用いて行った。[結果]135例で実施された。治癒を目指したアントラサイクリン系抗がん剤を用いた化学療法は115例(85%)の症例に施行された。CGAを用いることにより、82例(61%)の症例が“fit”と分類された。1年全生存率は“fit”症例(91.3%)が”unfit”症例(53.8%)と比べて有意に優れていた(p<0.001)。”unfit”と分類された症例のうち治癒的治療を受けた症例(66.1%)は緩和的治療を受けた症例(19.0%)と比較すると有意に生存率が優れていた(p<0.001)。[結論]CGAは高齢者DLBCLの予後を予測する上で有用なツールである。CGAにより層別したにも関わらず治癒的治療を受けた症例は緩和的治療を受けた症例と比較するとその予後は有意に良好であった。治癒的治療は”unfit”症例にも考慮すべきである。(注) CGAは①年齢(80歳以上でunfit)、②ADL(入浴、着衣、排泄、異動、食事、排便調節)(一つでもできなければunfit)、③臓器障害等、併存疾患スコアー、④老年症候群(認知症、せん妄、失禁、転倒、虐待、老衰等があればunfit)から成る。

2015年

症例報告

福島裕子(病理診断科)、井上 健、石井真美、奥野高裕、孫 麗香、副島千晶、堀内美令、植田英也、吉田全宏、萩原潔通、金島 広、中尾隆文、山根孝久

再発を繰り返した濾胞性リンパ腫の治療後に発生した末梢性T細胞リンパ腫、非特異型.

臨床病理.2015;63:1029-1034

Sakatoku K, Yoshida M, Inoue T, Yamane T.

Nodular cytomegalovirus pneumonia.

Intern Med 2015;54:1951-1952 (PICTURES IN CLINICAL MEDCINE)

要旨:症例は全身性リンパ節腫脹を示した68歳男性。リンパ節生検の結果、T細胞リンパ腫と診断された。CTにて多発性結節陰影を両肺に認めた。経気管支生検が施行され、II型肺胞上皮内に巨細胞封入体および中等度の間質性反応が認められた。免疫組織染色を行い、サイトメガロウイルス感染細胞を同定した。サイトメガロウイルス肺炎の場合、CTにおける典型的な画像として結節を伴うすりガラス像および微細結節(1-5mm)も通常認められる。しかし本症例では5mm以上の多発結節のみ認められた。患者の細胞性免疫はリンパ腫によって低下していた可能性がある(免疫抑制剤は服用しておらず、また臨床的に呼吸器症状は認められなかった)。悪性リンパ腫症例ではCTにおいて多発肺結節が認められた場合にはサイトメガロウイルス肺炎を念頭に置く必要がある。

吉田全宏、堀内美令、植田英也、萩原潔通、金島 広、中尾隆文、平田 央、井上 健、山根孝久

髄外造血所見を伴う皮膚浸潤を認めた骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍 分類不能型.

臨床血液. 2015;56(7):911-914

要旨:皮膚髄外造血は骨髄線維症例で少数報告されている。患者は多発皮膚病変を有するJAK2V617F陽性骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍分類不能型の79歳男性である。皮膚病変は触診上、丘疹結節性、赤褐色、弾性硬であった。生検を施行したところ、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍分類不能型に伴う皮膚髄芽期造血所見が得られた。経過観察したところ、皮疹は徐々に増加、四肢・体幹に拡大した。その後、発熱、血球減少の進行があり、皮疹出現の4ヶ月後に非交通性水頭症を発症し、永眠された。骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍分類不能型の経過中に皮疹が出現した場合には皮膚深順を念頭に置き、皮膚生検を行い、骨髄線維症の場合と同様に急速な病勢の進行に備える必要があると考えられた。

吉田全宏、植田英也、今泉綾貴、堀内美令、萩原潔通、金島 広、中尾隆文、東 和美、糸井壽一、山根孝久

白血球除去療法が奏効した慢性骨髄性白血病急性転化に伴う呼吸不全.

癌と化学療法. 2015;42(6):763-765

要旨:白血球数100,000/μl以上の白血球増多症を認めた場合, 肺あるいは中枢神経系に白血球停滞を生じ、死に至る例が多い。このような症例に対して速やかな白血球除去療法が有効という報告がある。今回, 慢性骨髄性白血病急性転化における白血球停滞に伴う呼吸不全に対して,白血球除去とイマチニブ併用療法が奏功した一例を経験したので報告する.

