文字サイズ

地方独立行政法人 大阪市民病院機構

手術支援ロボット 「ダヴィンチ」 について

 腎がん・前立腺がんの最新手術
手術支援ロボット『ダヴィンチ』
 

当院では、腎がん手術(腎部分切除術)も
保険診療が可能となりました。
(2016年4月1日- )

                                        文責;泌尿器科 石井 啓一

① ロボット手術適応拡大のご案内

② 手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは

③ ロボット手術の特徴

④ ロボット手術の利点

⑤ 前立腺がんのロボット手術

⑥ 腎がんのロボット手術

⑦ ロボット手術の今後

⑧ ダヴィンチ手術のためには免許が必要です

ロボット手術適応拡大のご案内

これまで、ロボット手術は、前立腺がんに対する治療としてのみ保険で認められていましたが、2016年4月1日の診療報酬改定により、腫瘍径7cm以下の腎がんに対し、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)が保険適応となりました。当センターでは既に、前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術を通常診療として実施しており、全例早期退院され、良好な成績をおさめています。

 最先端医療機器である手術支援ロボット「da Vinci Si Surgical System」による、ダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡下手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。腎がん、前立腺がんが保険適用となり、患者さんに高額な負担はありません。なお米国では既に前立腺全摘除術の約90%が同ロボット支援によって行われているという実績があります。

 

手術支援ロボット『ダヴィンチ』とは

執刀する医師が患者さんに触れることなく遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います。ダヴィンチシステムはペイシャントカート、サージョンコンソール、ビジョンカートの3つから構成されます。ペイシャントカートは患者さんに接続され実際に手術操作が行われる腕の部分です(図1)。人の眼の役割をするカメラと手の役割をする3本のロボットアームを持っています。患者さんの身体に小さな穴を数か所開け、各アームに接続されたカメラや手術器具が体内に挿入され、サージョンコンソールの術者からの指令で各器具が外科医の手の動きを忠実に再現し手術が進行します。サージョンコンソールは、執刀医が座ってカメラを通して体内の画像を見ながら、手足を使って鉗子類を操作するところです(図2)。ビジョンカートは、カメラからの画像の収集、処理をおこなうところです。 

図1

手術開始時:ダヴィンチの腹壁へのドッキング

 

  手術中:ダヴィンチを遠隔操作

図2

  

ロボット手術の特徴

「ダヴィンチ」手術に用いられる内視鏡は2眼のハイビジョンカメラで遠近感のある立体画像が得られます。つまり3画像で体内の臓器などが浮き上がって鮮明に視認することができます。また高解像度で鮮明、約10倍に拡大できます。外科医の手の役割をする3本のロボットアームに接続される鉗子や鋏は、人間の手以上の可動域をもち、従来の手術では不可能であった複雑な動きが可能です。手振れ防止機能が備わっており、人間の手よりずっと小さく、先が細い鉗子を用いて従来よりはるかに細かな作業でも正確に操作ができる特徴を有します(図3)。 

図3

 

ロボット手術の利点

たとえばロボット支援前立腺全摘除術では、患者さんの皮膚を切開する傷口は、鉗子を挿入する5~12mmほどの幅で、明らかに傷が小さいことが挙げられます。また手術中の気腹の効果もあり、開放手術と比較すると非常に少ない出血量であり輸血することは通常ありません。さらに小さい傷口のため、疼痛が小さく、社会復帰がより早くなります。加えて鉗子の操作性が格段によくなり、細密な動きで操作するために、手術操作部位の周辺臓器の排尿機能や性機能などの機能温存を期待できることが、術後のQOL生活の質を低下させにくいという意味で非常に有用な点です。

 

前立腺がんのロボット手術

男性特有の癌である前立腺がんは60から70歳代で発見されるのがほとんどですが、高齢化や食習慣の欧米化により増加傾向にあり、2020年には男性の罹患(りかん)数が肺癌に次いで2番目になると予想されています。前立腺癌がんは進行すると骨やリンパ節に転移しやすく、こうなると完全に治すことは困難になります。一方、早期の治療成績は良好です。前立腺癌の治療法には、主に放射線療法・手術療法・ホルモン療法の3つがあり、根治治療のひとつが手術療法です。ただ腹腔鏡下手術であっても2次元のテレビモニター下の手術であり、また手の代わりとなる鉗子の可動範囲が制限されるなど欠点がありました。これらの欠点を大きく解消したのが「ダヴィンチ」手術です。 2016年12月末日現在で、60例の症例を行い、全例において、周術期の輸血、尿瘻、再手術なく、早期に退院されておられます。