吉久野雅智、井上敦司、相本瑞樹、中尾隆文、亀田和明、吉田全宏、金島 広、平井 学、山根孝久

小リンパ球性リンパ腫治療中にBendamustineで貧血が改善した寒冷凝集素症.

臨床血液. 2015; 56(2):204-209

要旨:症例は77歳男性。2004年に特発性の寒冷凝集素症(cold agglutinin disease, CAD)と診断され,保温安静とステロイド投与にて冬季6 g/dl,夏季8g/dl程度のへモグロビン値を維持されていた。2012年5月は気温の上昇にもかかわらず貧血が遷延し,表在リンパ節の腫大が出現したため精査したところ, CTにて全身のリンパ節腫大が指摘され,鼠径部リンパ節と骨髄の生検にて小リンパ球性リンパ腫とそれに伴う続発性の寒冷凝集素症であることが判明した。計6コースのrituximab単剤投与では貧血は改善しなかったが,その後にbendamustineとrituximabの併用療法を6コース繰り返したところ,リンパ腫の寛解及び溶血性貧血の改善が認められた。bendamustineによりCADが改善した症例は海外に1例が報告されているのみであり,本症例は低悪性度リンパ腫に伴う寒冷凝集素症の治療を考える上で貴重であると考えられた。

2014年

症例報告

Yoshida M, Tamagawa N, Nakao T, Kanashima H, Ueda H, Murakami A, Yorifuji T, Yamane T.

Imatinib non-responsive chronic eosinophilic leukemia with the ETV6-PDGFRA fusion gene.

Leuk Lymphoma  2015;56:768-769

植田英也、吉田、金島 広、中尾隆文、杉山裕之、山根孝久

アサシチジン療法治療中断により急激に病勢が悪化した骨髄異形成症候群.

癌と化学療法. 2014;41:875-877

要旨:症例は骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome: MDS)と診断された73 歳,女性。アザシチジン(azacitidine:AZA)療法11 コース目後にHb,血小板数の増加が認められ,輸血が不要となった。本人の希望により治療を一時中止して経過観察していたが,3 か月後に血小板数が減少したためAZA 療法を再開した。しかしながら,14 コース目に急性骨髄性白血病への進行が認められ,診断から19 か月後に永眠された。AZA はMDS の治療に重要な薬剤であるが,その中断は急速な病勢悪化をもたらす危険性があり,中断症例は注意深い経過観察が必要である。

Ogawa Y(国立病院機構 大阪医療センター), Watanabe D, Hirota K, Ikuma M, Yajima K, Kasai D, Mori K, Ota Y, Nishida Y, Uehita T, Mano M, Yamane T, Shirasaka T.

Rapid multiogan failure due to large B-cell lymphoma arising in human herpesvirus-8-associated multicentric Castleman's disease in a patient with human immun.odeficiency virus infection.

Intern Med. 2014;53(24):2805-2809

2013年

症例報告

Nakao T,  Yoshida M, Kanashima H, Yamane T.

Morganella morganii Pericarditis in a Patient with Multiple Myeloma.

   Case Reports in Hematology Volume 2013 (2013),Article ID 452730, 3 pages

要旨:Morganella morganiiによる化膿性心膜炎は非常に稀である。多発性骨髄腫に対する化学療法14日後に胸痛と呼吸困難を呈した61歳の男性の症例を報告する。心臓超音波検査ならびにCTにて多量の心膜液がみられ、心臓タンポナーデを併発した。心嚢穿刺が施行され、心嚢液よりMorganella morganiiが検出された。患者は抗生物質ならびに外科的排液により治癒した。免疫不全患者が化膿性心膜炎を併発した際にはMorganella morganiiも起炎菌として念頭に置く必要がある。

間部賢寛(大阪市立大学)、西本光孝、伊藤和博、岡村浩史、備後真登、吉田全宏、井上敦司、相本瑞樹、林 良樹、康 秀男、中根孝彦、中前美佳、寺田芳樹、中前博久、中尾隆文、高 起良、平井 学、中尾吉孝、山根孝久、日野雅之

同種骨髄移植後に急性横断性脊髄炎を合併した急性リンパ性白血病.

癌と化学療法. 2013; 40:529-532

要旨:症例は40歳,女性。分子学的寛解を得たPhiladelphia染色体陽性急性リンパ性白血病に対して、非血縁者間骨髄移植を実施した。day 90ごろより知覚異常,膀胱直腸障害および下肢筋力低下を認め, MRI所見も含めて急性横断性脊髄炎と診断した。ステロイドパルスおよび免疫グロプリン製剤投与を行い,症状の改善を得た。横断性脊髄炎は運動,知覚および自律神経系に異常を来す炎症性疾患であるが,造血幹細胞移植での合併例は比較的まれである。早期の診断および治療開始が機能的予後に影響するため,移植後の脊髄症には急性横断性脊髄炎を鑑別診断として念頭に置く必要性がある。

吉田全宏、亀田和明、小川吉彦、金島 広、中尾隆文、田邊順子、松岡雅雄、高 起良、山根孝久

末梢血でCD25陰性,リンパ節でCD25陽性を示した成人T細胞白血病/リンパ腫の1症例.

日本検査血液学会雑誌. 2013; 14:188-192

要旨:成人T細胞白血病/リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma, ATLL)はhuman T-Iymphotropic virus type-I (HTLV-1)の感染により引き起こされる末梢性T細胞性リンパ腫である。典型的なATLL細胞は表面形質がCD3+,CD4+, CD8 -,CD25+, HLA-DR+であり,CD4+、CD25+T細胞由来の腫瘍である可能性が示唆されている。今回我々は末梢血でCD4+,CD25-、リンパ節でCD4+, 25+の表面形質を示したが,共に同一クローンの腫瘍細胞である事が判明したATLLの1例を経験したので報告する。

久野雅智、亀田和明、吉田全宏、小川吉彦、中尾隆文、金島 広、山根孝久

悪性リンパ腫が疑われたクラミジア直腸炎.

診断と治療. 2013; 101:1103-1106

要旨:クラミジア感染症は世界中で最も蔓延している性感染症である。クラミジァはおもに男性尿道や女性子宮頸管に感染するが,同じ円柱上皮が存在する結膜,咽頭,直腸にも感染する。蔓延しやすい原因として,男性の40%. 女性の70%が無症候性感染であるため医療機関を受診せず,診断されにくいことがあげられる。今回筆者らは悪性リンパ腫が疑われ紹介されたクラミジア直腸炎の1例(24歳,女性。主訴:下血)を経験した。若年者の消化器症状に対して下部消化管内視鏡を施行しイクラ状病変がみられた場合,悪性リンパ腫や潰瘍性大腸炎に加えて,クラミジア直腸炎も鑑別にあがる。クラミジア直腸炎が疑われた場合は直腸擦過診によるChlamydia Trachomatis抗原やDNAの検索が必要である。

亀田和明、吉田全宏、金島 広、中尾隆文、山根孝久、白野倫徳、後藤哲志

熱帯熱マラリアの1例.

臨床血液. 2013; 54:413 (Picure in Clinical Hematology)

要旨:27歳の男性。200x年6月から12月まで南スーダンに仕事で滞在していた。12月5日に南スーダンを出国し,ウガンダ,カタール経由で6日に日本へ帰国した。同日夜間から悪寒戦慄,全身筋肉痛,食欲不振頭痛が出現した。アセトアミノフェン内服のみで経過をみていたが改善しないため, 11日に近医を受診。血小板減少と炎症反応の高値を指摘された。末梢血塗抹標本ではマラリア原虫は認めず,精査を目的に紹介された。来院時,体温40.0℃,脈拍数116回/分,血圧118/74 mmHg,呼吸数24回/分,血算ではWBC 6,880//μl,Hb 15.3 g/dl, Plt 4.4万/dlと血小板のみ減少していた。APTTは31.2秒, PT活性56.9%, PT-INR 1.28, FDP 9.9pg/ml, Fbg 423 mg/dlと軽度の凝固異常を認めるもののDICスコア4点でDICの可能性は低いと判断した。腹部超音波検査では脾腫を認めた。末梢血塗抹標本では赤血球内に複数のリングフォームを形成するマラリア原虫(環状体)を認め,原虫濃度は10%であった。前医塗抹標本を見直したところ原虫濃度0.1%と少数であるがマラリア原虫を認めた。熱帯熱マラリアを疑い,塩酸キニーネとアーテスネートによる治療を開始したところ速やかに全身状態は改善し, 3日目にはマラリア原虫は消失した。PCR検査で熱帯熱マラリアと診断された。熱帯熱マラリアは診断が遅れると致死的であるが,その同定は熟練を要し,原虫濃度が低いと見落とす可能性がある。渡航歴等からマラリアが疑われる場合には感染症科への紹介や塗抹標本の再検が必要である。

金島 広、吉田全宏、小川吉彦、中尾隆文、中野 智、井上 健、山根孝久

自家末梢血幹細胞移植が奏効したPOEMS症候群.