術後腹部創部

腎がんのロボット手術

 

 

 

腎がんに対する手術治療としては、かつて腎全摘が実施されていました。しかし最近では比較的小さな腫瘍であれば、腫瘍周囲のみ切除する腎部分切除術が、癌に対する治療効果として腎全摘と同様であることが証明されてきました。もちろん、腎の正常な部分を温存できることによる、様々なメリットがあります。これまで当院でも、腹腔鏡下に腎部分切除術を10年以上にわたって行ってきましたが、腹腔鏡での切除・縫合操作はときに非常に難易度が高いものでした。しかし今回、ロボット支援手術の正確・繊細・柔軟な動きを利用することで、腫瘍の確実な摘出はもちろんのこと、出血量の減少、尿瘻の防止、腎機能低下の抑制が実現でき、かつ創部が小さいため、社会復帰が早期になることが特徴です。また、術前3D CT解析 (Synapse Vincent®)と、術中の高精細な超音波検査器によるリアルタイムナビゲーションにより、これまでにない安全で、根治性の高い手術を実施でき、また腫瘍の大きさや位置の関係で全摘出しかできなかった症例でも部分切除で完結できます2016年12月末日現在で、25例の症例を行い、全例根治的に手術ができ、周術期の輸血、尿瘻、明らかな患側腎機能低下なく早期に退院されておられます。

 

  

3DCT解析像(Synapse Vincent®、左:腫瘍は赤色で表示、右:腫瘍摘除後をシミュレーション)

  

術中体腔内超音波検査 左:体腔内プローベ、右:超音波検査での腫瘍影(矢印)

ダヴィンチ手術の今後

上述のごとく、2016年4月より、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した手術のうち、前立腺がんに引き続き、腎がんに対する腎部分切除術が保険収載されました。手術・入院費に保険が適用され、従来の腹腔鏡手術の場合と比べても極端に高額にはなりません。ロボット手術の普及に伴い、ロボット手術が患者さんにとっても、我々医療従事者にとっても負担が少ない、メリットの大きい治療であることが認知されてきました。今後、泌尿器科の領域では、やはり難易度の高い、膀胱がんに対する腹腔鏡下の膀胱全摘術や、腎盂尿管移行部狭窄に対する腹腔鏡下の腎盂形成術が、ロボット手術のメリットを享受する可能性があると思われます。

「ダヴィンチ」手術はあくまで人が器械を操作して施行するのですが、3Dの視野下でまるで人の目で直に見ているようであり、さらに拡大して詳細に視認しながら手術ができます。使用する鉗子は人の手の数倍の細かさで動かすことができる為、前立腺のように骨盤の奥の狭い場所での手術に適しており、明らかな術後手術成績の向上が多数報告されています。世界的にも器機の動作不良による致命的な有害事象の報告は一例もなく、安心して手術を受けてもらえると考えます。当センターには「ダヴィンチ」手術専用手術室も完備されています。今後ますます「ダヴィンチ」手術が広まっていく期待は大きく、我々もダヴィンチチームを手術室スタッフとともに結成し鋭意まい進しております。

 

ダヴィンチ手術のためには免許が必要です

    (機器製造社が設定するCertificate )

   ・認定施設でのトレーニングと試験合格が必要となります。
   ・ダヴィンチ手術 Certificate保有医師(2016.12.31.現在); 石井啓一、坂本亘、羽阪友宏
   ・当科では今後さらに執刀医師を増やすべく、他の医師もトレーニングを積んでいく予定です。


泌尿器科医、麻酔科医、看護師、臨床工学士によるダヴィンチチーム

 
このページの先頭へ

交通アクセスのご案内

〒534-0021
大阪市都島区都島本通2-13-22

地下鉄谷町線 「都島駅」2番出口 西へ約3分 バス停「総合医療センター前」下車すぐ 詳しく見る