癌と化学療法. 2013; 40:503-506

要旨:患者は44歳。男性。2010年3月に両側下腿の浮腫を自覚, 6月から歩行困難となったため。当院に入院となった。精査の結果,多発ニューロパチー,血清vascular endothelialgrowth factor-3高値, M蛋白血症,浮腫。心嚢液貯留、うっ血乳頭、血小板増加および皮膚病変を認めたため、われわれは本症例をPOEMS症候群と診断した。9月よリステロイド剤ならびにフロセミドの投与を開始したところ,浮腫は著明に改善,下肢近位筋の筋力も軽度回復した。しかしながら下肢遠位筋の筋力は改善せず,歩行困難が続いた。10月にcyclophosphamide大量療法を行った後,顆粒球コロニー増加因子を用いて末梢血幹細胞採取を行った。11月にmelphalan大量療法を施行した後、自家末梢血幹細胞移植を施行した。移植後13日目に好中球は500以上に回復した。2011年2月には自立歩行が可能となった。8月にはM蛋白は免疫固定法で陰性化した。自家末梢血幹細胞移植はPOEMS症候群に対して有用な治療法であるものと考えられる。

原著

小川吉彦、吉田全宏、金島 広、中尾隆文、白野倫徳、後藤哲志、福島裕子、井上 健、山根孝久

当院におけるHIV感染合併非ホジキンリンパ腫の臨床的検討.

癌と化学療法. 2013; 40:1027-1030

要旨:対象は2002年4 月-2012年10 月までの間に当院で診断,治療を行ったhuman immunodeficiency virus(HIV)感染合併非ホジキンリンパ腫8 症例である。症例は全例男性,非ホジキンリンパ腫発症時の平均年齢は46(30-61)歳であった。組織型はdiffuse large B cell lymphoma(DLBCL)4例,plasmablastic lymphoma(PBL)2 例,primary effusion lymphoma(PEL)1例およびBurkitt?s lymphoma(BL)1 例であった。3例が非ホジキンリンパ腫発症前にHIV感染が判明していた。6 例でhighly active anti-retrovirus therapy(HAART)が施行された。そのうち4 例で化学療法を施行した。化学療法が施行されなかった3 例は診断後1 か月以内に死亡した。化学療法が施行された症例のうち1 例は完全寛解になったが,BK virus関連腎炎により死亡した。残りの3 例は完全寛解となり生存中(6-9か月)である。HIV感染合併非ホジキンリンパ腫はHAARTを導入し,その後,化学療法を積極的に施行することによって治療成績の向上が期待できるものと考えられた。

吉田全宏、金島 広、中尾隆文、小川吉彦、日野雅之、中根孝彦、太田忠信、久村岳央、間部賢寛、山村亮介、山根孝久

エルトロンボパグを使用した難治性特発性血小板減少性紫斑病の後方視的検討.

臨床血液. 2013; 54:444-450

要旨:経口低分子トロンボポエチン受容体作動薬エルトロンボパグは既治療の特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura, ITP)に対する新規薬剤である。今回,大阪府下の4施設においてエルトロンボパグを使用したITP 22例の後方視的な解析を行った。観察期間の75%以上の期間で血小板数が5万/μl-40万/μlに維持できた場合を有効と定義した。本人希望により投与を中断した2例を除いた20例中13例(65%)で有効であった。有効であった13例のうち10例がブレドニゾロン換算で5mgを超えるステロイド剤を内服していたが,そのうち7例で5mg以下に減量が可能であった。治療前に出血症状が認められた19例中11例で出血症状の消失および改善を認め(エルトロンボパグ有効例10例中9例,無効例7例中2例),エルトロンボパグ有効例で有意に出血症状の改善が多かった(p=0.018)。エルトロンボパグの有効性に関連する因子の解析を行ったが,有意な因子は認められなかった。有害事象として発熱が1例,全身倦怠感が3例,頭痛が2例,筋肉痛が1例に生じた。重篤な有害事象として脳血栓が1例に生じた。エルトロンボパグは難治性ITPに対して有用な治療薬と考えられるが,長期的治療効果ならびに合併症を見極めた上で, ITP治療戦略上の位置づけを評価する必要がある。

2012年

症例報告

Manabe M, Yoshii Y, Mukai S, Sakamoto E, Kanashima H, Nakao T, Kubo Y, Fukushima H, Inoue T, Yamane T, Teshima H.

Precursor B-lymphoblastic lymphoma involving an intracardiac mass and myocardial infinitration: a case report.

Int Med. 2012; 51:315-319

間部賢寛、吉井由美、向井 悟、坂本恵利奈、金島 広、中尾隆文、久保勇記、福島裕子、井上 健、山根孝久、手島博文

初診時にder(5;12)(q10;q10)の染色体異常を示し、経過中に別クローン由来の晩発性Philadelphia染色体が陽性となった骨髄異形成症候群.

臨床血液. 2012; 53:618-622

要旨:症例は61歳男性。2009年3月に白血球増多・血小板低下のため当院を受診され,細胞形態の異型と染色体異常46, XY, der(5;12)(qlO;q10)を伴い骨髄異形成症候群・分類不能型と診断した。診断時der(5;12)の異常のみだったが, Maja BCR-ABL1のPCRが陽性であり,経過中にPhが顕在化したため晩発性Ph症例と診断した。Ph染色体はFISHにてder(5;12)核板には認められず,別クローン由来が示唆された。原病増悪のためイマチニブ,ハイドロキシウレア,シタラビンの投与を行ったが, MDS診断から5箇月後に呼吸不全のため永眠した。剖検ではMDSクローンによる広範な肺漫潤を認めた。晩発性Phは白血病進展に関与しているとされ,MDSや急性白血病の経過中に出現する例が報告されているが頻度は少なく,予後や病型進展への機序解明など今後多数例での解析が望まれる。

Manabe M, Hayashi Y, Yoshii Y, Mukai S, Sakamoto E, Kanashima H, Nakao T, Hayama T, Fukushima H, Inoue T, Yamane T, Teshima H.

Primary Diffuse Large B-Cell Lymphoma of the Prostate Presenting with Urinary Retention and Dyschezia for Which Rituximab-Combined CHOP Therapy Was Effective―A Case Presentation.

癌と化学療法. 2012; 39:1733-1735

向井 悟、吉井由美、間部賢寛、坂本恵利奈、金島 広、手島博文、小川吉彦、中尾隆文、山根孝久

Haemophilus influenzaeによる肺炎から心タンポナーデを来した悪性リンパ腫の1例.

血液フロンティア. 2012; 22:1242-1245

向井 悟、金島 広、小川吉彦、中尾隆文、手島博文、山根孝久

メルファラン大量療法を前処置とした自家末梢血幹細胞移植を施行した原発性ALアミロイドーシスの3例.

癌と化学療法. 2012; 39:625-627

要旨:原発性ALアミロイドーシス3症例に対してメルファラン大量療法を前処置とした自家末梢血幹細胞移植(auto-PBSCT)を施行した。メルファランの毒性は投与量と関連するため、患者年齢と臓器浸潤がメルファラン大量療法を前処置とするauto-PBSCTを成功させる上で重要な因子となる。我々はメルファランを危険因子と適合させた投与量に設定して治療を行った。VAD療法を3コース施行後、メルファラン大量療法(100-200mg/m2)を前処置としたauto-PBSCTを行った。重篤な副作用、移植関連死亡は認められなかった。全例部分寛解ではあるが中央値68ヶ月(22-100ヶ月)生存中である。危険因子と適合させた投与量を用いたメルファラン大量療法を前処置としたauto-PBSCTは原発性ALアミロイドーシスに対して有効な治療法と考えられる。

原著

小川吉彦、向井 悟、金島 広、中尾隆文、山根孝久

再発・難治性低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対するbendamustine(トレアキシン)の治療経験.

新薬と臨床. 2012; 61:1271-1275

要旨:Bendamustine±rituximab治療は再発・難治性低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫に対して有効な治療であると考えられた(overal response rate 80%(全10例中CR 5例、PR 3例))。血液毒性以外の副作用はほとんどなく、外来でも安全に投与できるものと考えられた。しかしながら血液毒性として高度なリンパ球減少を11例中10例に認めた。今回検討した11例では重篤な感染症の合併は見られなかったが、 ST合剤によるPneumocystis jiroveci pneumonia予防、抗ウイルス薬内服による帯状疱疹予防が必要となる可能性が示唆された。

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